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新興国の外貨準備急減 マネー流出、介入で通貨防衛
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/161.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 7 月 16 日 03:09:43: Mo7ApAlflbQ6s
 


新興国の外貨準備急減 マネー流出、介入で通貨防衛
2013/7/16 2:00

 新興国の外貨準備が減少している。マネー流出で急落した自国通貨を買い支えようと米国債など保有する外貨資産を売っているためだ。5、6月の2カ月でインドネシアの外貨準備は8.5%、インドは4%、ブラジルは2.4%減少した。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が5月に量的緩和縮小に言及したのが引き金だ。新興国は通貨安に伴うインフレで景気が減速する新たな課題に直面している。

 19日に始まる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では新興国からの資金流出問題への対応も議論する。新興各国は米国に対して通貨など市場に配慮した金融政策運営を求める見通しだ。米国がどう応じるかが焦点となる。

 各国の外貨準備を集計したところ、インドネシア、インド、ブラジルやロシアなど中国を除く新興12カ国・地域合計は6月末時点で約2兆9700億ドルと4月末(約3兆300億ドル)と比べ2.2%減った。2カ月間の減少率としては欧州債務問題が深刻化した2011年11〜12月以来の大きさだった。
 バーナンキ米FRB議長が量的緩和縮小に言及して以降、ドル資金が新興国から流出し、外国為替市場でインドネシアルピアなど新興国通貨が軒並み下落。急激な通貨安で輸入物価が上昇するとインフレを招きかねないため各国は自国通貨を買う大規模介入を実施した。これが外貨準備の減少につながっている。

 一方、世界最大の外貨準備を抱える中国は6月末の残高が約3.5兆ドルと3月末(約3.44兆ドル)を上回り、過去最高を更新した。ただ、4〜6月の増加幅は1〜3月と比べて減少した。

 新興各国が外貨準備の米国債を一気に売却すると米国債市場の波乱要因にもなる。「米長期金利の上昇につながりかねない」とSMBC日興証券の野地慎為替ストラテジストは指摘する。FRBによると、海外中銀による米国債などの証券保有残高は6月末に前月比400億ドル以上減少。11年末以来の減少幅となった。

 新興国は1997年のアジア通貨危機を教訓として外貨流出に備える外貨準備を積み上げてきた。08年のリーマン危機後に米国が金融緩和を拡大した後は高利回りを求めるマネーが新興国に流入。新興国は自国通貨高を抑えようと自国通貨売り介入を実施し、さらに外貨準備が増えた。その流れが米国の量的緩和の縮小観測が強まったことで逆転しつつある。
 ただ、足元では12カ国・地域合計の外貨準備高は10年前に比べ約3倍の水準で、「枯渇して連鎖的な通貨危機が起きるような状況ではない」(JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジスト)との見方もある。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC15007_V10C13A7MM8000/?dg=1

 

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01. 2013年7月16日 19:04:39 : niiL5nr8dQ

インド中銀の通貨安対策、ルピー支援効果は限定的
2013年 07月 16日 17:16 JST
[ムンバイ 16日 ロイター] - インド中銀が15日遅くに満を持してルピー下落に歯止めをかける措置を発表したが、翌16日の為替市場でルピーは小幅な上昇にとどまっている。インパクトはむしろ株、債券市場の方が大きく、金融株が売られ、国債利回りが急上昇している。

ルピーの最安値更新が続く状況に対応して中銀が打ち出した措置は、中銀が市中銀行に資金を貸し出す際の金利の引き上げや規模の制限、債券発行入札を通じた資金吸収など、ルピー需要を生む効果を狙ったもの。

ルピーの投機的取引を難しくし、海外から投資資金が流入し、経常赤字の縮小につながることも期待しているが、市場の受け止めは異なる。

スタンダード・チャータードの南アジア地域ホールセールバンキングの共同責任者Ananth Narayan氏は、今回の措置について「問題を明確にする短期的措置となり、長期的に成長を脅かさないことを希望する」と述べている。

今回、政策金利の引き上げには踏み込まなかったものの、企業は資金調達コストの上昇に直面する。

インド株式市場では、銀行、ノンバンクが下げを主導し、NSE株価指数.NSEIが1.6%下落。

指標10年債利回りが50ベーシスポイント(bp)も上昇して昨年末以来の高水準を記録したほか、短期金利も上昇している。

チダムバラム財務相は16日、中銀が発表した措置は、過度な投機や外為市場のボラティリティー抑制が目的であり、政策金利変更の前触れとみなすべきでないと述べた。

<為替介入避けたい理由>

ルピーは1ドル=59.43/44ルピーと、前日終値の59.89/90ルピーからは上昇している。前週は61.21ルピーまで下げ、最安値を更新。5月初めからの下落率はほぼ10%に達している。

クレディ・スイスのエコノミスト、Robert Prior-Wandesforde氏はリポートで「中銀は恐らく外貨準備を大量に使ってしまうことを躊躇(ちゅうちょ)している。それでも、ルピーの下げに歯止めをかける強い意向を示す必要があると感じたのは明らか」と指摘した。

中銀はこれまでのところ、外貨準備を活用した積極的な市場介入は控えている。外貨準備の減少は外国人投資家の信頼感をさらに損ねる恐れがあるためだ。

アナリストからは、国内総生産(GDP)比4.8%まで膨れ上がった経常赤字を縮小させる措置が必要との声が聞かれる。

HSBCのアナリストはリポートで「今回の措置は、ルピー安の原因となっている構造問題にはほとんど対処していない。経常赤字は縮小したものの、なお高水準で、インド国内の根強い米ドル需要の要因となっている」と指摘した。




アングル:中国で銅担保の資金調達が拡大、国際価格に影響も
2013年 07月 16日 18:04 JST
[上海 16日 ロイター] - 中国当局がいびつな信用の伸びを抑制しようとする中、資金調達時の担保として商品(コモディティ)の利用が拡大しており、銅の国際取引に別のゆがみを生じさせている。

中国の6月の銅輸入は9カ月ぶりの高水準となり、銅を裏付けとした資金調達の需要が高まっていることから、第3・四半期を通じて輸入は引き続き堅調に推移すると見込まれている。銅を裏付けとする資金調達は、低コストかつ利用しやすい手段として、銀行融資に代わるものとなっている。

景気減速を受け、工業用原料の中国向け出荷は低迷しており、銅とは対照的に、鉄鉱石や原油の中国輸入量は前月から落ち込んだ。

信用の伸びが規制されるようになったため、資金調達の担保として銅の需要が高まっており、部分的に銀行や企業による銅現物の保有を促している。

中国は世界最大の銅消費国。資金調達手段としての銅輸入の拡大は年初来で14%下落している銅の国際価格を幾分下支えしている。

商品先物会社、新湖期貨の銅担当アナリスト、Lian Zheng氏は「中国では信用がタイトな状況が続くため、銅を裏付けとする資金調達の需要は第3・四半期に引き続き堅調となるだろう。銀行は中小企業への貸出を増やすよう命じられる可能性があるが、銀行はリスク管理を望むため、それは起こらないだろう」と指摘。「(資金調達のための銅の)輸入による裁定取引が今後も魅力的であり続ければ、年内の銅輸入は堅調かもしれない」と述べた。

