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日本の財政危機をめぐる虚実/本当に危機的なのか?
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/865.html
投稿者 金剛夜叉 日時 2013 年 7 月 10 日 22:39:42: 6p4GTwa7i4pjA
 

 今年の秋にはいよいよ消費増税の最終判断が行われる。消費増税に関する法律には景気条項がついているとはいえ、基本的に来年4月からの引き上げはほぼ規定路線となっている。その最大の理由は限界まで来たといわれる日本の財政問題である。

 日本の公的債務は計算方法にもよるが、ほぼ1000兆円の水準に達しており、公的債務のGDP比は200%を超えている。これは国際的にも突出した数字であり、このままでは日本の財政は破綻してしまうといわれている。これが消費税を増税する最大の理由である。

 一方、日本の公的債務のリスクが強調されるのは増税を主導したい財務省の意向が強く反映されており、世界最大の債権国である日本は、それほど公的債務を気にする必要はないとの見解もある。果たして日本の公的債務は本当に危機的な水準にあるのだろうか?

グロスとネットは違うと言われるが・・・

 日本の公的債務を国際比較すると確かにその高さは突出している。図1は主要国にギリシャとスペインを加えた8カ国における政府債務のGDP比を比較したものである(2012年)。日本は238%とダントツのトップで、債務問題で破綻の瀬戸際にあったギリシャよりもはるかに高い。主要国は総じて100%程度であることから日本はほぼ2倍の水準である。

 一方この数値はグロス(負債総額)であり、ネット(負債総額から資産を差し引いた純負債)で比較すべきだという議論もある。図1の右側はネットで比較したものである。確かに日本の政府債務GDP比率は134%と大幅に低下し、順位もギリシャと逆転している。だが主要国との比較という意味ではあまり状況は変わっていない。
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政府が保有する資産の多くはあまり価値がない

 また政府が保有する資産についての解釈も様々だ。政府は現在、600兆円ほどの資産を保有している。主な内訳は有価証券が100兆円、独立行政法人などへの貸付金が140兆円、年金積立金110兆円、固定資産180兆円などである。このうち有価証券の多くは米国債であり流動性も高く資産としては問題ない。だがそれ以外は必ずしも優良な資産とはいえないものも多い。

 年金積立金は年金加入者のお金であり、そもそも政府債務と相殺できるものではない。また貸付金も半分が地方公共団体向けであり、残りも多くが独立行政法人向けである。貸し付けの種類によっては、回収が困難であることが予想される。固定資産の多くは道路や堤防、港湾などであり、収益性のある資産ではない。

 むやみにグロスの債務残高を強調するのは問題だが、現実に負債から差し引くことができる資産が乏しいのも事実である。後述するが、公的債務問題を財政破綻のリスクと考えるか、金融危機のリスクと捉えるのかで考え方も大きく変わってくる。金融危機のリスクと考える場合には、ネットかグロスかという議論はほとんど意味をなさない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130710-00010001-wordleaf-bus_all  

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コメント
 
01. 2013年7月11日 00:41:04 : 1hLK44FX0w
米国債は日本はいくら購入してるのか?

財政危機というが、外国ODA借款を棒引きする余裕があるようだ。

なぜ大盤振る舞いするのだ、政府は。


02. 2013年7月11日 06:37:57 : nJF6kGWndY

公的債務の大きさには、財政破綻や金融危機において、あまり意味はない

決定的に重要なのは、国内外に安定的に高付加価値な生産力や換金可能な資産を十分に保有しているかどうか

そして増税余力や、財政カット余力が十分にあるかどうかだ


03. 2013年7月11日 08:52:54 : niiL5nr8dQ

社会保障の抜本改革こそ、参院選の争点に

2032年に財政は限界に達する?!

