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大反響企画 第2弾 年金制度廃止こう考えよ 準備したものだけが生き残る
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36359
2013年07月08日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
すでに破綻しているのに、小手先の改案で、またもや延命措置をしようという。抜本改革はどこへやら。国がそんな体たらくなら、自分の生活は自分で守るしかない。今から「年金廃止後」に備えよう。
■どうすれば損しないのか
「もともと、年金制度が始まった頃の平均寿命は65歳ほどで、60歳から支給しても5年ほどで支給は終わる設計でした。人生最後の5年間くらいは国で面倒をみようという考え方です。
ところが今は、平均寿命が男性で約80歳、女性で約86歳まで延び、国が20年以上も年金を支給しなければならなくなった。設計時と大きく状況が変わったわけですから、今のままの制度でもつはずがありません。
現状の年金制度はなくしたほうがいいと思います」(作家の橘玲氏)
「少々厳しい指摘かもしれないですが、今の年金などの社会保障改革は、『最後は突っ込んで玉砕する』戦争と同じ。長期での給付と負担の姿を検討せず、その場しのぎの微修正で、当事者たちが、『あとは野となれ山となれ』の感覚でやっているように感じます。
実際、社会保障費を抑えず、'17年に一気に消費増税を行うと、その最終税率は33%に達します。5年遅れで'22年に消費増税を行うと、その間にも、国の借金が増加するので、税率は37%に達するという試算もあるんです」(法政大学准教授の小黒一正氏)
本誌先週号で報じた、日本の年金制度はいっそ廃止すべきだという意見は大きな反響を呼んだ。年金積立金は20年以内に枯渇し、財源を賄おうにも消費税を8%に上げる程度では、年金は到底もたない。
もちろん、年金の支給開始年齢を引き上げたとしても―。
今年度から厚生年金の支給開始年齢が引き上げられた。基礎年金(国民年金、および厚生年金の定額部分)と同様、厚生年金(報酬比例部分)も65歳までの段階的な引き上げが始まったのである。しかも、国は支給年齢のさらなる引き上げを検討している。
長年保険料を払い続けてきて、ようやく年金をもらえると思ったのに、今度は歳を取るごとにもらえる時期が後ろにズレていく。破綻することは確実なのに、条件を国民にとって不利なように少しずつ変えながら、〈支給開始年齢の引き上げ〉、〈保険料率の値上げ〉、〈支給額の減額〉と、問題を先送りにしているだけ。
これでは、壮大な国家的詐欺である。
それでも、条件を下げて制度が維持できるならいいが、焼け石に水であることは論を俟たない。少子高齢化が急速に進み、専門家たちが予測する未来は暗い。
明治大学教授の加藤久和氏が〈保険料率の値上げ〉の限界を語る。
「厚生年金の保険料率引き上げは'17年度まで続き、標準報酬月額の18・3%までになりますが、それではとてもじゃないけれど足りない。今の水準を維持するのであれば、早いうちに25%ぐらいまで上げていかないと間に合いません」
また、経済アナリストの森永卓郎氏が〈支給額の減額〉を語る。
「現役世代は、今の水準の年金が支払われるなどと期待してはいけません。その『3分の2』を想定しておかなければいけないのです。厚生年金のモデル年金はひとりあたり月額約16万円ですが、これよりも低い額しかもらえないことも覚悟すべきです」
一般の人で年金制度を完全に理解している人などごく少数だろう。それこそ、複雑な計算式を用いて理屈をこねまわし、つぎはぎだらけの制度にした年金官僚たちの戦略≠ナもある。
そして、年金制度を廃止したら大変です、制度を続けるためには我慢が必要ですよとの脅しには、どうせ国民に細かいことは理解できないだろうという傲慢な考え方が透けて見える。
難しくてよくわからないからといって、お上の言いなりになる必要はない。年金制度なき後、どうやって老後の生活を守るべきか。ごくシンプルに考えればよいのである。
■もし長生きするのなら
慶應義塾大学教授の小林慶一郎氏が提案する。
「年金制度は、人口が増え続ける社会であればすべての世代にメリットがありますが、人口の増加率が低くなってくると、すべての世代が損をする。つまり、年金はないほうがマシという状態になってしまいます。
ではどうするか。現行の年金制度なら、年金受給者であっても、高所得者や資産の多い人には、年金にも税金をかけ、事実上支給額を減らす方法があります。
制度を廃止するならば、現役世代が高齢者に支給する年金の原資を払う賦課方式から、自分の老後資金を自分で積み立てる積立方式に変えることも考えられます。様々な事情から自分で預金できない人には、国が福祉政策を提供すればよく、実質的に年金を廃止するのと同じです」
経済評論家の山崎元氏もまた、年金に代わるわかりやすい制度を勧める。
「年金の機能のひとつに、『長生きしすぎた人の保険』ということがあります。たまたま長生きした人のための保険ということならば、本来は民間の保険会社が提供してもいいのです。公的制度としてやるのならば、年金と生活保護と雇用保険を一本化したような、サイズの小さいものでいい。
国は、すべての国民に一律月5万円を支給、あとの生活費は個人の貯蓄で賄う形にし、たとえば75歳以上の高齢になった人には、いくらか別途に支給するというシンプルな形がいいと思うのです」
そうすれば、年金官僚が数字を都合よく操るだけの仕事もいらなくなるのだ。
実際、山崎氏は、こうしたいわゆるベーシックインカムを導入すると、官僚の介在が非常に少なくて済む、だから、官僚はやりたがらないだろうと皮肉った。
また、早稲田大学教授の原田泰氏が考えているのは、最低保障金を全国民に配るという方法だ。
