02. 2013年7月17日 19:59:29
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中国シャドーバンキングは100兆円規模の可能性=JBIC副総裁 2013年 07月 17日 17:56 JST 7月17日、JBICの渡辺副総裁は、中国のシャドーバンキング(影の銀行)市場について、100兆円レベルに達している可能性を指摘し、どこかの段階で処理をしなければいけない問題であり、要注意だと語った。写真は昨年7月、武漢で撮影(2013年 ロイター) トップニュース 中国経済の失速を示すものではない=成長率見通し下方修正でADB総裁 欧州株が下げに転じる、英中銀議事録を嫌気 英中銀7月金融政策委、新総裁迎え全員一致で政策維持決定=議事録 中国企業が東シナ海のガス田開発を計画、日中の緊張高まる恐れも[東京 17日 ロイター] - 国際協力銀行(JBIC)の渡辺博史副総裁(元財務官)は17日、都内で開いた記者団との懇談会で、中国のシャドーバンキング(影の銀行)市場について、100兆円レベルに達している可能性を指摘し、どこかの段階で処理をしなければいけない問題であり、要注意だと語った。 ただ、損失の大部分は中国国内にとどまる可能性が大きく、システミックリスクを回避する姿勢を明確にしている中国当局の対応次第では、問題が表面化しても世界経済や国際金融市場への影響は最小化できるとの見方を示した。 中国のシャドーバンキング市場は、一部で300兆円を超える規模とも言われている。渡辺氏は「さすがに中国の預貯金の動きなどを見ると、300数十兆円というのは大き過ぎる」としたが、預金金利がインフレ率を下回っている中で「ある程度の金額が動いていることは間違いない。100兆円ぐらいのレベルでも不思議ではない」と語った。その上で、過剰生産を抱える中国経済の減速が鮮明になっている中で「どこかで処理をしなければいけない。要注意だ」と警戒感を示した。 ただ、「幸いなことに中国の市場は上海を含め、外国の投資家がどっと入ってきているわけではない」とし、「損をするのは、あくまで中国国内の人。個人か、事業法人か、国営企業か、銀行かという意味では、中国の中のゼロサムゲームのようなところがある」と指摘。中国当局も不良債権問題に伴うシステミックリスクを回避する姿勢を明確にしており、問題が表面化しても「悪影響は最小化できると思う」との見解を示した。株安など国際金融資本市場を通じた影響についても、レパトリ(本国への資金還流)などの動きは欧米や日本の市場に比べて「はるかに違うので、そこは冷静に見た方がいい」と語った。 中国経済の先行きについては、7%程度まで成長率が減速する可能性があるとしたが、「ハードランディングというほどひどくはならないと思う」と展望。もっとも、成長率が7%程度まで落ちる過程で低所得の階層にしわ寄せがいく可能性があるとし、「社会的にいろいろな意味でガタガタするかもしれない」と語った。 関連ニュース ロシア中銀、主要政策金利を据え置き 緩和に含み ロシア中銀、主要政策金利を据え置き 緩和に含み 2013年7月12日 FRB議長と市場の危険な駆け引き、勝つのはどちらか 2013年6月21日 ブラジル中銀、利上げに制限はない─総裁=現地紙 2013年6月18日 中銀預金金利の引き下げ、現時点で行動する理由ない=ECB総裁 2013年6月7日 焦点:中国の景気減速で痛手受ける外国企業 2013年 07月 17日 16:03 JST [ロンドン 14日 ロイター] - 中国の巨大な財・サービス市場はかつてグローバル企業にとって現代版の黄金郷とみなされていたが、中国は今や成長が鈍化し、こうした企業にとって経営上の重荷になりつつある。 過去20年間の中国経済の興隆で国際的なビジネスは変貌した。しかし、その中国は最近の経済指標が示す通り、輸出の不振と銀行セクターの暴走で景気減速に見舞われている。 このため世界のファンドマネジャーは世界第2の経済大国である中国に事業を集中する企業に関して投資評価の再考を迫られている。 INGインベスト・マネジメントの投資ストラテジスト、マールテン・ヤン・バッカム氏は「中国の影響を受けやすい企業はいずれも株価のパフォーマンスが悪い。成長率に回復の兆しが見られない以上、この傾向は変わらない」と語る。INGインベストメントはこのほど、中国の事業比率が大きい企業の株式に対する投資比率を引き下げた。 