2013年7月11日(木)  小黒 一正

 参院選が始まり各党が激しい論戦を展開中である。今月21日の投票でアベノミクスに「審判」が下る。

 ただし、今回の選挙は、2014年と15年に消費税を段階的に5%引き上げる判断を含め、有権者が安倍政権に3年間の「白紙委任状」を渡すか否かを問う選挙といっても過言ではない。特殊ケースを除き、それ以降の3年間(2016年まで)は国政選挙がないからだ。

アベノミクスが成功しても社会保障改革は不可欠

 問題はその先だ。アベノミクスの成否にかかわらず、2050年の日本を見据えた場合、我々は逃げることができない「厳しい現実」に直面する。それは、急速に進む「人口構造の高齢化」である。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計(出生中位・死亡中位)によると、日本の総人口は2010年の1億2806万人(国勢調査)から、2030年に1億1662万人となり、2050年には1億人を割る(図表参照)。その間(2010年→50年)、65歳以上の高齢者は、2948万人から3767万人に800万人近くも急増する。

図表:わが国の総人口の長期的推移(単位:千人)

(出所)国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」から筆者抜粋
 このため、現在のところ、毎年1兆円超のスピードで増加している社会保障費(年金・医療・介護)の膨張は、その抑制を図らない限り今後も継続していく。しかも、日本財政(国の一般会計)の歳出(約90兆円)は、その半分程度しか税収で賄えていない。残りは次世代への借金(=負担先送り)で賄っている状態である。

 現状のままでは、(1)アベノミクスの成否にかかわらず、政府債務(対GDP)が急速に膨張していくのは明らかだ。(2)早急に財政・社会保障の抜本改革を行わない限り、近い将来、財政は限界に達する可能性が高い。

 まず、(1)の「アベノミクスの成否にかかわらず」について、その理由は、拙書『アベノミクスでも消費税は25%を超える』(PHPビジネス新書)やこの連載コラムの「2%インフレ実現でも消費税率32%」で説明した通りである。

 もし日本経済がデフレを脱却し、2%インフレを実現した場合でも、段階的に消費税を増税するケースでは、ピーク時の消費税率は32%にも達する可能性が高い。これは、米アトランタ連銀のブラウン氏らの研究(Braun and Joines, 2011)の試算が明らかにしている。

 しかも、この試算は、以下に挙げる相当厳しい「政府支出削減プラン」の実行を前提にしている――「高齢者の医療費窓口負担を20%とする」「年金給付の現役時年収半額保証をはずす」「政府の経常経費を1%削減する」。それでも、ピーク時の消費税率は32%に達するのである。これは、かなり厳しい前提である。

5%増税の延命効果は4年

 次に、(2)の「早急に財政・社会保障の抜本改革を行わない限り、近い将来、財政は限界に達する可能性が高い」について考えてみよう。この参考となるのが、改革を何も行わず、消費税税率を据え置いたシナリオである。実は、上述のブラウン氏らの研究(Braun and Joines, 2011)は、こうしたケースについても分析している。

 具体的には、日本の政治状況に鑑み、2つのシナリオを用意している。1つは、2014年・15年の消費増税を実施するケース(以下「実施シナリオ」という)であり、もう1 つは増税を実施しないケース(以下「先送りシナリオ」という)である。

 その際、ブラウン氏らの研究では、「政府債務(対GDP)を発散させないために、消費税率を100%に上げざるを得なくなるまで、「実施シナリオ」では消費税率10%を維持、また、「先送りシナリオ」では消費税率5%を維持する」と想定している。

 このような前提に基づく場合、「実施シナリオ」では2032年まで、「先送りシナリオ」では2028年まで持続可能であるとの推計結果を導いている。これは、今回実施予定の消費増税5%の延命効果は「約4年」に過ぎず、消費税率を10%に引き上げても、早急に財政・社会保障の抜本改革を行わない限り、2032年には財政は限界に達する可能性が高いことを示唆する。

 なお、消費増税5%分の税収増=約12兆円は、「約6年」で食い潰すことになる。社会保障費は毎年1兆円超で膨張している。国債の利払い費も、これから毎年1兆円弱で増加(長期金利が1%の水準でも10年間で8兆円増)する。これらの合計が約2兆円であるから、単純計算すると12÷2=6となる。「4年」と「6年」では数字が若干異なるが、ブラウン氏らの試算が妥当であることが容易に確認できる。

