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激変! 10年後の働き方、稼ぎ方
http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/153.html
投稿者 金剛夜叉 日時 2013 年 7 月 15 日 22:32:37: 6p4GTwa7i4pjA
 


先進国は新興国に凌駕されるのか。雇用規制は緩和されるのか。そして、日本の未来はどうなるのか……。2025年の働き方を提示した『ワーク・シフト』の著者と元マッキンゼーの人材育成のプロが、これから世界で起こる変化とそれに備える方法について考える。

『ワーク・シフト』が提示する、これからの働き方「3つのシフト」

1.ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
広く浅い知識しか持ってない「なんでも屋」の最大のライバルは、ウィキペディアやグーグルである。未来で成功するには、「専門技能の連続的習得」が求められる。これからニーズが高まりそうな職種を選び、高度な専門知識と技能を身につけ、その後もほかの分野に脱皮したりすることを繰り返さなくてはならない。同時に、自分の能力を取引相手に納得させる「セルフマーケティング」も重要になる。

2.孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
未来ではイノベーションが極めて重要になる。そのためには、多くの人と結びつくことが必要だ。カギになるのは、オンラインで築かれる世界規模のコミュニティを指す「ビッグアイデア・クラウド」、同じ志を持つ仲間を意味する「ポッセ」、そして情緒面で安らぎを得るための「自己再生のコミュニティ」。この3 種の人的ネットワークが、創造性を発揮する源となる。

3.大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
所得を増やし、モノを消費するために働く──こうした仕事の世界の「古い約束事」がもはや機能しなくなっている。先進国の多くの人は、所得がこれ以上増えても幸福感は高まらない。働くことで得られる充実した経験こそが、幸福感の牽引役になる。時間とエネルギーを仕事に吸い取られる人生ではなく、もっとやりがいを味わえて、バランスのとれた働き方に転換しよう。

【伊賀】『ワーク・シフト』を読み、衝撃的だったのは、日本だけでなく、先進国全体が新たな試練に直面していることがよくわかったことです。しかも、そうやって読者を不安にさせて終わりではなく、3つのシフトを行えば明るい未来が待っているという解も示していただいた。この本が非常に多くの読者を獲得している理由はそこではないか、と思います。

最初にお伺いしたいのですが、この本はやはり大きな試練に見舞われる先進国の人たちに向けて書かれたと考えてよろしいでしょうか。


続きはこちらへ
http://president.jp/articles/-/9180  

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コメント
 
01. 2013年7月15日 23:22:33 : niiL5nr8dQ

ロンドン・ビジネススクール 
教授 リンダ・グラットン氏
【グラットン】いえ、そうではありません。私は全世界の人々に向けてこの本を書きました。中国では北京語、広東語に翻訳されましたし、ロシア、ブラジル、インドでも広く読まれています。読者の数は先進国より新興国のほうが多いと思います。

ただ、試練という意味では、ご指摘のように、インドや中国の若者は自分たちの生活が親の世代よりよくなるのがわかっていますので、将来について楽観的です。しかし、イギリスや日本の若者は、逆に悲観的です。世界的に見ても、若者の失業が非常に深刻な問題となっています。私も参加してきたダボス会議(世界経済フォーラム)でも、その問題がまさに大きく取り上げられていました。

【伊賀】以前は高い教育を受ければ、失業せずにすみました。しかし、最近は日本でも、それ以外の国でもそうでもなくなっています。どう対処すればよいのでしょうか。

雇用規制が起業家育成を阻害する

【グラットン】若者の失業を減らすには大学と政府の取り組みが必要です。まずは大学が単なる学問の府から脱して、仕事につながる教育や訓練を提供しなければなりません。

次は政府ですが、やるべきことは2つあります。1つは規制緩和です。スペインが典型的ですが、労働市場が規制に守られ硬直的だと、いったん雇い入れた労働者を解雇できず、若者が新規採用されない。そうならないために、雇用規制を緩和する必要があります。もう1つはシグナリングといって、今後、どんな仕事の需要が増えそうか、という情報を若者に与えることです。ドイツやシンガポールでは政府がこれを熱心に行っていますが、イギリスは残念ながら怠っています。それもあってか、私の2人の息子のうち、1人は医者になりたいと医大に行き将来は安泰ですが、もう1人はジャーナリスト志望で、大学で歴史を学んで卒業したものの、今も仕事を探しています。


