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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130725-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 7月25日(木)7時51分配信
デリバティブ発祥の地、大阪・堂島。この堂島の名を冠した大阪堂島商品取引所(以下、ODE)が取り扱っている「コメ先物」。2年前、試験上場の形ながら72年ぶりに復活、今年8月、2年間に及ぶ試験上場期間が明けようとしている今、コメ先物を取り巻く現状に迫る。
●個人でも気軽に始められるコメ先物取引
コメ先物の魅力は、個人でも取引しやすい商品性に尽きる。コメ先物では、最低取引単位3トンの売買を行う際、約1万5000円の証拠金(元手)さえあれば売買可能だからだ。いまや個人向け先物の代表格にまで育った大阪証券取引所上場の日経225miniも、最低取引単位の取 引でも8万4000円の証拠金を要する。個人にとって決して安い額ではない。
だが、出来高ベースでみると、コメ先物の現状は、まだまだ振るっていない。1日当たりの平均取引高では、5月の取引分で、大阪コメは668枚、東京コメは449枚。日経225miniは156万1403単位と、その差は歴然である。
今回、ODEの担当者に話を聞いた。
――コメ先物は、「東京コメ」を東京穀物商品取引所から引き継ぎ、大阪コメと併せて試験上場されている。しかし、現状、活況とは決していえない状況が続いているが?
ODE まだ試験上場の段 階。試験上場以来約2年の試験結果を、この7月に農林水産省で検証して、諸々の改善点をあぶり出す作業をする 。
――現段階で予想される改善点は何か?
ODE 「最低取引単位」と「ブランド」の2点だ。現在、コメ先物は、最低取引単位が3トンだが、これを30トンへ引き上げ る。ブランドについては、東京コメ・大阪コメ、これを統合し「コメ」とすることが考えられる。
――最低取引単位の引き上げとは? 個人投資家にとっては3トンとパッケージが小さいほうが利便性は高いと思われるが?
ODE 現物受け渡しもあるコメ先物は、倉荷証券を発行しなければならない。この倉荷証券は30トンが最低単位。大口の取引を行う場合、現状の3トン単位だと、倉荷証券発行手数料がかさむ。そのため、30トンに引き上げたほうが、大口の売買を行う法人投資家にとっては利便性が高くなるというメリットがある。
――個人の取引参加は考えていないのか?
ODE まだ取引高は少なく、流動性リスクの問題もある。個人の取引参加は、まず法人の取引参加を促し、市場の流動性が高まり、市場整備が進んでからの話だ。現物受け渡しもあるコメという商品性から、パッケージが小さければメリットがあるというものでもない。
●どうやって取引参加を増やしていくのか?
8月に試験上場期間が明け、「本上場、試験上場期間の延長、上場廃止」いずれかの決定がなされる。関係筋によると「試験上場期間が延長される」との見通しで一致。だが、これにより本格スタートへ、というほど事は簡単ではないようだ。
「今夏の試験上場期間明けから、さらに2年をかけなければ、法人の取引参加も増えないだろう。個人が取引参加するのは、それからのこと」(市場関係者)
とはいえ、法人への取引参加を促すのも容易ではない。ある先物会社は、「流動性が少ない現状では、取引を活発化させるべく、先物会社が自己売買を積極的に行えば、相場操縦とのそしりを受けかねない。だからODE側から取引参加が見込まれる生産者、小売者、商社といった当業者への呼びかけを積極的に行ってもらいたい」と話す。
まだ試験中とはいえ、上場以来すでに2年の月日が過ぎた。そろそろODEも先物会社も、コメ先物への本格的スタートに動いてもいい時期だ。だが動きは鈍い。もっともODE側にも動きたくとも動けない事情がある。農協がコメ先物上場に反対しているからだ。
そもそも農協がコメ先物に反対しているのは、食料であるコメが投資対象となれば、価格が乱高下する可能性があり、生産者のみならず消費者にとっても困るからだとする。事実、農協側も「食物の価格操縦をされるのが怖い」と不安を露にする。
●価格安定のために、コメ先物取引市場の成熟が必要
一方、こうした農協側の心配は、杞憂にすぎないという声もある。有力農家の中には、農協を通さず、流通大手と直接取引を行うところも出てきており、コメの値決めの主導権は、もうすでに農協の手にはなく、流通大手に移りつつあるというのがその理由だ。
「投機云々でコメ価格が乱高下というのであれば、流通大手が出てきた時点で十分あり得た話だが、そうならなかった 。むしろコメ先物市場が成熟すれば、コメ価格のスタンダードができるので、かえって健全な値決めを市場が行うことになる」(市場関係者)
前出の市場関係者は、ODEが個人の取引参加に積極的でないのは、まさにこの“投機”が理由であるという。
「投機を目的としていい金融商品は、日経225miniのような株価指数先物。しかしコメ先物は、現物受け渡しもあり、投機目的の金融商品ではない。どちらかといえばヘッジ目的の金融商品。ODE側としては個人に積極的にPRしないのは、そうした背景があるのではないか」(市場関係者)
アメリカで穀物を原商品とする取引所、CME(シカゴ先物市場)では、個人の取引参加は、1割から2割程度。多くは小売者、生産者、商社といった当業者である。
「先物取引への捉え方の違いが大きい。日本では、ともすれば投機のイメージが強いが、海外ではヘッジ目的として捉えている」(ODE)
天候、為替、地政学的要因など、さまざまな価格変動要因から価格の乱高下を避けるために先物取引を用いるというのがヘッジ取引だ。農協がいう「価格の乱高下」を避けるには、健全で成熟した市場があったほうが理にかなっている。ODEのコメ先物こそ、まさにうってつけではないだろうか。
秋山謙一郎/ジャーナリスト
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