社会保障の受益と負担を一致させよ

 現在、アベノミクスが成功し、2014年・15年の消費増税を乗り切れば、日本経済や財政は再生するとのムードが出てきている。だが、財政・社会保障を巡る課題を見れば、それは「幻想」にすぎない。上記の試算から明らかなように、現状のままでは、近い将来、日本財政は限界に達する。したがって、これを回避するためには、財政・社会保障の抜本改革を行い、長期的な視点から、社会保障の受益と負担を一致させることが不可欠である。

 つまり、2050年の日本を見据えた場合、本当の問題は「社会保障の受益と負担の姿」を最終的にどうするかが最も重要であり、それはアベノミクスの成否とは無関係である。このため、今回の参院選の争点から「長期の視点から見た受益と負担の選択」が抜け落ちていることは将来に禍根を残す。21日の投票日まで時間は少ないが、このような視点も含め、論戦が深まることを期待したい。


子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること

 http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20130708/250816/?ST=print

 


 


 

 
 

【第12回】 2013年7月11日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

巨額の繰り越し欠損金が 法人税収を減らしている

 自由民主党は、参院選の公約として、「大胆な法人税減税」を挙げている。また、経済同友会は法人税率を25%に引き下げるべきだとした。

 前回は、実際の企業を見ると負担率が非常に低い企業もあることを指摘した。その原因として、前回は受取配当の益金不算入措置について述べた。今回は繰越欠損について述べることとする。

リーマンショックで翌期繰越額が約20兆円増加

 繰越欠損金制度は、当該年度の益金から控除しきれぬ損失が生じたとき、それを、将来の法人税計算において損金として用いることを許容するものだ。

 企業会計においては、繰越欠損を企業にとってある種の資産とみなす処置(税効果会計)が取り入れられている。

 繰り越すことのできる期間は、従来は7年間であったが、2012年4月から9年間になった。ただし、繰越控除前の所得の80%が限度とされた(中小法人は、従来どおり100%)。

 受取配当の益金不算入措置の影響は年度によってあまり大きく変動しないのに対して、繰越欠損金の額は、経済情勢によって大きく変動する。とりわけ、リーマンショック後には、製造業において巨額の繰越欠損が生じた。

 図表1に示すように、以前から、繰越欠損金の当期控除は10兆円台であり、翌期繰越額は、70兆円台でほぼ一定していた。


 ところが、リーマンショックの影響で08年度に巨額の損失が発生し、この年度の翌期繰越額が90兆円を超えたのである。つまり、20兆円ほど増えたことになる。

 その後、毎年度10兆円程度が取り崩されているが、繰越額は80兆円程度で不変だ。

 2011年度においては、繰越欠損金の当期控除額は9兆7069億円で、翌期繰越額は76兆436億円となっている。

法人税の課税ベースが毎年度4分の1ほど縮小

 上で見たように、まだ巨額の繰越残があるので、今後かなりの期間にわたって、法人税の課税ベースは、毎年度10兆円程度縮小することになる。

 他方で、国税庁「会社標本調査」によると、2011年度における申告所得金額(利益計上法人の利益)は、33.9兆円だ。

 したがって、繰越欠損制度がなかったとすれば、黒字企業の利益は40兆円を超えていたはずである(繰越欠損は、黒字会社においてのみ用いられているものと仮定)。

 この制度はそれを4分の1ほど縮小していることになる。これは、かなり大きな影響だ。

 業種別に見ると、図表2のとおりだ。欠損金の額を所得金額と比較すると、製造業において、欠損繰越の比重が高いことがわかる。


欠損の繰越は正当化できるか

 前回述べたように、「法人税は単年度でなくある程度の期間の平均的な利益に課税されるべきだ」との考えに立てば、欠損の繰越は正当化できる制度である。

 ただし、個人に対して認められていないことを考えれば、無制限に正当化できるわけでもない。

 また、一般の人々の感覚とも合わない場合が多い。

 不良債権処理による損失の発生で、金融機関が長期にわたって法人税を負担していなかったことには、さまざまな批判が生じた。

 製造業の輸出産業の利益が、リーマンショックによって激減し、この数か月で円安によって急増したことに関しても、欠損繰越制度は、問題を提起する。

 この場合の欠損は、経営の失敗ではないにしても、経済情勢への不適応の結果として生じたものである。

 他方で、円安による利益は、経営努力の結果ではなく、棚からぼたもち的に生じたものだ。

 ところが、輸出関連企業の多くは、リーマンショック時に巨額の損失を発生させているから、現在でも巨額の繰越欠損金を保有していると考えられる。こうした事情の下では、円安による利益は、課税されないままで終わってしまうことになる。

