05. 2013年7月24日 11:34:38
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【第285回】 2013年7月24日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] フォワードガイダンス導入した ECBの時間軸が曖昧な背景 「その質問をするということは、あなたは私の声明をちゃんと聞いていなかったということですね」 ECBのドラギ総裁は7月4日の記者会見での最初の質問にニヤニヤしながらそう答えた。質問は、イングランド銀行のカーニー新総裁は、政策金利を当面引き上げないことを市場に示唆するフォワード・ガイダンス(日本でいう時間軸政策のこと)を採用する様子だが、ECBはどうするのか? というものだった。 直前にドラギが読んだ声明文には「理事会は、政策金利は今の水準あるいはより低い水準でかなりの期間維持されると予想している」と書かれていた。地味な表現なので、彼はそういった質問が来ることを予想していたようだ。 日銀やFRBがこれまで採用してきたフォワード・ガイダンスには、ゼロ金利政策解除の条件として、インフレ率や失業率が示されていた。カナダ銀行や一時のFRBのように特定の時期を明示する手法もある。市場に示唆する超低金利政策継続期間が長いほど、長期金利は低下することになる。 しかし、今回のECBのガイダンスは曖昧だ。記者会見では「かなりの期間とは、6カ月?12カ月?」といった質問が相次いだが、ドラギは「“かなりの期間”は“かなりの期間”だ」と答えていた。 曖昧にしている背景には、金融政策の固定化を嫌う理事会メンバーがいることに加え、景気見通しをECBは下方修正していないことがある。追加景気対策というより、米長期金利急騰につられて欧州の長期金利も上がってしまったことの悩みに対処したのが今回の決定だった。導入によって欧州の長期金利はある程度低下した。 とはいえ、ECBの悩みは尽きない。南欧の若年層の高失業率は欧州における最大の経済問題だ。BMWは先日、スペインで採用した若い人材25人をミュンヘン本社に招き、開発、マーケティングなどの訓練を行うと発表した。他の南欧の国にも拡大する可能性があるという。近年、ドイツの教育システムの有効性に注目が集まっており、同社をはじめとする独企業はそれに応えようとしている。ただし、訓練生はプログラム終了後に本国に戻されることをBMWは強調している。南欧からドイツへの人材流出も深刻な問題だからだ。 若年層の雇用問題は金融政策での対処は困難とはいえ、ユーロの長期的存続のためには、南欧の競争力向上が必要である。 (東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
JBpress>海外>The Economist [The Economist] 欧州の若年失業:失敗が「保証」された失業対策 2013年07月24日(Wed) The Economist (英エコノミスト誌 2013年7月20日号)
欧州の若年失業に対処するドイツ主導の対策はあまりにも貧弱だ。 ドイツのアンゲラ・メルケル首相が何かがユーロ圏の優先課題だと宣言すると、欧州の政策機構がギアを1段上げる。メルケル首相はここ数カ月で、とてつもなく高い南欧の若年失業率のリスクに目覚めた。 緊縮財政の擁護者たるメルケル首相は、スペインやギリシャ、イタリアの首脳と同調し始め、若年失業は欧州の「最も差し迫った問題」であり、このまま放っておけば「失われた世代」を生みかねないと述べた。その結果、首脳会議が相次ぎ開催され、欧州大陸の若年失業者を支援する計画が次々と打ち出された。 欧州各国の首脳は「若年保証」制度を約束した。欧州のすべての若者を対象に、失業後、あるいは正規教育から離れた後4カ月以内に仕事を見つけるか、職業訓練や高等教育を受けられるようにする仕組みだ。指導者らは向こう2年間で、危機で最も大きな被害に見舞われている国々に80億ユーロ(105億ドル)を支給することを誓った。 欧州投資銀行(EIB)は、中小企業が若者を雇い入れ、教育するのを支援する計画だ。また、欧州の「構造基金」の一部が若年層の支援に振り替えられる。外国留学を促進する欧州連合(EU)のエラスムス計画の強化版は、就学や職業訓練のために国境を越える若者を増やす一助となるだろう。 これらの提案は格好の宣伝文句になる。追い詰められている南欧諸国首脳のみならず、選挙を2カ月後に控えたメルケル首相にとっても、小さからぬ関心事だ。しかし実際には、これらの対策は期待外れに終わる可能性が高い。 一連の対策は、過去3年間のEUの危機対応と同じ欠陥に苦しめられている。すなわち、大胆さの欠如、問題に対する分析の甘さ、ドイツの政策の模倣への過信である。 数字の甘さ 大胆さに欠ける点は、数字を丁寧に追うとすぐにはっきりする。