輸入される銅は実際に消費されるわけではなく、中国の銅需要を膨らませているほか、在庫が積み上がっており、こうした資金調達活動が弱まれば、銅価格の重しとなりそうだ。また、「影の銀行(シャドーバンキング)」を取り締まろうとしている中国政府の意向に冷や水を浴びせる可能性もある。

中証期貨の首席分析官、景川氏は「最近の流動性ひっ迫により、銅を裏付けとする資金調達に興味を示す企業が増えた」と話す。

国際通貨基金(IMF)は、シャドーバンキングが中国の主要なリスクの1つだと指摘。中国人民銀行(中央銀行)は、シャドーバンキングの規模が総融資残高の2割を超えると見積もっている。

<貿易「水増し」防止措置が背景>

銅はドル建てのため、輸入業者は銅を担保として利用することで人民元建て融資よりも低い金利で融資を受けることが可能だ。

中国政府は5月以降、銀行に対し、外貨建て融資を実行する前に取引のより詳細な資料の提出を義務付けている。投機資金を呼び込むために貿易を「水増し」することを防ぐための措置だ。

これにより、保税倉庫レシートを担保として利用する取引が現物銅を担保とする取引に比べ影響を受けており、企業が銅を輸入する要因となっている。

業界関係者によると、銀行も融資を正当化するため、現物銅を保有していることを示す資料を借り手に要求。これも銅輸入を増やす要因となっている。

中国による精製銅の輸入は5月に前月比27%増。6月には6%増の37万9951トンとなり、9カ月ぶりの高水準となった。

融資に見合う現物銅が不足していれば、外為当局によって取引業者資格をはく奪される恐れがあるほか、クロスボーダーの人民元取引を行う権利を失う恐れもある。

<小規模な銅取引会社に影響>

邁科金属の何金碧董事長は、このほど香港で開催された業界の会議で、取引の監視が強化されたことにより、比較的小規模の銅取引会社約2000社が影響を受けていると明らかにした。

銀行は比較的小規模な企業を対象に、返済期間を6カ月から90日に短縮したほか、融資保証金の比率を従来の10%から20─30%に引き上げた。

一方、大企業の業務は通常通りで、融資がなかなか受けられない一部小規模企業の仲介役になっている。

スタンダード・チャータードのアナリスト、ジュディ・ジュー氏は、どこがまともな取引会社なのか、どこがさまざまな裁定取引による利益獲得手段として銅輸入を利用している投資家なのかを判断するのはほとんど不可能なため、銅を裏付けとした資金調達を排除することは難しいとの認識を示す。

銀行は、簿外融資として扱うことができ、中国政府が定める月間の融資枠にとらわれないこうした取引を奨励しているとされる。

中国のある銅取引会社マネジャーは「われわれには、金利や為替相場の差異を通じてどのようにお金を稼ぐか、もしくはてっとり早くキャッシュを得るための金融商品への投資方法といったことを伝授してくれる銀行マネジャーがついている」と話している。

(Fayen Wong記者;翻訳 川上健一;編集 山川薫)



コラム:中国GDP減速の「真相」
2013年 07月 16日 13:35 JST
[北京 12日 ロイターBreakingviews] - By John Foley

中国にとって2013年は、国内総生産(GDP)の伸び率鈍化が明らかな1年になりつつある。8%だった経済成長目標は今年に入って7.5%に引き下げられた。中国経済に何が起きているのか。ここで、減速の「真相」を見てみよう。

<減速は本物だが相対的>

習近平国家主席は当局にGDPより生活の質に留意するよう求めているが、投資家が注視するのはやはりGDPの伸び率だ。公式目標7.5%は、1990年以降で最低の伸び率となる。目標の引き下げを政府が公式に認めたことは、これまでの常識が打ち破られたことを示している。つまり、8%以下の成長率では、失業者と社会不安が増加するリスクが高まるという常識だ。

中国専門家にしてみれば、成長率6%というのは突拍子もなく聞こえるはずだ。中国が2桁台の成長を続けていたのはつい最近のことだからだ。しかし、他の中所得国の水準と比べれば、中国は依然として優等生と言える。国際通貨基金(IMF)は、2013年の中南米と中東の成長率予想を3%としている。

<3つの要因>

中国経済減速の要因の1つに、輸出需要の低迷が挙げられる。6月の輸出は前年同月比3.1%減と特に低調だったが、過去12カ月の平均伸び率も2010年初め以降で最低となった。需要低迷に加え、人民元高も手痛い。しかし、中国が裕福になるに従い、人民元が高くなるのは自然なことであり、安価な労働力を背景とした輸出が減退していくのも当然だと言える。

第2に、中国の経済成長に「重力」がかかってきたことだ。同国の労働人口はもはや増加しておらず、都市化のペースも減速している。そして、さらに懸念すべき問題として投資効率の低下が挙げられる。

最後に、中国当局がこうした重力と逆らおうとしていないことだ。政府は2009年に大規模刺激策を実施しており、何をなすべきかは分かっている。財政赤字が対GDP比わずか2%であり、大手銀行を完全にコントロールしている同国には手立ては十分にある。また統計もコントロールしているため、どんな数字を出すことも基本的には可能だ。当局が低いGDP伸び率に満足していることは明らかだ。

<信用引き締めが原因ではない>

中国の経済成長は借入を燃料に加速してきた。しかし、信用引き締めが減速をもたらしたとの兆候はまだ明確には見られない。「シャドーバンキング(影の銀行)」を取り締まろうとする当局の取り組みが影響している可能性はあり、実体経済の流動性を示す指標であるトータル・ソーシャル・ファイナンシング(社会融資総量)は最近減少した。しかし、ソーシャル・ファイナンシングは6カ月平均で見ればまだ増加している。

それでも問題がないわけではない。利益性が低下し、レバレッジが拡大する中、企業はより多くの利益を債務返済に回する一方、投資を減らさなくてはならない。こうした状況について、中国政府がそれほど頭を悩ませているようには見えない。前回の刺激策で当局者らは、強制的な巨額融資は無駄や無謀さにつながると学んだようだ。

<良い減速になる可能性も>

重要な問題は経済成長のペースではなく、社会への影響だ。中国の最近の経済成長はあまりにも速過ぎたというもっともな意見もある。生産性向上を追求するあまり、深刻な環境汚染を引き起こし、汚職を育む気風も培われた可能性も否定できない。

