02. 2013年7月12日 16:50:03
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JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] ドイツの選挙を巡る「沈黙の掟」 ギリシャなどの救済議論は本当にタブーなのか? 2013年07月12日(Fri) Financial Times (2013年7月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 今後6カ月から12カ月のうちに、ドイツの納税者はまず間違いなく、ギリシャのために追加の救済資金を出すよう求められる。また、何か劇的なことが変わらない限り、ポルトガルのためにも追加の資金拠出を要求されるだろう。 そして、ギリシャ政府に対する既存の救済融資はどうなるのだろうか? ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ギリシャの債権者が追加の損失を負わされることはないと主張している。 ギリシャ向けの追加支援はまず避けられないのに・・・ だが、きちんと計算した人なら誰でも、このような「ヘアカット(債務減免)」なしに、ギリシャの債務水準を、約束通りに2022年までに国内総生産(GDP)比110%以下に引き下げることはほぼ不可能だということが分かるはずだ。ギリシャの民営化プログラムが2014年までに予定された45億ユーロを生み出す状態とは程遠いことが明らかになった今は、特にそうだ。 ドイツ新政権、3.3兆円規模の減税へ アンゲラ・メルケル首相(左)が率いるCDUは、世論調査で優勢を保っている〔AFPBB News〕 ドイツの納税者に、またしてもギリシャとポルトガルを助けるために追加の数十億ユーロを拠出し、既存の救済融資で損失を受け入れるよう頼むことは、どんな政策立案者も軽く受け止めることができない重大な決断だ。 だが、一部の欧州の政策立案者は内々に、もっと厄介な疑問を抱いている。ギリシャなどの救済問題は、選挙運動期間中にドイツの有権者と議論すべき問題ではないのか、という疑問だ。 ところが実際は、ユーロ圏の政策立案者たちの間では、沈黙という共謀がギリシャとポルトガルの将来に関する議論に入り込み、9月22日のドイツの選挙の後までは難しい決定を下すべきではないということに誰もが同意しているように見える。 メルケル首相とドイツ政府関係者は、ドイツが選挙シーズンを迎えているという理由で、欧州の仕事が中断されているということは一切ないと主張する。だが、これは他の欧州諸国で認識されている状況とは異なる。他国の政策立案者は、ドイツの政治に巻き込まれるのを避けるために決定を先送りしていることを認めている。 IMFと欧州委員会も問題先送りに加担? ギリシャとポルトガルに関する大きなジレンマを先送りすることは、メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)にとっては政治的に得策かもしれない。 だが、ギリシャとポルトガルのプログラムを監視する任務を負う、独立した無党派機関とされる欧州委員会と国際通貨基金(IMF)にとっては、それほど良いことではない。両機関は今、この問題に蓋をすることに加担しているように見える。 国際的な支援国・機関の「トロイカ」を構成するIMFと欧州委員会は7月8日、ギリシャの「政策の実行」が予定より遅れていることを認めながらも、同国向けの次回融資(48億ユーロ)の実行を承認した。これによって事実上、10月――つまり、ドイツの選挙の後――まで、資金不足に関する真剣な議論が先送りされた。 IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は記者会見の席上で、ギリシャのプログラムが数十億ユーロ不足しているという事実についてどうするつもりかと2度にわたって尋ねられた時、最初は質問を無視し、次に、ユーロ圏の機関が過去に行った「様々な資金的コミットメント」について漠然と話した。欧州委員会の高官たちは10日、警鐘を鳴らすのは自分たちの仕事ではないと述べた。 このような沈黙の掟は、ドイツの有権者が、ギリシャとポルトガルのプログラムが行き詰まっているという現実に直面した時に政権与党に反旗を翻すという前提に基づいている。 オランダの選挙の教訓 だが、最近の兆候は正反対のことを示している。オランダの反EU政党は昨年、投票日の3週間足らず前に世論調査で約3分の1の票を獲得していた。オランダの政治はドイツの政治とは全く異なるが、救済に関しては非常によく似ているように見えた。現職首相のマルク・ルッテ氏は、ギリシャに追加資金が提供されることはないと公然と主張することで、有権者の懸念を和らげようとした。 これに対し、労働党のディーデリク・サムソン党首はタブーを破り、ギリシャに追加資金を提供しないと約束する人は、守れない選挙公約を行っていると述べた。 国民の反応はどうだったか? サムソン氏は世論調査で大躍進し、選挙では、大差をつけられた第3党から、あと少しでルッテ氏の自由民主党(VVD)を第1党から追い落とすところまでいった。 もしかすると、サムソン氏の躍進が示した教訓は、有権者は、自分たちが信頼する政治家が提示した真剣な政治的課題に直面した時には、痛みを伴う選択でも受け入れるほど成熟しているということなのかもしれない。もしかすると、ドイツの有権者も同じチャンスを与えられるべきなのかもしれない。 By Peter Spiegel in Brussels
JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] どん底への競争を繰り広げる欧州自動車メーカー 2013年07月12日(Fri) Financial Times (2013年7月11日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
