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出典 http://toyokeizai.net/articles/-/14544
金利上昇で騒ぐ「頭の悪い」人たち (東洋経済オンライン)
橋洋一が語る バーナンキの言葉
「頭のキャパが小さい人たち」が金利上昇で騒いでいる]
――5月末からは、日本国債などの長期金利の上昇が大きく騒がれていました。バーナンキはこれについても6月19日の記者会見で「(長期金利の)変動があることは、まったく驚くにあたらない」と答えていますね。
まさにバーナンキが答えているとおりです。まず何よりも、「金利上昇」を騒いでいる人たちは、決定的なことを見落としていますね。それは、実質金利と名目金利の違いです。目に見える金利、額面どおりの金利が名目金利ですね。「長期金利」という場合、彼らが議論しているのは、その見かけの数字が「上がった」「下がった」ということです。
この記事などはその典型ですね。
「アホノミクス」が5つの悲劇を引き起こす!
一方、金利上昇の懸念に対しては、こんな反論もあります。「いや、今までの日本の長期金利は低すぎたんだから、多少は上がってもいいんだ」と。ですが、これも私に言わせれば、ちょっと論点がずれている。
はっきり言ってしまうと、名目金利というのは実体経済には大して影響がないんですよ。じゃあ何が重要かというと、実質金利のほうです。これをわかっていない人が非常に多い。あるいは、本当は知っているはずなのに、国民たちが知らないのをいいことに、いたずらに危機をあおっている「有識者」もいますね。
まず定義を先に言うと、「実質金利=名目金利−予想インフレ率」です。これは講演集『リフレが正しい。』の中で、バーナンキもはっきり言及しています。
[なぜ実質金利をみるべきか]
――「名目金利」から「予想インフレ率」を差し引いた「実質金利」がなぜ重要なのでしょうか?
企業などの設備投資が最も典型的ですから、それを例にお話しましょう。
何かの投資活動をしようとするとき、私たちは名目金利だけでは判断しないはずです。額面の金額が高いか低いかだけでなく、自分が設備投資することで売り上げがどうなりそうかも一緒に考えるわけですね。投資するときに、利払いよりも売り上げのほうを考えるというのは、極めて当たり前です。そして、どれくらい売り上げが上がるかに影響してくるのが「予想インフレ率」です。インフレになっていけば、売り上げも増えていきますから。
もちろん、名目金利が高ければ高いほど、利払いは多くなります。ですから、名目金利から予想インフレ率を差し引いた数字、つまり「実質金利」が上がるか下がるかが、設備投資のやりやすさに影響します。
名目金利が上がっても予想インフレ率がそれより上がっていれば、売り上げも伸びていくと考えますよね。それなら、名目金利の利払いは大したはことないと、そう判断されるわけです。
ですから、名目金利の上昇というのは実体経済にとってはなんともない。それより実質金利が下がればいいのです。となると、見ておかなければいけないのは、名目金利と予想インフレ率の上がるスピードです。
インフレ目標を設定したうえで、マネーを増やしていく「リフレ政策」をやると、必ずすぐに予想インフレ率が上がります。しかも不況のときには、名目金利よりも予想インフレ率のほうが早く上昇します。結果として、実質金利が下がる。これだけのことです。
――バーナンキが6月19日のインタビューで、「低すぎる物価上昇率は、デフレの危険性を強め実質金利が高くなることなどから問題だ」と言っているのも、そういうことですね。なぜ日本の識者やメディアは「実質金利」に目を向けないのでしょうか?