より緩やかな経済成長の下では、長い目で見れば中国をより幸福で健康な場所にしていく投資が可能になるかもしれない。それには、低公害型の生産技術や本物のイノベーションなどが含まれる。しかし、世界最高層ビルや世界一長い海底トンネル、大胆な宇宙計画など最近発表されたプロジェクトを見る限り、昔からの習慣はそうたやすくは消えてなくならないようだ。

<ハードランディングにあらず>

中国がハードランディングするという投資家たちのうわさ話は役に立たない。雇用が十分に確保され、社会不安が小さいのなら、GDPは年率2%の伸びでも許容範囲だろう。逆に、労使関連のデモや倒産が急増するなら、年率7%の伸びでも事態は厳しくなる。

現在、中国の政策立案者たちは機が熟すのを待っているのだろう。彼らには強制的な融資や人民元の切り下げ、巨額なインフラ投資などの道具があるが、これらは強力であると同時に危険性もはらんでおり、その結末は定かではない。差し当たり、「様子見」というのが妥当な対処法のように見える。






小笠原誠治の経済ニュースに異議あり!
中国当局は影の銀行の実態がつかめていないと言う麻生大臣
2013/07/16 (火) 15:17


 麻生財務大臣がまた言っています。中国は、影の銀行、つまりシャドーバンキングの規模が掴めていない、と。そして、誰も実態を掴めていない状況こそ問題である、と。

 どう思います?

 確かに、シャドーバンキングは影の存在であり、そして、銀行のバランスシートには出てこないので、外部の者がその実態を知るのが困難なことはそのとおりでしょう。

 しかし、シャドーバンキングの額自体は、皆それぞれの関係者がちゃんと把握している筈。だって、それで商売をしている訳ですから。正規の帳簿には出ていなくても、ちゃんと裏帳簿がある筈。従って、当局が関係者に情報を提供するように強要すれば、必ず大よそのところの数字は分かると思われるのです。

 しかし、それにも拘わらず麻生大臣は、「どの位の総額になっているか中国自身が掴めていない」と言います。
 
 何故、そこまで自信をもってそのようなことを麻生大臣は言うことができるのでしょう? 中国のカウンターパートから、そのような情報を得たのでしょうか? それはあり得ません。

 彼がそのような発言をするのは、恐らく金融庁の事務方からそのようなことを吹きこまれたからでしょう。つまり、金融庁の事務方は、中国のシャドーバンキングに関する正式のデータを保有していない、と。

 しかし、幾ら金融庁が正式なデータを保有していなくても、中国当局がそのような情報を保有していないという証拠にはなり得ない。当たり前でしょう?

 もう一度言いますが、シャドーバンキングの規模自体を知ることが、それほど難しいとは思えないのです。これが不良債権がどの位あるかとか、損失がどれ位見込まれるのか、ということであれば、いろいろと不確定な条件が関わってくるので、確かに算出は難しいと思われます。しかし、シャドーバンキングの額自体を知ることが何故それほど難しいのでしょうか?

 それに、先日の短期金利の急騰劇でも明らかになったように、金融機関を生かすも殺すも当局の考え次第である訳ですから、当局が流動性の供給と引き換えにシャドーバンキングに関する情報を求めるのであれば、どのような金融機関でも正確な情報を与えない訳にはいかないのです。つまり、偽装したくても偽装することはできないのです。

 本当にどうして麻生大臣は、中国が実態を把握していないと公言して憚らないのでしょう? しかも、繰り返してそのようなことを言っているのです。麻生大臣は、中国当局自身が分かっていないと言うからには、例えば米国も分かっていないと思っているのでしょうか?

 私は、米国は、少なくても大まかな数字をちゃんと把握していると思うのです。だって、そうでしょう? その位の危機管理を米国がしない訳がないではありませんか? それに、普段から様々な技術を駆使して世界各国の秘密情報を収集している訳ですし、さらに、中国は世界で一番米国債を保有している国ですから、もし中国でバブルが破裂でもしたら、それこそ一番影響を受ける可能性があるのは米国である訳ですから。

 私は、日本の財務省と金融庁の仕事を所管する麻生大臣自身が、中国のシャドーバンキングの実態をイマイチよくご存じないことこそが、大きな問題ではないかと思っているのです。つまり、「誰も実態を掴めていないことが問題だ」なんて不用意な発言をするのではなく、「国際社会としても、中国に情報の提供を求めていく必要がある」などと、国民を安心させてくれるような発言をすべきだと思うのです。


02. 2013年7月16日 20:24:56 : niiL5nr8dQ

コラム:新興国通貨は買いか、クロス円の秘めた反発力=亀岡裕次氏
2013年 07月 16日 19:57 JST
亀岡裕次 大和証券 チーフ為替ストラテジスト(2013年7月16日)

5月から6月にかけて、ドル円は一時下がりながらも堅調に推移したのに比べ、クロス円は資源・新興国通貨を中心に軟調に推移した。その理由を簡単に整理すれば、こういうことだろう。

米国で量的緩和(QE)の縮小観測が浮上して金利が上昇し、ドル高に働いた。同時に、米金利上昇が世界的株安などのリスク回避行動を招き、円買いやドル買いを誘発する一方で、資源・新興国通貨売りに作用した。

また、米国経済の回復に比べ、資源・新興国経済の回復は鈍い。そして、金融緩和効果などを受けて先進国の株価が堅調に推移しているのに比べ、新興国の株価は弱い。

つまり、上記の理由を別の視点から見れば、世界経済の回復ペースが上がらないなかでの、米金利上昇と、それを受けたリスク回避、新興国経済への不安が、資源・新興国通貨の対ドル相場を押し下げ、ドル円は上昇してもクロス円は上昇しにくい状況を生んできたと言えよう。

<先進国経済の回復が新興国に波及へ>

今後もこうした相場展開が続くのか、それとも変化が起きるのかは、景気動向がカギを握る。以下の3つのパターンに大別されよう。

●新興国経済の鈍化が先進国に波及して世界の経済成長が減速し、リスク回避による「円高、資源・新興国通貨安」

●世界経済の成長に大きな変化がなく、相対要因による「ドル高」

●先進国経済の回復が新興国に波及して世界の経済成長が加速し、リスク選好の高まりによる「円安、資源・新興国通貨高」

過去の経済成長率を振り返ると、2007―09年のピーク時に年6%程度あった新興国と先進国の成長率格差はその後縮まり、12年には年4%程度まで縮小した。中国をはじめ、新興国の投資主導の経済成長が限界に達し、消費と投資のバランスがとれた経済成長に移行するまでは成長率が上がりにくい状況にあるためだ。

