http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/731.html
Tweet |
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130704-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 7月4日(木)8時11分配信
--昨年12月に発足した自民党・安倍晋三政権によるアベノミクス効果を受け、日経平均株価は5月に一時1万6000円近くまで急上昇したが、その後急落し、以降乱高下が続いている。現在の株高は実体経済を反映したものなのか? それともバブルなのか? アベノミクスによる今後の日本経済の見通しと、景気回復へのカギと合わせて、大和証券チーフテクニカル・アナリストの木野内栄治氏に聞いた--。
--5月に一時株価が1万6000円近くまで急上昇したが、これはアベノミクスの金融政策による効果なのか、それともバブルだったのか?
木野内栄治氏(以下、木野内) 株価の上昇率は、半年で5割が限界といわれている。平均株価にすると1万3000円を下回るぐらい。そのため1万6000円近くまで上がってしまったのはオーバーシュートです。60年に1回あるかないかぐらいのこと。約60年前の1949年、日本経済の自立と安定のために、GHQ経済顧問ジョセフ=ドッジによって立案された財政金融引き締め政策、ドッジ・ラインが実施され、インフレ抑制が終了した。言い方を変えれば、デフレからの立ち上がりの時期だった。そこから急激に日本経済が回復するが、それぐらいのことをマーケットが期待したのではないだろうか。
--5月23日の株価の暴落以来、証券市場は乱高下を続けており、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が50を切ったのがきっかけではないかと当時いわれた。
木野内 5月23日に株価が約1100円下落し、当初は中国関連のデータがきっかけになったといわれていたが、実際に売られたのは不動産、銀行、保険、電力など金利敏感セクター。中国関連銘柄は、あまり影響を受けていない。直接は、長期国債の金利上昇を嫌気した売りだった。その後の株の乱高下は、地震でいえば本震のあとの余震のようなもの。
--今後、長期金利の動向はどうなると見ているか?
木野内 株価の下落で金利動向は沈静化し、日銀もきめの細かいオペレーションをすると言っている。今後は大きな心配はなく、大暴落の最初のきっかけは終わっていると思う。また、米国の出口戦略も金利の上昇に大きな影響があると思うが、あまりにも早いピッチで金利が上昇したので、これ以上はゆっくりとしか上がらないところまで来ている。日本のマーケットの阻害要因にはならないと思う。
--大暴落以降の乱高下は、外国人投資家の先物取引が大きく影響しているといわれている。
木野内 乱高下の中で、特に先物取引をやっている米系の証券会社の売りが目立った。先物中心の取引の場合、「ボラティリティー(変動性)が増えるとリスク量が増える」というが、株が大幅に下落すると、買いで入ってきている人たちは委託証拠金の追加か建玉の売却を求められるため、株の大暴落がこうした証券会社に売却圧力となった。
逆に売り方で入ってきている投資家は、株価が暴落すると非常に利益を得ることができるが、多少なりとも株価が上昇すると損をするかもしれないと不安になり、結局買い埋めるわけです。これが余震となって続いていく。
こうした動きは、一般にはSQ(オプション取引の決済日、毎月第2金曜日)まで続くといわれています。ただ、金利敏感株とは別の、機械や非鉄金属なども売られている。設備投資に関わる機械産業や非鉄金属のセクターは、アベノミクスの成長戦略の目玉。米系証券が売っているとすると、海外の投資家は成長戦略に疑問を抱くようになっている者もいると想像できる。これは円高というリスクにもつながっている。
●米国金融政策の日本への影響
--米国の景気回復が日本の経済復調に大きな影響を持っていると思うが、米国ではここに来て金融引き締めの話が出てきて、その影響が証券市場にも出ている。
木野内 金融引き締めの話が出てくるのは、米国の景気がよくなっているからですが、その結果として金利敏感株が暴落している。リート(不動産証券化商品)や配当株などが暴落していて、こういう時にはお金が景気敏感株に半年ぐらい向かうことがよくあります。日本の景気敏感株も、向こう半年ぐらいは買いが進むと思います。
--アベノミクスは、今後デフレを脱却して経済成長することができるか?
木野内 景気循環の立場でみると、デフレから脱却し、一定の経済成長を続けることができるようになるのは不可能ではないと思う。デフレは景気循環でみたら、コンドラチェフ波動という48〜60年ぐらいある景気循環のボトム近辺での出来事です。デフレからの脱却というのは、この景気循環を上に向かせること。そのためには7つぐらいの必要な条件があるが、アベノミクスは4.5個ぐらいは達成できそう。2つは外部的な要因なので、時間とともに来年の終わりごろに達成できるのではないか。ただ0.5個不足しているものがあり、これが課題だ。
--その7つとは何か?
木野内 以下の7つだ。
(1)積極的な金融緩和
(2)長期的な円安期待
(3)約50年サイクルの景気底入れ
(4)イノベーションの増加
(5)ニューフロンティアの獲得
(6)紛争の増加
(7)海外金利の底入れ
インフレターゲットは株価の引き上げに一定の効果を示したし、シェールガス革命で米国の赤字が縮小し、円高にも歯止めがかかった。公共投資もすでに過去に行われたものが50年経過し、更新サイクルに入っている。ニューフロンティアの半分はTPPに期待している。ただ、今のまま開国するとサムソンやポスコに負けてしまう。それこそソニーやパナソニックが一緒になるなど、国内の産業再編を加速させていかなければならない。しかしM&Aというのは景気が悪くならないと進まないことが経験則的にわかっているので、0.5というのはこの部分です。(6)(7)は海外要因だが、これは来年になれば、ある程度解決すると思う。
●2%のインフレ目標達成は難しい
--2年間で2%のインフレ目標については達成可能か? 実現的にはかなり難しいとの見方もある。
木野内 難しいと思う。ただ世間ではかなり誤解があるが、アベノミクスはインフレを起こそうとしているわけではない。資産デフレを止めて、インフレになるように経済をよくしたいという意味。いま銀行がお金を余らせても、市中の銀行はこれを使わない。借りてほしいところはキャッシュリッチで、借りてくれないからだ。
しかしこの状況でお金を使うとしたら、お金を持っているキャッシュリッチな人から使う。こうした人は資産にお金を投資するわけだが、デフレ下では資産が目減りするので、お金を使わない。経済がよくなるには株などの資産価格が上がり、その波及効果で経済がよくなり、そのあとに物価が上がる。あくまでも経済をよくすることが目的だ。また、2年で2%というのは、2%インフレになるまで長期間金融緩和するというメッセージだ。
--そのための課題は何か?
木野内 成長戦略の中で一番重要なのは、民間投資をどう増やしていくのかという点。そのための施策を来年度にやろうとしている。アベノミクスの3つの矢のうち、財政出動は1月、金融緩和は4月に行われている。成長戦略が来年では、あまりにも遅すぎる。来年から企業への優遇政策をするといったら、企業は今年度やろうとしていることを来年に繰り越そうという動きになる。ピントがぼけている。
実は今年秋に来年4月に消費税引き上げをするかどうかを決めるが、消費税法で、消費税を導入するために成長戦略や公共投資に予算を重点的に使えるようになっている。だから金融政策や財政政策を順調に進められた。ところが消費税導入が決まると、今度はそう簡単にはいかない。政治と官僚とのパワーバランスが変わるからだ。だからやれる成長戦略は、秋までにはやらなければならない。それは、今後経済成長できるかどうかの大きな分水嶺になるのではないかと思う。
松崎隆司/経済ジャーナリスト
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。