私がプリンストン大学にいた頃、経済学部長だったバーナンキはいつもそういう説明をしていました。私自身もそれが理論として正しいと思っていましたし、その正しさをバーナンキはFRB議長として実践し証明してみせたわけです。
名目金利の上昇ばかりを騒いで、実質金利の低下を取り上げない人たちの議論については、正直に言ってしまうと……、「頭のキャパシティが小さいだけ」ではないかと思っています(笑)。2つのことを同時に理解するというのは意外に難しいですから、名目金利までしか頭に入らないのではないでしょうか。
それ以外の理由としては、これまでのデフレ時代には金融機関の稼ぎ頭が、「債券部署」だったということがあるかもしれませんね。彼らは貸出業務をしていませんから、名目金利しか見ていません。そして名目金利が下がると大騒ぎです。これまでのデフレ時代には、そういう人たちが金融機関に「飯を食わせてきた」というのは事実です。
そして、そこのお得意様であるシンクタンクのエコノミストというのも、そういう債券部署の意向に合わせて、経済見通しを語ってきたのではないでしょうか。ですから、「金利=名目金利」という頭になってしまっていて、それが少し上がるだけで「大変だー!」となる。「長期金利の上昇」を騒ぐ人に、金融機関のひも付きエコノミストという経歴の方が多いのも、そういう事情があるのではないかと思っています。こんな話ばかりで、うんざりしますね。
実質金利が下がって名目金利が少し上がるというのは、ある意味で理想的です。債券から貸し出しへのシフトを加速しますから。貸し出しが増えなければダメと言っている人が、「名目金利上昇は問題だ」と主張するのは矛盾していますが、そういう人が多すぎます。
[バーナンキも理解に苦しむ日銀関係者の質問]
――そういう日本の状況について、バーナンキはどう思っているのでしょうか?
それについては面白いエピソードがありますよ。以前、バーナンキが日本に来て講演したことがあります。その講演も『リフレが正しい。』に入れておきました。そのときにも日銀関係者が「もしも長期金利が上昇したら……うんぬん」という質問を彼にぶつけたんです。
名目金利と実質金利の違いを踏まえないで、そんなことを聞くものだから、バーナンキもきっと理解に苦しんだでしょうね。「え? なんでそんなこと聞くの?」と、そんな感じだと思います。
でも、バーナンキという人は本当にやさしいんですよ。そうした「愚問」にすごくわかりやすく丁寧に答えていました。
講演中で「債務の転換(bond conversion)」に言及したりしているのも、そういう背景があったからです。これは要するに、日銀と政府を合体した「統合政府」で考えれば、日銀が保有する国債(資産)は、それに相当する政府が発行した国債(負債)で相殺され、統合政府のバランスシート上には存在しないことになるため、リスクを減らせるというロジックです。
プリンストン大で彼の講義を聞いていた私からしたら、本当にすごーく親切にしゃべっているなと感じました。「なんて『いい人』なんだろう……」とため息が出る思いでしたね。
これと対照的だったのが、ローレンス・サマーズ(元アメリカ財務長官、元ハーバード大学学長、経済学者)ですね。彼なんかは、日本で同じような質問を受けたときに、馬鹿にしくさった感じで「So what?(だから何?)」と答えていましたよ。
名目金利と実質金利の違いがちゃんとわかっていない人からしたら、「なんで?」という感じでしょうけど、世界の標準的な経済学からすれば、こういう区別は極めて当たり前なのです。
経済学者であるバーナンキも、「どうしてこんな馬鹿な質問をするのだろう」というのが本音だと思いますが、本当に人柄がいいので、丁寧に答えてしまうんですよね。
[株価のためにアベノミクスをやってるわけじゃない]
――一方で日本のアベノミクスについては、バーナンキ議長は非常に高く評価しています。5月末から日本が株価急落や金利上昇に見舞われたことについては、バーナンキはどう思っているのでしょうか?