また、先進国の経済成長率が10年以降に低下したことも、経常・資本取引における新興国への資本流入の鈍化を招き、両者の成長率格差を縮める方向に働いたものと見られる。

先進国と新興国の経済成長率は連動しやすい。2000年代に新興国は世界の工場(製品供給拠点)としての役割や資源供給をテコに経済発展を遂げた。結果、世界の名目国内総生産(GDP)に占める新興国経済の割合が4割まで高まるとともに、先進国経済との結びつきを強めた。

2000年から12年までの間で、両者の成長率が逆方向に動いた年は、世界的な好景気のなか、サブプライムローン問題から米国経済が先行して減速した07年だけである。また、世界の経済成長率や商品相場が上がる時期には、先進国の経常赤字が拡大し、新興国の経常黒字が拡大する傾向にある。つまり、先進国の景気が拡大すると、新興国がその恩恵を得る構図にある。

こうしたことから、新興国経済によほど大きなマイナス要因が発生しない限り、先進国の経済成長率が上がれば新興国も上がる可能性が高い。

<商品相場反発の可能性>

経済協力開発機構(OECD)加盟33カ国景気先行指数は対トレンド比で12年8月を底に上昇を続けており、13年5月には2年ぶりの高水準となる100.6に上昇した。米国、ユーロ圏、日本ともに同指数は上向いており、先進国の回復傾向は明らかだ。

一方で、新興国の同指数は全般的に上向いておらず、いずれも長期トレンドの100をやや下回る水準にある。だが、それでもOECDに主要新興6カ国(ブラジル、メキシコ、中国、インド、ロシア、南アフリカ)を加えた景気先行指数は上向いており、4月と5月は100を上回った。

つまり、新興国の景気回復はペースアップしていないものの、先進国主導で世界景気は上向きつつある。じきに新興国景気にもプラス効果が波及し、回復傾向に転じる可能性がありそうだ。

さて、新興国の景気回復が鈍い一因には、商品安が資源国にマイナスに働いたこともある。ただし、世界の経済成長率と商品相場は連動しやすく、経済成長率とともに商品相場が上向きに転じると、資源国の経済成長率は上がりやすくなる。

国際通貨基金(IMF)が9日に発表した経済見通しによれば、世界の実質GDP成長率は12年3.1%、13年3.1%、14年3.8%と、今後の回復が予想されている。主要国際商品指数は、12年6月と13年4―6月にかけて下落したが、先進国の景気回復を受けて上昇に転じる可能性が十分にある。また、前述の通り、新興国を含む世界の景気先行指数が長期トレンドを上回り始めたことから、需給ギャップの引き締まりにより商品相場が反発しやすいとも言えるだろう。

<クロス円はドル円以上に上昇か>

5―6月に、米連邦準備理事会(FRB)のQE縮小観測が米金利上昇をもたらし、それがドル高に作用するとともに株安や商品安などリスク回避に作用した。しかし、その後は鈍化していた米景気回復が再び加速する兆しを見せ始めたことで、市場のリスク許容度が上がり始めており、金利が上昇しても株価や商品相場が下がりにくくなってきた。

しかも、米国の金利上昇ペースは、これまでに比べ緩やかになる可能性が高い。すでにフェデラルファンド(FF)金利先物などは15年初めの0.5%への利上げを織り込んでいる。バーナンキFRB議長が言うように、米景気回復が順調に進んで年内に資産買い入れを減額し始め、14年半ばに買い入れを停止して利上げまでに経済状況を見極める期間を置くとすれば、早くても利上げは15年初め頃になるだろう。

したがって、早期利上げ期待の高まりによる金利上昇は限界に近づいている。米国の景気改善が進めば、将来の利上げペースが速まるとの期待から長期金利が上昇するにしても、大幅には上がりにくいだろう。

そして、米金利上昇の鈍化が、ドル高圧力を弱めるとともに、株高・商品高などリスク選好に働くだろう。資源・新興国通貨は、対円はもとより、ドルに対しても反発することになるだろう。

たとえ金利面のドル高圧力が弱まっても、同時にリスク選好の円安圧力が強まることになるだろうから、ドル円は上昇基調を維持すると考えられる。今後の為替市場は、ドル円も上昇するが、クロス円はそれ以上に上昇するというリスク選好型の相場展開になると予想される。

*亀岡裕次氏は、大和証券の投資戦略部担当部長・チーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

 
 


 


 


 

中国国有企業利益、上半期は7%増=財政省
2013年 07月 16日 19:08 JST
[北京 16日 ロイター] - 中国財政省は16日、2013年上半期の国有企業(金融除く)の利益が前年同期比7%増の1兆1100億元(1800億ドル)になったと発表した。

前年同期に利益は11.6%減少していたが、今期は改善した。ただ、2011年の上半期に記録した22.3%増は大きく下回り、景気の減速が浮き彫りとなった。

業界別でみると、電力や電子機器、石油化学、不動産開発の各企業の利益が力強く伸びた一方、非鉄や石炭、化学、運輸では大きく減少した。

中国では国有企業が主要産業の中で大きな位置を占めている。5月ユーロ圏貿易収支は152億ユーロの黒字、輸入急減で黒字幅拡大
2013年 07月 16日 19:31 JST  
7月16日、EU統計局が発表した5月のユーロ圏貿易収支は、季節調整前で152億ユーロの黒字となった。輸入の急減で黒字幅が拡大した。フランクフルトで2011年4月撮影(2013年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ブリュッセル 16日 ロイター] - 欧州連合(EU)統計局が発表した5月のユーロ圏貿易収支は、季節調整前で152億ユーロの黒字となった。前年同月は66億ユーロの黒字だった。輸入の急減で黒字幅が拡大した。

市場予想は118億ユーロの黒字だった。
 

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7月独ZEW景気期待指数は予想外の低下、ユーロ売られる
2013年 07月 16日 19:02 JST  
7月16日、ドイツの欧州経済センター(ZEW)が発表した7月の独景気期待指数が前月の38.5から低下。予想外の低下を受け、ユーロが対ドルで下落した。マドリードで2011年1月撮影(2013年 ロイター/Andrea Comas)

[マンハイム(ドイツ) 16日 ロイター] - ドイツの欧州経済センター(ZEW)が16日発表した7月の独景気期待指数は36.3となり、前月の38.5から低下した。予想外の低下を受け、ユーロが対ドルで下落する一方、独連邦債先物は質への逃避買いで上昇した。

ロイターがまとめたエコノミスト予想中央値は39.6だった。

ZEWの7月指数は、7月1日から15日にかけて調査したアナリスト、投資家265人の見解を基に算出された。

現況指数は10.6。6月の8.6から上昇し、予想の9.0も上回った。

ZEWのエコノミスト、フリーダー・モキンスキ氏は、金融市場の専門家はドイツ経済について概ね前向きな予想を維持していると指摘。 「今回の結果は、最近発表された鉱工業生産統計や貿易統計が弱かったにもかかわらず、ドイツ経済の強さを引き続き確信していることを示す」と述べた。
 

