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売国破滅の道を糾弾する知識人 アベノミクス批判の論調から 『人民の星』 5785号4面 2013年5月11日付
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/812.html
投稿者 福助 日時 2013 年 7 月 08 日 00:35:53: Bec2vmwBuKH7M
 

福助のおことわり。

5月のものであり、少し前のものですがよく纏まった有意義なものなので投稿しました。

http://ww5.tiki.ne.jp/~people-hs/data/5785-4.html

『人民の星』 5785号4面 2013年5月11日付

売国破滅の道を糾弾する知識人 アベノミクス批判の論調から

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 知識人のなかでアベノミクス批判の論調が高まっている。論議の広がりのなかで、アベノミクスは日本経済の危機を深め破滅の道にむかわせるものだという指摘とともに、アベノミクスはアメリカ直輸入の異常な政策であり、アメリカだけを利する売国の政策であることが指摘されている。特徴的な論点をとりあげてみたい。

米国だけが利益うける政策
 たとえば民間の経営戦略研究組織のシニアアナリストである益田悦佐氏は、アベノミクスについて日本経済を完全にアメリカ型にしようとしている、と分析し批判している(『デフレ救国論 本当は恐ろしいアベノミクスの正体』徳間書店)。
 そこで増田氏は、「インフレ政策や自国通貨を安くする政策を打って実際に恩恵を受けるのは、じつは世界各国のなかで唯一アメリカだけ」と指摘している。世界最大の借金国であるアメリカは「なんとかごまかしてその場をしのいでいくしかないから、躍起になってインフレ政策をうちつづけるわけ」だとえがいている。
 そのうえで増田氏は、「日本は世界最大の貸し手国家であるにもかかわらず、借り手国家に得なインフレ政策を採るべきだと主張しているこの国の政治家たち」の異常さを指摘している。また、「アメリカから教示されたとおりに経済を考えればいいと思い込み、なんでもかんでもアメリカに追随したがる日本の経済学者」の異常さを批判している。つまり、安倍政府やアベノミクス支持の経済学者は、日本の優位性を放棄して、しゃにむにアメリカに奉仕する売国的な政策をとっているということである。

論法自体も米国から直輸入
 増田氏は、中央銀行がコントロールできるのは発行するお金の量だけであって、発行したお金がどのように流通していくかをコントロールすることはできない、ということを明確にしている。ところがアベノミクスの金融理論では「それはできる」といいはり、「みんなが必ずそうなると信じ込めばできるのだという」論をはっているが、それは「“集団妄想”を掻き立てることができればうまくいくのだという論法」だとあばいている。そしてこのあやしげな論法がじつは、かれらが「信奉してやまないアメリカからの輸入品」であり、「ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン博士という人物」の論法だと、あばいている。
 増田氏は「(アメリカという国は)強欲このうえない資本家が成果をむしり取っていくので、労働の取り分が激減しています。……勤労者報酬のGDPに占めるシェアが一九六〇年代の五四%以来、続落している」「こうしたアメリカのような状況へみちびこうとしている人たちとは、いったいどういう頭の構造をしているのか、ほんとうに国民のことを考えているのか」とアベノミクスの売国性を批判している。
 増田氏は、竹中平蔵らアベノミクス論者をデマゴーグと断じて、かれらはインフレ政策をうてば製造業の雇用が回復するなどと大ウソをついているとして、「インフレ政策のお膝元であるアメリカでは、いま製造業の就業者数が猛烈な勢いで減っている」実際をしめしている。

国債の日銀引受けの危険性
 早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀夫氏も、アベノミクスの量的緩和策は、国民の財産を没収し、日本の資産をアメリカに「流出」させると指摘し、FRBがおこなっている大規模な金融緩和の効果を分析し、金融機関は回復したが雇用は改善していないこと、大企業の利益は伸びたが賃金所得は伸びていないことをしめしている(『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社)。
 野口氏は、安倍政府が実現の保証がないインフレ目標二%をあえてかかげるのは、量的緩和策の真の目的が「日銀による財政赤字のファイナンス(国債の貨幣化)」であり、それをいつまでもつづけるためである、と強調している。というのは、日銀による国債の直接引受をみとめることによって、「政府は、税制改革なしに、そして市場の制約なしに、いくらでも財源を調達できる……国民から見れば法律によらずに財産を没収される手段」だからである、と指摘している。
 そして野口氏は、「歴史上、財政赤字が一定限度を超えると、国は例外なくインフレ策をとって、国債残高の実質価値を低下させ……その負担は、国民が負った」と歴史をふりかえって、国債の中央銀行引受禁止は、「こうした歴史の苦い教訓の上に立つ重要な規定なのだ」と指摘し、アベノミクスが国債の日銀引受に道をひらく戦時経済への道であることを示唆(しさ)している。