キャリア形成コンサルタント 
伊賀泰代氏
【伊賀】シグナリングは確かに重要ですね。でも、将来仕事にありつけるようなことだけを学ぼうと多くの人が考えると、たとえばITやエネルギー、環境などを学ぼうとする人は増えるかもしれません。一方で、歴史や美術といった、お金に結びつきにくい学問をする人が減ってしまうと、この世界がつまらないものになりはしないでしょうか。

【グラットン】おっしゃる通りです。息子2人がそうですが、1人は医学を、もう1人は歴史を学ぶ……社会がそういう多様性を受け入れることが大切なのです。

【伊賀】もう1つ、先ほどの規制緩和の話ですが、企業が社員を解雇しやすくなると、社会全体として雇用が増える傾向になるのかもしれないけれど、自分が解雇されたら嫌だ、という人が大半だと思うのです。

【グラットン】個人としてはその通りだと思います。でもマクロで見ると、労働市場に過剰な規制がかけられていると、企業を起ち上げるのが困難になり、結果として、起業家育成の土台が阻害されてしまいます。雇用創出力の増大には、そうした小さな企業の立ち上げが一番寄与できるにもかかわらず、です。一国の経済を活性化させるには、やはり起業家、特に若手起業家の育成が非常に重要だと思います。

【伊賀】私もその通りだと思います。そういう起業家を育てる主体は大学なのでしょうか、それとも政府、あるいは家庭なのでしょうか。

【グラットン】そのすべてが大切ですが、社会風潮の問題もあります。たとえばシンガポールの優秀な若者の多くは政府に就職します。一方、インドでは優秀な若者ほど起業家になる傾向が強い。インド発の優良企業が増えているのも、そういう土壌があるからだと思います。

【伊賀】そうすると、イノベーションも新興国からたくさん生まれる可能性が高いということですね。

【グラットン】はい。新興国におけるイノベーションは、中国に代表されるように、コストダウンに関するものが非常に多かったのですが、これからは変わっていくでしょう。先進国の大企業が研究開発拠点を中国やインド、ブラジルに置く例が非常に増えてきたからです。今やアフリカからもイノベーションが生まれる時代です。ケニアでは携帯電話を使って少額の送金を行うシステムが開発され、よく利用されています。

【伊賀】お話を伺っていると、先進国の人たちはもっと新興国に学ぶべきですね。これまでは新興国の人が先進国に学びにくるのが普通でした。しかし、これからは逆で、先進国の人が新興国で学ぶことが重要になるのではないか、と思いました。

【グラットン】世界レベルの教育機関は依然として先進国にあるので、今すぐとは思いませんが、近い将来、そうなる可能性は大いにあるでしょう。

すでに、国籍に関係なく優秀な人材がどんどん発掘され、活躍する時代に入っています。先日のダボス会議では、ビル・ゲイツの横に、パキスタンから来た11歳の少女が座っていました。スタンフォード大学の物理学教授が自分の講義をオンラインで公開し、世界中に受講生を募ったところ、彼女が応募してきて、全受講生のなかで最も優秀な成績を収めたそうです。わずか5年前であれば、パキスタンの少女が世界最先端の物理学の講義を受けたり、国際会議でビル・ゲイツの隣に座ったりするような機会が与えられることはまったく考えられませんでした。

「才能ある人」を巡る都市間競争が勃発

【伊賀】確かにすごいことが起こりつつありますね。先進国と新興国という国の格差が、才能のある人とない人という人の格差に置き換わっていくのだと。

【グラットン】その通りです。鍵を握るのがまず認知能力です。ある調査によれば、認知能力が高い人はあらゆる国に正規分布しています。もう1つは決断力です。1つのことに集中して取り組むことができるか。これも非常に大切です。

【伊賀】有能な人が注目され、発掘されやすくなっているのは確かだと思います。でもそういう人の行く先がシリコンバレーやロンドンの大学だったりすると、結局、栄えるのはその国ではなく、先進国になるわけです。そういう意味では、国家間競争、都市間競争、大学間競争がますます激しくなると考えていいのでしょうか。

【グラットン】おっしゃる通りです。なかでも都市間競争が激しくなるでしょう。都市づくりという意味で頑張っているのが、都市国家であるシンガポールです。移民を広範に認め、言語を英語で統一し、質の高い学校を次々につくる一方で、住環境整備にも力を入れ、公害も最小限に抑えています。こうした施策が功を奏し、ますます多くの多国籍企業がシンガポールに本社を構えています。

【伊賀】シンガポールはお金持ちと才能のある人を集めようとしているのでしょう。私も何度か訪れたことがありますが、住みたいか、ときかれたら躊躇します。ルールや罰金が多すぎますし、ビルばかりで息が詰まりそうになるんです(笑)。東京もロンドンもニューヨークも、シンガポールを目指すべきなのでしょうか。