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03. 2013年7月17日 01:29:08 : niiL5nr8dQ
【第883回】 2013年7月17日 週刊ダイヤモンド編集部
中国の外貨準備に変調の兆し
日米金利の不安定化要因に

米財務省にとって国債の最大の「得意先」となる中国の動向には、神経をとがらさざるを得ない
Photo by Hiroshi Tanaka
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 3兆4426億ドル(約344兆円、3月末時点)もの資金を抱え、世界最大の「ファンド」ともいえる中国の外貨準備に、変調の兆しが見え始めた。

 世界経済の牽引役だった新興国の成長に陰りが見え、世界のマネーが先進国へと逆流する中で、中国においても資金流入が急速に縮小。2012年には、中国の資本・金融収支が14年ぶりに168億ドル(1兆6800億円)の赤字となった。

 中国国家外為管理局は、4月初めに公表した12年版国際収支報告書の中で、「さらなる資本の流出を排除できない」との見解を示している。

 海外から中国への資金流入が細った結果、起こったのが10年以上にわたって膨張していた外貨準備高の頭打ちだ。

 2000年代後半以降、外貨準備高は毎年40兆円前後にも及ぶ猛烈な勢いで拡大。世界全体の外貨準備高の3割を占めるまでに膨張していたが、12年は前年の3分の1にも満たない13兆円の増加にとどまった。今年に入っても、増加ペースは鈍いままだ。

中国が売る米国債の不気味

 中国の外貨準備の変調は、米中長期国債の売買にも見て取れる。4月の動向を見ると、中国は2カ月連続の売り越し。国債をはじめ米財務省証券を最も保有しているのは中国で、1兆2649億ドル(126兆円)。2位は日本で1兆1003億ドル(110兆円)だ。

 中国はこれまで、世界各国からの資金流入に伴う通貨高を抑制するため、人民元を売ってドルを買う為替介入を繰り返してきた。その結果、介入を担う中国人民銀行の外貨準備高は、10年前に比べ実に11.5倍にも膨らんでいる。

 為替介入に伴って購入した資産の多くは、米国債などドル建ての資産だ。外貨準備のうち6割強がドル建て資産とみられている。

 つまり、中国の外貨準備の頭打ちは、米国債をこれまで一貫して買い支えてきた「巨人」が突如として消え、金利が不安定化することを意味する。

 6月の第3週に、米長期金利が0.4%以上も急上昇(国債価格は下落)し、週間としては過去10年で最大の上げ幅となったのは、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和の縮小観測という要因に加えて、外貨準備を抱える中国人民銀行が、「米国債を整理し始めたことも影響している」と読む市場関係者は少なくない。

 そもそも、中国はドル資産以外に外貨準備の運用先を多様化する動きを、以前から強めている。今年初めには、外貨準備の多様化を推し進める専門組織を、外貨管理局内に設置した。

 今後、中国の外貨準備が縮小に向かい、加えてドル資産への配分を減らすことになれば、米国債の売り圧力が一段と強まるのは必至だ。そうなれば米長期金利は上昇スピードを強め、さらには連動性の高い日本の長期金利の上昇にもつながるリスクがある。

 折しも、「影の銀行(シャドーバンキング)」問題をはじめ、高成長を続ける中国経済のひずみが顕在化する中で、外貨準備の変調は、日本にとって決して対岸の火事ではない。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
 


 


 


 

 


 


 
 
米経営者の報酬に株主の厳しい視線
年5200万ドルは妥当か
The Economist
>>バックナンバー2013年7月16日(火)1/1ページ
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米医療系卸大手マッケソンのCEOの年間報酬額は、5200万ドル(約52億円)――。株主からは厳しい視線が寄せられている。だが、同氏はCEOを14年務め、時価総額を4倍以上拡大させた。実績に見合う報酬額とはいかほどなのか。


 米国の医療品及び医療機器の卸大手、マッケソンでCEO(最高経営責任者)を務めるジョン・ハマグレン氏にとって今年は実入りが多い年だ。3月までの1年間の報酬額が計5200万ドル(52億6400万円)と、前年の4600万ドル(46億5600万円)を大幅に上回ったからだ。

 しかし、モノ言う株主たちが不満を募らせていることを考えると、あの派手な衣装とパフォーマンスで一世を風靡したピアニスト、故リバラーチのように、いかに批判されようとも最終的にカネがもらえればいいということになりそうだ。彼らは今月後半に開かれる年次株主総会で、役員報酬に対してだけでなく、ハマグレン氏の再任の是非を問う株主投票についても「ノー」を投じるように促している。

 この運動を展開しているのは、労働組合「勝利のための変革」の年金ファンドで、同ファンドはハマグレン氏の報酬パッケージはS&P500種株価指数の対象になっている企業の中で「最も法外に高い1つ」と断じている。中でも今回決まった報酬に関する契約で、彼の年金額が2420万ドル(24億4900万円)にも上ることを問題視している。ハマグレン氏の年金総額は今や1億5900万ドル(160億円)も積み上がっており、あらゆる現役経営者の年金額をも上回っているからだ。

 マッケソンの役員報酬について昨年は、株主の63%しか承認しなかった。機関投資家は通常、経営陣に関する株主投票については反対票を投じようとはしないが、この数値は機関投資家を含め多くの株主が、同社の役員報酬については大きな不満を持っていたことを示している。米シンクタンクのマンハッタンインスティチュートによれば、米上場企業売上高上位250社において株主提案が過半数の支持を得られたケースは今年の場合、現時点ではまだわずか7%に過ぎない。これは2006年以来の低い値だ。しかも250社のうち株主投票で役員報酬が否決されたのはわずか2社だ。

時価総額を3倍以上に引き上げてももらいすぎか

 マッケソンは批判に対して、現金で支払う報酬額を減らしたり、株式オプションを行使する際の条件を厳しくするなど報酬体系を見直していると反論する。そして、役員たちの報酬が長期的な株主価値をもたらすことにつながるよう設計していると強調する。例えばハマグレン氏の場合、報酬の92%を業績連動にしているという。

 確かに、同社の業績を考えると彼の報酬は常軌を逸したものではない。少なくともやや寛大な企業の報酬としては一般的と言えるだろう。

 彼の年金にしても14年以上に渡り蓄積してきたものであり、一般の大企業経営者の水準に沿ったものと言える(経営者の在任期間は大抵、彼ほど長くない)。2013年に報酬の年金額部分が急増したのは、保険計理士による想定金利が変更されたことが大きい。

 ハマグレン氏が2001年3月にCEOに就任した時、マッケソンの株価は27ドル(2733円)だった。それが今や4倍以上の115ドル(1万1600円)に上昇している。この間、S&P500種株価指数は40%しか上昇していない。