米国債へ乗換え促進を狙う
 また、インフレがおこると「多くの国民はそれからのがれることはできない。しかし、高額資産保有者はできる」ことを問題にしている。つまり銀行や証券会社、生保、運用基金などが、その資産を円建てから外貨建てに移すこと、このプロセスがいっきょにすすむ「資本逃避」がおこる、とえがいている。なお、増田氏もインフレになれば国債の投げ売りがはじまると分析している。
 野口氏はここで、「国内のインフレを反映した円安は円の実質価値をさげることにはならないので、輸出は増えない。したがって、円安とインフレの悪循環だけが生じて、日本経済が急速に破壊される恐れがある」と指摘している。
 野口氏は、アベノミクスが、国民にインフレをおしつけて徹底的な収奪をすすめること、それは戦争経済とむすびついていること、そして、高額資産保有者は資本逃避することを指摘している。
 高額資産保有者とは大銀行であり、証券会社であり、保険会社であり、年金機関である。それが資本逃避するということは、多くの場合は日本国債を売ってアメリカ国債にのりかえることであろう。アベノミクスは、それをねらっているということだ。 

過剰生産問題は解決しない
 ところで、パリにある米州研究所のエコノミストであるロベール・ボワイエ氏は、「ユーロ危機、アベノミクス、日本の将来」についてインタビューをうけ、つぎのように日本経済の現状とアベノミクスについて分析している(季刊雑誌『環』五三号)。
 「クルーグマンは、安倍政権のインフレ・ターゲットを中核とする金融緩和政策を、強く支持しているようです。しかし……現在の日本経済の問題は、たんに人々の期待に働きかけ、インフレーションを煽ればそれでなんとかなるというものではない……過剰生産能力の問題が解決されないかぎり変わらないでしょう」と。国際的にも、日本のアベノミクスの問題点はみぬかれている。


 

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コメント
 
01. 2013年7月08日 03:35:58 : nJF6kGWndY

また妄想か

02. 2013年7月08日 03:43:37 : nJF6kGWndY

米国景気が改善し、$も国債金利も上昇したから、多くの国から買われているだけだ

そして、景気改善を促進した要因は、明らかにアベノミクス(バーナンキのQE拡大とオバマによる共和党の緊縮策への抵抗)のカンフル効果が大きいのは言うまでもない

欧州の現状と比較して見れば、アベノミクス(QE+財政支出)が底辺層の最悪の雇用悪化と生活破綻を防止するのに有効であったことは誰でも認めるしかないだろう



03. 2013年7月08日 04:28:11 : 4GxHq9ub7o
ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン博士は、アメリカの国益だけを考えている学者ではありません。世界の多くの大学の経済学部で使われている教科書を書いている国際的な学者で、その教科書の多くの部分は昔から日本の公務員試験に出題されている一般論が多く、アベノミクス自体さほど珍しいもではありません。

04. 2013年7月08日 05:37:38 : e9xeV93vFQ
東大院生、「売春島」を行く

迫真のルポを書き続ける理由

2013年7月8日(月)  金田 信一郎

 売春島、偽装結婚、移動キャバクラ…。現代社会の「見過ごされる真実」に食い込み、迫真のルポルタージュを描き、同時にアカデミズムの視点で俯瞰して分析する。3・11直後に出版した『「フクシマ」論』で一躍、脚光を浴びた東京大学大学院生の著者、開沼博氏に新作『漂白される社会』の舞台裏と、そこから見えてくる現代日本の病理を聞いた。
(聞き手は金田 信一郎)
社会が目を背けて「見えないようにしている」人々を、「周辺的な存在」として追いかけて、『漂白される社会』(ダイヤモンド社)を出版されました。売春島からホームレスギャル、シェアハウス、生活保護受給者、右翼・左翼などへの潜入ルポが書き込まれていますが、一番反響があったのはどのテーマでしたか。

