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首相の成長戦略 危うい企業偏重
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/299.html
投稿者 金剛夜叉 日時 2013 年 7 月 23 日 22:32:30: 6p4GTwa7i4pjA
 


http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013072302000113.html



「実行なくして成長なし」。安倍晋三首相は二十二日の会見で、成長戦略の実行に強い決意をみせた。その柱は、設備投資減税など企業優遇策になる。だが、国の経済力を示す国内総生産(GDP)の六割を占めるのは個人消費だ。来春に消費税が増税されれば国民生活や景気は悪化する恐れがあり、デフレ脱却も危うい。人にやさしい成長戦略こそ求められる。 (石川智規)

 参院選を取材する街頭で、演説を聞く男性(47)に話しかけた。失職中という男性は、こうつぶやいた。「世界の競争が激しくなる中で、大企業への政策は大切。でも自分らの暮らしも守ってほしい」

 この言葉に、多くの国民が期待する経済政策の本質が宿る。企業の利益を雇用や賃金に回し、消費を上向かせて企業の業績につなげる。人々の暮らしが起点になる、良い景気循環だ。しかし、政府の目線は企業や世界向けに偏ってみえる。

 政府は八月上旬をめどに中期財政計画の策定を予定し、九月の二十カ国・地域(G20)首脳会合で示す見通しだ。主要国の関心は、日本が世界経済を混乱させないよう、消費税増税を行い財政再建に向かうか否かにあるためだ。

 九月には、例年より早く税制改正の議論が始まる予定。経営者や市場が、企業の成長を促すために設備投資減税や法人税引き下げを求める声に応じた。十月めどの臨時国会は、「成長戦略第二弾」として農業への企業参入や解雇しやすい雇用法制の検討が進むとみられる。

 「全国津々浦々まで実感できる強い経済を取り戻す」と安倍首相は力を込める。だが、幅広い成長は企業任せだけではおぼつかない。まして、景気回復を急ぎ公共事業などへのバラマキを増やしたなら、首相自らが指摘する「古い自民党に逆戻り」となる。成長への道のりは一筋縄ではいかない。  

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コメント
 
01. 2013年7月24日 03:47:45 : nJF6kGWndY

>幅広い成長は企業任せだけではおぼつかない

そもそも政府に長期的に経済を成長させる力などない


せいぜい、日本で投資が増えるように法人税や社会保障負担などは競合相手国並みに減らし、

労働規制などは緩和、一方で労働環境規制や失業時の所得補償はしっかり行って、

雇用の流動性を高めるとともに、過労死など余計な労働問題発生を防ぐこと


つまり、できるだけ企業の邪魔をしないことくらいだ


02. 2013年7月25日 10:21:13 : niiL5nr8dQ

 
 
【第14回】 2013年7月25日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
製造業の設備投資は増えない
――官需と住宅駆け込み需要が主導する設備投資回復
?安倍内閣の経済政策が、実体経済に徐々に影響を与えつつあると言われることがある。金融緩和政策によって企業活動が活発化し、これまで動意が見られなかった設備投資にも増加の兆しが見えるというものだ。

?しかし、現実に起こっていることは、そうしたストーリーとはかけ離れたものである。設備投資の増加は、官需と住宅建設の駆け込み需要に起因するものであり、一過性のものに過ぎない。製造業からの機械受注は対前年比で減少しており、銀行の製造業向け設備投資貸出も減少している。

機械受注は官需が主導

?まず、2013年5月における機械受注の主要需要者別受注額(季調系列)を見ると、図表1のとおりである。総額は、対前月比で12.0%増(対前年同月比で17.7%増)とかなり高い伸びになった。


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?この大きな原因は、官公需が著しい伸びを示したことである。図表2に見るように、官公需は最近までは月間2000億円台だったが、13年5月で急に増加して、約3600億円となった。これは、今年の1月に編成された12年度補正予算が執行されつつあることに伴うものだ。

?この結果、季調済み対前月比で44.8%増(対前年同月比で50.9%増)という非常に高い伸びになった。

?図表1に示すように、対前年増加額に占めるウエイトは35.6%だ。つまり、5月における機械受注増加額の3分の1以上が、官公需によるものだ。受注額自体での官公需のウエイトは15.9%に過ぎないので、13年5月の状況は、異例なものだ。

?官公需以外の項目を見ると、外需は変動が激しい。図表2に見るように、12年3月以降月間7000億円以下だったが、13年3月で急に増えて、1兆円を超えた。5月では、約9000億円だ。

?対前月増加率は10.3%、対前年同月比は17.4%と、かなり高い伸びになっている。しかし、このかなりの部分が、円安による円建て輸出額の増加によると思われる。

製造業からの受注は
対前年比マイナス

?民需の対前月増加率は12.4%、対前年同月比は15.2%とかなり高い伸びになっている。

?しかし、民需の中で、製造業と非製造業の対比が著しい。すなわち、製造業は2011年以降、緩やかな減少傾向にある。ただし、13年3月以降、若干持ち直した。この結果、製造業の対前月増加率は3.8%になり、対前年同月比が−4.0%となった。

?5月の民需が全体として高い伸びを示しているのは、非製造業の伸び率が高いからである(対前月増加率が27.0%。対前年同月比が30.7%)。

?額で見ても、かなりの差がある。非製造業は、月間6000億円程度で、あまり変化がない。非製造業は製造業の倍近くなっている。設備投資額そのもので見ても、非製造業は製造業の約2倍であるが、機械受注額でも同様の傾向が見られるわけだ。

円安で輸出産業の利益が増えても、
設備投資に結びつかない

?以上をまとめれば、2013年5月に機械受注が増えたのは、外需、非製造業、官公需からの受注が増えたからである。

?外需は、日本のメーカーが海外に生産設備を移転させようとしていることが大きく影響しているのだろう。

?非製造業の内容は、機械受注統計ではわからないのだが、つぎに述べる銀行貸出の状況などから判断すると、不動産業であろうと考えられる。

?官公需は、すでに述べたように、大型補正予算の影響だ。

?つまり、設備投資は、海外、住宅、公共事業を中心に行なわれるということである。

?重要なのは、円安によって製造業の輸出産業の利益が増加したにもかかわらず、それが国内の設備投資に結びついていないという事実だ。

?一般には、金融緩和と円安によって輸出が増え、輸出産業が設備投資を始めつつあると考えられている。しかし、実際に起こっていることはこれとかなり違う。以下に見るように金融緩和は「空回り」しているし、円安は円換算の受取額を増やしているだけで、輸出量を増やしていない。

?国内投資をけん引しようとしているのは、消費税税率引き上げ前の駆け込み需要による住宅建設と、アベノミクスの第2の矢である大型補正予算による旧来型の公共事業なのだ。以下に論じるように、これらは、一過性のものに過ぎない。したがって、設備投資の増加も一過性のものと考えられるのである。

不動産業向けの
設備資金新規貸出が急増

?国内銀行の設備資金新規貸出状況を見ると、図表3のとおりである。現時点では2013年1−3月期までしかデータが得られないのだが、この期の対前年同期比は、全体で見ると、12.5%である。


?注目すべきは、製造業と非製造業の間の著しい差だ。すなわち、製造業は、対前年同期比が18.5%の減となっている(輸送用機械では、26.2%の減)。それに対して、非製造業は20.6%の増だ。

?中でも、不動産業は21.8%というきわめて高い伸びを示している。そして、新規貸出額で見て、非製造業の中でのウエイトが半分近くになっている。全体に対する比率で見ても、4分の1近い。また、不動産業に対する設備資金新規貸出額は、製造業全体に対する貸出の5倍近くになっているのである。