 他方で、円安によって損害を被っている企業や個人もおり、政府はその一部(飼料価格の上昇や漁船用燃料価格の上昇)に対しては、すでに補助を決定している。

 こうした状況を考えると、円安による利益増に対しては、繰越欠損による相殺を認めないか、あるいは制限することが考えられてもよいのではないだろうか?

税率引き下げより課税ベース拡大が必要

 法人税は、法人の利益に課税している。これは、法人税を、個人所得税の先取りと考えているからだ。法人の所得は、配当、株式値上がり益、役員報酬など、何らかの形でいずれ個人に帰属するから、こうした制度がとられている。

 しかし、法人税の課税標準が利益であることは、法人の行動にさまざまのバイアスを与える。個人所得税についても、原理的には同じ問題があるのだが、その程度は、法人の場合のほうがはるかに大きい。

 法人の経済活動のためにはさまざまな公共サービスが必要であり、これらの利用コストとして法人課税をするという考えのほうが、われわれの日常感覚に合っている。つまり、受益者負担としての法人課税である。

 こうしたことを考慮すると、つぎのような方向での法人税改革が必要である。

(1)税率を引き下げるのでなく、課税ベースを拡大する。
(2)経済情勢によって大きく変動しない指標を課税ベースとする。
(3)法人税制が法人の活動形態に影響を与えないことが望ましい。

 こうした方向に沿う一つの方法は、外形標準課税の導入である。これは、すでに事業税に一部取り入れられている。

日本の法人所得課税のGDP比は低い

 日本の法人税負担が重いと言われるのだが、GDP(国内総生産)に対する法人所得課税の比率を見ると、図表3のとおりであり、日本はG7・アジア諸国のなかで、もっとも低いグループに属する。


 なお、表には示していないが、消費課税負担との比較においても、法人所得課税の負担が日本の場合に格別重いとは言えない。

 イギリス、イタリア、カナダ、そしてアジア諸国は、日本より法人税率が低いにもかかわらず、法人所得課税の対GDP比は日本より高くなっている。

 これは、全体としての租税負担率の問題でもあるが、課税ベースの広さも、重要な点であろうと思われる。このように、制度上の税率の高低は、現実の負担率を表す指標としては不適切なのである。

 法人税率の引き下げを志向するよりは、課税ベースの拡大を法人課税改革の柱とすべきである。
http://diamond.jp/articles/print/38663

 
 

 


 


 

 
「理容業」統計が示唆するアベノミクスの限界

「来店サイクル長期化」で人口減・少子高齢化対策が急務

2013年7月11日(木)  上野 泰也

 1994年の春に今の住所に引っ越してきてから、もう20年近く通い続けている理髪店がある(筆者は古い世代に属するので、最近の若者らのように美容院ではなく、理髪店に行っている)。仕事柄、慢性的に睡眠不足の筆者には、顔や肩のマッサージもある癒しの時間なので、思わず眠り込んでしまうこともある。そうでないときは、顔なじみの店主や従業員とよもやま話をすることが多い。

 そんな時に気づかされるのは、「その道のプロは、目の付けどころが一般の人とは違う」ということだ。その理髪店のご主人は、首相時代の小泉純一郎氏をテレビ映像で見た際、たまたまクローズアップされた手が実に入念に手入れされているのに感心したという。

 前首相の野田佳彦氏に対しては、首相になってもそれ以前と同じように料金1,000円の格安カット店に行ったことに、このご主人は真剣に怒っていた(理容業者の組合が本気で抗議したようで、野田氏はその後、値段の高い店にだんだん行くようになったらしい)。