市場は既にコモディティ需要の減速に備えている。しかし高級品販売の落ち込みにつながった汚職摘発の動きをはじめ、シャドーバンキング(影の銀行)の取り締まりに至るまで、中国政府の最近の動きは何もかもが国内需要を冷え込ませるものだとバッカム氏はみている。 実際に投資家が恐れているのは、成長率が7%を割り込むことよりも、銀行の本格的な信用引き締めがここ数年の銀行融資と消費の拡大を腰折れさせる事態だ。バッカム氏は「中国に対する懸念の一部が現実化するだけでも、消費が打撃を受ける」と付け加えた。 中国の売上高比率が高い50社で構成するモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の中国エクスポージャー指数はことしに入って約10%下落した。下落分の3分の2は中国の成長見通しに暗さが増した直近の四半期に集中している。 対照的に先進国の売上高比率が高い企業で構成する指数は12%上昇し、欧米や日本の景気見通しの改善傾向が際立っている。 フィデリティ・グローバル・リアル・アセット・セキュリティーズ・ファンドのポートフォリオマネージャー、アミット・ロダー氏は、中国事業の不振を欧州の販売回復で効果的に穴埋めできる独フォルクスワーゲン(VW)を選好している。 同社の高級車部門ベントレーは今月、中国の販売が23%減少する一方、米国と欧州は12─22%増加したと発表した。 ロダー氏は「長期的なテーマは引き続き中国のような新興国市場の消費の伸びだ。短期的には米国の復活と欧州の景気底打ちの兆しもあって、欧米の事業比率の高い企業に焦点を当てるのが好ましい」と語った。 <半導体とセメント> 過去20年間に中国が年10%の成長を達成したことで、外国企業は利益拡大と株価の急騰という恩恵に浴した。中国の数兆ドル規模に及ぶインフラ整備計画に伴いブラジルやロシアから資源が流入し、ドイツや米国から半導体や建設機械が集まった。 一方、自動車メーカーやアパレル、化粧品企業は13億人の中国国民が豊かになることで利益を得た。中国の1人当たりの所得は2000年から4倍に増えている。 銀行の推計によると、米欧企業の利益のうち中国が直接占める割合は5─6%だが、資源や食品の価格面での影響を含めた間接的な割合はもっと高くなる。 中国の景気減速はすでにコモディティ取引に影響を及ぼしている。 シティ・プライベート・バンクでマネージドインベストメントのグローバルヘッドを務めるデビッド・バイリン氏は「コモディティや原材料の事業比率が高い企業の投資には関心がない。結局のところ、中国の需要は明らかに減退している」と述べた。 消費が中国経済に占める比率は35%強にすぎず、隣国インドのほぼ半分の水準だ。中国では3億人超が中間層とみられ、スマートフォンやブランド服の需要は当面不安がない。 しかし中国の経済発展と雇用は貿易と密接に関連している。輸出の不振にインフレのほかシャドーバンキングの取り締まりによる借り入れコストの増加が重なり、すでに可処分所得にも影響が及んでいる可能性がある。 例えば、スイス製時計の輸出はことし第1・四半期に25%減少した。輸入関税が免除されるため多くの中国人が購入に訪れる香港では19%落ち込んだ。 モルガン・スタンレーによると、欧州の高級ブランドや半導体、エネルギー関連企業及び自動車などのメーカーはいずれも売上高の10%以上を中国で稼いでいる。同社は先週、顧客向けノートで、中国と新興国の事業比率の高い銘柄に警戒するようアドバイスした。 ドイツ銀行によると、米国企業は利益の約5%を中国が占めるが、ピザ・ハットやケンタッキーフライドチキンなどを中国で展開する外食店チェーンのヤム・ブランズのように50%に達する企業もある。 このため中国の景気鈍化は企業収益のほか、中国の顧客に依存する新興国市場にも悪影響を及ぼす。 しかし中国の景気減速の意味合いはユーロ圏の景気回復にまで波及すると、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバルストラテジスト、ダン・モリス氏は指摘する。同氏は「ドイツ経済は欧州危機の最中にも堅調だったが、数字の上ではその多くが輸出の寄与によるもので、中でも中国向けが最大だった。今や中国政府による景気対策は期待できず、ドイツの成長率は他国並みになるだろう」との見方を示した。 (Sujata Rao記者) 中国経済の失速を示すものではない=成長率見通し下方修正でADB総裁 2013年 07月 17日 19:42 JST [東京 17日 ロイター] - 中尾武彦・アジア開発銀行(ADB)総裁(前財務官)は17日、都内で講演し、ADBが中国の2014年の経済成長率見通しを8.0%から7.5%に下方修正したことについて、「経済の失速を示すものではない」との見解を示した。 足元で広がる「中国リスク」について、短期的に大きな問題になるとは思っていないとした。 ADBは16日、中国の2013年の実質経済成長率の見通しを7.7%、14年は7.5%に、いずれも4月時点の予想から0.5%ポイント下方修正した。最近の輸出入の減速や金融引き締めを反映したものと説明した。 <中国の金融引き締め、「短期的に大きな問題になるとは思っていない」> 足元では、影の銀行(シャドーバンキング)と呼ばれる銀行融資以外の金融取引に対する不透明感から「中国リスク」への警戒感が広がっている。 中国リスクについて中尾氏は「短期的には、ノンバンクのバブル的状況を抑えようと、人民銀行が信用の量を少し締めた結果、短期金利が振れ、人民銀行のやり方としてどうかという議論や引き締めが強化されればさらに減速するなどとの議論は確かにあり得る」としながらも、中国政策当局者には「成長は大事だが、消費を喚起し、不動産や民間の設備投資に偏らないバランスのとれた成長」に対する明確な意識があると強調した。 金融政策の手法についても「偏った形でノンバンクが発達し、消費者保護の観点からも放置できない問題になりかねない。中小企業にカネがうまく回る形になっていない」ことに対して「明確な形で行動した」と述べ、引き締めによって「短期的に、大きな問題になるとは思っていない」とした。 一方で、輸出の減速傾向は明確で、中国の主要輸出相手である欧州経済が低調なため「これまでのような輸出の勢いはないかもしれない」と見通した。 <米出口戦略と資金フロー問題を注視> 米国の量的緩和の出口戦略と新興国への資金フローの問題では、インドネシアでの株価の下げなどを挙げ、「資金の巻き戻しの恐れを感じ、彼らが注意していることは確かだ」としながらも、「リーマン・ショック後のような大きな動きになっているかというと、今までの困った経験から、各国の中銀によく注意しておかなければならないとの意識がある」と語った。 <アジア共通通貨構想、アジェンダとする考えない> アジア共通通貨構想については「アジア開発銀行として、いまアジェンダとして取り上げて進める考えはない」と語った。 (吉川裕子 :編集 内田慎一) 欧州株が下げに転じる、英中銀議事録を嫌気 2013年 07月 17日 19:39 7月17日、欧州株式市場は、英中銀の議事録公表を受けて下げに転じている。写真は2010年1月、ロンドンのトレーダー(2013年 ロイター/Stefan Wermuth) [ロンドン 17日 ロイター] - 17日の欧州株式市場は、英中銀の議事録公表を受けて、下げに転じている。英中銀がこの日公表した7月の金融政策委員会の議事録では、全委員が量的緩和の拡大に反対票を投じていたことが明らかになった。 0950GMT(日本時間午後6時50分)現在、FTSEユーロファースト300指数.FTEU3は0.35%安。英国株.FTSEが議事録公表直後に急落したことが背景。 議事録によると、これまで追加緩和を主張していた複数の委員は、将来の金利に関する明確なガイダンスを提示するかどうか決めるまで、追加緩和を控えることは理にかなっているとの認識を示した。 チャールズ・スタンレーのアナリスト、ジェレミー・バトストンカー氏によると、市場は6対3で量的緩和の維持が決まると予想していた。 関連ニュース 英中銀7月金融政策委、新総裁迎え全員一致で政策維持決定=議事録 英中銀7月金融政策委、新総裁迎え全員一致で政策維持決定=議事録 2013年7月17日 序盤の欧州株式市場は小幅高、米雇用統計待ち 2013年7月5日 英中銀の声明全文 2013年7月5日 英中銀、政策金利・資産買い入れ枠据え置き 2013年7月4日