 マッケソンの時価総額は190億ドル(1兆9200億円)増大したが、ハマグレン氏の受け取ってきた報酬は合計してもその約3%にしか満たない。

 多くの人から見れば、いかに業績を改善させたとしても、これほど莫大な報酬額を正当化することはできないだろう。要求の厳しい投資家からすれば、ハマグレン氏の報酬は妥当なのかもしれない。そして、他の莫大な報酬を受け取っている経営者たちにもハマグレン氏のような業績を弾き出して欲しいと願っているのだろう。

©2013 The Economist Newspaper LimitedJun. 29th, 2013 All rights reserved英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

 


 


 

 


 


 
 


 


 
第288回】 2013年7月17日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
それでも変だよ、公的年金運用!
前年度は過去最高益だが
積立金の取り崩しが続くGPIF

 はじめに、GPIFのホームページから、「【参考資料】年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」と題する、公的年金資産の運用検討資料をダウンロードしてみてほしい。

 先般の公的年金の運用方針の変更を決めた検討過程で、使われた資料だ。いくらか探しにくい場所にあるが、ホームページに載っている。これが、今回の拙稿で取り上げる話題の中心だ。

 厚生年金と国民年金の積立金は、通称「GPIF」こと年金積立金管理運用独立行政法人によって運用されている。GPIFはざっと120兆円の資産を運用する世界最大級の機関投資家だ。

 日本の公的年金は、確定給付の企業年金のように、個々の加入者の将来給付に必要な積立金が確保されている積立方式ではなく、現役世代の年金加入者から集めた年金保険料を受給者世代に支払う賦課方式だが、賦課方式のわりには大きな積立金を持っていて、積立金が一種の余裕として機能するのと同時に、積立金の運用益を年金財政に活用しようとしている。

 さて、この積立金の運用は、2012年度(2013年3月末が年度末)にあって、アベノミクスの金融緩和による円安と株価上昇の効果で、約11兆2000億円の利益が出た。利回りは10.23%であり、これは、公的年金の積立金が独立して運用されるようになった2001年以降の最高記録だ。慶賀の至りである。

 しかし、2012年度には4.3兆円が年金の支払いに充てるために取り崩され、運用資産額の純増は約7兆円に止まる。今後、しばらく積立金の取り崩しは続くし、運用が常に昨年度のように好調なわけではない。昨年の好結果を喜ぶとしても、「安心」にはほど遠いように思われる。

リスク資産の配分を増やす方針へ
基本ポートフォリオ変更の影響

 さて、現時点で巨額の資産を国民から預かっている以上、GPIFは運用にベストを尽くすべきだ。このことは当然であり、筆者も含めて、誰も反対しないだろう。そのGPIFが、先月、年金積立金の運用にあたって定めていた「基本ポートフォリオ」の変更を発表した。

 基本ポートフォリオとは、「国内債券」「国内株式」「外国債券」「外国株式」「短期資産」といった大まかな資産種類(アセット・クラス)に対する標準的な運用資金配分比率を定めたもので、これが変更された。

 変更内容は以下の通りだ。

・「国内債券」 67%→60%

・「国内株式」 11%→12%

・「外国債券」 8%→11%

・「外国株式」 9%→12%

(※「短期資産」は5%で変化なし)

 相対的にリスクが小さい「国内債券」を減らす一方で、いわゆるリスク資産への配分を増やす方針変更だ。

 GPIFの運用資産は120兆円ほどあるので、1%の変更でも計画通りに運用を変化させると、1兆円を超える売買が発生する。ちなみに、日銀が4月4日の通称「異次元緩和」で発表したETF(上場型投資信託)による株式買い入れ予定額が1年で1兆円であるから、これよりも効果が大きい。

 もっとも、「国内株式」「外国債券」「外国株式」の3資産はいずれも昨年来の円安・株高で時価が成長しており、計画の変更に先んじて運用の実態が変化しているから、新たな「買い」が直ちに市場に発生するわけではない。

 しかし、基本ポートフォリオでの配分が小さいままだと、「リバランス」(資産配分のバランスを整える売買)によって「売り」が発生するのではないかという圧迫懸念が、市場関係者に生じる。基本ポートフォリオの変更が意味を持たないわけではない。

 また、公的年金の積立金の一部を代行運用している厚生年金基金(一昨年度末で残高約17兆円)では、この代行運用部分(資産の3分の2以上あると推定される)について「GPIF並」の運用利回りが必要な仕組みになっているので、GPIFの基本ポートフォリオ変更は、彼らの運用にも影響を与える。

 加えて、GPIFの運用方針の変更を受けて、地方公務員や国家公務員などの年金を運用する共済年金でも運用方針の見直しを行う公算が大きく、これらについては、まだ何も決まっていないが、リスク資産への資金配分ウェイトが増加する可能性が大きいのではないかと「予想」しておく(注;筆者は、国家公務員共済組合連合会の運用委員会の委員だが、上記は個人的な「予想」だ。同連合会では運用方針の変更を決めてはいない)。

 確定給付企業年金(45兆円)、企業年金連合会(10兆円)、さらには個人が運用する確定拠出年金(5.5兆円)などの資金がどう動くかについて、確かなことは言えないが、相場の好調に加えて、GPIFのリスク資産増の方針変更の影響を受けて、リスク資産への配分が増えるのではないかと、「予想」できそうだ。

国内債券の期待リターンは3.0%
そもそも前提条件が変ではないか?

 さて、いよいよ冒頭でダウンロードしてもらった参考資料を見てみよう。いわゆる「識者」が、120兆円の資産運用の重責を踏まえながら検討に用いた英知の結晶なので、一国民としても個人投資家としても、興味深い資料だ。

 1ページ目には、平成24年10月の会計検査院の指摘を踏まえて、厚生労働省より「基本ポートフォリオについて定期的に検証を行い、必要に応じて見直すよう」要請があったことが記されている。

 役所の要請がなくても、運用機関としては、運用方針を随時見直して、必要があれば変更するのが当たり前ではないかと思われるが、まあいいだろう。

 投資家として最も興味深いのは、個々の資産クラスにおける「期待リターン」だろう。「期待リターンの検証」というタイトルが付いたページを見てみよう。

 まず、変更後も60%のウェイトを占める最大の資産クラスである「国内債券」を見る。

 期待リターンの構成要素は、「期待リターン=長期金利」であるとし、期待リターンを3.0%としている。この推計方法としては、「イールドカーブから将来の長期金利水準を推計」として、推計結果に対して「将来の長期金利水準は長期的には2.5%〜3.0%と推計され、期待リターンGPIFはこの範囲内にあり妥当」と述べている。