?このように、設備投資の主役は非製造業であり、その中でも不動産業なのだ。

?製造業は、残高が減少している。つまり、これまでの借入金を返済しているわけだ。円安で利益が増えるとしても、それは、設備投資に回るのではなく、このような目的に使われる。

?日本の法人企業の自己資本比率は、1970年代の終わりから80年代初めにかけて、14%程度のボトムを記録した。その後、継続的に上昇し、現在では38%を超えている。このように内部資金が潤沢な状態では、いくら金融緩和をしても、それによって貸出が増えるといった事態にはならないだろう。

?つまり、4月に開始された日銀の「異次元緩和措置」は、「空回り」しているわけだ。日銀が銀行から国債を買い上げ、銀行が日銀に保有する当座預金は増加するが、そこで止まってしまって、それ以上の効果を発揮していない。

?しかも、製造業では、設備の過剰感がある。

?13年6月の日銀短観によると、設備過剰判断DI(「過剰」−「不足」、%ポイント)は、全規模・全産業でプラス5である。11年9月から13年3月まで6だったのが、やや改善したが、大きな差ではない。

?製造業だけに限れば、13年3月にはプラス14と、11年9月調査のプラス10から過剰感が強まった。13年6月では12に改善したが、依然として過剰感が大きい。経団連の米倉弘昌会長が、「投資減税だけでは、(設備投資は)動かない」と指摘した背景には、こうした過剰感があるわけだ。

?製造業は、投資を行なうのであれば、海外で行なうだろう。

設備投資増は継続するか?

?住宅投資は駆け込み需要なので、実際に消費税率が引き上げられると、急減するだろう。

?官公需も、補正予算の執行が終われば、終わる。したがって、需要追加を継続するには、13年1月に編成した大型補正予算と同程度の規模の公共事業を追加し続けなければならない。しかし、政府は、財政再建という厳しい課題を、国際公約として実行しなければならない立場にある。したがって、財源の点から見て、継続的な公共事業拡大路線は取れない。

?こう考えると、現在の設備投資の増加は、一過性のものとしか考えられない。「アベノミクスによって経済が好転し、設備投資にも火がついてきた」との見方は、まったく現実離れしていると言わざるを得ない。

?安倍政権は、成長戦略の中で、設備投資を3年間で1割増の70兆円に増やす方針を打ち出した。今後3年間を「集中投資促進期間」と位置付け、民間の設備投資額を12年度の63兆円からリーマンショック前の70兆円規模に戻すというものだ。そして、それを実現するために、法人税の減税や設備投資減税などを検討するとした。

?しかし、ここで分析したような事情を考えれば、それはきわめて困難な課題であると言わざるを得ない。

?今後の設備投資を考えるのであれば、非製造業を中心に考えるべきである。しかも、単に経済の総需要を増やすという観点だけから設備投資を考えるのでなく、設備投資が企業の生産性を高めるという、本来の視点からの考察が必要だ。

?非製造業の中でも、流通関係や医療福祉などは、生産性がきわめて低い。こうした分野の生産性向上の面から、設備投資が考えられるべきだ。
http://diamond.jp/articles/print/39257

 

 


 


 

【第72回】 2013年7月25日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
経済財政白書を読む 
意図的に消費税増税を正当化
最大の難関は消費税増税

?参院選は事前の予想通り、自民党の圧勝だった。安倍首相はアベノミクスを推進するといっているが、最大の難関は、4〜6月の経済指標をみて秋に判断するとされている消費税増税である。

?ここで、確認しておきたいのは、消費税増税をストップさせるためには、秋の臨時国会に、消費税増税の凍結法案を出さなければいけないということだ。

?これは政治的にはなかなか難しい。参議院で国会のねじれはなくなったが、増税ストップ法案を出すことは、昨年の民自公の三党合意を破ることになるからだ。財務省の息のかかった自民党内の税制マフィアも黙っていないだろう。

?なにより、大量に当選した参議院議員はタレントを除くと業界団体推薦の族議員が多く、業界にカネをばらまくことが期待されている。となると、増税はバラマキ財源確保のために賛成する。ますます、増税ストップの政治環境は悪くなる。

?もちろん経済政策から考えれば、消費税増税はスキップすべきだ。また、筆者としては、消費税増税なしのほうが財政再建できるので、いかに政治的な困難があっても、政局をいとわずに安倍首相が打ち破ってほしいと思っている。そのほうが安倍政権の基盤は盤石になり、さらなる長期政権になると考えている。

?ただし、実際にやり遂げるのはかなり難しい。まず、自民党内政局になるかもしれない。参院選の勝利がどのように影響するのか。

?まず、今後の政治日程を確認しておこう。

8月初旬??臨時国会召集(参院議長)
8月上旬??概算要求基準の決定(閣議了解)
8月12日? 4〜6月期のGDP速報値(1次速報)
8月末???概算要求締め切り
9月9日? ?4〜6月期のGDP速報値(2次速報)
9月上旬??G20開催
9月中旬??内閣改造(?)
10月上旬 ?臨時国会召集(成長戦略)

?4〜6月期のGDPはいい数字になるだろう。23日に発表された内閣府による7月の月例経済報告では、3ヵ月連続で上方修正され、景気が「着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる」と変更された。この「回復」という表現は、10ヵ月ぶりだ。いずれにしても、消費税増税を挙行するか延期するかがアベノミクスの成功のカギだ。その判断のタイミングは、9月上旬だ。

財務省のすさまじい増税指向

?問題は、景気がいいので今少し本格的な景気回復を待ってから増税するか、少しよくなったのだから増税するかだ。筆者は前者であるが、財務省等は後者の立場で、何が何でも増税したいのだ。

?消費税増税には、世界で多数の例がある。イギリスでは2010年1月と2011年1月に財政再建のために消費税増税したが、景気低迷している。

?英国はリーマンショック後、マネタリーベースをその以前の3倍程度に引き上げた(図1)。


?そして、危機は脱したかに見えた。しかし、2010、2011年の消費税増税で、実質経済成長は伸び悩んだ(図2)。


?似たような金融緩和を行ったアメリカと比較するとよくわかる。英国の消費税増税の前には似たようなパフォーマンスであったが、消費税増税後の両国のパフォーマンスには差が出ている。

?このため、世界的に、緊縮財政が見直されているが、日本の財務省だけは増税に固執している。

?財務省の増税指向はすさまじい。マスコミで少しでも増税に否定的な人がいると、財務省の役人がすぐレクチャーに来るといわれている。さらに、マスコミの交際費などを徹底的に洗い出すという「裏技」まで使って、増税シンパを増やすという噂もある。

増税を支援する経済財政白書

?そうした財務省からみれば、経済財政白書で、増税のための主張を盛り込むことなど容易だろう。そう思われても仕方ないようなことが、23日に公表された内閣府の経済財政白書(年次経済財政報告)に書かれている。

?小見出しは「付加価値税率の引上げは必ずしも経済成長を阻害せず」と書かれているが、どの資料がその主張を裏付けているのか正直言ってわからない。

?その箇所の文を読むと、リーマンショック前には、消費税増税をしても「マイナス成長」にまでならないことがあったと強調したいようだ。

?しかし、これでは消費税増税の経済に対する分析になっていない。「マイナス成長」にならなければ、その前より成長率が下がってもいいというのだろうか。本来であれば、@消費税増税前の実質GDP成長率、A増税時の実質GDP成長率、B増税後の実質GDP成長率の3つの資料がないとダメだ。もし、経済財政白書が小見出しのような主張をしたいなら、@の成長率が、増税前の駆け込み需要の反動でAの成長率になるが、その後はBで成長率が戻る、と言わなければいけない。

