01. 2013年7月22日 17:58:45
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圧勝の安倍自民、市場は期待半分で 国債残存期間の一時的短縮、佐藤日銀審議委員が前向き 2013年 07月 22日 16:50 JST [福島 22日 ロイター] - 日銀の佐藤健裕審議委員は、日銀が買い入れている国債の平均残存期間が、政策で定められた6年を一時的に割り込んでも構わないとの見解を述べた。30年債などの超長期債を生保などから買い入れるのは難しい上、国債市場の安定には中短期債の金利安定が重要なためだ。残存期間の長期化は4月の導入直後は金利不安定化の要因ともみなされただけに、日銀の金利安定化に向けたメッセージと受け止められそうだ。 佐藤委員は22日午前中の講演で、日銀の国債買入について「1─5年の中短期ゾーンを厚めに買い入れることで、利回り曲線全体の安定化を図ることが期待できる」とし、買い入れ平均残存期間が「結果として一時的に6年を多少割り込むことがあっても、私個人の見解としては問題ない」との認識を示した。 午後の記者会見では、この点に関連し「期間3─5年の中短期金利が安定すれば、利回り曲線全体が安定化するため」と説明。政策で目標とする残存期間に6−8年と幅があるのは「生命保険や年金基金など機関投資家が保有する超長期債を日銀が買い入れるのは実際上難しい面もあるため」との見方を示した。 日銀は4月4日に資金供給量(マネタリーベース)を2倍に引き上げる異次元緩和を導入した際に、買い入れる国債の残存期間の長期化(3年弱から7年程度)も打ち出した。「2年」で物価「2%」を達成するため資金供給量を「2倍」にする、とのキャッチコピーに結果的に平仄を合わせたように、残存期間も2倍に伸ばした。「国債発行残高の平均残存期間が7年だから」と日銀は説明している。 ただ、円債市場では、日銀が期間の短い国債の買入れを減らすとの思惑などから長期金利上昇の一因となったとみられている。日銀内でも、残存期間の2倍延長は理論的根拠がやや弱いとして、必ずしも重視しない幹部もいる。 実際、安倍晋三政権の経済政策を支えるリフレ派は、マネタリーベース拡大で人々の期待を通じて物価を引き上げるとのロジックを中核に据えるが、日銀が買い入れる国債の残存期間については細かく主張していない。 リフレ派の代表的な論客である岩田規久男副総裁の著書にも、中央銀行の保有国債の年限と期待インフレ率については細かい論考は示されていない。 6月以降、円債市場はなぎのように安定しており「もう少し変動率が欲しい」(金融機関)との声まで聞かれ始めたが、「市場が縮小しただけで、何らかのショックで金利が急上昇するリスクはある」(銀行)との見方が多い。 佐藤委員は金利上昇局面で日銀が機動的に動く姿勢を強調することで、市場の安心感醸成を狙ったとみられる。 (ロイターニュース 竹本 能文 編集; 田巻 一彦)
国債残存期間の一時的短縮、佐藤日銀審議委員が前向き 2013年 07月 22日 16:50 JST [福島 22日 ロイター] - 日銀の佐藤健裕審議委員は、日銀が買い入れている国債の平均残存期間が、政策で定められた6年を一時的に割り込んでも構わないとの見解を述べた。
30年債などの超長期債を生保などから買い入れるのは難しい上、国債市場の安定には中短期債の金利安定が重要なためだ。残存期間の長期化は4月の導入直後は金利不安定化の要因ともみなされただけに、日銀の金利安定化に向けたメッセージと受け止められそうだ。 佐藤委員は22日午前中の講演で、日銀の国債買入について「1─5年の中短期ゾーンを厚めに買い入れることで、利回り曲線全体の安定化を図ることが期待できる」とし、買い入れ平均残存期間が「結果として一時的に6年を多少割り込むことがあっても、私個人の見解としては問題ない」との認識を示した。 午後の記者会見では、この点に関連し「期間3─5年の中短期金利が安定すれば、利回り曲線全体が安定化するため」と説明。政策で目標とする残存期間に6−8年と幅があるのは「生命保険や年金基金など機関投資家が保有する超長期債を日銀が買い入れるのは実際上難しい面もあるため」との見方を示した。 日銀は4月4日に資金供給量(マネタリーベース)を2倍に引き上げる異次元緩和を導入した際に、買い入れる国債の残存期間の長期化(3年弱から7年程度)も打ち出した。「2年」で物価「2%」を達成するため資金供給量を「2倍」にする、とのキャッチコピーに結果的に平仄を合わせたように、残存期間も2倍に伸ばした。