02. 2013年7月10日 10:16:34
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〔焦点〕政府のデフレ脱却判断、「コアコアCPI」採用へ 2013年 07月 9日 21:23 JST [東京 9日 ロイター] - 5月全国消費者物価指数(除く生鮮、コア)が前年比0.0%とマイナスを脱し、デフレ脱却の局面が近づいているとの声が一部のエコノミストから出ているが、政府はエネルギー関連を除いた「コアコア指数」で判断する方針を明らかにしている。コア指数の上昇には、単純に需要の強まりと判断できない「訳ありケース」が含まれているからだ。デフレ脱却判断のハードルが高くなり、結果として消費増税判断に影響する可能性もある。<コアCPI上昇、比重大きい電気料金の値上げ> 5月コアCPIがマイナスから抜け出し、6月以降の全国コアCPIがプラスに転換して、次第に上昇するとの見方が、エコノミストの中では多くなっている。 今年末には前年比プラス0.5%─0.6%程度まで上昇する可能性を指摘する声もある。 ただ、この中には電気料金の値上げ分が相当に含まれている。すでに5月から関西・九州電力が値上げ、7月以降は東北、四国電力も含め10%前後の値上げとなる。 <デフレ脱却、政府は慎重に判断> これに対し、政府では本当の意味でのデフレ脱却の判断には、慎重な見方をとっている。中身の精査とともに、生鮮食品だけでなく変動の大きいエネルギー関連製品や、公共料金なども除いて、デフレ脱却を判断していく方針だ。 このため、通常の「コアCPI」ではなく、値上げの影響が大きい電気料金を除く「コアコアCPI」を使って判断する。 そのうえで政策当局幹部は「一時的ではなく、後戻りしない物価上昇でなければデフレ脱却とはいえない」としている。 そのコアコアCPIだが、5月時点でまだ水面下。前年比マイナス0.4%と、3、4月の0.8%から下落幅を縮小してきている。 このままのペースで縮小を続ければ、年内には上昇に転じるとも予想できそうだが、「物価下落幅が本当に縮小していくのかといえば、そう簡単ではないだろう」(政府筋)というのが政府部内で見方だ。 そこには、表面的な動きとは別の構造が隠されている。 <転換した大型テレビの価格戦略、CPIに影響> これまでデフレ傾向を促進している"中心選手"と見られてきた大型テレビの価格に下げ止まりの動きがあり、それをデフレ脱却の大きな現象として指摘するエコノミストの意見が多くなっている。 だが、実態はどうも違うようだ。CPIの調査対象と推定される売れ筋テレビがこれ以上価格を下げても売れないとところまで安値となり、価格競争がハイエンド商品に移行するという現象が広がっているという。 実際、大手家電量販店の関係者は「売れ筋の32インチ液晶テレビは、もはや相当安くなってしまった。買い替え需要はむしろ、32インチと同じような価格に下がった37から40インチに移行している」と打ち明ける。 <マックの新価格戦略、CPI採用品目で値上げ> また、5月全国CPIに大きく影響したと思われるある有名企業の価格戦略の展開があった。日本マクドナルド(2702.OS) の新商品の投入だった。 CPI調査では、チーズバーガーやハンバーガーを対象として採用している地域が多い。同社は「顧客の購買動向を分析した結果、ハンバーガーやチーズバーガーを値上げしたが、一方でチキンマックナゲットやポテトSサイズは値下げし、その他価格据え置きの商品もあり、商品全体ではわずか0.3%程度の値上げにすぎない」(広報)と説明する。 つまり、CPIに反映される商品は値上げしたが、その他の商品で値下げし、統計上は実態以上に物価が上がった形になっている可能性があるということだ。 同社では「話題の1000円バーガーも曜日・個数とも限定のいわば試みの商品」であり、消費者のデフレマインドの変化を見極める段階にあるといえそうだ。 一方で、円安が輸入コストの転嫁を通じて川上から川下製品へとじわじわと物価を押し上げている状況もある。電気料金のほか、パンやハムなど食品、そしてタブレット端末やブランド品まで円安の影響で軒並み値上げラッシュとなる。 <真のデフレ脱却へ、2つの課題> この先、デフレ脱却につながるかどうかは、2つの課題を乗り越える必要がある。 一つは、人々の期待インフレ率の上昇だ。日銀が2%の物価目標を達成できるとしているのも、この期待インフレ率に働きかける自信があるとしているためだ。 バークレイズ証券によると、内閣府の消費動向調査から試算した家計のインフレ期待は2.5%に上昇、家計の期待形成がインフレ方向に傾斜し始めた可能性がある。 しかし、ここでは「1年後の物価見通し」を聞いていることから、来年の消費増税をはじめ、電力料金や食料価格の上昇など家計にとってのコスト増が背景となっている可能性を指摘。「安定的なインフレ期待の引き上げとは言いにくい。これらのノイズが続くため、景気見通しの改善に裏付けられた「良い期待インフレ率の上昇」を抽出することはかなり難しい」(チーフエコノミスト・森田京平氏)としている。 もう1つは、所得の増加だ。これなくして物価上昇が先行するリスクは広く懸念されている。 RBS証券では「07年までに経験したような労働分配率の低下が、今もなお続いているのであれば、家計部門への還元はなく、賃金改善を伴ったインフレ率の上昇は期待できない」と指摘する。 もっとも6月日銀短観で非製造業を中心に13年度人件費計画が増加している点などから「現在は、当時のような新興国を意識した人件費圧縮はさほど大きくない」(チーフエコノミスト・西岡純子氏)とみており、少なくともコアCPIで見たデフレ脱却といえる状況は、今年後半には実現すると予想している。 <デフレ脱却判断の慎重化、消費増税の判断に影響も> このようにコアコアCPIを基準にデフレ脱却時期を判断した場合、脱却を政府が宣言するタイミングは、コアCPIを基準に判断する場合よりも、かなり先送りされる公算が大きい。 そのことは、政府が秋にも判断する消費税率の引き上げ判断に対し、微妙な影響を与える可能性がある。安倍晋三首相周辺のリフレ派と呼ばれる学者や専門家が、増税実施の判断にはコアコアCPIの上昇定着を伴うデフレ脱却の確認が必要と主張しかねないためだ。 (ロイターニュース 中川 泉 編集;田巻 一彦)
コラム:円安期待が裏切られる日=村田雅志氏 2013年 07月 9日 18:07 JST 村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト(2013年7月9日)
「アベノミクス」による円安効果について、筆者は懐疑的な姿勢を持ち続けている。その理由の一つは、日本から海外への資本フローが日本の経常黒字を相殺できる規模に達しておらず、結果として潜在的な円買い圧力が高止まりしているからである。 財務省が8日発表した6月の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、いわゆる日本人投資家による対外債券(中長期債)投資は約3兆円の処分超と2005年1月の統計開始以来、過去最高の売り越しとなった。日本人投資家による対外債権の売り越しは、ドル円が90円台に上昇した今年2月から5カ月連続となっており、今年上期の売り越し額は10.6兆円に達している。 一方、外国人投資家による対内株式投資は昨年10月から買い越しが続いている。6月は7648億円の買い越しと4カ月ぶりに買い越し額が1兆円を割り込んだものの、今年上期の買い越し額は8.8兆円に達した。 証券投資に加え直接投資、貸付なども含めた資本収支をみても、5月はネットで9000億円が海外から日本に流入。海外への直接投資や貸付は日本から流出超となっているものの、証券投資による日本への流入分を相殺できていない。今年上期で見ても資本収支は1.2兆円の黒字(資本流入超)である。 日本は11年3月の東日本大震災以降、貿易収支が赤字基調で推移しているが、経常収支は依然として黒字を維持。今後は輸出の持ち直しを背景に貿易赤字が縮小する一方で、所得収支は円安効果もあって高水準での推移が見込まれることから、日本の経常黒字は緩やかながら拡大を続けると予想される。 