開沼:やっぱり、マック(マクドナルドで眠る2人のホームレスギャル)でしたね。

どうやって彼女たちにアプローチしたんですか。

開沼:普通に店にいたんですよ、マクドナルドに。たまたまです。

 深夜一時。池袋のマクドナルド。
 終電を逃した飲み会帰りの大学生たち、パソコンを広げるビジネスパーソン、休憩中の客引き……。その中に、腹より下を毛布で覆って眠る二人の少女がいた。

(中略)

 目を覚ましたリナは、携帯電話で時間を見ながらボンヤリと思う。
 「最近は深夜二時になると四時までとか五時まで清掃とか言われて追い出しくらうからな。二四時間営業って言ってるくせに。また公園行って寝るか……」
 カネが無くなったら一〇〇円マック。マイカが飲み物を一つ注文したら、リナはハンバーガーを一つ頼む。それを互いに半分ずつ分け合って飢えを凌いでいる。

(『漂白される社会』より)

確かに道にはホームレスが座り込み、店に入れば外国人が働いている。正視すれば目に飛び込んでくる人々を、無意識のうちに視界から外しています。そこに、開沼さんは目を向けている。


開沼 博(かいぬま・ひろし)氏
東京大学大学院学際情報学府博士課程在籍、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。1984年福島県いわき市生まれ、東京大学文学部卒。文藝春秋、AERAなどにルポルタージュや評論、書評などを執筆。著書に『「フクシマ論」 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『漂白される社会』(ダイヤモンド社)など。
開沼:そうですね。多くの人が好奇心をかき立てられる対象であるにも関わらず、見ていない。そのギャップが広ければ広いほど面白いと思って、突っ込んでいったところがあります。

 森達也さんがアーレフ(旧オウム真理教)のドキュメンタリー映画を撮った時に、「何でそんなものが撮れたのか」とか、「怖い思いをしなかったのか」と言われて、「誰もそこに行ってなかっただけです」とおっしゃっていました。その通りだと思うんですよね。そこに行けば、大抵はどんな取材対象でも、いきなり恫喝してくることはなくて、とりあえずいい人だったりする。すごく有名な人でも誰も(取材に)行ってない、という状況はどうなのかな、と疑問に思います。

まず行くということが重要ですよね。

開沼:そうですね。

それで売春島も行った、と(笑)。

開沼:常にアンテナを張っている感じです。そうすると、話を聞いた瞬間、「それは面白そうだな」と感じると思うんですね。「売春島があるんだ。へーっ」と。そこで終わらせずに、ネットで調べれば大体の情報が得られてしまうのが、今の社会です。それじゃあ、そこをちゃんと見に行って、深堀りしてみようか、と。

宴会して、「お泊り」も

 確かにそれは「おかしな島」だった。昼間のビーチは夏らしく爽やかで、夜になると遊覧船に集う家族連れ。のどかな海と静かな風。
 しかし、夜の始まりとともに空気は一変。「表」の顔が一気に「裏」の顔へと反転して――。

(中略)

 七〇〜八〇代であろう客引き女性のつぶやきをぼんやりと聞いていた。
 「私らが働きだした昭和四〇年、五〇年頃っていうのは、この島にも一〇〇人以上女のコがいたんよ。今くらいの時間になっても、“お泊まり”を取り損ねたコたちが『まだお客がいるんじゃないか』とここら辺をふらふらしていた。年中、団体客が大挙してやって来てねぇ。昨日は九州の農協だ、今日は大阪の土建屋だって。宴会して、“お泊り”もして」

(『漂白される社会』より)

興味を持ったら、それで終わらせず、足を運ぶ。

開沼:ホームレスギャルもそうですね。別に、マックでちょっとしゃべって終わりでもよかった。でも、結局、どうやって食っているんだ、と。行く末は、どうなっているんだということを、やっぱり見たかったんですね。誰でも、そういうのに出会っているはずなんだけど、やっぱり見て見ぬふりをしてしまっているのかな、と。

開沼さんは、その「周縁的な存在」に敢えてスポットを当てる。

開沼:そうですね。以前から、「女性の貧困」、「若者の貧困」に興味がありました。そういった意味で、シェアハウスを(テーマとして)狙ったというのはありましたね。シェアハウスの、自己啓発的な側面の描かれ方って、気持ち悪いと思っているので。「それだけじゃないだろう」と。だから行ってみて、実際、若者の貧困と密接な関係だというのはありましたけれど。まあ、偶然ですが。

