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2013.07.05 JBpress (2013年7月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
は、安倍晋三首相の第4の矢を射るのに適した時期なのだろうか? 1本目から3本目の矢に非常に大きな重点が置かれてきたため、多くの人は第4の矢のことをすっかり忘れている。
この矢には、来年4月から2段階で消費税を2倍の10%まで引き上げることが含まれている。
一部の人の見るところ、長年にわたる赤字の後で日本の財政を立て直す取り組みの開始を告げる4本目の矢が最も重要な矢だ。それをいつ射るかを決めるのは、首相が下さなければならない最も難しい決断になる可能性がある。
まず、これまでの話を整理してみよう。安倍氏は12月に政権を握った直後に、1本目の矢を放った。道路や橋を改修するための1100億ドル(国内総生産=GDP=の2%に相当)の景気刺激策だ。
一番盛大に放たれた2本目の矢は、長年のデフレから脱却するという公約。これは2%のインフレ目標達成に確実にコミットする中央銀行総裁の任命によって裏付けられた。
多くの人が最も薄っぺらだと考える3本目の矢は、長期的な成長率を引き上げることを狙った数々の構造改革だ。厳密に言えば、第4の矢――消費税を2倍に引き上げる――は、第1の矢の一部だ。安倍氏は、景気拡張的な財政政策を約束したのではなく、「柔軟」な財政政策を約束したのだ。
■第4の矢を重視する増税支持派の根拠
安倍氏が今、来年4月から消費税を引き上げる(最初は8%まで)法律を推し進めれば、我々は「柔軟」が何を意味するのか知ることになる。財政拡大の後に財政引き締めが続くということである。安倍氏にとって問題は、これが正しいアプローチかどうか、だ。
消費税増税に注目する人たちの間のコンセンサスは、それが間違いなく正しいアプローチだというものだ。さらに彼らは増税を、安倍氏の大きな試練と見なしている。「アベノミクス」を真剣に受け止めてほしいのであれば、首相は、崩れかけた日本の財政を立て直すうえで不可欠な最初の一歩に二の足を踏んではならない、と彼らは主張する。
この見方を支持する理由はいくつかある。まず、日本の純債務が多少憂慮の度合いが低いGDP比150%だとしても、債務総額はGDP比240%を超えている。日本は1990年代初めから、GDP比約4%に上るプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の赤字によって債務の山を増やしてきた。
日本の輸出に打撃を与えたリーマン・ショックや、ほぼすべてに打撃を与えた2011年の津波の後の数年間で、赤字はほぼ8%まで急増した。
この状況は多少改善され、今年度はプライマリーバランスの赤字が4.8%まで減少することが予想されている。それでも、日本は遅かれ早かれ財政を立て直さねばならない。増税は当然、その一部になるはずだ。
2つ目の議論は、安倍氏は、支持率が70%近いうちに第一歩を踏み出すべきだというものだ。安倍氏が今月の参院選で予想通り自民党を大勝利に導いた場合には、安倍氏はその政治的資本を使って不人気な――だが必要な――決断を下すべきだ、と増税支持派は言う。
第3に、債券市場は注意深く見ている。市場は、決意の弱さを感じ取った場合には、神経質になる可能性がある。そうなれば、金利が急騰し、債務の利払い費を押し上げたり、資本逃避を招いたりする恐れがある。
消費者でさえ、消費税引き上げで元気を出すかもしれないと主張する人もいる。リカードの等価定理として知られる経済理論は、財政が持続不能で、将来自分たちが穴を埋めることを求められると判断した場合には、人々は支出するよりも貯蓄する可能性の方が高いと仮定している。逆に、財政が良好な状態にあると感じた場合には、人々は財布を取り出すかもしれない。
■金融のアクセルを踏みながら財政のブレーキを踏むのか
これらはいずれも、もっともな議論だ――恐らく最後の議論を除いては。ポケットにあまりお金がない人たちが支出を増やす可能性が高いと主張するには、信頼感が飛躍的に高まる必要があるだろう。それよりも、こうした人たちは支出を減らす可能性の方が高い。
この点から、安倍氏には立ち止まって考えるだけの理由がある。安倍氏の優先事項が2%のインフレ率を達成することであるのなら、増税の先送りを正当化する根拠は十分にある。でなければ、日本は一方の足で金融のアクセルを踏みながら、もう一方の足で財政のブレーキを踏むことになるからだ。
スタンダード・アンド・プアーズのチーフエコノミスト、ポール・シェアード氏は、それは間違いだと考えている。シェアード氏やその他の人々は、日本経済を景気後退に陥れたと――一部の人たちによれば不当に――非難された1997年の消費税増税を思い起こす。
この議論は決して明快なものではない。根底には、基本的な相違がある。一方の陣営には、金融と財政の矢のことを、景気回復のための基本的に表面的な取り組みだと見なす人たちがいる。それよりはるかに重要なことは、生産性の向上や財政の立て直しを目的とする構造改革だと彼らは主張する。
もう一方の陣営には、主にインフレを通じて名目成長を達成することは、決して表面的なことではないと主張する人たちがいる。
■債務から抜け出す方法は1つではない
日本の債務が巨大に見えるのは、デフレのために名目GDPが1990年の水準で停滞し、税収が減少しているためだ。2%のインフレと、例えば1〜2%の実質成長が実現すれば、日本は3〜4%の名目成長を達成することになる。そうなれば、債務の山はもう少し管理可能に見え始めるだろう。
言い換えると、日本は、削減や縮小によって債務から抜け出すよりも、インフレによって債務軽減を図った方がいいのかもしれない。
恐らく日本はどこかの段階で、消費税を5%というほとんど負担のない水準から引き上げなければならないだろう。だが、安倍氏は、今がその時なのかどうか、じっくりと考えるべきだ。
By David Pilling
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