労働、教育、職業訓練のいずれにも参加していない若者は欧州で800万人近くに上っている。つまり若者の7人に1人がニートだということだ。イタリアとスペインではその割合が5人に1人、ギリシャでは4人に1人以上に上る。 問題の規模に比べると、提案されている資金は取るに足りない。2年間で80億ユーロという約束は、支援を受ける資格のある国々にとって、年間国内総生産(GDP)の0.1%にも満たない規模であり、これらの国のニートの若者1人当たり年間850ユーロ程度だ。 構造基金と実施されるかもしれないEIBの融資を足すと支援金は増えるが、大半の国の予算縮小を考慮するとまだ少なく、職業訓練や実習制度計画を大幅に拡大するには確実に足りない。 職業訓練と実習制度は名案だが、欧州各国政府が成長のてこ入れにも成功しない限り、欧州の若年失業者の支援策としてはほとんど役に立たない。南欧の若年失業が急増した一番の理由は、南欧各国の景気後退の深刻さにある。時間が経つとともに、景気循環的な失業が定着してしまうことがある。 経済協力開発機構(OECD)が最新の雇用アウトルックで明示した通り、若年層は年長者よりも深刻な打撃を受けてきた。まる1世代がスキルを習得できず、その傷はなかなか消えない。実習制度は、若者を雇用可能な水準に引き上げることで、多少は役に立つかもしれないが、経済回復の代わりにはならない。欧州経済が回復するまで、「失われた世代」予備軍の将来展望は上向かないのだ。 3番目の問題は、ドイツの成功の解釈を巡る単純さだ。ドイツには古くから実習と職業訓練の制度がある。また、ドイツの若年失業率は欧州で最も低い。しかし、前者が後者をもたらしたと結論付けるのは間違いだ。 ドイツが「欧州の病人」で、若年失業率が15%を突破していた2005年当時も、同国には実習制度と職業訓練制度があった。また、製造業に重点を置いたドイツ特有の産業構造と密接に結び付いたシステムは、容易に輸出できるものではない。 職業訓練制度にもっと重点を置くことは、すべての国の若年失業対策の武器の1つであるべきだが、南欧では結果をもっと早く出せる政策がほかにある。政策リストの先頭に来るのは、常勤労働者と(若い)有期労働者の差が縮まるよう、常勤者の労働規則の自由化を進めることだ。 スペインとギリシャはある程度前進したが、まだ十分ではない。労働市場の弾力性を高め、分断された市場を改善させれば、企業の雇用拡大が促され、若者の雇用機会が好転するだろう。ほかにも若者の雇用を促進する方法として、イタリアが先頃実施したような若者にかかる給与税の減税が挙げられる。 問題解決に本当に必要な対策 若年失業に対する欧州の戦略は、有益ではあるが小粒な取り組みの羅列だ。メルケル首相のおかげで、実行される対策は増えているが、決して十分ではない。欧州で「最も差し迫った」問題を解決するには、南欧が労働市場改革を進めるのを後押しする資金援助の増額とともに、南欧諸国の経済成長を高めるための一層大胆なアプローチが必要だ。 緊縮財政の緩和から銀行同盟に向けた迅速な進展に至るまで、ユーロ圏の課題リストは、事に当たるメルケル首相の慎重さと同じくらいお馴染みのものだ。しかし、一連の対策は必ず実施されなくてはならない。さもなくば、「若年保証」は空約束になってしまう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38281
JBpress>海外>欧州 [欧州] 訪れた多くのドイツ人を魅了してやまない日本 しかし、官製クールジャパンの評判は最悪 2013年07月24日(Wed) 川口マーン 惠美 先日、「クールジャパンは日本の成長力か?」というテーマの座談会に出席した。