 話を聞いていったら、問題が見えてきたんです。しかも、知り合いにシェアハウスの経営者が何人かいたのも幸運でした。シェアハウスはまだ、掘ればネタが出てくると思います。ただ、シェアハウスの極端に悪い面だけを切り出したいわけではなくて、何事も「功罪」がある、と。それを多面的に見ていかないと、原発(原子力発電所)の安全神話のように、後から大きな問題に発展することになりかねないと思うんです。

実は、問題が内在していると知りながら、あえて目を背けている。そこに現代社会の病理と、未来の危機を見いだすわけですね。それは、『「フクシマ」論』における問題の捉え方につながっています。

アウトローを見に行く

開沼:因果関係としては、順番は『「フクシマ」論』が後になるんです。

なるほど、今回の潜入ルポの出版は『「フクシマ」論』の後になりましたが、3・11より前に、ホームレスギャルや売春島を調査取材していたわけですね。

開沼:「周縁部」や「アウトロー」を見ていく手法で、いくつかの雑誌に潜入ルポのような形態で書いていました。その中の1つとして、原発問題に突き当たって、それを深めていこうとしたのが『「フクシマ」論』だったんです。別に、違う対象で論文を書いてもよかった、と。そこで今回、原発以外で対象として追いかけていた中から、興味深いものを選んで、まとめて本にしたわけです。

『「フクシマ」論』は、3・11の直後という、絶妙のタイミングで出版されました。あの時も今も、開沼さんがずっと描こうとしている「周縁」というものが、非常に重要性を増してきている。問題が臨界点に来ているテーマが並んでいます。思い返して『「フクシマ」論』の出版のタイミングをどう振り返りますか。

開沼:もちろん3・11が起きることは予想していなかったんですが、それでも、「いつか原発という、矛盾を抱えたものがおかしなことになるだろう」とは思っていました。10年とか30年というスパンで見れば、必ず問題が起きる。それを「当てにいった」という面はありましたね。

 今もフクシマのことを追っているのは、やっぱりそれが「中心の問題」ではなくて、「周縁の問題」であり続ける、ということなんですね。例えば、遠くに避難している人にインタビューすると、こんなことを聞きます。牛丼店で産地が表示されている。牛肉とタマネギは輸入食材だが、米は関東産だ、と。「じゃあ、上だけ買って帰ろう」みたいな消費行動を、避難しているお母さんたちはするんですね。

 「言葉を失う」、「過剰だ」と言ってしまうことはできます。けれども、一方で「価値観の多様性を認め合う社会」とも表面上は言います。では、多様性というなら、そうした行動に正面から向き合えるか、という話ですね。

 これは複雑な話になりますが、その時にLGBT(同性愛)問題に近いと思ったんです。「そんなの不合理だよ」とか、「米も食えよ」と言ってしまうことって、たぶん同性愛の方に、「お前、異性愛に行けよ」と言うのと同じような無茶な話であって、ずっと擦れ違うと思うんです。圧倒的に価値観が違う、という所からスタートせざるを得ない社会みたいなものが、フクシマに向き合う場面からは、出てくるのかなと強く感じています。

 そこに結局、アカデミズムやジャーナリズムの目が向いているかというと、たぶん向いていない。「被害者の方には優しくしましょう」とか、「賠償をしっかり国がやりましょう」とか、「除染はこうやって早くやったらいいんじゃないでしょうか」みたいな上っ面の話で終わってしまう。

同性愛の問題など、日本で広く議論され、解決される見通しが立ちませんね。

開沼:難しいです。

日本で、まさに「周縁の存在」として視界から消し去っているもの、心の中のどこかで否定しているものを、どう向き合って理解し、認め合っていくのか。もちろん米国でも、同性愛に対しては保守的な見解が根強く残っていて、激しい議論が繰り返されています。でも、政治や司法の場で議論され、事態が大きく動いています。

「無視」が横行する社会

開沼:やっぱり価値観の多様性に直面すること、そこを擦り合わせる危機に瀕することが、経験として圧倒的に足りなかったと思うんです。欧米は移民を受け入れたり、経済格差が開く事態が何度も繰り返されてきて、「ここからは揉める」というラインが見えやすくなっている社会だと思います。もちろん、日本だって外国人やマイノリティーの問題はあったわけだけれども、それをどう社会の中で処理するのか、という経験は少なかった。