?経済財政白書の153ページには、@とAの図が載っている。ところがBがないのはなぜだろうか。

?ちなみに、図3は経済財政白書の153ページの図だ。ただし、実際の経済財政白書では、Aの図の目盛りが@の図とずれている。これが目の錯覚を誘発して、Aの成長率ダウンがはっきりわからなくなっており、図の作り方がせこい。


?なお、今年の経済財政白書にはいい点もある。アベノミクスでは予想インフレ率の上昇がカギになっていて、実質金利(=名目金利−予想インフレ率)の低下が実体経済に好影響を与える、ここはポイントをしっかりつかんでいる。筆者は十数年前から実質金利の低下こそが、金融政策の実体経済に与えるキモだと言い続けてきた(例えば、岩田規久男編『デフレをとめよ」〈2003年日本経済新聞社〉第6章参照)ので、やっと政府も認めたのかと感慨深かった。

?7月の月例経済報告でも、景気の上方修正が行われたし、ここ半年間で発表された各種の経済指標はほぼ好調となっている(7月11日付け本コラム)。データに基づく議論ならば、アベノミクスを評価しないほうがおかしい。

急いては事をし損じる

?一方、経済財政白書では、リーマンショック後は、消費税増税をして「マイナス成長」にしばしば陥っていることを認めている(図4)。


?そうであれば、景気の回復過程において、消費税増税は景気にかなり悪影響があると読むのが自然であろう。分析が不十分な上に、結論先にありきで消費税増税を正当化しようとして、勇ましい小見出しであるが、その中身を読めば、逆の結論が透けて見えてくる。

?5月30日付けの本コラムで示したように、成長すれば財政再建は後からついてくる。急いては事をし損じるという格言を忘れてはいけない。
http://diamond.jp/articles/print/39256

 

 


 


 

 技術も知財も人材も、守りの発想が裏目に出る日本企業

研究開発のグローバル化(その3)

2013年7月25日(木)  田中 芳夫

日本の慣習が招いた自動車部品メーカーの収監事件

 日本の企業が抱きがちなグローバル化への嫌悪感、怖さなどは、IT(情報技術)に対する姿勢にも似ているといえるでしょう。グローバル化、ITのどちらも、これまでの日本では避けてもなんとかやっていくことができてきました。

 22〜65歳の日本人男性ばかりの社会が心地よくて、脱却したくない。世界のことなど知らなくて良い。外国人とはできれば接したくない。携帯電話は持ち歩きたくない。電子メールは使いたくない。ITを理解しなくてもいい。……このような考え方でも、それなりに快適に暮らせるのが、日本の世の中です。しかし、これでは済まない時期がやって来るのは、そう遠くない気がします。

 現在でも、日本の企業はその体質やビジネスの手法の面で、グローバル化に対応できないまま製品や開発拠点をグローバルに展開しているため、海外で問題を引き起こしている例が見受けられます。

 最近の例では、自動車部品をめぐる価格カルテル(販売価格の不当な統制)が海外に波及し、この価格カルテルに関わったとされる日本の部品メーカー4社の12人が、米国で次々に収監された事件があります。

 いずれも日本の独占禁止法にあたる、米国の反トラスト法(取引制限などを禁止、制限する法律)に違反したとされるもので、日本の自動車業界の中で、自分たちだけの間で通じていたビジネス手法が、海外では通じずに罰されたという話です。この当事者たちは、日本にいる限り逮捕されませんが、それではビジネスに支障を来すため、米国に出頭しました。

 摘発された社員が所属する企業に課された課徴金は、矢崎総業が4億7000万ドル、デンソーが7800万ドルなどとなり、矢崎総業は1年間の利益に相当する額を支払うことになりました。

 この件は、国際性の無さの悪い見本のような例です。グローバル化が嫌だ、怖いなどと言っているのとは対照的に見えますが、グローバル化を理解しようとしないのは同じで、自分たちの手法を押し通して突き進んでしまった例です。

 このような問題を防ぐために、グローバル化に対して、日本の企業は、もう少し真剣に向き合う必要がある気がします。

知財が取引材料になる時代の戦略

 知的財産に対する考え方も、グローバル化する必要があるでしょう。携帯電話に関する研究や開発の資産を多く持たないように見えるのに、なぜ、グーグルやアップルが携帯電話を作ることができるのか。この背景には、グローバル化時代の知的財産に対する考え方の変化があり、既に成立している特許の譲渡が容易になっているのです。中には、特許を保有する企業ごと買収し、そのビジネスごと吸収するだけではなく、逆に潰してしまうようなケースまで増えてきています。

 こうした時代に、以前のように、特許を取得して知的財産を守っていくだけの手法は、もう通じないでしょう。先端的な企業は、必要な特許があれば買い集めてくることを、知的財産戦略としているからです。訴訟リスクが生じた場合には、取得できそうな特許を、片っ端から買ってしまいます。特許1件あたり、億円単位の金額に上りますが、訴訟に巻き込まれた場合に想定される影響に比べれば、効率的だという判断です。

 例えば携帯電話の分野では、フィンランドのノキアが経営難から手放した特許を、米マイクロソフトやスウェーデンのエリクソンなどが共同で、特許1本あたり約7500万円で約600件買い取り、共同で活用しています。また、マイクロソフトは様々なインターネットのサービスに取り組むため、AOLから相当数の特許を買い取っています。マイクロソフト自身、多くの特許を保有しているにもかかわらずです。

 一方、グーグルは自社の携帯電話プラットフォーム「Android」に、必要な知財の取得や訴訟に巻き込まれるリスクの低下を目的に、やはり経営危機に陥った米モトローラの携帯電話部門を買収しました。

 特許がいわば商品のように流通し始めている時代に、日本では特許数で技術者や部署を評価するなどという、世の中とは違う動きをしているように見えます。

 また、グーグルの事業や企業の買収に関して、買収後の被買収企業のビジネスや研究開発がうまくいっていないとの分析を聞くことがあります。それは、買収の目的を一面からしか見ていないためだと思います。

 自社のビジネスの邪魔になる企業を買収して、その企業のビジネスごと潰す場合があるからです。自社に上手く統合できそうなら統合すればいいし、そうならないなら、必要な部分だけ吸収して、潰してしまう。マイクロソフトも、こうした目的の買収を繰り返してきた企業です。

 日本では自社で特許を取得し、知財を守り抜くことばかりにこだわっていたり、技術者や研究者がグローバル化することを技術流出だととらえる向きが目立ちます。しかし、世界のルールが変わってきているのに、日本だけが特別なルールで勝負できることなどあり得ません。世界の基準とされるルールを知った上で、どのように勝負していくのか、組み立てなければ仕方がありません。

グローバル化で国力や企業力は低下するのか?

