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日系車は危機を脱して安定に移行できるか?:中国市場:独・米・韓の販売台数が2桁増のなか日本は減少:対日感情は安定へ
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/158.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 7 月 16 日 00:39:54: Mo7ApAlflbQ6s
 


日系車は危機を脱して安定に移行できるか?

 7大日系車メーカーの世界市場での販売台数をみると、中国市場が占める割合は11%に過ぎず、ドイツ車、米国車、韓国車の割合を大幅に下回る。ある分析によると、中日関係が長期的に安定しないことから、日系車メーカーが中国での投資を拡大する可能性は低く、より慎重な態度を取ることは間違いないが、中国市場を軽々しく放棄するようなことはしないという。安倍政権が対中関係で理性を失い、自国の自動車メーカーをわざと困らせるようなことをしない限りだ。「国際商報」が伝えた。

 中日間の領土問題を受けて、日系車の販売状況は昨年9月に壊滅的になったが、今年1月には緩やかな復活の兆しをみせた。中でもトヨタの下げ止まってからの上昇ペースをみると、回復に向かったことがわかる。1月の販売台数は7万2500台で前年同月比23.5%増加している。毎年1月には春節(旧正月)を控えていることから、あらゆるメーカーが2月分の販売量の一部を前倒しに販売する点を考えても、中日関係が実質的に変化していない状況の中、トヨタが両国関係が正常だった前年同期の販売台数の絶対量を上回る売り上げを達成したことは、国内で高まった民族的感情がすでに退潮したことを示すものだ。

 トヨタの国内販売台数は2月が3万6300台で前年同月比45.7%減少し、3月は7万5900台で同11.7%減少、4月は7万6400台で同6.5%減少だった。そして5月は約7万9千台で同0.3%増加した。2月に販売台数が大幅に落ち込むのはどのメーカーも避けられないところで、2月のデータは自動車産業の動向を表すものとはいえない。トヨタは3月から5月にかけ、前年同期比減少率を徐々に縮め、増加に転じることができた。ここからトヨタが中国の自動車市場全体の成長ペースに徐々に追いつきつつあることがうかがえる。

 今年1-6月、トヨタの国内販売台数は41万6900台で前年同期比5.8%減少し、日産は59万1600台で同8.3%の減少、ホンダは31万6600台で同3.2%の減少だった。同じ期間にドイツ車、米国車、韓国車はいずれも2けたの伸びを維持しており、日系車の市場シェアが無惨に食い荒らされたことがわかる。だが中日関係が依然として冷えていることを考えると、日系三大自動車メーカーの市場での業績は、予想を大幅に上回る好調なものということができる。あるいは、日系車は最も困難な時期を通り過ぎ、販売台数の損失も日系車の活力を奪うことはなかった、と考えることもできる。

 今年のトヨタの中国販売台数の目標は90万台で、昨年の84万台から約7%の増加を見込む。トヨタの現在の回復傾向をみると、安倍政権が再び中国の消費者を怒らせるような常軌を逸した行動を取らない限り、この目標は十分に達成可能だといえる。

 だが最近のロイター社の報道をみると、トヨタは今、中国業務の重心を日本に対する国民感情が比較的穏やかな南方エリアに移すことを検討中という。またブルームバーグ社の報道によると、日系自動車メーカーは中国市場に対する依存度を引き下げ、投資先をより急速に成長する新興市場に、たとえはインドネシア、ブラジル、インド、ミャンマーなどに振り向ける可能性があるという。トヨタはすでに天津市と広州市の新工場建設計画を延期しているとの情報もある。いずれも年間生産能力が20万台の工場だ。