一言で言うと、「まったく気にしていない」と思います。もちろん市場では「このまま落ちていくんじゃないか」という心理が広がりますし、それをあおって喜ぶ連中もいますから、多くの人がちょっと不安になる気持ちはわからないわけではありません。
しかし、金融政策をやる側は、現実面の多少のブレというのをいちいち気にしたりはしません。政策当局からすれば、これくらいのボラティリティ(価格変動率)というのは想定の範囲内です。
なにより、「アベノミクス第1の矢」も含めて、金融政策というのは別に株価を上げるためのものではありません。あくまでも狙いは実体経済をよくすること。そういう原理・原則がわかっていない人は、怪しいエコノミストやマスコミの報道にコロっとダマされてしまうということはあるでしょうね。
バーナンキなんて2008年のリーマンショック以降から緩和策に着手して、まだやり終えていないような状況なんですよ。それでもなんとかここまでアメリカ経済を立て直してきた。アメリカですらこんなに時間がかかっているのに、20年以上にわたって何もしないできた日本は、今やっと重い腰を上げたところです。
本格的に動き始めてまだ数カ月で、日本がいきなり奇跡的に回復するなんていくらなんでも考えられませんし、株価が下がっただけで「頓挫した」と評価を下すのは、あまりに安易です。
――株価で金融政策の成功・失敗を語ること自体がおかしいということですね。
経済成長と株価の関係を見た場合、一般に株価は約1年後の経済成長を先取りします。ただし、それで100%も説明できるわけではなく、だいたい5割程度しか説明できません。株価を動かす要因は経済成長以外にもたくさんあるので、株価と経済成長が完全に連動しているわけではないのです。
もちろん経済成長していれば、株価もだいたいよくなるとは言えますが、それは確実ではない。
一方、経済成長は目標を明確にして、しかるべきオペレーションをやっていけば、ある程度実現できます。政策をやる側は、そのときにしかるべき「基準」があるわけですね。私が金融政策を語るときには、横軸に時間、縦軸にさまざまな数値をとったグラフがいつも頭の中に浮かんでいます。
ですが、株価を見ている投資家にはそういう「基準」がありません。彼らは目の前のチャートを見ているわけですね。チャートで考えていると、上がっているときは青天井に思えますし、下がっているときは奈落の底に落ちていくように思えるのです。
おそらく一般の人もそういう基準や原則がないから、どんな話にも飛びつくし、どんな話にも振り回される。チャートというのはそういうものです。
もちろん日経平均1万5000円台など、高値でつかまされた人は大変だとは思いますが、それはごく一部の人でしょう。政策をやる側からすれば、急に7000〜8000円上がって一時的に3000〜4000円下がったというだけの話であり、水準としては半年前、1年前と比較して上昇しているわけですし、これ自体に大きな問題があるとは見ていないはずです。
日本の金融政策はシンプル
――とはいえ、タイミングがいつになるにしろ、FRBが出口戦略を取り始めたら、アメリカの景気はある程度は落ち着きますよね。そのときに日本経済が引っ張られるというような可能性は、ないのでしょうか?
それでも、日本の景気回復が優先されるということに変わりはありませんよ。アメリカの属国じゃないんですから、いちいちアメリカの動きを見て、日本の動きを決めたりはしません。
日本の金融政策は極めてシンプル。インフレ率だけを見ていて、それが「2%±1」に収まっているかどうかです。アメリカはインフレ率だけでなく失業率も長期目標に入れていますから、両方を見て判断する。その意味では、失業率を目標に入れていない日本のほうが簡単なんですよ。インフレ率が上がってきて、そのレンジに収まっていたらやめるというだけのことです。
だいたい、考えてもみてください。アメリカの金融緩和が出口に入るということは、「アメリカ経済が十分によくなった」ということを意味していますよね。アメリカ経済がよくなっているときに、日本の外需が悪くなるということはあまり考えられません。日本にとっても何ら悪いことではないのです。そういう観点が抜けているという意味でも、マスコミの見方は歪んでいると思いますね。
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[コメント]
旧日銀の首脳部は「タワケ」ではないかと、常々疑っていましたが、以下の文言を見て、私の中の疑問は確信に限りなく近いレベルにまで変化した。
>・・・・・日銀関係者が「もしも長期金利が上昇したら……うんぬん」
>という質問を彼にぶつけたんです。
>名目金利と実質金利の違いを踏まえないで、そんなことを聞くものだから、
>バーナンキもきっと理解に苦しんだでしょうね。
>「え? なんでそんなこと聞くの?」と、そんな感じだと思います。
まさかと思っていましたが、本当にこんな質問をぶつけたとしたら、日銀に通貨の番人をさせておくのはヤバイ。
こんな質問がでるなんて、信じられない。大学生レベルの話です。
こんな人たちに通貨の番人をさせていたのですから、日本がおかしくなるのはある意味で必然です。
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