「国債発行残高の平均残存期間が7年だから」と日銀は説明している。 ただ、円債市場では、日銀が期間の短い国債の買入れを減らすとの思惑などから長期金利上昇の一因となったとみられている。日銀内でも、残存期間の2倍延長は理論的根拠がやや弱いとして、必ずしも重視しない幹部もいる。 実際、安倍晋三政権の経済政策を支えるリフレ派は、マネタリーベース拡大で人々の期待を通じて物価を引き上げるとのロジックを中核に据えるが、日銀が買い入れる国債の残存期間については細かく主張していない。 リフレ派の代表的な論客である岩田規久男副総裁の著書にも、中央銀行の保有国債の年限と期待インフレ率については細かい論考は示されていない。 6月以降、円債市場はなぎのように安定しており「もう少し変動率が欲しい」(金融機関)との声まで聞かれ始めたが、「市場が縮小しただけで、何らかのショックで金利が急上昇するリスクはある」(銀行)との見方が多い。 佐藤委員は金利上昇局面で日銀が機動的に動く姿勢を強調することで、市場の安心感醸成を狙ったとみられる。 (ロイターニュース 竹本 能文 編集; 田巻 一彦)
追加緩和手段、微調整から大幅なものまで幅ある=佐藤日銀審議委員 2013年 07月 22日 15:10 JST [福島 22日 ロイター] - 日銀の佐藤健裕審議委員は22日午後に福島市で会見し、追加緩和の選択肢について「微調整から大幅なものまで幅がある」とし、日銀は新たに大胆な追加緩和を打ち出せないとの見方をけん制した。
佐藤委員は午前中の講演で「予期せざるテールリスクなどが顕在化すれば臨機応変に政策を微調整することを排除しない」と指摘。会見では「将来の緩和手段については差し控えたい」としつつ、「取り得る政策手段はまだあり、微調整から大幅なものまでかなり幅がある」と強調した。 講演で日銀が買い入れる国債の平均残存期間を、4月導入の異次元緩和で定めた6─8年より、一時的に短期化しても問題がないとの見解を示した理由については、「期間3─5年の中短期金利が安定すれば、利回り曲線全体が安定化するため」と説明した。 政策で目標とする残存期間に6─8年と幅があるのは、「生命保険や年金基金など機関投資家が保有する超長期債を、日銀が買い入れるのは実際上難しい面もあるため」と説明した。 参院選での与党圧勝により、2年で2%の物価目標達成するとの「アベノミクス」が信任を得たのでは、との質問に対し、「2%目標は諸外国と同様に柔軟な枠組みであるとの認識は、政府ともある程度共有されている」説明。雇用や賃金の改善を伴う健全な経済の発展が重要との見解を繰り返した。 日銀の大胆な金融緩和は「まかり間違えば財政ファイナンス(穴埋め)との見方が多い」ため「政府の財政健全化努力が非常に大事」と強調。「消費増税は大事なステップで、その帰趨(きすう)を非常に注目している」と述べた。 (竹本 能文;編集 田中志保)
慢心を警戒 2013年 07月 22日 15:15 JST [東京 22日 ロイター] - この先3年間の安定基盤を手に入れた安倍晋三政権の行方を金融マーケットは冷静に見極めようとしている。いったんイベント通過の株売り・円買いが出ているが、政策推進期待が途切れたわけではない。
参院選勝利の実績を追い風に成長戦略などを実行段階に移すことが期待されている。懸念は自民党内に慢心が生まれ、経済第一主義が後退。かつてのような派閥政治に戻り、安倍政権が既得権者の壁を前に立ち往生することだ。また、政策の重心を経済から安全保障、憲法改正に移すのではないか、との疑念も根強くある。 <いったん材料出尽くし> 負けもせず、勝ちすぎもせず──21日投開票の参院選における与党勝利の「度合い」は材料出尽くし感が出やすい結果となった。自民党が65議席を獲得、公明党と合わせ参院の過半数の議席を確保し、衆議院と参議院の多数派が異なる「ねじれ」は解消されたが、自民単独で過半数を超える72議席には届かなかった。自民単独過半数ならサプライズだったが、予想通りの結果に「短期筋を中心に、それまで積み上げてきた円安・株高ポジションをいったん巻き戻す動きが出ている」(国内証券)という。 ただ、あくまでポジション調整の範囲内で、「ねじれ」を解消し政策を進めやすくなった安倍政権への期待感はあらためて強まるとの見方が多い。「株式市場にとってポジティブな材料であることは確かで、外国人投資家は衆参のねじれ解消を評価してくるのではないか。今後、ロングマネーなど腰の据わった海外資金が日本株に流入してくるとみられる」(マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏)という。