 ところが、人やモノの流動性はますます高まっていく。科学技術の進歩で、遺伝子組み換え技術が普及してきて、「遺伝子組み換え食品を食べていたら、10年後、ガンになる確率が高い」となるかは分かりません。それは、放射線を浴びた食品を食べた場合にどうなるのかだって、正確には分からないんですよね。

 そういうことを事前に知って、自分の価値観を定めなければならない。その価値観を決めた瞬間、子供が1人だけ、給食の時間に弁当を食べていて、イジメに遭う、みたいなことが大人の社会でも起こるはずです。それに、どう向き合うのか、ということだと思っています。

 だから『漂白される社会』でも書きましたが、今、コンビニや居酒屋に行ったら、かなりの確率で外国人が働いています、と。でも、それを見て見ぬふりをしてしまう私たちがいる。

 一方で、表面上は「移民を入れた方がいい」とか、「人種の多様性を。差別はいけない」と言うけれども、では、実際には価値観が擦れ違い、あるいは「無視」が横行している。居酒屋で働いている外国人だって、日本人と同じように「成功したい」「いい会社で働いて家を買いたい」と思っているのかもしれない。でも、そういうことには向き合おうとしない。そんな状況が、実はここ20年ぐらい、ずっと続いてきたんじゃないかと思います。そろそろ、そこに向き合おうよ、と。

20年間、向き合わなかった。

開沼:そう思います。

20年前から、何が変わったんでしょうか。

開沼:そうですね、いろいろなファクターで、日本の社会制度が変わりました。国内要因で見れば、例えば1980年代後半に中曽根政権が、外国人留学生を増やしていこうという流れを作った。当然、そこには外的要因との相互作用があって、「グローバル化」という要請があった。モノばかりが国境を越えて、「人材もそうすべきだ」という話が出てきた。僕が所属している東大大学院の博士課程は、全員、留学生なんです。そういう状況があるわけですから、そういうことをちゃんと見ていかないとだめですね。

そうすると、20年以上も前にさかのぼれば、日本は今よりも異質な人に対応できていなかった、ということでしょうか。

アカデミズムとジャーナリズム

開沼:それが正解でしょうね。もちろん、戦後、ある程度の摩擦はあったと思うんですが、無視しながらも日本社会を成長させることができたんだと思います。ですが、高い経済成長という前提が崩れている中で、また別なフェーズで問題が起こりだしているし、今後さらに起こってくるだろうと思っています。

 それは多分、明らかな貧困とか、分かりやすい差別とか、むき出しの暴力ということにはならないと思います。それは、駅や町からホームレスが、どんどんいなくなっていったんですね。じゃあ、社会全体からホームレスが消えたのかというと、どこかに見えない形で潜んでいる。そういう問題は、あえて見に行かない限り、見えてこない。だから、不可視化された形で、どこかに隔離・固定化された形で、暴力とか貧困とか差別があるというのが現代の状況ではないかな、と。そういう中で、移民問題も考えていくべきだと思います。

こうした問題を浮き彫りにして、解決を促す役割は重要です。開沼さんは学者とジャーナリストの両面を持った希有な存在ですが、どちらに期待しますか。

開沼:「周縁的な存在」に目を付けることは、今はジャーナリズムが頑張っている。でも、アカデミズムとジャーナリズムで言ったら、アカデミズムがやっぱり率先してやるべきだとも思っています。

 山口昌男(東京外語大学名誉教授)の有名な「中心と周縁」理論や、網野善彦(神奈川大学特任教授)の「無縁」論には、その伝統がありました。やはり戦前・戦中の人たちが担ってきたところがあって、「敗者の歴史」の重要性や、「歴史は、強者や中心にあるものだけでは語れない」ということを、きちんと描いていたんですよね。

 表向きは「多様性」とか「価値相対主義」とか言いながら、多様な物を見ようとせず、相対的に物を考えようともしないことに、疑義を呈したかった。ただ、言われたように、私の特殊なポジションが(本書を)可能にしたようなところはあります。自由に動ける時からライターをやって、食っていくことはギリギリ何とかなる。やはり、大企業ジャーナリズムはパターンや型が決まりすぎていて自由にできないし、一方でソーシャルメディアでは食っていけない。だから、私自身は、できるだけ自由に取材ができて、モノが書ける状態でいたいと思っています。


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