 いつものように、この店で景気談義をしていたある日、「景気が悪くなるとお客さんが髪を切りに来るまでの間隔が長くなる」という話になった。この理髪店では顧客カードを作成し、パソコンで管理しているのだが、そうした傾向は明確だという。髪が伸びて気になってきても、しばらく我慢して過ごすのだろうか。景気が悪くなって家計が苦しくなると、男性のそうした支出にさえ、制約が加わるのかもしれない。

 そんな話を裏付ける経済統計がないか、探してみた。残念ながらそのものズバリの統計は見つからなかったが、理容業の業況を知る上で使える統計が2つあることが分かった。それらを以下にご紹介しよう。

(1)「第3次産業活動指数・理容業」

 経済産業省が発表している「第3次産業活動指数」の中の対個人サービス業の内訳の1つとして、「理容業」の季節調整済み指数が毎月作成されている(図1)。

 指数作成の元になっているデータは、家計調査の「理髪料」の金額である。これに推計世帯数を掛け合わせた数字(推計全国理髪金額)を、消費者物価指数の「理髪料」で実質化して、「理容業」の指数は作成されている。

図1:第3次産業活動指数 「理容業」

(出所)経済産業省
 「理容業」の2005年基準指数は、2008年にかけて緩やかな低下基調で推移した後、09年には急上昇し、9月に100を超えた(理由は不明。ちなみに09年の夏は猛暑ではなく、低めの気温で過ごしやすかった)。その後は再度、低下局面。11年1月にボトム(87.2)をつけて反転上昇したものの、12年から13年1〜3月期にかけては緩やかな低下基調。そして、4月分は、原因は不明だが、水準を大きく切り下げた。7月10日に発表された5月分はリバウンドしたものの、いずれにせよ「アベノミクス」効果のようなものは、直近データであるこの5月分に至るまで、まったく感じられない。

(2)「生活衛生関係営業の景気動向等調査」

 2つ目は、日本政策金融公庫(国民生活事業本部生活衛生融資部)の調査だ。これは「全国の生活衛生関係営業の主な業種について、その景気や設備投資の動向などを把握するため、定期的に(年4回)実施しているもの」だ。売り上げ、業況、利用客数、客単価、採算の各DIが算出されているほか、設備投資の実施状況や計画などが調査されている(図2)(図3)。

 発表元に問い合わせたところ、今年4〜6月期の調査結果は、8月末〜9月初めに発表予定とのことなので、ここでは4月に発表された1〜3月期の調査結果(調査時点:3月上旬)から、理容業(328企業が調査対象)の主な調査結果を見ておきたい。なお、生活衛生関係営業全体の景況についての総括判断は「依然として厳しく、かげりが見られる」となっている。

図2:生活衛生関係営業の景気動向等調査 「理容業」 売上DI、業況DI、利用客数DI

(出所)日本政策金融公庫
◇売上DI(前年同期対比「売上増加」企業割合−「売上減少」企業割合)は、マイナス54.7(前期比プラス7.3ポイント)になった。4〜6月の見通しは上向いているが、この統計で通常見られる現象であり、「アベノミクス」期待が反映された結果とは言い難い。いずれにせよ、賃金増加という消費のカギを握る動きが強まってきておらず、急上昇していた株価は5月下旬から6月中旬に急落したことから、4〜6月期の実績は見通しを下回る可能性が高い。
◇業況DI(前期対比「業況好転」企業割合−「業況悪化」企業割合)は、マイナス61.2になった(前期比マイナス14.9ポイント)。
◇利用客数DI(前年同期対比「利用客数増加」企業割合−「利用客数減少」企業割合)は、マイナス57.2(前期比プラス4.2ポイント)になった。前期からは上向いたものの、極めて低い水準にとどまったままである。しっかりした景気回復を背景とする「散髪インターバル」の短縮化と、そのことによる利用客数の顕著な増加は、少なくともこの調査が行われた3月上旬時点では観察されていない。
図3:生活衛生関係営業の景気動向等調査 「理容業」 客単価DI、採算DI

