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上昇するエンゲル係数 食料消費の構造変化も
政府は2012年度版の農業、漁業白書をまとめた。今年の白書は水産物の消費が減り続け、調理食品への依存が増すなど食料消費の構造変化を掘り下げて分析している。
水産白書が指摘するように、魚介類の国内消費は減少が止まらない。国民1人1日あたりの魚介類摂取量は、06年に初めて肉類に抜かれ、11年には肉類の83.6グラムに対し、魚介類は72.7グラムと差が10グラム以上に広がっている。
外食や加工品での摂取も含めた量だから、生鮮水産物→加工食品といった図式で説明はできない。
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柄沢彰・水産庁漁政部長は(1)骨が多く食べにくい(2)実際に食べられる部分で換算すると他の食材に比べ割高感がある(3)生ごみが出る――ことが消費不振の要因と指摘する。一方で、牛丼店などの外食は安値競争を続けるから、どうしても魚介類は分が悪い。
魚介類ほど鮮明ではないが、食料全体の消費動向も弱い。それでも家計の中では別な姿を農業白書が明らかにしている。
家計支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は、05年から上昇傾向にある。農業白書は食料支出以上に食料以外の支出が大きく減ったことがエンゲル係数上昇の要因とみている。
所得が減る中で家庭はさまざまな出費を切り詰めているが、食べるための支出はあまり減らせていない。
小麦などの穀物価格が高騰した08年には食料品の値上がりがエンゲル係数を0.5ポイント押し上げる結果になった。生活者は食料を買う量を0.4ポイント分減らして防衛したものの、値上がり分を相殺できなかった。
足元の穀物価格も、国際相場が高止まる中で円安・ドル高が進んで上昇傾向にある。原料の値上がりを理由にした食品価格の引き上げが相次いでいる。
家計では食料以外でも電気・ガス代など削りにくい支出の増加は続くが、所得が増えて家計全体の支出が拡大しなければ、エンゲル係数は一段と上昇する可能性がある。
年齢層でみると、高齢者世帯のエンゲル係数の高さが目立つ。世帯主が30歳未満の世帯が20%程度なのに対し、70歳以上になると26%に達する。高齢者世帯は家計消費が全般に減る中で、食料支出の割合は40歳未満を上回る水準にある。
今後の高齢化が、構造的にエンゲル係数を押し上げることも予想される。
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食費の中では、調理食品の比重が増す。08年以降は一時、中国製冷凍ギョーザ問題が波及して落ち込んだが、1980年に比べた12年の支出は5割強も多い。
食費全体に占める調理食品の比率は、世帯主だけが働いている世帯の11.2%に比べ、共働き世帯だと12.6%に高まる。農業白書は女性の社会進出が進むと家事にかけられる時間が制約されると同時に、所得が増える分だけ支出が調理食品に向きやすいとみる。
消費の構造変化を政策で止めることは難しい。農漁業と食品加工、流通を組み合わせる6次産業化の成否は、消費の変化にどう対応していくかにかかる。
(編集委員 志田富雄)
[日経新聞7月2日朝刊P.22]
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