 ここで、IBMが進めてきたグローバル化の段階について紹介します。組織の形態や、能力などから3段階に分類したもので、1つ目が、インターナショナル化です。企業の製品やサービスを、本国から輸出したり、海外に工場を設けて展開していく段階です。2つ目は、マルチナショナル化です。インターナショナル化がさらに進んで、海外に拠点や現地法人をつくる段階です。日本でビジネスを展開する、多くの外資系企業がこの段階にあります。

 3つ目はトランスナショナル化です。これがいま議論しているグローバル化の段階で、共同で世界中の知識を得て、技術を開発し、それを世界中で共有していこうとするものです。

 日本の場合、この段階に踏み込む企業が少なく、その理由としてグローバル化への恐れとともに、日本人の能力に対して、良い意味で自信を持っているためと感じます。また、研究のグローバル化は、自国に世界中の優秀な人材を呼び込むことで実現することもできます。例えば、サムスン電子です。彼らは開発こそ現地駐在の人材を交えて取り組みますが、研究については徹底して韓国内で行います。海外の優秀な研究者を集めるために、給与や待遇、税制優遇策などを用意しています。

 サムスン電子については、先日、日経ビジネスオンラインに、「サムスンに多くの転職者を出した日本メーカーは?」という記事が掲載されていました。

 サムスン電子から特許を多く出願した日本メーカーからの転職者は、出身企業ではパナソニックや旧・三洋電機が多いということでした。パナソニックや三洋電機は、歴史的にサムスン電子と親しい企業です。その次にランクされていたNECや東芝も、サムスン電子と関係が浅くない企業です。

 サムスン電子が海外の優秀な研究者をスカウトする場合、だいたい2〜3年を前提としているようです。報酬は年間で数千万円と魅力的で、優秀な研究者がピンポイントでスカウトされます。彼らはサムスン電子を辞めても、次の行き先に困らない方々です。

 このようにして、IBMやサムスン電子のような、それぞれ異なるアプローチを議論しても、日本では技術の流出や国力の低下、企業力の低下などということばかりが強調されます。それでは、米国や韓国の国力が低下したでしょうか。その逆で、ここまで見てきたように、知財をひとかたまりで買い取ったりしながら、事業を伸ばしている状況があります。

 結局、技術の流出を案ずるばかりの視点には、世界の優秀な人たちと、共同で研究したり、共同で開発したり、英知を集めていこうという意識が乏しいのです。逆に、日本人だけで運営していれば、マネジメントも楽で、研究や開発もしやすく、その成果を、世界に売りたいという発想だけに感じられます。いずれも、自分たちのやりやすい方法で取り組んでいれば世界が受け入れてくれるという、甘えた発想にしか見えないのです。

日本メーカーは技術者の安住の地なのか

 液晶テレビの市場が急速に拡大していたころ、ソニーとサムスン電子が合弁会社を設立して、韓国に液晶パネル工場を建設したことがありました。この建設について、役所などが怒り、ソニーがその当時参画していた液晶パネル関連の国家プロジェクトから、脱退することになりました。この例は、海外と組んでテレビ事業として勝ちを狙いにいった例です。

 この少し前の時期には、液晶パネルや半導体に関連する日本企業の中には、技術者のパスポートを企業が預かったり、国際空港への出入りを監視していた企業があったようです。韓国や中国の企業から誘われ、週末の2日間、現地で指導して帰国するような動きが目立つようになってきたからです(VHSの初期にもあった話ですが)。

 さらに進んで、サムスン電子に移籍した研究者や技術者は、ほぼ3年間以内にサムスン電子を去る例が多いことから、サムスン電子は安住の地ではない、という主張があります。

 それでは、日本の大手電機メーカーは安住の地なのでしょうか。技術的な好奇心を満たしたり、力量を目一杯、発揮する場として、海外の企業よりも優れた場になっているのでしょうか。そうなっているのであれば、日本を選ぶ人が多いはずです。

 前回紹介した、日本で研究していた研究者がグーグルに移って、素晴らしい仕事をしているという話などは、本来は賞賛されることです。日本人の研究・開発者には、海外の企業に負けない優れた英知を持つ人材がいることの証明だからです。逆に言えば、日本企業が優秀な人材を使いこなせていないことの証明でもあります。

人材の輩出は「他社に友人が増えること」

 それでは、海外の企業からは人材は流出しないのでしょうか。そんなことはありません。むしろ、日本よりも流動性はずっと激しいです。

 IBMも人材の流出が激しい企業です。どんどん転職し、サンノゼやボストンなどに拠点を置く技術系の中堅企業の経営者には、IBMの出身者が数多くいます。特に、サンノゼのベンチャー企業には、IBMやアップル、旧サン・マイクロシステムズのいずれかの出身者に会わないことはないのでは、というくらい多い状況です。

 これらは人材の流出が多い企業ですが、こうした流出を論じる場合、日本のように他社に奪われたという視点ではとらえていません。むしろ、他社に「ビジネス上の友人が増えた」というとらえ方をします。完全に競合している企業に移った場合には、ストックオプションの権利を止めたりする程度です。

 日本の場合、人材の流動性に乏しいこともあるのか、こうした発想がなかなかできず、流出した、奪われた、引き抜かれたといった、被害者意識が強い印象です。仮に奪われたという意識を持つにしても、日本人の技術者が10人引き抜かれたのなら、それよりも優秀な米国人の技術者を30人、来てもらおうという発想をした方が、技術や企業の発展につながりやすいでしょう。

 金銭的なモチベーションについては、給与や税制のほか、企業に大きな利益をもたらした特許の出願者などに対する報酬なども指摘されています。例えば、1000億円の利益を稼ぎ出した技術なら、その基礎となる特許を発明した技術者や、活用した部署に10億円を分配して次の飛躍のために使ってもらうといった方法はあるはずです。

 IBMの場合、対象となる研究者や技術者が退職後であっても、IBMが他社に売却した特許で売却費を得たり、特許侵害などの訴訟による賠償金が支払われた場合、その特許の発明者にそれらのお金を分配します。私の元部下などは、IBMを退職して5年後に、IBMからかなりの額が支払われたことがあったそうです。

 これに対して日本の場合、すべての成果は社内で共同にて生み出したものと、個人の成果を小さくしたがる傾向が強いように見えます。

IBMが抱いた危機感

 ここで再び、IBMが現在のようなグローバル化する転機となった、GIE(Globally Integrated Enterprise)という概念を紹介しましょう。

 IBMでは、事業や地域を横断して経営資源を一元化し、真に統合されたグローバル企業をGIEと定義し、目指すべき姿としました。世界中に展開する拠点を統合して、最適化された1つの企業とし、活動しようとするものです。

 戦略や経営、事業をグローバル化するために、世界中のどこにでも、最もふさわしい場所に、それぞれの事業に必要な機能を分散していきました。そのようにして、適正な場所で、適正な時期に、適正な価格で、といった経営資源の最適化を目指します。

 そして、これらの事業をグローバルに統合し、すべてを連動させて動かしていきます。その中には、研究や技術といった知識に関わるものも含まれます。そこでは専門的な知識の集積や、オープン性を武器に競争する方針で、このようにして多国籍企業の集合から、グローバルに統合された企業に変身させようと考えたのです。

 ここまで割り切って、グローバル化を進めていった理由の1つは、やはり、人の問題にあります。IBMが必要とする優秀な人材を、想定通りには確保できなくなってきたのです。

 だからといって、サムスン電子が韓国内に開発を集中させているように、IBMの本拠地であるワトソン研究所など米国内だけに集める手法では実現が難しいと考え、世界の優秀な人材が多い拠点に、それぞれの拠点を置き始めました。インターネットでつながり、ITを使いこなすことで、そうした環境でも世界中で一体となった仕事ができるためです。

 インドのIT企業などは、IBMにとって重要なパートナーなのでしょう。IBMのインドの拠点よりも、インドの地場企業に優秀な人材が集まってしまう、といった状況が起きているのです。こうしたことから、世界の必要な場所に権限を移して、必要な人材を集めやすくしているようです。

 そのような動きの中で、日本は文字通り“素通り”されています。私が所属してきた企業では、IBMが大幅に研究開発機能を縮小するだけでなく、マイクロソフトもその傾向にあるなど、外資系企業が日本に研究開発拠点を持たなくなりつつあります。必要が無いと思われているのです。

 それなのに、日本企業には日本人の技術者ばかりを採用し、その人材を流出させず、海外の研究者にはできるだけ頼らないことを是とする風潮があります。ですが、このように世界の企業からは、日本に研究開発拠点を置く必要が薄いと思われているのです。

 そんな日本で、いくら日本の大手企業が競って日本の良い人材を採用したとしても、世界においては二流の人材かもしれません。やはり、優秀さを優先して採用すると、外国人の方が多くなってくるのは、自然な状況といえるでしょう。



http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130717/251214/?ST=print


 


 

 


 


 


 

9時間目 私のお金は、みんなのモノ!?