 日系車は中国市場でどんな未来へ向かうのだろうか。ある業界関係者によると、日系車の未来は次の3点を踏まえて考えることができるという。

 第一に、日系自動車のグローバル配置の中で中国が占める割合は大きくないという点だ。2012年に日系7大メーカーの世界販売台数は2340万台で、このうち中国は254万台だ。輸入車を含めても、日系車の中国シェアは11%ほどに過ぎない。ドイツの三大メーカー(フォルクスワーゲン・アウディグループ、BMW、ベンツ)の世界販売台数は1200万台あまりで、中国が285万台と24%を占める。米国車のビッグ2をみると、ゼネラルモーターズ(GM)の世界販売台数は928万台で中国は30%の283万台、フォードは世界が566万台で中国は11%の62万台だ。韓国車は世界が712万台で中国は18%の133万台となっている。ここからわかることは、日系車は中国に最も多くのメーカーが進出し、製品のラインナップを充実させていながら、販売台数全体に占める割合は11%にとどまっており、日系メーカーが長年にわたり中国市場に対するリスク意識を抱いてきた可能性があるということだ。

 第二に、日本の自動車産業の競争力は高く、伝統的なエンジンの分野ではドイツ車は米国車の進歩の速さに及ばないが、新エネルギー自動車の分野ではトップの地位を維持しているということだ。日系車の販売がこのたび中国で打撃を受けたことは、日本政府がすべての原因だ。昨年8月から9月にかけて日本に対する国民感情がピークを迎えた後、日本の自動車、デジタル製品(ノートパソコンとカメラ)、家電製品は全面的に売り上げが落ち込んだが、今年5月には自動車もデジタル製品もともに回復傾向に向かい増加に転じた。こうした動きは、日本製品のブランドの認知度が影響を受けなかったこと、特に日本のデジタルカメラ(一眼レフカメラ)は切り替えがきかない存在であることを物語るものだ。日本の家電産業の衰退はここ10年ほどのことであり、中日関係とは関係がない。このため家電大手の棚から日系製品が下ろされ、日系メーカーが撤退するとの情報が伝わっても、日系車に波及することはなかった。

 第三に、中国市場におけるリスクを回避し、製造コストを引き下げるため、日系自動車メーカーが東南アジアや南アジアに新工場を建設するのは当たり前のことだが、生産拠点の大規模な移転は起こらないと考えられることだ。その理由は単純なことで、自動車産業のチェーンは長く、日系車が過去数十年にわたって築き上げてきた研究開発・生産・営業販売のシステムは、主に中国の巨大な内需市場に向けて配置されており、いかなる新興市場国もこれに代わることはできないからだ。また日系車のグローバル配置は中国関連要因を踏まえて調整される可能性があるが、現在の情況をみると、マイナスとなるような大規模の移転はまずない。

 最後に次の点を指摘する。消費者にとってみれば、昨年8-9月に日本に対する国民感情が激しい時に比べ、日系車を購入するリスクは軽減された。ある日系合弁自動車メーカーの中国側責任者によると、日系自動車に対する反感はどうしようもないものだが、後には人々は理性を取り戻す。また日系車メーカーは危機に対応する中で、損害を被った日系車のオーナーに保険ではカバーされない部分を全額保障した。このことも日系車オーナーのリスクを大幅に軽減すると同時に、中国市場に対する日系メーカーの誠意を消費者に伝えることになった。

 総じて言えば、中日関係は不安定の中、日系自動車メーカーが中国で投資を拡大する可能性は高くなく、より慎重な態度を取ることは確実だ。だが、安倍政権が対中関係で理性を失い、自国の自動車メーカーをわざと困らせるようなことをしない限りは、中国市場を軽々しく放棄することはあり得ない。(編集KS)

 「人民網日本語版」2013年7月15日

http://j.people.com.cn/94476/8325286.html

 

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コメント
 
01. 2013年7月16日 00:53:21 : nJF6kGWndY

>安倍政権が対中関係で理性を失い、自国の自動車メーカーをわざと困らせるようなことをしない限りは、中国市場を軽々しく放棄することはあり得ない

安倍政権自体はかなり現実的だが、余命の短い失言老人や建前が使えない大阪人が、中国の網人を煽った時に、どうなるかは予断は許さない


02. 2013年7月16日 02:17:29 : niiL5nr8dQ
中国、韓国、台湾からみた円安の“経済効果”