(出所)日本政策金融公庫
◇客単価DI(前年同期対比「客単価上昇」企業割合−「客単価低下」企業割合)は、マイナス33.5(前期比マイナス1.5ポイント)になった。
◇採算DI(当該期「黒字」企業割合−「赤字」企業割合)は、マイナス29.0になった(前期比マイナス5.6ポイント)。
 この「生活衛生関係営業の景気動向等調査」の公表資料の末尾には、特徴的な業況判断理由が掲載されている。今期(1〜3月期)の業況が悪化した「理容業」のコメントの中に、「来店サイクルが長期化している」という福岡県の業者からのものがあった。最初にご紹介した、行きつけの床屋での話に合点がいった。

影落とす「下向きの人口動態」

 これら2つの理容業に関する統計が示す業況の低迷の背景には、人口減・少子高齢化の着実な進行があると見られる。このことを筆者は「下向きの人口動態」と名付けている。

 このままでは国内の消費市場は全体として、さらに縮小せざるを得ない。6月14日に閣議決定された成長戦略を含め、「アベノミクス」はこの重大な問題への対応があまりにも不足している。

 その上、理容業者の顧客層は比較的年齢が高く、需要が先細りになる恐れが大きい。また、中低所得層の賃金上昇を伴うような景気回復が見えてきたわけでもない。

 理容業者の業況が目立って回復する日は、本当にやってくるのだろうか。アベノミクス効果を見極める上での無視できないポイントとして、とても気になる。


上野泰也のエコノミック・ソナー

景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130708/250844/?ST=print

 


 


 


 


 

【第71回】 2013年7月11日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
参院選始まる!
安倍政権半年・アベノミクスの評価
 第二次安倍政権が発足したのが昨年12月26日なので、半年たったことになる。そして、参院選では、アベノミクスに対する賛否が争点になっている。そこで、半年の間のアベノミクスの評価をしてみよう。

 もともとアベノミスクは、オーソドックスな金融政策・財政政策のマクロ政策と規制緩和等のミクロ政策の組み合わせだ。ミクロ政策では、なんとかファンドとか、官僚が利権のために作ったようなものもあり不十分な点が多く、世界で通用する規制緩和では今イチのところが目立つが、マクロ政策の金融政策は世界標準のインフレ目標なのでまともだ。財政政策も、今度は無駄なバラマキが懸念されるが、これまでのところまずまずだ。

金融政策の効果は
完全発現まで2年程度を要する

 金融政策の効果は、完全に出るまで2年程度を要する。ましてミクロ政策では、規制緩和をしても法制面で手当が2年程度、それからその効果となると、あと数年はみておかないといけない。この意味で即効性のある政策なんてないのが実情だ。

 多くの人は、こうした政策の方向性を見ながら、その効果への期待で動いている。例えば、金融政策では、予想インフレ率が本格的に上昇するのが金融政策を実施してから半年程度かかるというのがこれまでの経験だ。それで実質金利(名目金利マイナス予想インフレ率)が下がり、実体経済への影響ではさらに1年半程度を要する。

 ただし、これらを先取りして資産市場は早く動く。その典型が株式や為替である。もちろん株式や為替はこうした変化を先取りして動くが、オーバーシュートして揺り戻しがしばしば起こる。市場で「調整」と言われるものだ。このため、日々の株価や為替などの経済指標で一喜一憂することはないが、半年タームで見れば、それなりの傾向がわかる。

 株価については、政権発足前に1万0080円だったものが1万4000円程度だ。為替は1ドル84.79円が100円程度と、円安、株高に方向だ。これはアベノミクスで予想された方向とあっている。

日銀短観では
景況感が改善

 こうした資産市場の動きは実体経済に影響を与えるが、実体経済は実質金利の影響を強く受ける。実体経済はまだ顕著な変化が見えにくいが、一部の指標では出ている。

 日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業については製造業でプラス4、大企業非製造業もプラス12となり、3月の前回調査よりそれぞれ12ポイント、6ポイント上昇した。中小企業については、製造業でマイナス14、非製造業でマイナス4と大企業ほどの回復ではないが、それぞれ前回調査より6ポイント、4ポイント改善した。

 短観の中で、DIとは、企業の業況感について「良い」と回答した会社比率から「悪い」と回答した会社比率を引いて得られる。これがプラスというのは、「良い」と回答した会社が多いことを意味している。