英失業者数、6月は3年ぶりの大幅減少−回復の勢い増す 記事をメールで送信 記事を印刷する 共有/ブックマーク ShareGoogleチェックTwitterシェア 7月17日(ブルームバーグ):英国では6月に失業者 数が3年ぶりの大幅な減少となった。景気回復が勢いを増していることが示された。 英政府統計局(ONS)が17日発表した失業保険申請ベースの6月の失業者数は、前月比2万1200人減の148万人。減少幅は2010年6月以来で最大だった。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト23人の調査では中央値で8000人減が予想されていた。 同時に発表された国際労働機関(ILO)基準の3−5月失業者数は5万7000人減の251万人。失業率 は7.8%だった。 インベスティック・セキュリティーズ(ロンドン)のエコノミスト、フィリップ・ショー氏は「そこそこ良い出来事が重なった。労働市場の数字はポジティブで、上期の経済で良好だった部分を反映している」と述べる一方で、「所得の伸びがインフレ率を下回っている状態で、回復には依然として疑問符が付く」と付け加えた。 記事に関する記者への問い合わせ先:ロンドン Svenja O’Donnell sodonnell@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Craig Stirling cstirling1@bloomberg.net 更新日時: 2013/07/17 18:57 JST
コラム:米国「リハビリ終了」が告げる株高ドル高=上野泰也氏 2013年 07月 17日 15:31 JST 上野泰也 みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト(2013年7月17日) 米国の経済・金融動向を見ていく上で、米連邦準備理事会(FRB)が6月6日に発表した統計が非常に重要なメッセージを送っていたことに留意する必要がある。機関投資家向けセミナーなどで、筆者が常々強調していることだ。 問題の統計は、今年1―3月期の米国の財務勘定である。従来は資金循環という名称だったが、今回から改称された。家計(含む非営利団体)の純資産は前期比3兆ドル増加し70.3兆ドルとなり、住宅バブル崩壊前の2007年7―9月期に記録したピーク(68.1兆ドル)を、ついに上回った。 従来のピークからその後に記録したボトム(09年1―3月期の52兆ドル)まで、米国の名目国内総生産(GDP)を上回る約16兆ドルという「大きな穴」が、住宅バブル崩壊とその悪影響の拡大によって、家計のバランスシートに開いた形になっていた。それから4年。FRBによる大量の流動性供給を足場にした株価の大幅上昇に、昨年からは住宅価格の上昇も加わり、マクロ的にはその「穴埋め」がついに終了したのだ。 わかりやすく言うと、病院で長い間、治療・リハビリを続けていた米国経済が、ついに「退院」したということである。 構造的な重石が軽くなったため、米国の景気回復は今後いっそう鮮明になる可能性が高い。給与税減税が昨年末で打ち切られ、3月からは歳出の強制削減が発動されているにもかかわらず、米国経済が底堅く推移している理由はここにある。 昨年までと異なり、今年は春から夏にかけて景気指標の「中だるみ」がほとんど見られず、量的緩和の縮小・停止に向けて、FRBが「地ならし」を行うまでの状況になっている。 <最初の利上げは最速で15年半ばか> 5日に発表された6月の雇用統計は、量的緩和縮小の9月開始を目指していると見られるFRBにとって、「文句なし」の良好な内容となった。 非農業部門雇用者数を見ると、全体の増加ペース(6カ月後方移動平均をとると5カ月連続でプラス20万人超)、業種別内訳(バブル崩壊でダメージを受けた代表的な業種である「小売」「建設」「金融」は足元で増加)のいずれも、米国経済の回復基盤が一段強まったことを明確に示している。 むろん、景気に加えて物価の動向もにらみながら、米連邦公開市場委員会(FOMC)で最終判断が下されるわけであり、9月の量的緩和縮小開始が100%確実というわけではない。ただ、米国の家計によるバランスシート調整が全体としては終了し、景気回復の力強さが一段増しつつあることを考えると、スケジュールの大きな後ずれは考えにくい。 14年1月末で退任すると見られるバーナンキFRB議長としては、金融政策の正常化に向けた第一歩である量的緩和の縮小は、自らの任期中に決めておきたいところだろう。また、月850億ドルというハイペースの資産買い入れによるFRBのバランスシート拡大圧力について、米中央銀行当局者はおそらく、本能的とも言えるような恐怖感やリスク認識を抱いているだろう。 このままバランスシートが膨らみ続けると将来何が起こるか分からないという恐怖感があるからこそ、ハト派に属するはずの複数の地区連銀総裁からさえも量的緩和の縮小・停止に前向きな発言がいくつも出てきていると推測される。 