実際、22日の市場でも円高で輸出株はやや弱いが、「アベノミクス」を享受している内需株は堅調だ。 自民党が単独過半数を獲得するような圧勝なら先送りの可能性も出てくると懸念されていた来年4月の消費税増税についても、「適度な」勝利で懸念は後退している。10年長期金利は5月14日以来となる0.785%に低下。「中期財政計画を策定し、実質的に消費増税などが決定され、債券市場の安心感につながる結論が出るとみている」とJPモルガン証券チーフ債券ストラテジストの山脇貴史氏は話す。消費税増税が景気に悪影響を与えるおそれもあるが、金利の安定は経済成長に欠かせない。 <求められる早期の政策実行> 市場が懸念するのは、単独過半数までには至らなかったとはいえ、圧倒的な議席数を獲得し、最低でも3年間の安定政権を手に入れたことで、安倍政権がこれまでの経済第一主義を捨て、憲法改正などにまい進してしまわないかという点だ。憲法改正を進めるためには経済の安定が必要であるからこそ、経済第一主義は継続されるとの見方もあるが、「3年間は結構長い。(株高による)見せかけの景気回復が続けば、どう変わるかわからない」(国内証券)と疑いの目は晴れない。 第1、2の矢である金融緩和や財政支出については反対が少なかったが、第3の矢である成長戦略は医療や農業など既得権益に切り込むことが必要になる。「表向きは経済第一主義の看板を掲げていても、中身が伴わなければこれまでの政権と同じになってしまう。既得権者の抵抗に逆らってでも、政策実行に必要な法案の整備や思い切った予算を付けることができるのか、憲法改正などだけに注力してしまわないか、市場は見ている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏)という。 日銀による上場投資信託(ETF)の購入増額を期待する声も株式市場にはあるが、投資家が本当に期待するのは成長戦略などを実行段階に着実に移していくことだ。 派閥や既得権益からの抵抗を抑え、政策を実行していくには、高い支持率が必要になるが、ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏は、そのためには株高を維持することだと指摘する。「個別の政策がそれほど動いていないなかで消費主導で景気が持ち直しているのは株高のおかげだ。株価が下落し支持率が低下すれば自民党内での派閥も再び動き始める。株高の維持が安倍政権のカギを握る」という。 日本経済が堅調だとしても、世界経済は依然不安定であり、海外からの売りが押し寄せる可能性がある。米国経済は堅調だが、量的緩和策(QE)の縮小がどういう形で影響が出てくるかは不確実性が大きい。中国の構造改革は中期的には歓迎される動きだとしても、信用収縮が続けば、短期的には混乱も予想される。安倍政権に与えられた3年間は長いようで短い。株高基調が続いている間に、政策を早期に実行していくことが求められている。
参院選で「ねじれ」解消、今後の市場の焦点:識者はこうみる 2013年 07月 22日 11:24 JST [東京 22日 ロイター] - 参院選で自民、公明の与党が過半数を獲得し、衆議院と参議院の多数派が異なる「ねじれ」が解消した。今後は与党ペースで政策が進むことになるが、財政健全化目標を具体化する「中期財政計画」の策定をはじめ、消費増税の判断や環太平洋連携協定(TPP)交渉、社会保障改革など課題は山積している。 市場関係者の見方は次の通り。 ●ねじれ解消を海外勢は評価、今後は企業業績に視点シフト <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏> 参院選の結果はほぼ事前予想通りとなり、サプライズはない。ただ株式市場にとってポジティブな材料であることは確かで、外国人投資家は衆参のねじれ解消を評価してくるのではないか。今後、ロングマネーなど腰の据わった海外資金が日本株に流入してくるとみられる。 選挙を無事通過したことで、今後は企業業績に市場の視点がシフトしてくるだろう。良好な業績を背景に、夏場にかけて日経平均1万5000円台の回復が見込まれる。ただ米金融政策の動向や消費増税の行方、自民党内部での抵抗勢力など日本株を停滞させる要因も想定され、一段の上値を買い込むには難しいだろう。秋以降は実際にどういう政策が出てくるかに注目している。 ●消費増税など政策面の議論が今後の焦点 <JPモルガン証券 チーフ債券ストラテジスト 山脇貴史氏> 選挙結果は、ほぼ事前のメディア予測に沿った結果となり、市場の動きは限定的だろう。インプリケーションはなさそうだ。短期的には株価の方向性が注目され、海外投資家のセンチメントがポイントになるだろう。政策面では選挙前には議論が避けられていた財政再建・消費増税などの政策が進められるだろう。中期財政計画を策定し、実質的に消費増税などが決定され、債券市場の安心感につながる結論が出るとみている。一方で、成長戦略・規制緩和に関する議論が再び本格化するのは秋となる見込み。10年最長期国債利回り(長期金利)は0.700─0.800%のレンジで推移することを想定している。日銀の緩和が継続するため、需給面では締まりやすいほか、グローバル経済はさほど良いわけではないので、年後半に下振れするリスクも想定できる。円債金利は下がる方向でみている。 ●3本目の矢はドル/円の材料にならない <ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト 村田雅志氏> 各メディアの予測通りの結果で、相場には織り込み。「噂で買って事実で売る」のように、ドル売り/円買いのきっかけになってしまった。 期待で円を売る局面ではないとみている。行き過ぎた量的緩和(QE)縮小観測に対してバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が火消しに回る中で、ドル/円は上値が重いとみておいていいのではないか。 安倍政権も100円を超えて105円といった円安を望むわけではないだろう。今回のG20で海外当局から円安について言及がなかったのも、現在の水準だからであって、ここからさらに円安が進めば苦情が出やすいだろう。 アベノミクスの3本目の矢(成長戦略)は時間のかかる政策。否定するわけではないが、1本目、2本目と違って結果を確認するにも時間がかかる以上、マーケットは織り込めない。3本目の矢はドル/円の材料として考えるべきではないと思っている。 円売りを期待したいのであれば、消費税引き上げが本当にできるのか、財政問題について改善方向に安倍政権は舵を切れるのかに注目すべき。それによって円債利回りが低下すれば、ドル/円が動くかもしれない。 ●党内調整で政策展開てこずる可能性 <ニッセイ基礎研究所 経済調査室長 斉藤太郎氏> 参院選での与党圧勝による「ねじれ国会」解消で、従来よりは政策展開が進みやすくなる面もあろうが、そう何でも簡単にはいかない可能性もある。これまでは、安倍首相の再登板でもあり参院選挙も近かったために、与党内がまとまってアベノミクスに賛同する形で進んできたが、選挙後はアベノミクスとは異なる考え方が表に出てきて、与党内調整が難しくなることがあるだろう。 消費増税については、安倍首相自身、リフレ派学識経験者の影響により本音では先延ばししたいのだろう。が、少なくとも1回目については実施が決まっていることなので、海外経済が相当厳しくなったり株価が下落しない限り、税率引き上げに踏み切る可能性がある。しかし2回目は、党内からも景気との兼ね合いから調整が難しくなるかもしれない。また、社会保障への切り込みも景気への影響が大きく、そう簡単ではないだろう。 金融政策については、与党内に追加緩和に反対する意見はほとんどないため、実際に物価が上がらない時には、次なる緩和はすんなりと通るとみている。 外交面では、安倍首相が中韓関係などで強硬姿勢を主張する場面があるとしても、かつての自民党から比べれば、党内である程度の抑制がきくものと予想している。 ●ファンダメンタルズへの後押しが一段と強まる可能性 <第一生命経済研究所 主席エコノミスト 熊野英生氏> 米国の金融緩和見直し議論が始まり、世界的な資金移動、特に株式投資は、先進国の中でどの国の実体経済がよくなるのか、という見方が左右する状況になっている。そうした中で、各国がどのような政策的なテコ入れや構造改革を行っていくかが、より重要性を増しており、今回の参院選結果における「ねじれ国会」の解消もそういう位置づけでみるべきだ。安倍政権は、税制改正議論やTPP(環太平洋連携協定)交渉など評価が分かれる政策について、参院選前から前倒しで積極的に取り組む姿勢を示している。これらはアベノミクスの強化をねじれ国会が解消したという環境の下で進めていくことになり、政権のファンダメンタルズに対する後押しが、より強まっていくとの見方になるだろう。 消費増税の判断は最大の難関だと思う。日本の財政問題は欧州よりも深刻かもしれないが、欧州のように財政問題が経済の足を引っ張る状況にはなっていない。成長戦略の次には財政運営について消費税率を引き上げるという決定打を打つとのバランスによって、どうにか財政問題を切り抜けられるのではないかという楽観的なシナリオが今は実現しているかたちだ。海外投資家がアベノミクスを好感し、改革のイメージづくりがうまくいっているにもかかわらず、仮に消費増税の先送りや撤回ということになれば、そうした図式が瓦解する恐れがある。