フォード・モーターの欧州部門を率いるスティーブン・オデル氏は、自動車工場の閉鎖がもたらすインパクトを嫌というほど知っている。昨年11月、フォードのベルギー工場閉鎖に腹を立て、棒やバットを手にした20〜30人の従業員がドイツ・ケルンの経営陣のオフィスに押し入り、ガラス張りの壁を叩き壊してオデル氏の執務室のドアまで押しかけてきたのだ。 だが、欧州自動車市場が過去20年間で最悪の状況にあるなか、オデル氏は断固として、欧州大陸の自動車メーカーを苦しめている赤字を止めるためには、もっと多くの工場を閉鎖しなければならないと主張する。 「業界は壊滅的な縮小に見舞われている」。フォードの欧州、中東、アフリカ部門の会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるオデル氏はこう言う。「最終的には、企業にとって正しい決断を下さねばならない・・・重力と戦うことはできない」 深刻な自動車不況でも各国政府がリストラを阻止 7月の米自動車販売、トヨタとホンダが苦戦 米メーカーは好調 欧州市場で苦しんでいるのはフォードだけではない〔AFPBB News〕 そう考えるのは、オデル氏だけではない。 欧州では、すべての量産車メーカーが史上最悪の販売減となりかねない不況にはまり込んでおり、年間700万台相当の生産能力が使用されず、合計の年間損失がおよそ50億ドルに上り、アナリストらが少なくともあと3年は続くと見る膨大な営業赤字に見舞われている。 欧州自動車工業会(ACEA)のイバン・ホダック事務局長は「現在、欧州で利益を上げている会社は、存在したとしても非常に数が限られている。長期的には、この状況は持続不能だ」と言う。 潮流に抗っているのは、欧州諸国の政府だ。パリからローマ、マドリードに至るまで、自動車メーカーに対して大きな影響力を持ち、雇用を守る決意を固めている政治家たちは―少なくとも自国の国境内では――これ以上の工場閉鎖は容認できないと明言している。 欧州連合(EU)域内の2012年の自動車販売台数は1310万台。2008年の1600万台から大きく落ち込み、今年は約7%減少し、1200万台を辛うじて上回る水準になる見込みだ。これに対し、EU域内の工場の生産能力は年間1910万台を若干上回っている。 EU域内の工場の6割が赤字操業 この設備余剰の結果、EU域内の工場の6割が赤字操業に陥っており、利益率のどん底を目指す競争が勃発、車を少しでも売ろうと必死になる企業が値引きに踏み切り、持続不能な水準までインセンティブ(販売奨励金)を積み増している。 だが、例外も存在する。ドイツでは、利益を上げているフォルクスワーゲン(VW)グループと高級車メーカーのBMW、メルセデスのおかげで、工場稼働率が80%を上回っている。 VWと競合する多くの量産車メーカーは、欧州全体としての業界再編の合意が成立しないのは、ドイツが妨害しているからだと批判している。欧州全体としてリストラに取り組む案はフィアットのセルジオ・マルキオーネ会長が提案したもので、大陸の自動車メーカーの経営者の多くが支持している。 ある程度のリストラは進んでいる。フォードは欧州で自動車工場を2つ閉鎖しており、プジョーとゼネラル・モーターズ(GM)のオペル部門は1つずつ閉鎖する。フィアットは2011年にシチリアの工場を閉鎖した。 だが、これらの工場閉鎖による生産能力削減は、年間100万台を若干上回る程度だ。この数字は、欧州の年間販売台数が1300万台だと仮定した場合、大陸の自動車メーカーが採算ラインと見なされる75%の平均設備稼働率を満たすために必要な生産能力削減のざっと半分に過ぎない。 早期回復が見込めない市場で収益改善のメド立たず オデル氏は言う。「ある程度の設備削減は起きている・・・だが、業界が向かっている先の状況からすると、恐らく十分ではない。もっと削減すべきだ」「道理に合わない。需要が存在しないのだから・・・市場はすぐには戻ってこないという明確なコンセンサスがある」 フランスの自動車市場に大きく依存するプジョーは、昨年、30億ドル相当の現金流出に見舞われ、フォードは欧州で18億ドルの損失を計上した。両社とも、2010年代半ばまでに収支トントンを目指すと話している。 これは無理な注文だろう。モルガン・スタンレーの調査によると、合計でEUの自動車販売台数の約42%を占める量産車メーカーのフォード、オペル、プジョー、ルノー、フィアットは、2012年に売上高営業利益率が3〜9%のマイナス(営業赤字)になっている。 だが、10億ドル規模の赤字がいかに苦いクスリであっても、高失業率と奮闘する大陸では、さらなるリストラ、人員削減、工場閉鎖は政府にとって考えられないことだ。 危機後に大胆なリストラを進めた米国との違い 多くの経営者は自分たちの言い分を裏付けるために、米国市場との違いを引き合いに出す。米国では、GMとクライスラーが破産申請し、フォードが破綻しかけた後、3社が複数の工場を閉鎖し、労働組合と賃金条件を再交渉した。余剰設備を解消した3社は現在、健全な利益を上げている。欧州では、このような解決策が実行できそうにない。 協調的な取り組みの代わりに、経営者らはこの事態を何とか切り抜けるために、できることをすべてやっている。 ルノーは2016年までに人員を7500人削減する計画で、提携先である日本の日産自動車からも支援を得ている。日産はルノーに、一部の自動車とエンジンの生産を依頼した。 ルノー最高執行責任者(COO)のカルロス・タバレス氏は「我々は少しずつ問題を解決している」と言う。ルノーは2016年からフラン工場で日産の「マイクラ」を8万2000台生産する予定で、タバレス氏は「要は効率の問題だ・・・とにかく問題に取り組み、人々にもっと成果を出すよう頼むしかない」と話している。 イタリアでは、自動車工場の稼働率が欧州で最低の50%未満となっており、フィアットは従業員を解雇する代わりに自宅待機とし、国の特別手当を受け取れるようにしている。 一方、フォードは、欧州で生産設備をさらに削減する計画はないが、状況を絶えず監視しているという。 「欧州が、やらねばならないことの妨げにならないことを望んでいる」とオデル氏。同氏のオフィスの木枠の廊下は今、強化ガラスと鉄製の気密扉で守られている。「数学者なら同意してくれるだろう・・・だが、政治と数学は、常に同じ道を歩むとは限らない」 By Henry Foy
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