まずもって私は、クールジャパンが何かを知らなかった。ドイツでは聞かない。そこで事前に調べたところ、日本の創造的な産業やサービスが海外で高く評価されている現象のことだという。 そして、その現象をさらに宣伝し、推進し、ビジネスにしましょうというのが、日本政府のクールジャパン戦略だそうだ。日本政府は2010年6月に経済産業省内にクールジャパン室を設置した。 世界の若者に日本語を学ばせる「アニメ、マンガ、ニンテンドー」 では、具体的に何がクールジャパンかというと、アニメや漫画、コンピューターゲーム、芸能などのエンターテインメント、ファッションやキャラクター商品、食文化、伝統工芸などで、それにさらに宅配便、旅館など、日本独特のサービス文化が加わる。早い話、何でもよいようだ。 パリで「第13回ジャパン・エキスポ」開催 フランス・パリで毎年開かれている「ジャパン・エキスポ」に集まる若者(2012年7月7日撮影)〔AFPBB News〕 確かに、アニメ、マンガ、ニンテンドーが、海外の若者にとってクールであるというのは、ドイツにいるとよく分かる。これら3つの言葉が、ドイツで検索される日本関連の言葉の最初の3つなのである。 ドイツの大学では、専攻学科に関わらず、誰もが登録して受講できる語学講座があり、日本語学科が設置されているところでは、それが結構な人気だ。 ところが、その日本語の受講者の動機のほとんどが、“アニメを原語で見たい”、あるいは、“漫画を原語で読みたい”というものだと聞いて、ビックリしてしまった。私のドイツの従妹の息子もそうだったというので、なぜ、わざわざ日本語で読まなければいけないのかと訊くと、彼はこう答えた。 「日本の漫画は、基本的に大人向きであり、内容は高度で、緻密な心理描写なども多い。ところが、ドイツで漫画を許可する官庁は、漫画といえば子供の物だと思い込んでいるため、子供向けに修正を施す」 「例を挙げれば、ある主人公はくわえ煙草がトレードマークであったが、ドイツではタバコは社会から追放されつつあり、特に子供向けの物には使えないということで、その主人公は、いつも棒付きキャンデーを嘗めている。マンガファンとしては遺憾の極みである。この調子では、他にもどれだけの改竄が行われているか分からないではないか」 そこで漫画オタクは、「原語で読まなければ!」と奮起し、日本語の勉強という無謀な行動に突進するのだが、始めてみるとそれは意外と難しく、ひらがなも制覇できないまま、1カ月ほどで受講者の脱落が始まるそうだ。 しかし、中にはこれをかなりものにする学生も出てくる。その私の親戚もその一人で、彼は数年かけて、日本語検定の2級まで取った。そのあいだに日本を何度か旅行もした。 そして今では、残念ながら漫画はまだすらすらとは読めないものの、ある日本の有名な自然科学の研究所で、物理の研究者として働いている。日本語学を勉強した長女の話では、日本を旅している外国の若者の大半が、アニメファンだという。 「日本人」に接して日本ファンになる外国人 いずれにしても、動機は何であれ、日本を訪れる外国人が増えることは大変好ましいことである、と私は思っている。 日本以外の国は、イメージ作りが上手なので、旅行者は大いなる期待を抱いて出かけていくが、行ってみると、タクシーにはぼられる、切符の自動販売機からおつりが出てこない、駅はゴミだらけだし、電車は遅れ放題で何の説明もなく、おまけにホテルのサービスが悪いなどといった人的トラブルが結構多い。 ところが、たいした期待もせずに行った日本は、外国人にとって驚くべき国なのだ。まず、着いた空港は清潔で、すべてが滞りなく機能し、人々は親切。 もっと具体的に言えば、例えば、今日、成田に降り立った外国人がまず感じるのは、この異常な暑さだ。動きたくなくなるほどの蒸し暑さ。座っているだけでも汗の流れる不快さを、全員が即座に感じる。 たいていの暑い国では、人間の働く速度は極端に遅くなるのだが、ところが日本では、この過酷な労働条件にもかかわらず、仕事のスピードが落ちない。電車は遅れないし、それどころか、人々はお客に対して笑顔を絶やさない。 外国人は驚愕する。禅寺でもなく、富士山でもなく、秋葉原でもなく、彼らは初めて日本人に注目する。彼らの頭の中で、日本人が具体的な顔を持つ瞬間だ。それは予想もしていなかった顔でもある。 短い滞在中に次々にこういう体験に襲われた結果、出張先からドイツへ戻った彼らは、やおら日本の良さを絶賛するようになる。中には私に、「日本人の君が、よくこんな国(ドイツのこと)で暮らしているね」と言った人までいた。 つまり、日本というのは、世界で唯一、イメージよりも実態の方が良い国なのである。 外国人が日本に足を一歩踏み入れたが最後、日本ファンは確実にそれだけ増えると言っても過言ではない。だから、日本ファンを増やすためには、日本に来る外国人を増やしさえすればいい。 そのきっかけは、漫画でもアニメでもニンテンドーでも、何でもよい。つまり私は、クールジャパン構想は、そういう意味では悪くないと思っている。 ピント外れな日本政府のクールジャパン戦略 ところが、座談会でのクールジャパンの評判はすこぶる悪かった。まず、「新しい日本の創造―『文化と産業』『日本と海外』をつなぐために―」という官民有識者会議の提言があるのだが、これが難解。 