http://www.asyura2.com/13/hasan81/msg/117.html
Tweet |
年季の入った愛用の将棋盤、駒と。「どんなに苦しくても駒は売りません。株と違って買い戻せませんから」〔PHOTO〕濱崎慎治
株主優待暮らしの元プロ棋士(桐谷広人七段)「資産1億円超」への定跡
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36410
2013年07月14日(日) フライデー :現代ビジネス
足の踏み場もないほどに部屋中を埋め尽くす段ボール、本、紙の束―。ただのゴミ屋敷と思うなかれ。都内マンションのこの一室に、時価総額1億数千万円のお宝≠ェ眠っているのだ。
将棋七段の腕前を持つ元プロ棋士・桐谷広人氏(63)は、400銘柄以上の株を保有し、配当金と株主優待のみで生活している。クリアケースにギッチリ詰まった優待券、輪ゴムで無造作に束ねられたQUOカードや図書カード。自らを株式売買依存症≠ニ呼ぶこの変わったオジサンは、現金に換算すると、1年に600万~700万円相当の株主優待を受け取っているという。
「優待券は有効期限があるから大変です。髪も伸びていないのに散髪に行ったり、映画を年に140本観たり……。友人におごることも多いですね。明日も私のファンと一緒に映画を観に行きますよ。まあ、こんな生活を始めてからステキな人には一度も出会っていませんが……」
毎日のように送られてくる優待品や優待券の数々を使い切るため、映画、スポーツジム、外食にデートと多忙な日々を送る桐谷氏。その話しぶりも、息つくヒマもないマシンガントークだ。還暦を超えていまだ独り身。株主優待に振り回される生活はさみしくないのだろうか。
「さみしい……ですね。実は失恋をきっかけに株式売買を始めたんです。昭和59年の春でした。結婚しようと思っていたのにフラれちゃって、非常に落ち込んでいました。そのときに、以前将棋の指導に出向いていた証券会社の人から株取引を勧められて始めました。証券会社に行けば若い女の子にも会えたしね(笑)」
幼少の頃に出会い、プロになるまで究めた将棋のように、傷心の棋士はみるみるうちに株にのめり込んでいく。折しも日本は好景気に沸き、 '89年12月29日の日経平均株価は、3万8915円という史上最高値(終値ベース)を記録した。
しかしバブルが崩壊し、それまで儲けた1億円がパーに……。それでも桐谷氏はくじけない。予期せぬゼロからのスタートを切るにあたり、今まで採っていた値上がり益を狙う方針から、配当の高い株、株主優待のある会社の株に特化して買うという新たな定跡≠編み出した。棋士業の傍ら慎重な売買を続け、利益をあげていた彼に再び試練が訪れる。'07年のサブプライムローン問題、つづく'08年のリーマン・ショックだ。'07年にプロ棋士を引退し自由に使える時間が増えたこともあり、信用取引を頻繁に行うようになっていた桐谷氏。これが裏目に出て、当初は3億円近くあった資産が、約5000万円にまで激減する。それでもなお、桐谷氏は株式売買をやめなかった。
「一日2000万ぐらい損失が出るんですよ。株価がどんどん下がっていって、ここが底値だろうと思って大量に買うと、さらに底があった(笑)。ショックで、部屋を片づけられなくなりました」
大損失を笑い話にしてしまうこの余裕は、厳しいプロ将棋界で数々の勝負をくぐり抜けてきたからこそだ。
「将棋は、相手の指す手に対する読みの深いほうが勝つ。株も同じ。円高やユーロ危機という局面で読みが深いと勝てる」
何度もピンチを乗り越え、現在まで株だけで生計を立てていられるのも、将棋で学んだ「読み」と、なんとかして負けを取り戻そうとする勝負師根性のおかげというわけだ。桐谷氏の分析眼に、アベノミクスはどう映るのか。
「危険な賭けだと思いますが、期待はしています。『茹でガエル』という例えがあるでしょう。カエルを水の入った鍋に入れて徐々に温めていくと、気づかずに茹で上がって死んでしまうという話です。日本経済はデフレでいま茹で上がろうとしている状態。アベノミクスには、カエルを鍋からポンと飛び出させるようなきっかけ、刺激になってほしいと思います」
経済評論家ばりに解説してくれた桐谷氏に今後の展望をたずねると、意外な答えが返ってきた。
「優待や配当金の高い株を保有するだけにして、もう売買はやめたいと思います。さっきも言いましたが、私は株式売買依存症。損をしても楽しいですから。きっと愛する人さえできればデイトレードはやめられると信じているんですけど……」
株に恋する63歳、本当の恋愛市場では売り一辺倒で終わるわけにはいかない。
「フライデー」2013年7月19日号より
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。