競合関係から補完関係にシフトする可能性も

2013年7月16日(火)  中塚 恵介

 日本ではアベノミクスによる株高・円安で経済が好転し、輸出量も回復しつつある。こういった状況はアジアの国・地域からはどう受け止められ、特に各国・地域の輸出に対してどのような影響を与えているだろうか。日本を取り巻くアジアの国・地域の例として、中国・韓国・台湾を取り上げ、アベノミクスに対する反応を比べてみよう。

中国、韓国、台湾での経済担当部局の見方

 アベノミクスは、日本では株価や消費の持ち直しなどをもたらしていることから、肯定的に評価されることが多い。しかしながら、韓国、台湾の経済担当部局(政府および中央銀行)は、急激な円安進展について主要な景気押し下げ要因として問題視している。一方、中国の経済担当部局においては、アベノミクスを批判的に捉える見方が多いものの、中国経済への直接的な悪影響を懸念する声はそこまで大きくなく、韓国、台湾と比べると微妙な温度差がある。以下、具体的にそれぞれの国・地域の反応をみてみよう。

 まず、韓国は、円安が輸出を通じて経済に悪影響を及ぼすのではないかと懸念を示している。韓国の財政当局である企画財政部は、2013年6月の経済動向レポートにおいて、貿易は円安の影響により対日輸出や自動車、鉄鋼輸出については不振であると述べている。加えて、韓国銀行は13年5月に利下げを行った際、プレスリリースにおいて、マイナスのGDPギャップが続く背景として世界経済の回復の鈍化に続いて円安を掲げている。このように、財政当局、金融当局双方とも円安の韓国経済への影響について高い注意を払っていることが分かる。

 台湾も、韓国と同様に円安による経済への影響を懸念している。台湾の13年1〜3月のGDPは、前期比年率▲2.7%と大きく落ち込んでおり、行政院主計総処はプレスリリースにおいて、国内消費が落ち込んだ理由の一つとして、円安により自動車価格が引き下げられることを見込んだ買い控えが生じたことを挙げている。

 また、台湾中央銀行は13年6月の理監事総会議(政策決定会合)において、外国為替レートは市場の需給で決定されるべきとしつつ、短期的な資金流入などで為替レートに過度の変動が生じた場合は、台湾中央銀行が秩序を維持するとしている。なお、同銀行は13年1月に円安の影響に関するレポートをまとめているが、その中では円安は日本からの輸入コストが減少し、対日貿易赤字の縮小につながるなど、利点についても指摘している。

 一方中国では直接的な悪影響を懸念する声は聞かれない。例えば、財務部の13年5月の国際経済要聞は、日本が真に必要なのは量的緩和ではなく構造改革であるという財政部副部長の見解を紹介している。また、中国人民銀行は、13年第1四半期貨幣政策執行報告において、今後の国際経済におけるリスクとして、日本をはじめとする主要国の金融緩和が通貨安戦争を引き起こす可能性を掲げている。このように、中国でのアベノミクスへの批判はあくまで一般論としてのものが多い。

中国、韓国、台湾の貿易構造の特徴

 韓国、台湾、中国の円安に対する反応の違いはどこから来るのだろうか。そのことを考える上で、一般的に為替レートの変化が貿易にどのような影響を与えるかについて考えてみよう。

 まず、輸出市場で競合的な国の通貨が下がると、輸出競争力が低下して、国内産業が打撃を受ける。一方、輸出市場において補完的な関係にある国の場合は、相手国の通貨が下がって輸出が増えるに従って、自国製品の輸出も伸びることから、国内産業にとって相手国の通貨安はむしろプラスとなる。