【グラットン】そんなことはないと思いますよ。お互いが個性的だからこそ、競争が起きるわけですから。

【伊賀】先生がお住まいのロンドンはどんな魅力があるのでしょうか。

【グラットン】それは明確です。世界中から、裕福な人がロンドンに住みたいとやってきます。それだけ住むのに素晴らしい街です。お金持ちばかりではなく、才能豊かな人たちもヨーロッパ各国からやってきます。

【伊賀】英語の問題も大きいと思いますが、なぜ世界中のたくさんの人たちを引き寄せることに成功したのでしょうか。

【グラットン】いろいろな要素の掛け合わせだと思います。近隣含め、オックスフォード、ケンブリッジと、世界に冠たる高等教育機関がいくつもありますし、移民政策の影響も大きいと思います。

【伊賀】日本にも「移民を受け入れるべきだ」という議論がありますが、日本はどうすべきと先生はお考えですか。

【グラットン】それに関して私は意見を述べる立場にありません。移民は既存の社会に溶け込みにくいというマイナスはありますが、イギリスに関していえば、プラスのほうが大きかったと思います。

【伊賀】国レベルで考えると日本はいかがでしょう。

【グラットン】ロンドン大学のビジネススクールで教授になったとき、日本企業の強さに目を見張らされました。徹底した品質管理が世界に認められた要因だと思います。ところが、ここ5年くらいを見ると、家電業界を中心に、競争力を失い、厳しい立場に立たされている企業が目立ちます。日本はもともと非常にイノベーティブな国だと思います。今はサムスン、LGといった手強い競争相手がお隣、韓国にいますが、日本人の教育レベル、仕事の質、技術力はいずれも非常に高い。いずれまた大きなイノベーションを次々と生み出す国になるのではないでしょうか。

【伊賀】私もそう願っております。最後に、この『ワーク・シフト』についてもうひとつ、お伺いしたいことがあります。本書を読んだ感想は、40代以上と30代以下では違うのかなと思いました。若い世代にとっては、明るい未来を提示してくれる内容であり、一方、年配世代にとっては、これから働き方をシフトさせるなんて不可能だ、と思ってしまうのではないかと。それぞれにメッセージをいただきたいのですが。

【グラットン】40代以上の方々へのメッセージとしては、学び続けよ、ということです。学習は20代前半で終わるのではなく、死ぬまで続くと見るべきです。私の友人の1人に、ウォレン・ベニスという南カリフォルニア大学の経営学の教授がいます。彼は87歳ですが、いまだに授業を受け持ち、ブログも日々、書いています。重要なのは仕事に対して好奇心を持ち続け、それによって常にわくわくすることです。

日本のビジネスマンよ、もっと休暇を!


【伊賀】若い人たちにはどうでしょう。

【グラットン】子供ではなく大人であれ、と言いたいですね。企業との関係も、大人と大人の関係であるべきで、いつも言われた通りにすればいいわけではありません。自分は何に興味があるのか、何にわくわくするのか、人生で成し遂げたいことは何か、そのためにはどのくらいのお金が必要なのか、すべて自分で考え、決めなければなりません。

最後に、どちらの世代にも伝えたいメッセージが1つあります。日本の皆さん、われわれヨーロッパ人のように、もっと休暇を取って、ゆったりと人生を過ごしましょう。人の一生はますます長くなる。「シフト」に大切なこともきっと見つかるはずです。

(※本対談は、2013年2月6日に六本木のアカデミーヒルズで行われたリンダ・グラットン教授来日記念セミナーをもとに収録。)

リンダ先生から新入社員、若手社員へのメッセージ

日本には新卒一括採用という雇用慣行があり、そのことが若年失業率を大幅に引き下げているのは確かだと思います。だからこそ、日本の若者は他国の若者と比べてキャリア意識が低く、就職より就社の意識が強いのも、また確かでしょう。

欧米でも、15年ほど前までは、企業と労働者の関係は親子のようなものでした。でも、この関係が、両者が互いに独立した、大人と大人の関係に一変しました。日本も次第に移行していくでしょう。そのときに大切になるのが本書で述べた「3つのシフト」です。