現在の金利が期待まで上がる過程で
債券価格の下落に伴う大損失が発生

 読者は、これらをどう思われるか。

 ちなみに、現在の長期国債利回りは、10年債で0.82%、20年債で1.72%、30年債でも1.85%だ。アベノミクスの効果を信じて、将来のインフレ率の上昇を予想するのはシナリオとしてあり得るものの1つではあろうが、必ずそうなるとは限らない。

 それよりも重要なのは、資産の運用は現在も含む当面の期間について現実に行われるものだということだ。現状では、長期国債、あるいは超長期国債でも上記のような利回りにしかならないのだ。

 また、現在の金利が、たとえば3%まで上昇する過程では、債券価格の下落に伴う大きな損失が生じるはずだ。年利3%で幸せに運用できるのは、その後の話だ。

 基本ポートフォリオが長期を想定した運用計画だとしても、現状では不可能なリターンを前提条件として「これで運用できるとしよう」としてお金の運用を考えるのは、不誠実ではないだろうか。

 一般常識で考えてみよう。他人のお金を預かって運用しなければならないときに、不確実性を伴うが好都合な将来の予想利回りと、現実に運用可能と思われる程度の利回りと、2つの想定利回りがあるとしよう。この場合、楽観的な予測よりも、より厳しいほうの利回りを前提条件として運用方法を考えるのが、普通のやり方ではないか。

 率直に言って、筆者は現時点で「国内債券」の運用利回りを3%と想定するような人を信用して、自分のお金を預けたいとは思わない。国民の大多数も、そうではなかろうか。

 続いて、現在限りなくゼロに近い利回りでしか運用できない「短期資産」の期待リターンは、1.9%とされている。これは、長期金利3.0%から過去の長短スプレッドの平均である1.1%を引いて求めたものだとされているが、こちらも現実的に運用可能な利回りでは全くない。

 その他の資産の期待リターンは、「国内株式」が4.8%(長期金利3.0%+長期金利スプレッド1.8%で決めたらしい)、「外国債券」が3.2%(短期金利+リスクプレミアム1.3%)、「外国株式」が5.0%(短期金利1.9%+リスクプレミアム3.1%)となっている。

 これらの数字にもツッコミどころはあるが、前提条件の「嘘」がわかりやすい「国内債券」と「短期資産」の2つで十分だろう(合計で全体の65%にもなる)。

非現実的な厚労省の計算
「嘘」の理由と弊害

 それにしても、学者に実務家も加わった「識者」たちが、このような明らかにおかしな前提条件を基に公的年金の運用を考えるのは、なぜなのか。

 筆者の推測を言うと、厚労省による年金財政の検証条件と辻褄を合わせるためだろう。

 厚労省は、年金積立金の運用に関して一定の前提条件を仮定して年金財政について計算し、「これで大丈夫だ」という結果を得ているが、この条件が非現実的なのだ。

 そして、GPIFの運用委員会が非現実的な前提で基本ポートフォリオをつくり、これで年金財政の前提条件に合致した運用が可能であるかのような体裁を整えることで、公的年金制度全体の嘘が追認される仕掛けになっている。

 当たり前のことだが、年金財政についての計算に使う想定利回りは、運用の実情(リスクを勘案してなお現実的に目指すことができる期待リターンなど)を踏まえたものであるべきだ。

「国内債券の期待リターンが3%」「短期資産の期待リターンが1.9%」といった前提条件は、おとぎ話の「裸の王様」が自分では着ていると思っている架空の着物のような、たちの悪い冗談だ。

年金積立金は裸では困るし
厚労省は王様ではない

 運用について知らないふりを続ける嘘つきなら、「“長期の”運用が前提だから、これでいいのだ」と言い張るかも知れない。

 しかし、運用計画を立てる際の「期間」をどの程度の長さに想定するかは、ポートフォリオで可能な調整速度を基に考えるべきものだ。

 現実のポートフォリオは、前提条件の変化に合わせて変化させることがある程度可能であり、たとえば「5年以上そのまま」といった前提条件の下に、まして現実にあり得ない平均リターンを想定して運用計画を考えるべきものではない。GPIFの資産は確かに巨額だが、債券でも株式でも年間に数兆円程度の増減は可能だ。

 嘘の弊害は、年金運用と年金制度の両方に及ぶ。GPIFにプロフェッショナルな運用人材が必要であるとか、公的年金資産をもっと有効に運用すべきだといった意見(しばしば金融業者を儲けさせるための意見だが)を語る前に、年金運用の議論の前提にある明らかな「嘘」を排除することが大事なのではないだろうか。

 年金積立金は裸では困るし、厚労省は王様ではない。

 http://diamond.jp/articles/print/38862

 


 


 
 


 


 


 
第22回】 2013年7月17日 田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
米中韓の関係強化で変わり始めたアジア情勢
ポピュリズムの克服に求められる「政治の決意」
 近年、いずれの国においても高揚するナショナリズムを背景に勢いを増すポピュリズムが、外交に大きな影響を及ぼす傾向にある。外交は現実を踏まえて冷静で緻密な国益計算の上に成り立つべきものだが、はたしてポピュリズムを乗り越えることができるのであろうか。どの国においても政治の決意が試されている。

米中首脳会談に象徴される
東アジアの構造変化
現実を踏まえた戦略を

 日本は、中国の台頭による東アジアの構造変化と中国リスクの大きさという現実を踏まえた戦略を、講じていかなければならない。

 日本が直視すべき東アジアにおける構造変化とは、どのようなものだろうか。まず、中国の台頭とともに、米国にとっての中国の重要性は圧倒的に高まった。かつて米国の最大の経済的パートナーとして日本が占めていた地位(米国の貿易総額に占める割合や財務省証券の保有高など)は、中国にとって代わられている。

 留学生の数も1990年代は日本が圧倒的に多かったが、今や中国は20万人近く、日本は2万人を数えるに過ぎない。中国系や韓国系などのアジア系米国人の人口は拡大しているが、唯一減少しているのは日系アメリカ人の人口である。

 先月、習近平国家主席とオバマ大統領の初の首脳会談が、8時間にわたりカリフォルニア州サニーランドで行われた。米中間では首脳会談のみならず、戦略経済対話が国務・財務長官レベルで行われ、間断なき対話が続けられている。

 日米のような同盟関係とは質的に異なると言っても、今や米中は世界で最も重要な二国間関係であることは認めざるを得ない。また、オバマ民主党政権は共和党政権、とりわけブッシュ政権のような、価値を尊重し同盟国関係を優先する政権とは異なり、実務重視の政権であることも理解しなければならない。

 韓国もこうした東アジアの構造変化に、敏感に対応をしている。朴槿惠大統領は就任後、米国に次いで中国を訪問先に選び、中国重視の姿勢を示した。韓国にとってみれば、中国は最大の貿易パートナーであり、将来的にもそうなのだろう。