 つまり、韓国や台湾では輸出市場が日本と競合しているとすると、円安によって国内産業が打撃を受けることになる。一方、中国(および台湾)では日本の輸出が増える(あるいは日本からの輸入品が安くなる)ことによるメリットがあることが予想される。

 こうした考え方を踏まえて、以下では次の2点を考えてみる。第1は、韓国、台湾、中国と日本との間の輸出構造の違いについて。第2は、韓国、台湾では円安によって実際に輸出が減っているのかどうかについてである。

 第1の韓国、台湾、中国と日本との輸出構造の違いをみてみよう。韓国、台湾は日本と競合的だが、中国については必ずしもそうとはいえない。

 この点を各国・地域の輸出シェアで具体的にみてみると、韓国は自動車、その他輸送機器、鉄鋼などのシェアが高く、日本との共通点が多い。台湾では、半導体などに代表される電気機械のシェアが非常に高く、この分野で日本との競合が生じた場合は大きな影響を受ける可能性がある。中国では、その他製品(衣服関連製品等)およびパソコン類などの労働集約型製品が大きなシェアを占めており、必ずしも日本との競合は高くない(図1)。

図1 2012年輸出シェア(ドル建て、SITC分類):
韓国の貿易構造は日本と類似

(備考)財務省、中国海関総署、韓国貿易協会、台湾財政部より作成
中国、韓国、台湾の輸出の変化からみるアベノミクスの影響

 第2の韓国・台湾で円安によって輸出が実際に減っているのかどうかについて確かめてみよう。結論から言うと、輸出額からみると、必ずしも円安の影響で輸出が鈍化しているとはいえない。また、輸出量の動向をみてみても、韓国、台湾は13年1〜3月期に減少傾向にあったものの、その後は日本と同様に持ち直していることが分かる。以下、輸出額、輸出量について詳しくみてみる。

 まず、輸出額についてだが、韓国では自動車や鉄鋼について日本との輸出の競合が問題視されているが、円安基調が顕在化する前の12年7〜9月期には既にマイナスに転じている。台湾では、主要輸出項目である電気機械については堅調であり、むしろ日本からの輸出がほとんどみられない通信・録音機器が全体の押し下げ要因となっていることが分かる。また、中国は電気機械やその他製品(衣服関連製品等)が高い伸びを示している(注1)。このように、輸出全体としては円安の影響は必ずしも明らかではなく、特に韓国では電気機械を中心に持ち直しの動きがみられる(図2)。

(注1)ただし、中国の輸出の動向についてはさまざまな議論があり、注意が必要である。例えば、13年における輸出の伸びの持ち直しには香港向け輸出が大きく寄与している一方で、香港との貿易額は必ずしも香港側の統計と一致していない。そのため、中国の輸出の現状については慎重に判断する必要がある(詳しくは中塚「最近の中国経済の動向について−統計指標の再検討−」(2013)を参照されたい)。

図2 輸出額の推移:電気機械を中心に総じて持ち直し

(備考)財務省、中国海関総署、韓国貿易協会、台湾財政部より作成
 このように輸出額については、アベノミクスに対する韓国などでの批判的な見解とは異なり、今のところ大きな変化がみられない。その理由としては一つには米国を中心とした世界的な景気の持ち直しに向けた動きが考えられる。つまり、米国向けなどの輸出が持ち直しているために、円安で輸出が多少押し下げられたとしても、全体としてはプラスの伸びとなっている可能性がある。

 一方、日本で円安が進むと、日本からの輸出産品について、ドルベースでの価格が引き下げられやすくなる。そのため、競合する輸出財については、韓国や台湾でもそれに対抗して価格の切り下げが迫られることとなり、利益幅がそれだけ減少し、輸出量も押し下げられることが予想される。このように、日本との競合がどの程度生じているかは、輸出額の変化よりも、輸出量の変化に表れる可能性がある。