アングル:ねじれ解消で問われる政権の真価、痛み伴う政策実行が課題 2013年 07月 22日 09:38 JST [東京 22日 ロイター] - 参院選で自民、公明の与党が過半数を獲得し、衆議院と参議院の多数派が異なる「ねじれ」が解消した。今後は与党ペースで政策が進むことになるが、財政健全化目標を具体化する「中期財政計画」の策定をはじめ、消費増税の判断や環太平洋連携協定(TPP)交渉、社会保障改革など課題は山積している。
痛みを伴う政策を実行し、これらの課題を前に進め、経済中心の政策でデフレ脱却を実現することができるのか、安倍晋三政権の真価が問われるのはここからだ。 <巨大与党に3年の猶予> 自民、公明の与党が参院選で圧勝してねじれを解消した結果、安倍首相が衆院を解散しなければ、次の参院選までの3年間、国政選挙がない可能性が高まった。国政選挙への影響を考えずに思い切った政策展開を実行できるフリーハンドを安倍政権は手にしたと言える。 その政治的なパワーをどのように活用するのか──。21日夜の報道各社の質問に対し、安倍首相は「強い経済を取り戻す。まずそこに集中したい」と発言した。強い経済力を取り戻すことが、安倍政権にとって引き続きメインテーマとなる。 まず、8月に中期財政計画を策定し、財政健全化への道筋を具体的に示すことが最初のハードルとなる。2015年度の基礎的財政収支の対国内総生産(GDP)比赤字幅を2010年度比で半減する目標に向け、消費増税を予定通り実施できるかが最大の試金石となる。 また、8月には社会保障制度改革国民会議が報告書をとりまとめる。社会保障費への切り込みでは、70─74歳の高齢者の医療費窓口負担を本則の2割に戻すなど、痛みを伴う政策を実行に移せるかがポイントとなる。 さらに環太平洋連携協定(TPP)交渉や公務員制度改革での内閣人事局設置など、与党内に抵抗がある改革について、政治主導を貫くことができるのかどうかも、政権の姿勢を試すカギとなる。 参院選の勝利で古い自民党の利益誘導型体質が復活するとの懸念もあるが、政治評論家の有馬晴海氏は「民主党政権の失敗が自民党の砥石(といし)になっている」と指摘。党内の意見対立で政策を前に進めることができなかった民主党と同じ轍を踏まないよう、参院選後も自民党内で反安倍の動きは出にくいとみている。 <消費増税、経済状況を総合的に判断か> 消費税の判断については「税収が減っては元も子もない」(安倍首相)との立場も明確だ。すでに消費税引き上げの駆け込み需要の反動が出てくる来年4月の経済状況が「重要な問題」(麻生財務相)との認識が、政府内にもある。麻生財務相は、来年度の予算編成で4月の落ち込みに配慮する考えを示している。 成長戦略に絡めて、秋の臨時国会では補正予算の議論も浮上する可能性がある。その際に投資減税のほか、景気の落ち込みへの対応も含めて補正予算を編成し、消費増税判断を担保するという考え方もあり得る。 消費増税の判断のカギとなる経済状況では、4─6月のGDPが8月12日に発表される予定。こうした数字に加え、その後の経済対策も含めて総合的に判断することになりそうだ。 麻生財務相は、20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁後の記者会見で、来年4月に上げる方向で予定通りやりたいとの考えを示している。安倍首相は21日夜のテレビ番組で消費増税の判断時期について「しっかりと秋に判断していきたい」と述べた。 政府内では消費増税に伴う景気の落ち込みを懸念して、デフレ脱却までは先送りしてもいいという考え方もある。内閣官房参与の浜田宏一米エール大学教授は「消費増税による日本経済へのショックはかなり大きい」と指摘。また、景気への影響を軽減するためには、補正予算編成より、法人実効税率引き下げで景気を刺激するのがいいと述べている。 <注目される靖国参拝の判断、G20首脳会議で財政健全化を説明へ> 参院選後の政権運営では、8月が大きなポイントになりそうだ。1つには8月15日に安倍首相が靖国神社に参拝するかどうかだ。