米国独立運動に影響を与えたジョン・ロックが説く貨幣論

2013年7月25日(木)  小川 仁志

<ゼミのメンバー>
小川先生:43歳、市民との対話をこよなく愛する哲学者。
兼賀大治:56歳、お金が一番大事だと思っている投資が趣味のサラリーマン。
大飯奈弥美:30歳、消費と貯蓄の間で揺れる独身のキャリアウーマン
新実三郎:35歳、知的で現実主義的なビジネスマン。
兼賀:いやー今日のゼミには間に合わないかと思った。

大飯:どこか行かれてたんですか?

兼賀:いや、最近親父が入院してね、今まで相続のこととか考えてなかったんだけど、ちょっと勉強しとかないとと思って税理士のところに相談に行ってたんだよ。

小川:今回の税制改正では、相続の基礎控除が大幅に引き下げられましたからね。

兼賀:それでうちもひっかかるんじゃないかと思ってですね。

大飯:お金がある人も苦労があるんですね。うちなんか相続財産なんて考えられないけど。

新実:そういえば、兼賀さんはお孫さんもいらっしゃるんでしょ?

兼賀:まだ生まれたばっかりだけどね。

新実:お孫さんへの教育資金の贈与については、1500万円まで非課税になったんですよね。

小川:これも安倍晋三政権の経済政策の1つです。若い世代にお金が回るようにする仕組みです。

大飯:そもそもそんなことするくらいなら、お金なんて貯めなきゃいいのに。むしろ自分の世代で使い切っちゃったほうがいいんじゃないですか?

貯めても腐らない

兼賀:ばかなこといっちゃいけないよ。お金ってのは貯めるためにあるんだよ。

新実:たしかに歴史的にはそうですよね。あえて貯めてても腐らないものを貨幣にしたんですから。

小川:そうですね。金・銀・銅といった金属は腐りませんからね。これらが出てくる前も、布や貝などがお金の代わりとして使われていたそうですから、やはり腐らないという要素は大事だったのでしょう。


ジョン・ロック(1632〜1704)。英国の哲学者。あらゆる観念は経験に基づくとする「イギリス経験論」を確立。『市民政府論』は1689年刊。
新実:『日経マネー』の2013年9月号で先生が書かれていたイギリスの哲学者、ジョン・ロックの貨幣論は、まさにこの話ですよね。

 食物などの自然物を蓄えていたころには、必要以上に貯めると腐らせるだけだったのが、お金の発明によっていくらでも貯められるようになったんでしょ。

小川:そうですね。ポイントは、それによってやはり社会もダメになってしまっているという点です。それは世の中の貧富の差を見れば明らかでしょう。

大飯:だから先生は、必要以上のお金は持たなくていい、貯めなくていいと主張されるんですね。

小川:あくまでロックの理論に従うと、そうなるはずだということです。

兼賀:でも、自分で稼いだお金は自分のものでしょ?

小川:ロックもそれは認めます。自分の労働によって生み出したものは自分の所有物だといっていますから。あるいは、自分の身体は自分の所有物ですから、身体を使って生み出したものも所有物となるのです。

腐らせるほどの所有は制限される

大飯:でもそれも無制限なわけではないでしょ? 他人の権利とかもあるわけだし。

小川:そこなんですよ。彼はこの原則にいくつかの制限を設けています。その一つが腐敗禁止による制限。先ほど新実さんが指摘してくださったとおりです。腐らせるほどの所有は制限されるのです。

兼賀:いいじゃないですか、自分で手に入れたものなんだから。

小川:それは人類共同の富を浪費することになりますから、そうはいかないのです。これに関連して、潤沢制限というのも設けています。ある人が自然物を私有化するとき、他のすべての人の分も十分残さないといけないという制限です。

兼賀:どうも納得いかないな。

小川:ただ、貨幣が発明されてからは、こうした制限はあまり意味を持たなくなります。腐ることもなければ、他の人の分まで所有するということが一見なくなりますから。

大飯:一見?

小川:貨幣はいくらでも作れますよね。だからいくら所有しても問題ないように思えるということです。ところが、実際にはその貨幣によって自然物を買い占めることもできるわけですから、その場合には腐敗禁止による制限にも潤沢制限にも触れることになるはずです。

新実:だからいくら貨幣が発明されても、やはり世の中をダメにするってことですね。

小川:近代以降の貧富の差は、どう考えても潤沢制限に反してますよね。それを認識していたからこそ、ロックは『市民政府論』を書いたのでしょう。

お金と政治と社会契約説

大飯:政治と貨幣に何か関係があるんですか?

兼賀:そりゃあお金のもめ事を解決するには政治の力が必要だよ。

小川:そうですね。腐らない富を蓄えることができるようになると、争いが生じますね。それをいかに平和裏に解決するかです。この点については、ロックははっきりといっています。

「人々が結合して国家をつくり、統治に服そうとする場合の大きなそして主な目的は、人々の所有物の保全である」と。

新実:いわゆる社会契約ですね。

小川:さすが新実さん。契約によって、人民から信託された権利を統治機関に委ねるという理論です。だから税金も取られるのです。

大飯:そこが変なんですよ。自分たちの所有権を守るために政府を作ったのに、税金をとられるなんて。

兼賀:それは手数料みたいなもんだよ。ただじゃ政府は運営できないから。

大飯:さすがにそれくらいはわかりますけど、好きなように増税されてしまうっていうのがどうも。さっきの相続税の基礎控除引き下げだって、実質的に増税でしょ。消費税は争点になるけど、ほかの税って知らないうちに上がってません?

小川:ロックの社会契約説によると、あまりひどい場合は抵抗権が認められていて、原理的にはノーといえるわけですが……。

お金と政府の関係

小川:大飯さんのお話を聞いていると、坂口恭平さんの『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書)を思い出しましたよ。

兼賀:独立国家? 革命家ですか?

小川:いいえ、普通の人です。本人は芸術家だとか建築家だとか称していますが。つまり、彼は土地にお金を払わなければならないことに疑問を持ち、震災をきっかけに独立国家をつくったのです。

大飯:そんなことできるんですか?

小川:それができるのです。コロンブスの卵とはこのことですね。避難民を募って国民とし、自ら新政府内閣総理大臣を名乗って勝手に政府を樹立したと宣言、領土には銀座で所有者不明の土地を当てました。国家に必要な国民、主権、領土のすべてをそろえてしまったのです。

新実:なるほど。これなら可能ですね。しかも芸術だといってしまえば内乱罪とか面倒なことにはならないだろうし。

小川:社会へのアンチテーゼだと思うのです。彼自身いっていることですが、震災があっても政府は結局ちゃんと国民を守ってくれるわけではないことがわかった。

「0円特区」の価値

 だから動いたんだと。そして憲法第25条で謳われた生存権を本当に保障するために、助け合いでお金がなくても生きていける仕組みをつくろうとしたのです。彼はそれを「0円特区」と名付けます。

大飯:所有者不明の土地を使うとか、助け合うとか聞いていると、なんだか本当にできそうな感じがしてきますね。

新実:何より、絶対だと思っていた貨幣の使用価値が無化されてしまうような、そんな痛快な感覚を覚えるね。

兼賀:いやーそりゃ革命だ。勘弁して欲しいな。

小川:恐らくそこまではいかないでしょう。でも、ロックが指摘したように、腐らない貨幣が発明されて、富の偏在が起こったとするならば、坂口さんが0円特区でやっていることは大変なことだといえますね。何しろ貨幣の意味をなくしてしまうことで、富の偏在を解消しようというのですから。