「国は、年金のためにカネを集めるのをやめて、税を原資にした最低保障金の制度をつくればいい。そうすれば、人々が働いていたときの所得に比例して年金を支給する必要はありませんし、世代間の不公平もなくなります。
最低保障金の額は、国民年金よりわずかに多い、一律7万円とか8万円という水準をイメージしています。それよりも豊かな老後を送りたい人は、自分で準備しておけばいいんです」
公的年金の基礎年金部分については、最低限の生活が保障できるように国が担う一方で、厚生年金部分については、民営化して積立制にするという方法を主張する識者もいる。
■マイケル・サンデルの考え
諸外国の年金制度から学ぶことも多い。
「イギリスではNESTという制度が昨年頃からスタートしています。これは、自分で蓄える一種強制的な個人年金制度。公的年金にできることは財政や人口動態で限界があるため、ある程度、個人でも蓄えてほしいというメッセージです。
ドイツなどでは『リースター年金』と呼ばれる個人・企業年金があります。各人が働いている間に、しっかり老後の備えができるように、毎年蓄えた金額の所得控除など、税制面での優遇措置がとられています」(ニッセイ基礎研究所取締役理事の前田俊之氏)
国に任せておくとロクなことにならないのだから、自分のカネで将来を守るという考え方は、アメリカでもスタンダードだ。同国の哲学者でハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏が簡潔に述べる。
「私の理解が正しければ、日本の公的年金制度は社会保障≠セけではなく、社会福祉≠フ機能も持っている。だからこそ、保険料の免除制度や国庫負担によって、収入が少ない人でも保険料を十分に納めていない人でも、将来の年金が確保できるようになっているわけですよね。これでは財源が足りずに破綻するのも仕方ないのではないでしょうか。
アメリカの公的年金制度はあくまでも社会保障であって、福祉ではないので、『働く人』を対象にしています。私たちは報酬に応じて納めた保険料の額に従って、年金を受け取る仕組みになっているので、破綻することはありません」
ところで、制度を変えたり、廃止するときは、いつ、どのタイミングでやるのかということが一番の問題となるかもしれない。
しかし、ここで少し考えてみよう。もともと日本には、簡単に年金制度を変えてきた歴史がある。こんな国は世界でも珍しい。
たとえば、年金の支給開始年齢を65歳以上に引き上げている国は多い。
・アメリカ……66歳。'27年までに67歳へ引き上げ
・ドイツ……65歳1ヵ月。'29年までに67歳へ引き上げ
・イギリス……65歳。'46年までに68歳へ引き上げ
(いずれも'12年末時点、男性の場合)
アメリカは15年かけて1歳の引き上げ、イギリスでは約10年ごとに1歳の引き上げという、非常にゆったりとしたペースだ。欧米諸国では支給額の減額などの大きな動きはあまりなく、支給開始年齢の引き上げのみで対応している。
長期的な展望に立って、国民に負担の少ないようゆったりと引き上げを行っている外国に照らせば、3年に1歳ずつ、性急に支給開始年齢を引き上げる日本は、特異なのである。
■正しい老後と間違った老後
これまで勝手に年金制度をコロコロと変えておいて、いざ制度を根本的に見直そうといったときに、「そんなに簡単には変えられない」というのでは理屈が通らない。どう変えるかこそを最優先に考えるべきであり、どう先送りするかの議論ばかりを繰り返していても埒が明かない。
それは、実際に制度を変える国や役人の真剣な話し合いにかかっている。
「少子高齢化の進み方について、『出生率がもう少し上がるのではないか』とか、積立金運用利回りを多めに見積もるなど、希望的観測のほうに軸足を置き、ポジティブな数値を使ったツケを払うときです。もっと早い段階から『最悪の場合はこうなります』というシナリオをつくって話を詰めていれば、多少なりとも今より良い状況に持って行けました」(前出・前田氏)
結論を棚上げするために、国民は血税を払っているわけでもない。
いざ年金制度が廃止されるときに向けて、年金に頼らなくとも老後を過ごせるように具体的な準備をしておくことにしよう。
ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏が、老後に備える実践的なアドバイスをする。
「60代からの夫婦生活にいくら必要なのか。6000万円とも7000万円とも言われますが、実際にはそこまで貯蓄していない人が多数でしょう。
だからまず、60歳までに達成可能な貯蓄額を算出し、それに1~2割上乗せした金額を必要な資産と考えて貯蓄しましょう。
マイホームを持ち、ローンの支払いを終えている人なら、賃貸に出した家に稼いでもらい、マンションタイプのケアハウスに移るのもいい。ひとり月7万~8万円で、3食が提供されて快適に過ごせるところも探せばあります」
また、定年後の豪遊に警鐘を鳴らすのは、生活デザイン株式会社代表取締役の藤川太氏である。
「60代以降は住宅ローンや教育費などの固定費が大幅に減りますから、油断して大金を使いがちです。大事なのは資産運用よりも家計の管理を考えること。地区のサークルや家庭菜園など、老後の家計を崩さないよう、おカネをかけずに楽しむ術を身につけましょう」
もちろん、60歳になったら受給開始年齢を繰り上げて、年金をもらい始めることも選択肢のひとつ。受給開始時期を1ヵ月早めるごとに受給額が月額0・5%ずつ減額されるが、年金制度廃止までにもらっておけるメリットは大きい。
今年、60歳を迎えた、国民年金を繰り上げて受給するAさんと、通常受給するBさんふたりがいる。5年後に年金制度が廃止となった場合、65歳からもらおうと思っていたBさんより得をするのは、Aさんだ。
来るべき年金制度廃止を見据えて、準備したものだけが生き残る時代。年金が廃止されてシンプルな制度が設計されれば、老後に必要な資金もわかりやすく備えておけるだろうに。
「週刊現代」2013年7月13日号より
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