マクロ経済学では、外貨準備が変化しない限り、経常収支と資本収支の合計はゼロ。つまり経常黒字国である日本の場合、資本収支は赤字基調であるはずだ。しかし現実には日本の資本収支は経常黒字を相殺すべく赤字(資本流出超)であるどころか黒字(資本流入超)。今後、経常黒字がさらに拡大するようだと、日本への資本流入が拡大し、円買い圧力は強まることになる。 <ドル円上昇期待の根拠薄弱> 日本銀行の黒田東彦総裁は4月4日の金融政策決定会合後の会見で、「量的・質的金融緩和」によってポートフォリオリバランス効果が期待できると指摘した。同効果は、日銀が市場に潤沢な資金を供給することにより、金融機関がより高いリターンが期待できる運用先を求めてポートフォリオを再構成することを期待するものだ。 同総裁の指摘を受け、市場関係者の一部は日本の金融機関が海外への証券投資を拡大させるとの見方を強めたようだが、現実は逆だった。前述したように、金融機関を中心に日本人投資家は、これまで積み上げてきた対外証券の取り崩しを続けている。 円安が進展し、米国を中心に海外債券利回りの大幅な低下が見込みにくくなってきた一方で、円債利回りは日銀の異次元緩和後に上昇。日本人投資家が対外証券を取り崩し、日本に資本を回帰させるのは自然のことといえる。 市場関係者の中には、米連邦準備理事会(FRB)による緩和縮小観測を背景にドル買いが続き、ドル円のさらなる上昇を期待する向きもあるようだが、筆者はその見方にも懐疑的である。日本人投資家による潜在的な円買い圧力が強まる可能性があるなか、101円台まで反発したドル円が、今後さらに大きく上昇するとは期待しにくい。 5日に発表された6月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が市場予想を上回る増加となり、4月分、5月分も上方修正。FRBが早ければ9月にも緩和縮小に動くとの観測が再び強まり、米債利回りは大きく上昇した。ただ、FRB高官が相次いで指摘するように、米連邦公開市場委員会(FOMC)で議論しているのは量的緩和の縮小であって利上げの開始ではない。 5日のフェデラル・ファンド(FF)先物取引では、14年9月の利上げ確率が50%を超えたが、第1四半期に年率2%に満たない成長にとどまっている米国に利上げを期待するのは無理がある。今後は米債券市場における行き過ぎた緩和縮小期待が後退し、米債利回りの上昇は一服するだろう。日米金利差の拡大を背景としたドル円の上昇も見込みにくくなる。 また、中国景気の先行き懸念が強まり、円買い戻しの動きが強まる可能性にも注意が必要だ。米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物の取組(7月2日までの週)によると、円のドルに対する売り越しは7万0736枚と前週から増加し、円売りポジションが依然として積み上がっている状況にある。 こうしたなか、1日に発表された6月の中国製造業購買担当者指数(PMI)は50.1と景気の分岐点とされる50をかろうじて上回ったが、前月より悪化。同日に発表された6月の中国HSBC製造業購買担当者景気指数(PMI、改定値)は48.2と9カ月ぶり低水準になるなど、第2四半期の中国景気の減速感が強まっている。 貿易収支、新規元建て融資、実質国内総生産(GDP)など10日以降に発表される6月の経済指標が悪化傾向を続ければ、同国景気の先行き懸念がさらに強まる。中国経済指標の悪化は、円売りポジションを手仕舞う良いきっかけになるだろう。 *村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。
2013年07月09日