 そこで、輸出量(注2)全体の動向をみてみると、日本は13年2月を谷として緩やかに持ち直している。韓国、台湾は13年1〜3月期には減少傾向にあったものの、その後は持ち直している。例えば、韓国は、13年3月を底として持ち直している。逆に、中国の輸出は13年1〜3月期は堅調に増加していたが、13年5月にはマイナスに転じている(図3)。

(注2)なお、各国・地域の輸出量は、いずれも実質輸出額を指数化しただけのものである(中国の輸出量は、2005年以降の対前年同月伸び率のみが公表されているため、2004年の月次貿易額に2005年以降の伸び率を乗じた推計値を使用)。そのため、例えば中国、台湾では春節のある1-2月には輸出量が大きく落ち込み、その後大きく増加するなど、季節によって大きく変動する。また、同じ月の輸出量であっても、土日祝日のずれ等により営業日が異なることから、前年比の変動についても必ずしも経済動向を反映しているとはいえない場合がある。そのため、輸出量の前月比又は前年比をそのまま計算した場合は、これらの季節的な要因により大きく伸び率が左右されてしまう可能性がある。そこで、以下では輸出量について米センサス局のX12-ARIMAを用いて曜日および月の長さおよび春節効果を調整した季節調整値 を用いて分析することにする。

 このように、輸出量を使うと、貿易額よりも円安による影響を含めた各国・地域の違いがより比べやすいことが分かる。

図3 輸出量(全体)の推移:
韓国、台湾は持ち直し、日本は持ち直しの動き

(備考)財務省、中国海関総署、韓国貿易協会、台湾財政部より作成
 財別にみてみると、輸出量全体と同様に、13年1〜3月期には各国・地域の落ち込みと日本の輸出量の持ち直しがみられ、その後は各国・地域とも徐々に回復していることが分かる。

 自動車については、日本も含めて各国・地域とも総じて減少傾向が続いていたものの、13年4月以降徐々に持ち直している。電気機械も、日本、韓国、台湾はいずれも13年3月付近を谷としてプラスに転じている。鉄鋼については、日本、韓国、台湾は持ち直しの動きが進んでいるが、中国の輸出は減少している(図4)。

図4 輸出量(財別)の推移:
韓国、台湾は堅調に推移、日本は持ち直しの動き

(備考)財務省、中国海関総署、韓国貿易協会、台湾財政部より作成
 このように、輸出量からみても、各国・地域の輸出は13年1〜3月期に一時的に落ち込んだもののその後は盛り返しており、必ずしも円安によって大きな影響を受けたとはいえない(注3)。

(注3)この点は、各国・地域の輸出量について、各国通貨の対ドルレートなどを用いて回帰分析した結果からも裏付けられる。興味のある方は、以下の「補論」を参照いただきたい。

補完的な関係に推移する可能性も

 このように、韓国、台湾と中国との間でアベノミクスに対する見方が異なる背景には、以下のように韓国、台湾の輸出が日本と競合的であり、中国は競合的ではないことが挙げられる。

 第1に、輸出構造を比べると、特に韓国は日本と極めて競合的である。第2に、13年1〜3月期の輸出量をみてみると、韓国、台湾は輸出量全体や電気機械などで一時的に落ち込んだのに対し、中国ではそのような傾向が見受けられない。これらは、韓国、台湾は日本と競合するが、中国とは必ずしも競合しないことを示唆しており、それがアベノミクスに対する見方の差に結びついていると考えられる。

 一方で、輸出量からみると、各国・地域の輸出は13年1〜3月期に一時的に落ち込んだもののその後は盛り返しており、輸出額からみても各国・地域とも大きな落ち込みはみられないことが分かる。そのため、韓国、台湾は日本とは輸出構造が競合的ではあるものの、アベノミクスをきっかけにして、次第に補完的な関係に推移しつつある可能性がある。