 DIを業種別に見ると、大企業製造業16業種中、プラスが8業種、ゼロが1業種、マイナスが7業種だが、前回調査と比べると15業種で業況判断が改善している。これは円安のおかげである。改善しなかったのは円安で業績が悪化する石油・石炭製品だけだった。

 大企業非製造業では、12業種中プラスが11業種、マイナスが1業種で、9業種が改善した。マイナス1業種は電気・ガスだった。

 業況判断指数を見る限り、円安の効果が広範の業種に及び、経済全体の景気判断に好影響を与えているのがわかる。

 設備投資はどうなのか。

 短観には設備投資計画も書かれている。大企業の2013年度の設備投資計画は全産業で前年度比5.5%増となった。前回の3月調査の2.0%減からプラスに転換した。中小企業等を含めた全産業でも前年度比5.5%増、前回調査の3.9%減からこれもプラスになった。これをみると、設備投資にも良い効果が出始めていると考えることもできる。

 気になるのは雇用であるが、「過剰」から「不足」を引いた雇用人員判断では、全産業でマイナス1、前回調査と同じであるが、3ヵ月後の先行きではマイナス5だ。これは先行き人員不足となるとみていることを意味する。雇用環境も徐々に良い方向になる見通しである。今の段階で断定は慎重にすべきであるが、アベノミクスの効果を否定するものでない。

内閣府の「景気動向指数」も
すべての指数が改善

 また、内閣府が5日に発表した「景気動向指数」でもいい方向だ。安倍政権発足後の半年間(2012年12月から2013年5月)でみると、先行指数、一致指数、遅行指数それぞれで、100.7から110.5、102.3から105.9、107.7から108.9とすべて改善している。

 この景気動向指数の中身を見ると、より実体経済の動きがわかる。

 先行系列は、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数(除学卒)、実質機械受注(船舶・電力を除く民需)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数(42種総合)、長短金利差、東証株価指数、投資環境指数(製造業)、中小企業売上げ見通しD.I.だ。

 一致系列は、生産指数(鉱工業)、鉱工業生産財出荷指数、大口電力使用量、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数(調査産業計)、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業)、商業販売額(卸売業)、営業利益(全産業)、中小企業出荷指数(製造業)、有効求人倍率(除学卒)である。

 遅行系列は、第3次産業活動指数(対事業所サービス業)、常用雇用指数(調査産業計)、実質法人企業設備投資(全産業)、家計消費支出(全国勤労者世帯、名目)、法人税収入、完全失業率だ。

 これらの経済統計は、各省や各経済団体などで公表しているもので、いずれも実体経済の把握のためには有用だ。

 これらについて、2012年12月と5月(または直近の月)を増加率(またはパーセントポイント差)でみれば、以下の図1〜図3のとおりだ。


 なお、金利は形式的に改善していない指標になる。ところが、それは名目金利であって、実体経済に重要な実質金利でみれば、やはり改善している。これは本コラムの読者であれば、5月16日付け『長期金利上昇懸念の「から騒ぎ」』で書いたとおりであり、ご存知だろう。

 この金利を考慮すると、ほとんどの経済指標で改善しているのがわかる。具体的には、先行系列15は全て改善、一致系列11のうち10、遅行系列6のうち3が改善になっている。

唯一の懸念材料は
消費増税の判断

 このように、日本の景気回復を示す経済指標が増えてきている。これは、アベノミクスで事前に予想された範囲の結果である。安倍首相は4〜6月の経済指標をみて、秋にも来年の消費増税について判断する意向を示しているが、これはアベノミクスの唯一の懸念材料だ。

 景気回復局面での増税逆噴射は、同じ金融緩和で景気回復していたイギリスが2012年からの17.5%を20%に増税した後、景気がよくなくなった例がある。日本でも1997年の消費税増税後に景気後退になっている。

 いずれにしても財政再建を急ぎすぎないことが肝要で、金融緩和の効果が出るまでの間は成長に専念すべきだ。長期的なさらなる成長のためには、7月以降、規制緩和が必要である。そのために誰が司令塔になるのか。参院選後の内閣改造に注目したい。
http://diamond.jp/articles/print/38662


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