第1のシフトの内容を一言でいうと、深く、そして絶えず学び続けよ、ということです。企業の枠を超えた普遍的なスキルや知識を学び、実践する必要があります。

第2のシフトでは、3つのタイプの人的ネットワークを築く。1つは志を共有した仲間であり、2つ目は様々なアイデアや示唆を与えてくれる主にバーチャルの世界のネットワーク、3つ目はあなたの精神的な支柱となってくれる顔見知りの関係です。日本においては、2つ目のネットワークが特に大切になると思います。その際には英語が必須になるのは言うまでもありません。

第3のシフトのメッセージは、働くことを楽しもう。現在、いくつかの企業と組み、どうしたら仕事がおもしろくなるか、という研究を行っています。

仕事が楽しくなる要因は2つあります。自分の裁量が広範に利くことと、自分の成果に対して同僚からフィードバックが存在することです。実際、そのメカニズムを職場に取り入れて、社員の働く意欲を高めている企業もあります。

シフトの大前提となる「 変化」にも注意を払う必要があります。テクノロジーの進化、グローバル化、長寿化、社会そのものの変化、エネルギー問題の深刻化の5つです。小さな子供たちには、より大きな影響が出るでしょう。あなたに子供がいるなら、日本で、そして世界で今何が起こっているか、何が変わりつつあるかをしっかり伝え、教育されることをお勧めします。

ロンドン・ビジネススクール教授
リンダ・グラットン
経営組織論の世界的権威。英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとり。2012 年に発売された『ワーク・シフト』は日本で10万部のベストセラーに。

キャリア形成コンサルタント
伊賀泰代
一橋大学法学部卒業後、日興証券を経て、1993年から2010年までマッキンゼーで主に採用マネジャーとして活躍し、独立。著書『採用基準』は10万部超の大ヒット。


02. 2013年7月16日 00:22:44 : niiL5nr8dQ
JBpress>海外>USA [USA]
夢の年金生活は昔話、米市民が直面する辛い退職後
増え続けるニュー・ノーマルに医療費破産が襲いかかる
2013年07月16日(Tue) 堀田 佳男
 社会格差が広がる米国で、退職者の憂鬱が広がっている。米国は今でも国内総生産(GDP)では世界一を誇り、経済大国という代名詞がつけられているが、近年、高齢者の貧困が広まっている。

 それでは貧困というのはどのレベルのことを指すのか。連邦政府が定義する米国の貧困層(2013年)は、1人住まいの場合、年収が1万1490ドル(約114万円)以下、4人家族の場合は2万3550ドル(約235万円)以下をいう。

今や高齢者の6人に1人は貧困層

 米統計局によると、65歳以上の貧困層はすでに16%、約6人の1人の割合である。一昔前、米国ではいかに早く退職するかがステータスの1つであった。巨額の資産を築いて40代でリタイアし、あとは好きなことをして人生を謳歌するライフスタイルが尊ばれた。言わば「大橋巨泉的な生き方」である。

 だが現実は、かなり限定された一部の富裕層だけに許される生き方であり、大多数の市民は退職年齢を自ら上げて、働き続けている。

 かつては時代が進むにつれて社会がより豊かになり、個人資産も増え、文字通り悠々自適の老後を送れると信じられた時代があった。だがそれはもはや過去のものである。

 数字に表れている。調査会社ギャラップによると、米国民の退職年齢は年々上昇しているのだ。1991年には57歳だったが、現在は61歳である。現役世代に「何歳で退職する予定ですか」と問うと、その平均年齢は67歳だった。あと10年もすると、若い世代は70歳まで働かなくていけないと思うようになる可能性が高い。

 退職後の生活の糧になるのは年金だ。もちろん米国にも年金制度がある。ソーシャル・セキュリティー(退職年金)制度は、ひと言で述べると日本の国民年金と厚生年金の両面を兼ね備えたシステムだ。

 10年以上掛け金を払い続けると、62歳から受給できる。日本と違うのは、掛けた年数と金額が累進制になっているため、支給額が人によって違うことだ。

 62歳から受給可能である一方、65歳や70歳まで受給を待つオプションもある。もちろん後者の方が手にできる額は増える。ただ実際は多くの人が62歳から年金を手にする。「そこまで待てない」「1日でも早く貰いたい」「いつまで生きているか分からない」など、理由はさまざまだ。

 年金問題の著書もあるジャック・テイター氏は次のように述べる。

 「米国では受給する年齢を選べますが、多くの人は62歳から受け取ってしまいます。70歳まで受給を待った場合、支給額は62歳と比較すると30%も増えるのです。けれども、目の前にあるものに飛びついてしまう傾向が強いのです」