新実:そうなると政府の役割は、ロックが想定したようなお金にまつわる争いの解決ではなく、むしろ生存にかかわる問題の解決ということになりますね。

大飯:本来政府がするべきことはそっちですよね。

小川:近年やたら憲法を改正しようという動きがありますが、その前にきちんと憲法第25条を遵守するという発想が必要なように思えてなりません。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130718/251257/?ST=print

 

 


 


 政策理念と乖離するGNI目標

2013年7月25日(木)  永濱 利廣

 6月14日に閣議決定された骨太方針では、従来のGDP(国内総生産)に加えてGNI(国民総所得)が重要な指標として位置づけられた。GDPの目標については、今後10年平均で名目3%、実質2%程度の成長を実現するとし、民主党政権時代と変わっていない。しかし、名目・実質GNIについてはこれを上回る成長を目標としており、1人当たりGNIを10年後に150万円以上増加させるとした。

 GNIとは、かつて各国の富の測定に使われたGNP(国民総生産)と概念的に等しい。今では国内で生み出された付加価値の総額であるGDPが世界で一般的だが、これに企業や個人が海外から受け取った利子や配当などを加えたのがGNIである。つまり、GDPに利子や配当などの受け取り分から支払い分を引いた所得収支を加えたものがGNIとなる。そして、国民の豊かさを測る1人当たり所得は、国内所得ではなく国民所得のほうが適切としている。

 この背景には、グローバル化の時代にあって、海外から得られる所得が重要になっていることがある。長らく日本は経常収支が黒字を続けてきたことから、対外純資産が積み上がり、そこから得られる所得収支も増加してきた(図表1)。このため、GNIがGDPを上回る傾向が続いており、日本企業の海外進出がさらに増える傾向にあることから、海外からの所得が膨らむ期待が高まっている。

図表1「経常収支の推移」

(出所)財務省
 そして、安倍政権の思惑通りに年率2%程度の消費者物価上昇率を実現できれば、低めに出るGDPデフレーターの上昇率も1%に届く可能性が高い(図表2)。こうなれば、GDP成長率は仮に2%でも名目は目標の3%に届き、同時に企業の海外進出や人口減少が続くことになれば、1人当たりGNIの増加計画は達成可能となる。しかし、海外からの利子や配当等の大半を受け取るのは企業であり、企業が人件費を増やさないと、個人が実際に受け取る所得の増加は見込めない。

図表2「CPIとGDPデフレーターの関係」

(出所)総務省、内閣府
GNIが増えても家計が潤うとは限らない

 今回、1人当たり所得が150万円増えるという言い方をしているが、近年はGNIに占める雇用者報酬の比率は5割程度であり、企業が内外で稼いだ所得も含む。このため、GNIの構成比が変わらなければ、150万円増えたとしてもそのうち約半分が雇用者報酬に回ることになる。

 しかし、統計がさかのぼれる1994年第1四半期と直近の2013年第1四半期のGNIと雇用者報酬の変化額を比較すると、実質ではGNIが57兆円増加しているのに対し、雇用者報酬の増加は17兆円にとどまる(図表3、4)。そして、名目に至ってはGNIが8兆円減少しているのに対し、雇用者報酬は18兆円も減少している。これは、企業が内外で稼いだ所得の増加がGNIの拡大要因となっても、雇用者報酬が増えなかったために、経済成長と国民の景気実感との乖離につながってきたことを意味している。

図表3「GNIと雇用者報酬(実質季節調整値:兆円)」

(出所)内閣府
図表4「GNIと雇用者報酬(名目季節調整値:兆円)」

(出所)内閣府
 一方、安倍晋三首相は、意欲のある人たちに仕事を作り、頑張って働く人たちの手取りを増やすこと、つまり家計が潤うことが成長戦略の目指すところだと説明した。従って、これらの問題を解決するには、目標の打ち出し方を工夫する必要があろう。具体的には、1人当たりGNIに加えて、1人当たり雇用者報酬を政策目標にすることが望まれる。

拡大する非市場取引の割合

 ただ、こうした問題の解決によっても、民間の活力を重視する安倍政権の政策理念と政策目標との乖離が完全に解消されるわけではない。なぜなら、GDPやGNIでは景気と関係ない非市場取引を含むことや、モノやサービスの時価に価格調整や品質調整を施すなどの点があるからだ。

 まず、GDP統計では賃貸と自己所有の居住活動を整合的にとらえるため、自己所有の家でも家賃を払う想定で架空の帰属家賃を計上する。さらに、景気とは全く関係ない一般行政、教育、外交、警察、消防、司法などの政府消費も計上される。

 こうした非市場取引の割合は、日本の名目GDPではこの1994年第1四半期から2013年第1四半期にかけて6.2ポイントも拡大している。実質GDPがリーマンショック前の水準に近いところまで回復しているのに対し、非市場取引を除いた実質市場GDPは依然としてリーマンショック前の水準には程遠い回復にとどまっている(図表5)。つまり、90年代後半以降の実質GDPの増加は非市場取引の増大によるところが大きく、これが景気実感との乖離を生み出している。

図表5「実質GDPと実質市場GDP(季節調整値:兆円)」

(出所)内閣府
 また、モノやサービスの時価を集計した名目GDPに価格調整や品質調整を施したものが実質GDPであるが、こうした調整も景気実感との乖離をもたらしている。品質調整とは、例えばパソコンの単価が20万円で変わっていない場合でも、機能が2倍になっていれば価格は半値になったとみなす統計処理である。従って、機能が2倍になったパソコンの値段が変わらなくても、実質GDPでは2倍の付加価値額として計上される。

 しかし、向上したパソコンの機能をすべて使いこなしている利用者はどれだけいるだろうか。利用者が活用していない品質調整の分は、需要側から見れば架空の付加価値にすぎない。従って、品質調整も含んだ実質GDPは現実よりも過大推計され、景気実感と合わない一因になっている。

 以上の理由から、GDP統計に対する世間の期待と現実の間には大きなギャップがある。実際、名目GDPはリーマンショック以降に底打ち感が見受けられるが、非市場取引部分や価格・品質調整部分を簡便的に除去した名目市場GDPをみると、名目GDPよりも右肩下がりの傾向が強い(図表6)。つまり、人々の平均的な景気実感の水準は名目GDPの減少傾向すらも下回っている可能性がある。

図表6「名目GDPと名目市場GDP(季節調整値:兆円)」

(出所)内閣府
「市場GDP」をアベノミクスの政策目標に

 こうしたギャップを解消するには、統計を利用する側と作成する側の双方が理解を深める必要があろう。具体的には、GDP統計を景気判断のよりどころとする政策当局や企業経営者の意識を変える必要がある。GDP統計は非市場取引も含めた一国の経済活動水準を包括的にとらえるための国際基準統計であり、日本の景気を判断するには問題があると割り切るべきだ。こうした事情を理解している一部の市場関係者の間では、全産業供給指数を重視する向きもある。

 全産業供給指数は、消費、投資、輸出入といった各最終需要の動向を供給面から捉えた統計である。本統計は、供給側の指標である鉱工業出荷内訳表、鉱工業総供給表、第三次産業活動指数及び建設業活動指数を需要項目別に再集計して作成されることから、供給側から見たGDP速報値の性格を持ち、国内経済の動向を把握する上で重要な指標となる。

 本統計は経済産業省が作成しており、2カ月前のものが毎月20日頃に公表される。また、統計作成開始からの動きを見ても、実質GDPと似通った動きをしていることに加え、毎月公表されるため、毎四半期公表のGDPよりも景気動向の変動をより短いスパンで捉えることができ、経済の動きを早く知ることが出来るメリットがある。

