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百貨店は好調だが、消費者は一様ではない(伊勢丹新宿店、撮影:尾形 文繁)
消費者は、“情報疲労”している
http://toyokeizai.net/articles/-/16175
2013年07月25日 濱谷 健史 :野村総合研究所 副主任コンサルタント :東洋経済オンライン
「モノ余りの時代」「デフレの時代」――。「日本の消費者は、モノを買わなくなった」といわれて久しい。ではなぜ、買わなくなったのだろうか。逆に、何かきっかけがあれば買うのだろうか。そんな消費者の心理や行動に鋭く迫ったのが『なぜ、日本人はモノを買わないのか?』(東洋経済新報社刊)だ。詳しくはぜひご一読いただきたいが、東洋経済オンラインでも、今回から3回にわたり、短期で連載。いまどきの消費者像に迫った。
あなたは商品やサービスを選ぶ際、「情報が多すぎて困る」だろうか、それとも「情報が不足していて困る」だろうか。実は、日本の消費者の70%が、情報が多すぎて困っていることが野村総合研究所の「生活者1万人アンケート調査」で明らかになった。今回は、情報疲労時代とも呼べる状況下で、変貌を遂げている消費者の意識・行動や今求められるマーケティングの方向性を解説する。
■リアルもネットも、情報が溢れかえっている
今、ある人がデジタル一眼レフカメラを購入しようとしている。おおまかな予算は決まっているので、まずはどんな商品があるのか、インターネットの比較サイトで調べてみる。とりあえず売れ筋ランキングでソートして、購入者のクチコミを参照してみる。画素数、レンズの種類、連写撮影の性能・・・・・・さまざまな要素が並ぶ。
しかし、ハイスペックな機能があっても使いこなせるだろうか。ブログなどネット上の個人ページを見たり、くわしそうな友人やショップ店員の説明を受けてみたりしても、皆、言うことが異なる。「結構高いものだし、今はスマホのカメラで十分かも」。そして結局、今日も購入にいたることなく終わる――。あなたにもこのような経験はないだろうか。
PCやモバイル端末からアクセスできる評価サイト、企業ホームページ、身近な人からのクチコミ、店頭での販売員のおすすめなど、ネットを中心に情報量は増加の一途を辿っている。たくさんの断片的な情報がパラレルに入ってくることでかえって意思決定が難しくなり、どれを買うべきか、そもそも買うべきか、の判断がつきにくくなっているのだ。
■消費者の7割が情報の多さに困惑
最近、アベノミクスの影響もあり、消費関連で明るいニュースが聞かれるようになっている。百貨店では高額商品が売れるようになり、2013年上半期の日経MJヒット商品番付では「高級時計・宝飾品」が東の横綱に選ばれている。
ただ、アベノミクス効果を十分に実感できていない人も多いのではないだろうか。確かに上流層、ストックリッチな層は株高の恩恵を受けて、消費額が増えている。だが、企業の方から、自社の商品が飛ぶように売れるようになったという声はさほど聞かれない。多くの人は消費額を増やしてもよいと考えるほど景気の好転を感じていないというのが実態であると思われる。失われた20年で培われた日本人のつつましき消費実態は継続中なのである。
筆者が所属する野村総合研究所では、生活者1万人を対象に1997年から3年ごとに、生活価値観や消費意識などについて調査を行っている。15年という長期時系列のデータから、社会環境の変化の中で、新たな方向へと踏み出した日本人の姿が見えてきた。その中の重要なキーワードとして、消費者の情報へのアプローチ方法や考え方が大きく変わってきていることが挙げられる。上記の2012年の調査では、消費者の実に70%が、情報が多すぎて困っていると回答している。
現在、多様なチャネルから多様な発信主体による大量の情報が流入してくるようになり、情報はどんなに集めてもきりがないぐらい膨れ上がっている。企業発の情報も決して鵜呑みにはできない。さらに口コミサイトでの「やらせ投稿」などの問題も表面化しており、ネット上で得られる第三者発の情報も信じてよいかわからない。失敗したくないゆえ、情報を集めるが、それでも「消費に関して、自分が間違った判断をしてしまうのではないか」と考えている人が、46%と半数近くに達していることからも、「迷える消費者」の時代になっているといえよう。
■情報や選択肢が多いと、購入自体をやめることも
選択肢の数が多いと、かえって消費から遠のいてしまうということは、バリー・シュワルツ著『なぜ選ぶたびに後悔するのか 〜「選択の自由」の落とし穴〜)』でも明らかになっている。
とある食料品店で、試食用として1つのテーブルに6種類の高級ジャムを並べ、もう1つのテーブルには24種類を並べて、買い物客に試食してもらった。結果、6種類を置いたテーブルでは、試食した人のうち実に30%が購入に至ったのに対して、24種類を置いたテーブルでは、試食した人のうち3%しか購入しなかったという。
もちろん、24種類を並べた方が、興味半分で試食する人が多い可能性はあるが、選択肢が多くなると購入に至る可能性が下がるのは非常に示唆的な結果である。まさに、これが“情報疲労”の状態である。人は常に合理的に判断できるという想定の下では、情報が多ければ多いほど、より良い選択ができるはずだが、実際には、情報が多すぎると、購入の意思決定を放棄する可能性が高まるのである。
では、情報を発信すればするほど、消費者に迷いが生じやすくなる、という皮肉な状況が起きている中で、情報の氾濫は今後収束するのだろうか。
われわれは、情報の氾濫は今後も止まることはないと予測する。リアル店舗でも、ネット店舗でも商品・サービスを販売している企業は、自分たちだけが情報発信をやめれば、競合に顧客が流れることを知っている。個別企業の視点に立てば、情報や選択肢を抑制することはできないのである。
さらに、スマートフォンが20代を中心に普及し、消費者からの情報発信も加速している。企業・消費者双方から、より多くの情報がもたらされ、消費者の情報疲労度合いはさらに増すと考えられる。
情報提供ということでは、今後はいかに消費者が判断しやすいものにするか、溢れる情報の中から信頼性の高いものとして選び取ってもらえるようにするか、フィルタリングや重みづけ・情報間の関連づけなどの構造化を行っていくことが重要になるだろう。
■それでも最後は「自分で決めたい」
さらに注目すべきは、消費者は情報疲労しつつも、「もう自分で判断するのは面倒くさい。誰かに決めてほしい、選んでほしい」と思っているわけではないという点だ。
前述のアンケート調査からは、約8割の消費者が、「自分のことはすべて自分で決めたい」と回答している。ここに、溢れる情報を収集し処理するのは大変、消費に失敗するのも怖い、でも人に決めてもらうのは嫌、という消費者のジレンマがうかがえる。
まとめると、現代消費者は、多くの断片的な情報を「知って」はいても、それを統合・構造化することで「理解」できていない。そして、そのことに消費者自身、少なからずストレスを感じているが、それでも消費についての判断は自分自身で下したいと考えている。このことは、現在の消費者行動を理解する上で大変重要な心理的背景である。
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