第69回 フォワード・ガイダンスって?!今年の最強通貨はドル?!【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】 先週末5日に発表されたアメリカの6月の雇用統計の数字を受けて、ドル/円相場は101円台まで上昇しました。NFP・非農業部門雇用者数が予想を大きく上回り、また過去2か月分の数字も上方修正されたことから過去6か月平均が20万人を超え、マーケットにはいよいよ9月にアメリカはQE3緩和縮小に踏み切るのではという思惑が広がったことからドル買いが加速しました。先月6月のFOMCでバーナンキ議長が「年内に月次の資産買い入れペースを緩めることが適切と考えている。その後の指標が現在のわれわれの経済見通しに引き続きほぼ沿った内容となれば、来年上期を通じて買い入れを慎重なペースで縮小していき、年央頃に停止するだろう」と発言したことで、FRBが現在月間850億ドルのペースで購入している資産の買い入れ額を縮小する時期がいよいよ近づいているとの思惑が高まりドル買いの流れが生まれていましたが、雇用統計の数字を見てさらにその時期が早まるだろうという期待が高まったのです。 加えて、先週はBOE(英国中央銀行)とECB(欧州中央銀行)が同時にフォワード・ガイダンスを導入したことで、ポンドとユーロが大きく下落しており、この側面からもドル高に拍車がかかっています。先週は、ポンド・ユーロ・ドルの今後の大きな流れを占う非常に重要な発表があったと言えるでしょう。では、その重要なフォワード・ガイダンスとは一体なんなのでしょう。 フォワード・ガイダンスとは現状の金融緩和政策の時間軸効果を狙った手段です。今回BOEとECBは、低金利政策はずっと続けるよ!という「低金利政策の長期化」メッセージを発信しました。金利を引き下げるという伝統的な政策は、これ以上引き下げられないというゼロ金利政策に入ってしまうと、追加の緩和手段を失ってしまいます。中央銀行が、金融調節を行うために市中から買い入れる資産の範囲や規模を従来以上に拡充させるという非伝統的手段もあるにはあるのですが、伝統的手段において策がなくなった場合、時間的効果を狙ったフォワード・ガイダンス導入というのは一定の効果があることは米国の例を見ても明白です。米国はインフレ見通しが2.5%を超えず、失業率が6.5%に低下するまで事実上のゼロ金利政策を継続としていますが、2012年のFOMCで「2014年後半まで低金利政策を維持する」と明記しています。これによって米国の長期金利は抑制され景気回復に大きく貢献したとみられています。 先週のBOEでは、英経済の低迷はしばらく続くとした上で、将来的な政策金利引き上げ織り込みは景気の弱さを踏まえれば適切ではないとの声明が出されました。さらに、このところの市場金利の大幅上昇は景気回復見通しの重しになるとし、将来的な政策金利の引き上げ織り込みは「国内経済の最近の動向を踏まえれば、適切ではない」と強調しています。今回のBOEからカナダから来たカーニー新総裁に変わっていることから市場の注目は高かったのですが、フォワード・ガイダンスの導入と受け取れる声明に、マーケットのサプライズは大きかったとみえ、ポンドは大きく下落しました。 またECBの声明には「政策金利は長期に渡り現在の水準か、それよりも低い水準に留まる」との記述が挿入され予見可能な将来の政策金利のバイアスが下方であることが示されました。 長期にわたり低金利を継続すると明言したことで、ユーロも大きく売られましたね。 あの6月の雇用統計の数字を受けてもなぜアメリカの株価が下がらなかったのかのカギはここにあるように思います。 これまで米国の雇用の指標が良ければ、早期出口開始の思惑からドルが買われることは理解できますが、緩和縮小の思惑から株価にはマイナスなのではないか、と思われてきました。QE1、QE2 終了時は株価に大きな調整がありましたね。ところが先週金曜は米国株式市場は堅調に引けました。米国が緩和を縮小しても、これから異次元緩和を推し進める日本、フォワード・ガイダンスを導入し、長期低金利政策を明言した英国と欧州の緩和マネーが米株を支えていくのかもしれません。 そして、ポンド、ユーロ、円が緩和策によって価値が希薄化する反面で米国は縮小からドル高の思惑が働くことから今後の最強通貨は米国ドルであることが示されたとみていいでしょう。「中銀に逆らうな」です。しかし、これも米国が本当に年内に資産買入れ額の縮小に踏み切ることができれば、の話。何が起こるのかわからないのがマーケット。もし、その時期が遅くなればなるほど、このシナリオにも修正が必要となってきますが、その時はまたその時。勝てるトレーダーは先のことなど考えていません。今、勝てる波に乗ることだけに集中しているものです。 コラム執筆:大橋ひろこ