 なお、実質GDPが名目値をデフレーターで割って算出していることで品質向上分も含んでいるのに対し、全産業供給指数では品質向上分を考慮しきれていない。このため、IT(情報技術)による技術革新が進む近年では、実質GDP成長率が品質向上でかなり押し上げられている可能性があり、相対的に全産業供給指数の伸びが低めに出ることになる(図表7)。

図表7「実質GDPと全産業供給指数」

(出所)内閣府、経済産業省
 また、実質GDPでは持ち家の帰属家賃など本来の生産活動ではない部分も含まれる。従って、企業の生産活動を基にした景気実感という観点からすれば、実質GDPよりも全産業供給指数の方が優れているといえる。

 ただ、GDP統計は国際的に見て最も標準的な統計であることからすれば、作成側としてもこうしたギャップを解消する努力が必要だろう。例えば、GDP統計のうち市場取引部分と非市場取引部分を区分し、市場取引部分を核にして世間の景気実感に近い「コアGDP」を作成・公表するといった工夫を検討すべきである。

 特に安倍政権では、“民間活力の爆発”を成長戦略のキーワードとし、民間の活力こそがアベノミクスのエンジンと強調しているのであれば、アベノミクスの成否を見る上では、市場GDPが最も理にかなった政策目標変数ではないだろうか。


http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130722/251387/?ST=print

 


 

 

JBpress>海外>Financial Times [Financial Times]
CDS市場にもアベノミクスが浸透
2013年07月25日(Thu) Financial Times
(2013年7月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 アジアで今年最もパフォーマンスの高い国債CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は何か? どこかの勢いのある新興国ではなく、古く、硬化した日本だ。今年1月以降、ほぼすべてのアジア諸国のCDS保証料率が上昇したのに対し、5年物日本国債をデフォルト(債務不履行)から守るコストは2割以上も低下した。

 これは大した指標にならないと言うこともできるだろう。何しろ日本は自国通貨建てで借り入れを行っており、992兆円に上る債務の大半をホームバイアスが強い国内機関投資家に売っている。こうした状況から日本の国債市場は信用格付け機関などの部外者の見解を一蹴する傾向があった。一部のCDSトレーダーが政府の支払い能力について考えていることに意味などあるのか?

 それでも、世界の先進国の中で最大の財政赤字を出し、対国内総生産(GDP)の債務比率が最も高い国では、こうした相場の動きには意味がある。

日本の信用度が向上、努力次第で財政を立て直すチャンス

 市場が伝えていることは、アベノミクスの結果、日本の信用度が高まったということだ。日本をデフレから脱却させようとする昨年12月以降の安倍晋三首相の取り組みは、円安をもたらし、企業と家計の心理を好転させただけではなかった。努力次第で国家財政を立て直すチャンスを日本に与えたのだ。

 だが、プライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の赤字を2015年までに半減させるという目標を達成するには、かなりの労力を要する。来年4月以降の消費税引き上げは、政府の大雑把な予想のギャップをある程度は埋めるだろう。だが、年金と医療の支出削減も不可欠だ。特別委員会は来月、詳細を示すと見られている。

 安倍首相にとっては、どれも簡単に売り込める対策ではない。だが、今もまだ2011年の震災からの回復途上にある東北の復興を賄うのを助けるために、公務員は昨年7〜10%の給与削減を受け入れ、今年も同水準の賃下げに直面する。少なくとも彼らは、模範を示して先導している。

By Ben McLannahan
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38299
 

 

 


 


 

JBpress>ニュース・経営>政治 [政治]
予想通りだった自民圧勝、
これから待ち受ける難しい舵取り
2013年07月25日(Thu) 筆坂 秀世
 参議院選挙は予想通り自民党の圧勝となった。最大の要因は、アベノミクスだ。株価の上昇、円安による好調な輸出など、少なくともどうにもならなかった日本経済の先行きに対し、「良くなりそうだ」という期待感を持たせることに成功した。

 政党はどの政党も様々な政策、公約を掲げる。原発を巡っても再稼働賛成と反対、脱原発と原発依存、TPP推進と反対、消費税増税賛成と反対、憲法改正推進と護憲等々のように。ある有権者が、すべての点で自民党の公約を支持する場合もあれば、そうでない場合もある。例えば原発再稼働には反対だが、アベノミクスには賛成するという場合もある。むしろこういうケースの方が多いだろう。

 つまり自民党を支持した人々は、「憲法改正には反対だが自民党に投票した」「TPPはよく分からないが自民党に投票した」という人々も少なくないはずだ。

 では、なぜ自民党に投票したのか。最大の要因は、アベノミクスによって経済が良くなりそうだという実感が生まれたからだ。

 誰でもそうだが、人々はシングルイシューで生きているわけではない。脱原発で飯が食えるわけではないのだ。結局、最後は経済に帰着していく。ここで少なくとも安倍自民党は、これまでのところ成功を収めてきた。選挙にとって、これほど強いものはなかったということである。アベノミクス批判をした野党もあったが、経済が回復しつつある現実の前には、撥ね返されるだけであった。

野党の責任は大きい

 選挙は予想通り自民党の圧勝となった。ここまで自民党の大勝を許したのは、野党がだらしないからだ。共産党が躍進したことは事実だが、野党全体で見た場合には、自民党、公明党連合に蹴散らされたというのが、今度の選挙の実相だ。

 与党は自民党、公明党という2党でがっちりスクラムを組んでいるのに、野党はと言えば、民主、みんな、共産、維新、社民、生活、みどり、大地など、名前も覚えられないぐらいにバラバラになっている。これでは自民党に対抗できるわけがない。野党の責任は大きい。

 投票率が50%を少し超えるだけになったのも、事前の世論調査で自民、公明が圧勝することが分かりきっていたからだ。かといって投票したい野党も存在しないということが、最大の要因だと思う。

 朝日新聞(7月24日付)掲載の世論調査によると「参院選で自民党が勝ったのは、自民党が評価されたからだと思いますか。野党に魅力がなかったからだと思いますか。」という質問に対し、「自民党が評価されたから」は17%、「野党に魅力がなかったから」というのが66%になっている。

「第3の躍進の波」の次は「第3の凋落の波」?

 そんな中で共産党だけが、野党の中で唯一躍進を果たした。志位和夫氏が委員長になってから負け続けの国政選挙で15年ぶりの躍進だ。維新の会やみんなの党と違って、明確な「反自民」という立ち位置だったことが大きい。

 共産党は「自共対決」が選挙の構図だと訴え、これが躍進の要因だとしている。半分は正しい。政治的立場は、間違いなく自民党と共産党は対決しているからだ。だがあまりにも力の差がありすぎる。躍進したとは言うものの11議席になっただけのことだ。弱小野党であることに変わりはない。

 もともと民主党を離れて、行き場を失った票が共産党に一時的に流れてきたに過ぎない。「しんぶん赤旗」の部数減や党員の高齢化など、党勢の低迷からはまったく脱していない。共産党は確かに組織政党ではある。それによる支持獲得もあるが、この20年ぐらいの選挙を振り返ってみると、いつも風まかせの選挙であった。この風が低迷する野党が多い中でたまたま共産党に吹いたということだ。

 共産党はこの躍進を70年代、90年代に次ぐ「第3の躍進の波」だと狂喜しているが、第1の波の後も、第2の波の後も、長い凋落の時期が続いた。野党の現状からすれば、しばらくはこの風が吹く可能性が高いが、風はいずれ止む。そのあとは「第3の凋落の波」が来るということなのだろうか。

 そもそも第1の波とか、第2の波とか言えるのは、前の波の勢力を維持し、さらに躍進の時期が来た時に言うことだ。だが現実には、「第2の波」にしろ、「第3の波」にしろ、いくらか勢力を取り戻したというだけのことだ。こんなものは波とは言えない。