補論〜月次の輸出量と対円レートとの関係

 最後に“応用問題”として、円安が各国の輸出量に与える影響をどのように分析すればいいかを考えてみる。

 輸出量と為替の関係を調べるには、輸出に対する需要や、輸出価格が輸出量に与える影響を調整したうえで、為替の影響を分析する必要がある。例えば、韓国、台湾の輸出量は、輸出価格や輸出需要による影響を調整したベースで比較しても、円安によって伸び率が低下しているとしよう。これは、日本との競合が生じているために、韓国、台湾における輸出の価格競争力が低下している結果であると考えられる。逆に、中国では日本との競合が少ないとすると、円安は必ずしも中国の輸出量の伸び率には影響しないことが予想される。

 この点を考慮した分析の例としては、例えば、クレディ・スイスは四半期データで輸出量の前年比伸び率および各国の対円レートとの関係を分析し、韓国が最も不利益を被り、インドネシアなどのASEAN諸国の影響は軽微である傾向にあることを示している(Credit Suisse(2013), “Japan’s Reflation: Winners and Losers in Non-Japan Asia”)(注4)。そこで、このレポートの手法を参考としつつ、短期的な影響を調べるため、月次の輸出量と対円レートとの関係に着目して分析してみよう。

(注4)具体的には、輸出需要(上位5位までの輸出先への伸び率)の差、輸出価格変動の差およびダミー変数(東日本大震災およびタイの洪水)の影響を調整したうえで、対円レートが輸出量伸び率の日本との差に与える影響を2000年から2012年までのデータを用いて回帰分析している。ただし、中国については分析の対象外としている。

 具体的には、前述のレポートと同様、各国・地域の輸出量の伸び率と日本の輸出量の伸び率の差について、(1)各国・地域通貨の対ドルレート、(2)円の対ドルレート 、(3)輸出価格変動率の差、および(4)輸出需要(米国輸入の実質伸び率)の4つのデータを用いて、それぞれが輸出量伸び率にどのように影響を与えているかについて回帰分析した。分析の対象は、月次の輸出量全体とし、分析の期間は、中国については2005年から、韓国、台湾は1999年から、それぞれ2013年5月までとした(注5)。

(注5)なお、分析の開始時期について、韓国、台湾を中国と同様に2005年としても、後述と同様の結果が得られる。

 その結果、韓国、台湾については、円の対ドルレートが1%上昇した場合、輸出量をそれぞれ0.4%程度減少させる傾向があることが分かった。一方で、中国の輸出量については対円レートの変動が輸出量に与える効果は有意とならなかった。

 また、輸出量と対円レートの関係性に着目すると、対円レートは韓国では3カ月前のレートが、台湾では1カ月前のレートがそれぞれ輸出量の伸び率に与える影響が有意にマイナスとなっている。つまり、韓国、台湾については、円安は将来の輸出量の伸び率の低下に結びつく傾向があるといえる。また、現時点までの円安の傾向を踏まえると、6月の輸出量伸び率については、韓国、台湾ではそれぞれ1%程度、日本の6月の輸出量伸び率に比べて押し下げ要因として寄与すると見込まれる(図5)。

図5 対円レートの変動が輸出量(全体)に与える効果:
韓国、台湾の輸出量を押し下げ

(備考)財務省、韓国貿易協会、台湾財政部より作成
 このように、円安による輸出量伸び率へのマイナスの寄与は、韓国、台湾では13年1〜3月期に拡大したものの、その後は徐々に縮小していることが、回帰分析の結果からも確かめられる。

(本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、内閣府の見解を示すものではありません)

このコラムについて
若手官庁エコノミストが読む経済指標

内閣府の若手エコノミストがさまざまな経済指標を読み解き、日本経済や日本経済を取り巻く状況について分かりやすく分析する。多くの指標を精緻に読み解くことで、通り一遍の指標やデータだけでは見えてこない、経済の姿が見えてくる。


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