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中国の金融波乱は李克強首相の宣戦布告 金利急騰は、シャドーバンキング退治に向けた荒療治
http://toyokeizai.net/articles/-/14606
2013年07月07日 西村 豪太 :東洋経済 記者
6月23日の日曜日、中国最大手である中国工商銀行のATMが上海、北京、武漢などで相次ぎ停止した。システムトラブルのためだったが、もっと悪い事態を想像した顧客も少なくなかったはずである。折しも、中国の金融界を資金不足への懸念が覆っていたからだ。
直前の6月20日、中国の短期金利の指標である上海銀行間取引金利(SHIBOR)の翌日物は13.44%に急騰。前日の7.66%から一気に過去最高水準までハネ上がった。これを受けて株価も下げ足を速め、上海総合指数は24日には心理的抵抗線である2000ポイントを割り、4年ぶりの安値水準に。世界経済の牽引役となってきた中国での金融波乱は、すぐさま海外へも飛び火した。
■規律回復を狙い引き締め
ここに至るまでには、いくつかの偶然と必然が重なり合った。
まず、6月には資金需要が高まる条件がそろっていた。中間決算の期末に当たること、納税シーズンであること、端午節の連休を挟むこと、などだ。さらに、米国の金融緩和政策が出口戦略に向かうという観測で、海外からのホットマネー流入が減少。輸出の水増しで外貨を持ち込む不正取引への取り締まりが強化されたことも、こうした動きに拍車をかけた。
そして最大の要因が、中央銀行である中国人民銀行が短期市場での流動性供給を絞ったこと。拡大著しいシャドーバンキング(銀行を介さない金融取引)を抑制し、金融市場の規律を高めるためだ。
中国におけるシャドーバンキングとは、信託会社による貸し付けや、高利の「地下銀行」も含む民間金融などだ。貸し出しルールの厳しい国有銀行が、自らは貸せない相手に取引先の企業を経由して融資する場合もある。「融資プラットフォーム(融資平台)」といわれる地方政府の資金調達機関へのマネーの供給路ともなっており、地方政府債務の膨張に一役買ってきた。金利が安い短期資金を調達し、長期で運用するというリスクの高い取引も横行している。
みずほ総合研究所の伊藤信悟・中国室長は「人民銀行は行政手段だけでなく、金利も使ったシャドーバンキング統制へと舵を切った。短期金利を高止まりさせているのは意図的なものだろう」と見る。
シャドーバンキングの副産物に、貸出債権を小口化して販売する「理財商品」があるが、6月末にはその満期が24兆円ともいわれる規模でめぐってくる。
この3月、中国の金融当局は商業銀行の理財商品の資産内容についての規制強化を打ち出した。その結果、「6月末の理財商品のロールオーバーが難しくなった中小銀行などがうろたえて資金調達に走ったことが金利を引き上げた」(北京の国際金融筋)。
火に油を注いだのは、そこから先の人民銀行の対応である。「全体から見れば資金は余っている」として、資金供給を見送ったのだ。5月のマネーサプライ(M2)は前年同期比15.8%増で、今年の目標である13%を大きく上回った。この状況で、流動性の追加供給は避けたかったはずだ。
6月19日に開かれた国務院(内閣に相当)の会議で李克強首相は「資金のストックを活用し、実体経済へと誘導する」という趣旨の発言をしている。シャドーバンキングに回りかねない資金をこれ以上、供給するつもりはないというメッセージだ。国務院の一部門である人民銀行はボスの方針を忠実に実行し、金利急騰を招いた。
6月24日に人民銀行は「流動性は全体的に合理的な水準にある」として、金融機関に自己管理の強化を求めた。実はその裏で、人民銀行は一部銀行へ秘密裏に資金を供給していた。
金利高騰の影響で10社以上の企業が社債発行を見送る動きも発生。実体経済の足を引っ張ることを避けるための妥協だ。それが金融界に伝わることで、金利は急速に落ち着いた。
だが、株式市場、まして海外にはそんな情報は伝わらない。うち続く株価下落を止めるため、人民銀行は25日には一部銀行への資金供給の事実を公表して強硬姿勢を転換。ひとまず金融システムへの不安は収束しつつあるが、市場とのコミュニケーションの稚拙さを印象づけた。
上海の大手銀行関係者は「シャドーバンキングを標的にした背景には、地方政府の資金源を締め上げて中央の求心力を高める意図もある」とし、かつて朱鎔基元首相も取った手法だと指摘する。朱氏と同様に経済の抜本改革を掲げる李首相にとって、今回の波乱はその第一歩なのだろう。従来型の高成長を求める地方政府を押さえ込み、経済構造を転換できるか。これからが本番だ。
(撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2013年7月6日)
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