村上尚己「エコノミックレポート」 2013年7月9日 株高が持続するハードル〜5月初旬と現在を比較する〜 日本株は、急落した5月23日直後の水準まで戻ってきた(グラフ参照)。5月末から6月半ばまで相場の景色が一変し悲観的な見方が広がる中で、日本株を割安と冷静に判断できた投資家は、足元の急反発で含み益が増えているだろう。 現在の日本株(TOPIX)の水準は、5月月初とほぼ同じである。ここから先、日本株を買い上がる投資判断は、5月半ばの様な下落リスクとの見合いで行う必要がある。筆者は、現在同様の株価水準だった、5月初旬の「月刊マーケットの歩き方」で、日本株の投資判断を1か月前から引き下げた。 この時は、(1)それまで改善していた重要な米経済指標がやや減速、(2)米FRBに市場の注目が移り出口戦略への思惑が揺れ動く可能性、(3)株価水準が切り上がっていた、という3つの事象から以下のように判断した。「アベノミクス成功で日本経済全体が復調し、脱デフレという過程に入っている中で、出遅れている日本株は中長期的に投資魅力は大きい。ただ短期的に調整リスクが大きくなった」と。 その後株価は急落したが、1か月の調整期間を経て反発、再び5月初旬と同じ水準に戻り、前月と同様の「かなり強気」の投資判断を維持するか悩んでいる。5月にやや慎重な方向に判断を引き下げたのは、先に述べたとおりISMなど弱い米経済指標、FRBの出口戦略への思惑、という2点があった。 これらについては、3か月連続で低下していたISM製造業景況指数が6月に下げ止まり、米製造業の業績は最悪期を過ぎた模様である(グラフ参照)。更に、消費、住宅、雇用などの景気指標は引き続き改善している。またFRBの量的緩和縮小への懸念についても、スケジュールを敢えて明示したバーナンキ議長は市場からの信認を一旦は勝ち取ったようにみえる。 これらの2つのネガティブな要因だけでみれば、急反発した日本株にとっても、5月時点と比較して下振れリスクは和らいでいる。また、欧州ではPMI製造業指数が2か月連続で改善するなど、先進国において製造業の生産活動は改善傾向にある。 ただ、中国の製造業PMI指数は、統計作成に問題があったことが判明したことに加えて、6月に若干だが再び低下した。新興国においては景気減速懸念から、中国、ブラジル、インドなどの株価、そして銅・アルミなどで国際商品市況の価格下落が続いている。 世界経済全体では、米国と日本の国内需要回復が下支えとなっているが、それが新興国の景気復調につながらない状況が続いている。中国のシャドーバンキングの問題自体は、従前から言われていたことで、これは金融危機再来というよりようやく問題解決に当局が踏み出したと考えればよい。ただ政策対応に政治事情が影響するなら、中国景気の足踏みが続くリスクは高まった可能性もある。 こうした世界経済全般の状況は、5月と現在を比較して劇的に改善したとまでは言えない。であれば、5月初旬と同様に短期的には日本株の上値を追う、リスクはそれなりに高い。 日本株を含め世界の株式市場が、5月半ばまでのように高値追いが続くには、米国と日本経済の復調が、新興国や欧州にも波及し世界経済回復が顕著になるシグナルが増えることが必要だろう。これまでのところ、原油以外の国際商品市況は軟調である。 一方、中国の鉄鉱石輸入価格やバルティック海運指数(ばら積み船の運賃)が6月初旬から下げ止まり、やや明るい兆しもある(グラフ参照)。これらの価格上昇が一段と鮮明になり、新興国の下振れリスクが和らぐストーリーが期待される。ただ、その兆候がもう少し増えるまでは、日本株を中心に株式市場の上値追いリスクは大きいと考えている。 http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/er/economic.htm
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