 ちなみに、62歳で支給される平均的な年金額は年間1万5000ドル(約150万円)。約5割の人がそれ以外に何らかの収入を得ている一方で、23%の人は年金だけに頼って生活している。

定年はないが、解雇の危機には常に直面

 米国でのリタイアメントは意外にも質素なのだ。ヨットでカリブ海まで航海を楽しむような人たちは圧倒的に少数派である。

 ただ米国の場合、働きたければずっと働くことができる。1967年に雇用者年齢差別禁止法が成立し、企業や団体は雇用に際して年齢で人を差別してはいけない法律ができた。日本よりもかなり前である。

 消防隊員や航空管制官、兵士といった特定分野の職業を除いて、事実上年齢制限は撤廃されている。日本と違うのは定年がないということだ。自身が「もう辞めた」と決意するまで退職しなくていい。民間企業だけでなく、公務員も同じだ。

 筆者が以前住んでいたワシトンDC市内のアパートの大家(女性)は国防総省(ペンタゴン)に勤務していた。74歳まで務めてから退官したが、辞めた理由は「朝、車を運転して川(ポトマック)を越えていくのがおっくうになったから」というものだった。

 送り迎えがあれば、もう少し長く勤務していただろう。日本文学の研究者として知られるドナルド・キーン氏は2011年、コロンビア大学を退職したが、90歳目前まで教壇に立った。しかし労働市場が柔軟である分、能力にそぐわない人材は解雇される現実もある。

 高齢者が働きつづける理由はいくつもあるが、預貯金の少なさが真っ先にくる。退職を間近に控えた米国人の平均的な貯蓄額はいまや2万5000ドル(約250万円)にまで落ち込んでいる(不動産含まず)。

 消費文化を謳歌してきた米国人は、極言すれば預金よりも借金が多い人たちと言える。現金があれば使ってしまう。また現金は銀行に預ける替わりに金融商品で保持する傾向がある。

 それによって、2000年のITバブルの崩壊、2008年のリーマンショックなどで資産を大幅に減らした人が大勢いた。ボストン大学の退職研究センターの調査によると、2007年以降、米国内の購買力は約1兆ドル(約100兆円)も下がったという。

 確定拠出年金401Kの大損失や連銀の低金利政策などもあり、退職後のために蓄えていた資金が大幅に目減りしてもいる。

 さらに米国の高齢者を苦境に陥れているのが医療費だ。ハーバード大学の調査では、個人破産を申請した人の実に62%が医療費を払えないという理由だった。

40代の半数は退職後の蓄えが全くない

 ここまで述べると、一般市民は悲惨な老後が待ち受けていると言わざるを得ない。何しろ30代から40代世代の2人に1人は退職後の資金を全く蓄えていないという調査結果もある。クレジットカードの借金返済と、日々の生活に追われているからだ。

 そのためいつまでも働き続ける。いや働き続けないと生活できない。それが米国の「ニュー・ノーマル」になりつつある。

 年齢で差別されない法律があるとはいえ、60歳前後の人が20代や30代の人たちと同じエントリーレベルの職種に就けるかと言えば大きな疑問である。体が動かない。ハイテクにはついていけない。年齢差別はなくとも、現実的には年相応のポジションがある。

 日本ではあまり伝わらないが、「ニュー・ノーマル」に直面した人たちによる老後の生活についての議論がネット上で盛んだ。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に登場した意見をご紹介したい。

 「企業が推し進めてきた効率化やハイテク技術の導入で、30年前より少ない労働力で業務が行えるようになった。それは生産性の向上とも言えるが、一般労働者の仕事が奪われたことにほかならない。私もその1人だ。経営者は利益を上げたが、社会格差は広がった」

 「ワイン業界に身を置く57歳の男性です。早期に仕事を辞める生き方は、もはや少数の人たちだけのものになりました。私は体が動き続ける限り、畑で仕事をしようと思っています。長生きの秘訣は体を動かすことだと思います」

 以前、筆者がカリフォルニア州サンフランシスコ郊外で出会った40代の男性は驚くことを言い放った。独身のビジネスマンである。

 「僕は死ぬまでにできるだけ借金を増やしてあの世にいくつもりなんだ。今は計画どおり、借金の額が増え続けているよ」

 それは現在も老後もクレジットカードで借金を積み上げ、借りられるところから借りまくるという生活だった。シニアに達する前に、債権者から訴えられるか、自己破産の道を歩まざるを得ないようにも思えるが、昔ながらの消費者がそこにいた。

 米国の退職者は「ニュー・ノーマル」とどう向かい合うか、それが憂鬱な課題になっている。


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