ただし、FOMCの議事録などから確認できるように、量的緩和の縮小・停止はあくまでも追加緩和のペースダウン・停止ということであり、金融引き締めそのものである利上げとは明確に区別して考える必要がある。 量的緩和の停止は最速で14年半ばになるだろうと筆者は予想しているが、それから最初の利上げまで最低でも1年ほどは待つのではないか。米国の超低金利の「時間軸」は、12年10月のFOMC声明文までは、カレンダー型で提示されていた。具体的には「少なくとも15年半ばまで」というものである。 FOMCはその後、失業率6.5%などの数値基準を「時間軸」に採用して現在に至っているが、それにより「時間軸」が短縮した、すなわちFOMCの大勢が見込む利上げの時期が前倒しになったとは考えにくい。 これは、FRB理事・地区連銀総裁による6月時点での最新金利見通し(適切な利上げ開始時期についての集計結果)からも明らかである。適切な利上げ開始時期についての回答で最も多かったのは「15年」で、14人。3月の前回集計時から1人増えていた。 それでも、最速で15年半ばと見込まれる最初の利上げまでのインターバルが2年を切ってきたため、この先は時間の経過とともに、米2年債利回りは満期到来前の利上げの織り込みを増す形で、テクニカルに水準を切り上げる可能性が高い。 一方、日本の場合は、黒田東彦日銀総裁の任期中の5年間は利上げがないと予想されるため、2年債利回りの上昇余地はきわめて限られる。したがって、局面によってはドル円相場に影響を及ぼすことがある日米2年債利回り格差は、時間の経過とともに拡大していくと考えられる。 <ドル円は数年内に110円前後へ上昇も> また、日米の長期・超長期ゾーンの国債利回り格差についても、米国の金利上昇が主導する形で徐々に拡大していくことが十分予想される。これについてもドル円相場へのインプリケーションは、円安ドル高である。 米国の10年債や30年債の利回り水準は、一頃よりは上昇したものの、米国のファンダメンタルズに沿って考えた場合、まだかなり低い水準にとどまっている。「リスクオフ」による超過需要・金利低下圧力がないという前提で言えば、米10年債は3%台、30年債は4%台が「居心地がよい」水準だというのが、以前から筆者が抱いている金利観である。 長期金利の水準形成で構成要素になると考えられるのは、今後予想(期待)される実質経済成長率(潜在成長率)、予想(期待)インフレ率、そしてリスクプレミアムの3つである。 米国の場合、潜在成長率は2%台前半というのが多数説である。実際、FRB理事・地区連銀総裁の最新の経済見通しにおいて、実質GDPの「長期(longer run)」は、2.3―2.5%になっている。 一方、予想(期待)インフレ率は、米国の場合、本来は2%のインフレ目標ということになる。FRB理事・地区連銀総裁の最新の経済見通しでも、個人消費支出(PCE)デフレーター(総合)の「長期」は2.0%となっている。 ただし、PCEデフレーターの実勢がこのところ目標からかなり下振れていること(5月分は総合が前年同月比プラス1.0%、コアが同プラス1.1%にとどまった)を考え合わせると、市場における長期金利の当面の水準形成においては、インフレ目標2%よりも低い水準が織り込まれやすいと言うことができる。 したがって、潜在成長率を2%台前半、予想インフレ率を1%前後から2%と見て両者を加えると、3%台前半から4%台前半という金利水準になる。 この間、米国の財政収支が順調に好転していること、格付けが最上級でかつ流動性が高い米国債の購入需要がしっかり存在していること、欧州や中国のリスクが意識される中での「質への逃避」的な米国債需要の存在といった諸要因に鑑みると、少なくとも当面は、長期金利の水準形成・変動において、リスクプレミアムは大きな役割を果たさない、すなわちプラス方向の上乗せはほとんどないと見ることに無理はあるまい。 以上を踏まえた筆者の米国市場についての大枠の予想は、米国株のさらなる上昇(ダウ工業株30種平均は1万6000ドルに到達)、米国債利回りの一段の上昇(米10年債利回りは3%台、米30年債利回りは4%台に上昇)、為替市場でのドル高円安(1―2年内に110円前後)というものである。 *上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。 |