一強多弱の体制下で

 自民党圧勝の結果、一強多弱体制が出来上がった。おそらく今後3年間は、国政選挙はないだろう。安倍政権はじっくり腰を据えて、アベノミクス、TPP、憲法改正などに取り組んでいくと思う。

 安倍晋三首相は、まずは経済を成長の軌道に乗せることに全力を尽くすことを表明している。憲法改正に前のめりにならずに、まずは経済という選択は正しい。国民もそこに一番期待を寄せているからだ。

 他方、民主党や維新の会やみんなの党から、またぞろ野党再編の声が上がり始めている。確かに巨大与党連合に対抗できる野党が存在しないというのは、政治から緊張感をなくす危険性も含んでいる。だがこれも民意の結果だと受け止めるしかあるまい。

 この20年間、様々な政党の合従連衡が繰り返されてきた。だが民主党は分裂し、政党としての存立すら危ぶまれている。維新の会やみんなの党も、完全に勢いはなくなった。自民党が大失政をしない限り、野党が存在意義を高めることは容易なことではない。

 非生産的な野党再編に憂き身をやつすより、それぞれの党が地力をつけ、真摯に国政に取り組む姿を国民に見てもらうことに力を集中した方がよい、と進言したい。そもそも野党再編をリードできるような野党政治家も存在しないのだから。

憲法改正が現実味を帯びてきた

 今度の選挙結果によって、安倍政権が悲願とする憲法改正が現実味を増してきたことは疑いない。国防軍の創設や集団的自衛権問題、天皇元首化や国民の権利・義務の問題など論点は多々ある。私は改憲に反対ではない。憲法は一切いじってはならない、などということはあり得ない。時代とともに、より良い憲法を模索することは当然のことである。

 ただいつも思うことだが、改憲派も、護憲派も、門前払いのような議論ではなく、それぞれの政党、政治家が冷静で、国民にも分かるような真面目な議論がなされることを期待したい。

 今現在は、安倍政権は96条の改正を先行させる意向のようだが、これも最終的には国民投票にかけられることになる。護憲派の人々は96条改正に反対しているが、一度、国民投票というものを体験することも悪くはないのではないか、と思う。

 安倍首相は、これらの問題についてじっくりと検討し、議論するとしているが、ぜひそうしてもらいたい。拙速は、禁物だ。

安倍政権が対峙するのは誰か

 独り勝ちとなった自民党政権の下で、有力な野党は存在しなくなった。

 つまり国会議事堂の中では、与党に対峙する勢力はいなくなったのも同然ということである。これからの政治は、国会の中だけを見ていては分からないこともあるということだ。

 安倍政権が対峙するのは、国民の声である。もちろんこれは、初めから対決関係にあるという意味ではない。憲法改正にしろ、アベノミクスにしろ、TPPや消費税増税にしろ、いずれも国民の支持をどう取り付けながら進めるかということが問われてくる、という意味だ。

 例えば憲法改正だ。今回の選挙によって、憲法改正が支持されたというわけではない。安倍首相もこれを前面に押し立てたわけではなかった。自民党支持者の中にも、いわゆる保守の中にも、「憲法9条を守りたい」という人はいる。国民の中にも護憲を願う人は決して少なくない。憲法改正というのは簡単なことではない。この国民を納得させるだけの論理や理由を構築しなければ、容易には進まないであろう。

 またアベノミクスは、いまのところ上手く回転しているが、雇用環境が劇的に改善されたわけではない。ブラック企業問題など、人間としての尊厳を貶めるような劣悪な雇用環境も増加しつつある。一歩誤れば大爆発しかねない危険性を秘めているように思う。

 いずれ団塊の世代が後期高齢者に突入していくが、深刻な財政危機の中でどう社会保障制度を保持していくのか、ほとんど回答がないという深刻な事態もある。

 政治の世界は、自民、公明の圧勝で安定したかもしれないが、経済や国民の生活の安定が実現したわけではない。安倍首相の舵取りが、今後、国民の厳しい監視にあることを忘れないでもらいたい。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38306
 


 

 

 
長期国債買い入れ、市場参加者は「今の枠組みを支持」=日銀幹部
2013年 07月 24日 18:36 JST
[東京 24日 ロイター] - 日銀は24日夕、4月の量的・質的緩和以降、定期的に実施している市場参加者との意見交換会を開いた。会合では、焦点の長期国債買い入れについて、今の枠組みを支持する声が多かったという。

会合後、日銀幹部が記者団に明らかにした。同幹部によると、会合には銀行や証券会社の市場調節先36先36人、生損保や年金、投信などの機関投資家21先21人の計57先57人が参加。最近の市場動向などについて議論した。

焦点の国債買い入れの運用に関しては、「だいぶうまくまわっている」との声が大半を占めたという。日銀は4、5月に国債市場の動きが荒れた反省から、6月以降は1回あたりの買い取り額を減らし、回数を増やすなどの弾力的な運用に踏み切った。「当面は、この枠組みでいいのではとの意見が多かった」としている。

一方、日銀の佐藤健裕審議委員が22日の講演で、日銀が買い入れている国債の平均残存期間について、政策で定められた6年を一時的に割り込んでも構わない、との見解を示したことへの意見はなかった。
 


 


 
政府は景気「回復」明言に二の足、日銀との一体感にずれ
2013年 07月 24日 19:09 JST
[東京 24日 ロイター] - 足元景気の回復基調が鮮明になってきたにもかかわらず、政府が景気の「回復」を明言することに二の足を踏んでいる。

明確な景気の好循環メカニズムがまだ見られないためだが、異次元緩和を続ける日銀は政府よりひと足先に「回復」局面入りを宣言。安倍政権の発足以降、政策の一体感を常に強調してきた両者の間に微妙なずれが生じている。

政府の景気に関する公式見解となる月例経済報告。23日に公表した7月分では、基調判断を「着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる」として、3カ月連続で上方修正した。月例の基調判断に「回復」の文言が入るのは10カ月ぶり。昨年9月に「世界景気の減速等を背景として、回復の動きに足踏みがみられる」と表現して以来だ。

政府が基調判断に「回復」を復活させたのは、国内景気に「支出・生産・所得の好循環の芽が出てきた」(甘利明経済再生担当相)ことが理由だ。輸出の持ち直しに加え、消費・公共投資など内需の好調を背景に、生産が緩やかに増加し、企業の収益環境も次第に改善。さらに、遅れていた設備投資の一部に動きが出てきたことで、景気の循環メカニズムが少しずつ起動し始めたととらえた。

しかし、政府内では依然として「回復」局面入りの判断には慎重論が大勢で、今回の表現変更後も「回復しているとは言ってない」(内閣府幹部)と及び腰。一部で動き始めたが広がりに欠ける設備投資や、安倍晋三首相の意向を受けて経済界が対応を始めた賃上げの後も、賃金・所得の上昇が持続的となるかが、今後の「回復」を左右する鍵になるという。

一方、日銀は今月11日の金融政策決定会合で、景気判断を「緩やかに回復しつつある」として、2年半ぶりに「回復」局面入りを宣言済み。政府の月例では「緩やかに回復しつつある」との表現は、昨年8月を最後に消えたままだ。

政府関係者は「ニュアンスの違いだけ。基本的な判断は同じ」と説明するが、安倍政権の発足後、共同文書までまとめて一体感を演出した政府・日銀の間にずれが生じるのは珍しい。今後、両者の認識のずれが次第に広がれば、秋の消費税引き上げや今後のデフレ脱却をめぐる判断などにも微妙な影を落としかねない。

(ロイターニュース 基太村真司:編集 石田仁志)


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