1つ例を挙げれば、「ファッション分野の基本戦略」という項の「iii. 他産業との連携」には、「日本の伝統に根を下ろした前衛的伝統力や『リミックス』力を見直し、デザインやアート、エンターテイメントなどの総合的な『クリエイティビティ』を発信し、アジアのファッション中心地としての東京のブランディングを行う」と書いてある。 「忍者」が路上強盗を撃退!オーストラリア 海外ではニンジャも人気(写真はオーストラリア・シドニーの忍者学校)〔AFPBB News〕 確かに意味不明だ。カタカナが氾濫しており、これはすでに日本語とは言えない。有識者会議の提言というのが、聞いて呆れる。そもそも、「日本の伝統に根を下ろした前衛的伝統力」とは何だ? リミックス力? 東京のブランディング? もう少し、ましな日本語は書けないものか。 しかし、まあ、百歩譲って、この提言の変な日本語は無視するとしよう。要は、どのように日本の良さを世界に広めるかということである。しかし、その具体的な内容も、現在のところ、あまりよく見えない、あるいは、ピントが外れているというのが、この日の座談会で大勢を占めた意見だった。 そこで、私なりに少しクールジャパンの具体案を出してみたい。例えば、ヨーロッパの観光局は、常に一定の予算を、外国のジャーナリストの誘致に割いている。つまり、訪れる外国のジャーナリストに、旅費や宿泊費、美術館の入場料などを補助する。 特典を与える唯一の条件は、取材した内容を、それぞれの国の影響力のあるメディアで発表することである。報道内容に縛りはないが、ジャーナリストといえども人間であるので、快適な取材環境を提供してくれた国のことをボロクソに書くのは何となく気が引ける。 そこで、批判眼が鈍らない程度に、やはりその国の良い面を抽出して書くことが多い。これは、結構効果的なPRとなる。 日本の観光局がそういうことをすでにやっているのかどうかは知らないが、ドイツでの日本に関する報道はとても少ない。日本の現代社会、ましてや日本のよい側面は、不思議なほど知られていない。 だから、日本政府もこういうPRを積極的にやって、日本についての報道、望むべくは、日本人の真の姿の分かる、日本のためになる報道を増やすことを目標にすればよいと思う。 また、本物の日本食の海外への輸出も、積極的に支援してほしい。ドイツには、日本人でない人の経営する不可思議な日本食レストランが多い。 特に、寿司文化が、ビックリするようなものに置き換わっているのを見るのは、とても悲しい。それを皆が日本のお寿司だと信じてしまうのだから、これは本来なら、捨て置けない事態だ。 そこで、海外の日本料理屋を対象にしたコンテストを行い、経営者の国籍にかかわらず、よい日本食レストランに賞を出すというのはどうだろうか。かなり、ニュースバリューはあると思うのだが。 「クールジャパン」には効果的な税金の使い方を望む 一方、あまりしない方がいいのは、日本のアーティストへの直接投資。芸術を官庁が主導して、アーティストを育てようなどとすると、ろくなことが起こらない。そのときの政権におもねるアーティストが台頭する可能性もある。 アーティストが政権の代弁者になると、芸術はつまらないものになる。漫画やアニメは、官が主導したものではなかったからこそ、これだけ自由に、想定外に広がり、世界を席巻したのだと、私は思っている。 だから、芸術に投資するなら、これも、日本人であるか、外国人であるかにかかわらず、日本文化を世界に広めることに貢献した芸術家に与える大きな賞を設置し、その賞の存在を世界にアピールしていくといったことの方が、効果的であるような気がする。 一つ確かなことは、現在、世界の若者が日本に関心を持っているとしたら、それは、日本の伝統とはまるで繋がっていないということだ。彼らの関心は、活花でも茶の湯でも禅でもなく、アキハバラであり、アニメであり、ニンジャであり、コスプレであり、和太鼓だ。 それを残念だと思う向きもあろうが、そもそも、日本人が日本文化をすでに知らないのだから、それを外国に広めようとすること自体が無理な相談だ。 つまり、クールジャパンが成功するなら、それはおそらく、ジャパンという名の無国籍文化の発信となるに違いない。文化の無国籍化は、日本だけでなく、世界的風潮でもある。 ただ、伝統文化の方も、やはり国がちゃんと税金を注ぎ込んで保存してほしい。そして、伝統文化とその他の新文化が、雑多に、多様に共存できれば、「枯れ木も山のにぎわい」ではないが、それはとても日本らしくて、一番良い状態であると、私は思っている。
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