前回の首相在任時に参拝できなかったことを「痛恨の極み」と表現してきた首相だが、中国、韓国との関係が万全でない中で、参拝への判断が注目されている。 駿河台大学教授の成田憲彦氏は「日中、日韓関係は今がボトムだから、長期政権を見据えて、行くなら今だというシナリオが自民党内にある」と指摘する。長期政権を前提に関係の立て直しに時間をかけられるという読みだ。 ただ、このケースでは中国、韓国から強い反発を招くリスクがあるほか、米国からも懸念が示される可能性がある。一方、参拝しなければ、保守派の支援者から批判が出る可能性もある。 9月にはロシアでG20首脳会議が行われる。今年6月の主要8カ国(G8)首脳会議では、日本に対し、信頼できる中期財政計画が必要と指摘されており、安倍首相は財政健全化の取り組みについて説明することになる。 IMFは今月9日の世界経済見通し発表の際、アベノミクスについて「世界経済へのリスクになり得る」と指摘した。麻生財務相はG20財務相・中銀総裁会議で「9月のサミット(G20首脳会合)までに国際社会の期待に応えられるような信頼に足る中期財政計画を策定すべく取り組んでいきたい」と述べている。 <党役員人事・内閣改造の可能性、秋の臨時国会で投資減税> 9月末には自民党役員の任期が来るため、党三役の一部を入れ替え、内閣改造に踏み切るとの観測がある。甘利明経済再生担当相は6月、党人事と政府人事を一緒にやるとの見通しを示していた。 ただ、安倍首相は21日夜のテレビ番組で人事について「政策課題を前に進めていってほしいというのが国民の声だ。そのことを勘案して考えたい」と述べるにとどまった。10月に召集される臨時国会は、現在の閣僚で臨むとの一部報道が21日夜にあったが、実施されても小幅な改造にとどまるとの見方が出ている。有馬氏は「基本的に大きく変える必要はない。あっても3、4人ではないか」とみる。 党役員人事では原発再稼働に関する発言で批判を浴びた高市早苗政調会長が交代するとの見方も出ているが、駿河台大学の成田教授は「政調会長に誰がなるかは、今後の(政権の)スタンスを占う上でポイントになる」とみている。 10月上中旬に召集される予定の「成長戦略実行国会」では、「産業競争力強化法案」が提出され、投資減税を柱にした追加策を打ち出していくとみられている。 <安倍アジェンダより経済、株価が政権を左右> 憲法改正については当面は「無理しない」(政治評論家の屋山太郎氏)との見方が強い。駿河台大の成田教授も「(政権運営の)原動力は経済であり、端的に言うと株価だ」と指摘。「株価を無視して安倍アジェンダに走ることはない。安倍アジェンダではなく、経済をベースに行く」とみている。 安倍首相自身が当面は経済でいくと明言していることもあり、当面はいわゆる「安倍アジェンダ」を抑え、経済を中心に政権の推進力を保っていくことになる。TPP問題では、農業などを中心に打撃を受ける産業への補償として、新たな財政措置を求めることが早くも自民党内でうごめいており、予算の上積みを求める動きが出てくる可能性がある。 ただ、利益誘導型の古い自民党的な動きが出てくれば、世論の風向きも変わりかねない。安倍首相のリーダーシップで、改革を進めていけるか。政策の停滞を「ねじれ」のせいにできない状況で、政権の真の力が問われることになる。 参議院選挙後に予定される主な政治・経済日程は以下のとおり。 7月 15日 TPP交渉マレーシア会合(25日まで) 25日─27日 首相がシンガポール、マレーシア、フィリピンを訪問 30・31日 FOMC 8月 2日から 臨時国会(参議院の正副議長など選任ほか) 7、8日 日銀決定会合 中期財政計画、概算要求 12日 4─6月GDP 15日 終戦記念日 21日 社会保障制度改革国民会議の期限(骨子策定) 下旬 首相が中東4カ国訪問(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール) 9月 4、5日 日銀決定会合 5、6日 G20首脳会合(ロシア・サンクトペテルブルグ) 7日 2020年オリンピック開催地決定 9日 4─6月GDP2次速報 17、18日 FOMC 18日から 国連総会 党役員人事・内閣改造? 税調スタート(投資減税) ドイツ下院選挙 米国債務上限問題 10月 1日 9月日銀短観 3、4日 日銀決定会合 7、8日 APEC首脳会議(インドネシア) 臨時国会(上中旬) G20財務相・中銀総裁会議 IMF・世銀総会 29、30日 FOMC 31日 日銀決定会合(展望リポート) (石田 仁志 吉川 裕子 編集;田巻 一彦) |