 北朝鮮問題も様相を変化させてきている。中国は北朝鮮に対する姿勢を変えつつあり、国際社会と歩調を合わせ、北朝鮮に対して非核化のために圧力をかけるという方向性が見えてきている。この問題で中国の態度を変えたことが、中韓関係の距離を縮めたことも間違いがない。さらに、韓国は今や米中韓の戦略対話を熱心に推進するようになっている。

 ASEAN諸国も、国によって中国との距離は異なるが、おしなべて中国との経済相互依存関係は強固である。南シナ海の問題もあり、中国の覇権主義的行動に対する警戒心は強いが、安全保障面で米国を東アジアに引き込んだことが安心感に繋がっており、中国を敵視していくという政策はとるべくもない。

経済の減速をはじめとする 
中国の統治リスクと
大国主義の目覚め

 同時に、我々は中国が多大な短期的及び中長期的な統治リスクを抱えていることも、認識すべきである。

 短期的にはまず、経済の停滞が生じるのだろう。中国は過去10%を超える経済成長を達成したが、現在の五ヵ年計画では目標が7%に引き下げられている。4−6月期のGDPの伸び率は前年同期比7.5%と2四半期連続で伸びが鈍った。圧倒的に大きな所得格差がある中国では、成長率が7%を下回れば分配政策が困難となると言われる。不良債権問題も深刻である。

 このような経済的困難が、社会問題に対する不満の引き金となる恐れもある。環境は劣化し、食品安全に対する懸念も大きい。中産階級が増えていくほどに、生活の質の問題が重要となる。そして、習近平政権が最優先課題に挙げる汚職問題。

 ソーシャルネットワークが普及した中国では、政府による情報がコントロールされようとも、国民の不満が大衆運動に繋がっていく可能性は高い。そうなっていけば、共産党における路線対立・権力争いも激化するだろうし、ナショナリズムの矛先が外国に向くという可能性も存在するのだろう。

 中長期的な構造問題、すなわち民主化的な改革が進んでいかないといった問題や、少子高齢化で生産年齢人口が減っていくなどの幾多の課題は、中国の情勢が中長期的にも流動化していく可能性を孕んでいる。

 日本国内においては、外交の最大の課題たるべき「台頭する中国とどう向き合うか」という問いに対する答えのコンセンサスはない。中国の急速な経済成長と政治・軍事・経済的影響力の急速な増大を前に、国内では日中友好の雰囲気は急速に衰えた。

 政権交代を実現した鳩山首相は、米国と一定の距離をおくと共に、東アジア共同体の掛け声のもとに中国との関係強化の動きを見せた。しかし、尖閣問題が日中関係を大きく損なった。

 民主党政権の崩壊後成立した安倍政権では、共産党一党独裁政権への懸念は強く、民主主義的価値観を重視する外交として、ASEAN、豪、インド、欧州などとのパートナーシップの強化を重視する。

 中国のナショナリズムは、どちらかと言えば大国主義への目覚めと言えるかもしれない。中国では日清戦争の敗北から100年間余を屈辱の歴史とし、日本をGDPで追い越した2010年は重要な意味合いを持つ。習近平主席が述べる「新型の大国関係」や「中国の夢」といった概念も、根底にはそのような大国主義の思いが色濃く存在し、警戒心を持たざるを得ない。

 一方で、日本のナショナリズムは、失われた20年を経て国力が低下していくことへのフラストレーションと、表裏一体なのかもしれない。「主権や領土について主張を強めるべきだ」「他国に遠慮ばかりしていてはいけない」という論議も強くなっている。

 主張すべきは主張するのは当然のことであるが、これがポピュリズムに陥ると、外交プロセスの中で日本が強い主張をしていることを国民に示すという方に重点が置かれがちである。外交は結果をもたらさなければ意味はなく、そのためにはプロセスについても、相手を過度に追い込むことがないような配慮も必要な場合がある。

TPPなど日本の抱える
難しい外交課題
国際主義に則り国民の説得を

 日本の今後の外交課題は、国民を説得し、結果をつくるにあたり極めて難しい課題が多い。たとえば、TPPは関税撤廃を基本原則とする以上、コメなどの農業産品も交渉対象とせざるを得ない。

 各国と交渉をまとめるためには、自由化について相当な覚悟がなければならないが、農家を含む農業関係者を説得することが必須となる。思い切った農業改革も進めていかなければならないだろう。

 TPPは経済的意義と同時に、戦略的な意義も大きい。TPPが目的とするところは、自由主義経済体制の高度なルールを確立させるところにある。

 知的所有権保護や投資、あるいは政府調達の透明なルール、さらには国営企業が民業圧迫とならないルールづくりなど、中国などの国営企業を通じて国家の介入が強い国家資本主義とは異なるルールの確立であろう。ポピュリズムを脱し、国際協調主義の路線が主導することができるかの試金石となる。

 北朝鮮問題でも、中国の態度の変化は非核化を前提とする交渉の道を開くことになるかもしれない。その際には、日本はこれまで掲げてきたように、拉致、核、ミサイル問題の包括的解決のための交渉をしていかなければなるまい。

 尖閣諸島の問題も、日中のナショナリズムが対決するというような事態は両方が避ける努力をしなければなるまい。尖閣諸島の主権問題で日本が譲歩する余地はないが、緊張状態を平常に戻すために冷静な考慮を必要とするのだろう。

歴史問題や憲法改正
日本の拠って立つ
国家像の明確化が必要

 外交は究極的には、指導者がどういう国家像を持つかによっても大きく変わる。特に日本の場合には、戦争を日本自身で総括することがなかったこともあり、政治家個々人の歴史観は異なる。

 しかしながら、村山談話は日本政府の歴史認識として総括され、その後20年近く歴代内閣によって継承されてきた。したがって、村山談話自体も歴史として尊重されるべきだろう。

 憲法を時代の要請に合わせて改正しようという動きは十分理解できるが、憲法のどの部分をどう変えていくのが時代の要請なのかということをはっきりと示すことが、国民的議論を活発化するためには必要だろう。

 外交を能動的に進めていくためにも、日本が拠って立つ場所を明確にする必要がある。東南アジア諸国の有識者たちは、日本を尊敬するのは、戦後70年の日本のはたしてきた役割の故であるという。

 日本は平和憲法に基づき、一発たりとも海外で銃を発射することはせず、戦後25年で世界第二の経済大国に上り詰め、世界で有数の技術大国となり、世界で有数の格差の少ない国をつくり、厳しい環境問題を克服し、政治的紐のつかない援助で途上国の国造りに貢献した。日本は圧倒的に質の高い国であり、東南アジア諸国のモデルである。

 こうした日本に対する海外の評価を、大事にするべきではないか。今後日本が時代の要請に合わせた変化をしていくとしても、戦後70年の歴史から断絶するべきではないだろう。このような歴史の延長上に、日本の国家像を構築していくことが求められているのではなかろうか。
 


 


 


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