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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130703-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 7月3日(水)6時17分配信
●株価が乱高下する原因
5月23日、午前中に日経平均株価で1万5942円をつけた株価は午後には反落し、1万4483円となった。この日を境に株価は乱高下を続け、黒田緩和、ひいてはアベノミクスに疑問符をつける評価が表に出始めるようになった。
株価が不安定になった要因に、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言がある。5月22日の議会証言で、現行の緩和策を当面続ける姿勢を強調する一方で、「労働市場の見通しが実質的かつ持続的に改善すれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は資産買い入れペースを緩やかに縮小していく」と発言したことを受け、FRBが量的緩和を縮小させるという観測がマーケットに広まり、世界の株式市場が下落したのだ。
また、6月19日のFOMC終了後の記者会見でも、量的緩和の縮小に言及した発言があった。
「インフレ率は目標である2%に向け回帰していくと見ている。今後発表される経済指標がこの見通しとおおむね一致すれば、毎月の資産買い入れ規模を年内に縮小させることが適切であると、FOMCは現時点で予想している。さらにその後の経済指標が引き続きわれわれの現在の経済見通しとほぼ一致すれば、来年上半期を通して慎重なペースで買い入れを縮小していき、年央あたりに終了させる」
これにより、米株式市場ではダウ工業株30種平均が206ドル下落し、20日の東京株式市場も日経平均株価は一時1万3000円を割り込むなど反落した(終値は、前日終値比230円安の1万3014円)。
アメリカの中央銀行にあたるFRBの議長の発言は、世界経済に影響を与えるということをまざまざと見せつけられた形になったが、日本にはどのような影響を与えたのだろうか? 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員で『アベノミクスのゆくえ』(光文社新書)の著者・片岡剛士氏は次のように解説する。
「資産買い入れの規模を年内に縮小させ、来年上半期から年央に終了させると明言したことによって、外国人投資家に絶好の売り材料を提供したことになったのです。今の時点で十分儲かっていて、なおかつ早ければ今年の9月からQE3の緩和策を縮小し始めるというのなら、今のうちに株を売っておいたほうがよいのではないかという判断になると思います。そういう意味でダウが下がり、日本株にも影響したわけです」
日本の株価に影響を与えたのは、アベノミクスがスタートしてから株の買い付けに熱心だったのが外国人投資家だったからだという。彼らがバーナンキ議長の発言を受けて、資金を日本株から引き揚げようと判断したと、片岡氏は言う。
●日経平均株価は過去最長の上昇
また、日本特有のジレンマもあった。
「2012年8月以降、日経平均株価は前月ベースで緩やかに上がり続け、今年の5月で9カ月連続前月比上昇となりました。外国人投資家がかなり買い越しをしていた背景もありますが、実は1984年以降、日経平均株価が10カ月連続で前月比上昇したことはありません。つまり、9カ月連続の前月比上昇というのは過去最長なのです。これを達成したのはバブル期と小泉政権期の2回だけで、今回が3回目でした。そういう経験則から考えても、5月というのは4月より上がる可能性は少なかった時期だったといえます」(片岡氏)
昨年8月の平均株価は8839円。それが5月22日の最高値は1万5942円6銭と、ほぼ倍増したのだ。9カ月でこれほどの増加を示せば、どこかで利益確定の調整する判断があったとしてもおかしくはない。バーナンキ議長の発言は、この判断を後押しする格好になったため、日本株の下落が一層大きくなったといえる。
●異次元緩和を批判するのは時期尚早
株価は下落したとはいえ、為替は円安傾向が続いている。衆議院が解散した昨年11月16日は、ドル円レートで1ドル81円26銭だった。6月24日の為替は1ドル98円46銭。東証1部・2部上場メーカーの「想定為替レート」を調査した東京商工リサーチ(http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2013/1238550_2164.html)によると、期初の対ドル想定レートを1ドル=90円と設定した企業は143社中62社と最多であり、90円と95円の合計は113社と全体の約8割を占めたという。想定レートを上回る円安が、企業の業績を引き上げているのだ。
「株価が下がってアベノミクスがダメになったという意見がありますが、それは間違いです。野田政権では、経済が浮揚する材料がまったくありませんでした。80円台に為替が振れてしまい、電機メーカーのほとんどが赤字になり、半導体メーカーのエルピーダメモリは倒産してしまった。日本の電機・機械の業界は相当な苦境に立たされ、明るい材料を見つけること自体が困難だった状況です。
そこからアベノミクスが始まり、経済がよくなるということでまず反応したのが株や為替です。企業の将来利益が高まることを予想して株は買われ、上昇する。明らかに低すぎた株価が修正されることは、金融政策が成功を収めるための第一歩です。しかし重要な点は、金融政策の目的は2%の安定的なインフレを達成することで、それを通じて生産を拡大して雇用を安定化させることです。いまの失業率は4%台ですが、少なくとも3%台に下がり、働きたい人ができる限り雇用される状態をつくるというのが最終目的です。大胆な金融政策の成否は生産や雇用が拡大し、賃金が上昇して2%程度のインフレを達成・維持できるかどうか。そこで判断しないといけない」(片岡氏)
金融政策はアベノミクスの第一の矢だ。黒田バズーカはこれまでの日本銀行の政策の多くを吹き飛ばした。黒田日銀による「異次元緩和」は、やっと3カ月目を迎えようとしている。いまの段階で失敗と批判するのは、時期尚早ということだろう。
●金融機関もマスコミも、まだ日銀の体制変化についていけていない
野田政権に比べ、株価が上がり、為替も円安に推移しているにもかかわらず、野田政権時代の経済政策よりも安倍政権の経済政策に対する批判は大きい。それは日銀の金融政策についても同じことがいえる。安倍総理が自民党総裁選から大胆な金融緩和を日銀に促すと主張した。金融政策が政治案件に上ったが、日銀記者クラブの質問の多くは金融緩和による景気浮揚の可能性を疑問視するものだった。典型的なものが以下だ。
「現在、日銀は、物価目標を1%としていると思いますが、現在の日本経済において、一般論として、3%という物価目標が現実的な目標だと思われますか?」(2012年11月21日)
「金融緩和の有効性について、我々はどこまで期待してよいのか、総裁のお考えを伺いたいと思います」(2012年11月21日)
「総裁はあまり好まれない質問かもしれませんが、今回『無制限』という言葉を使われました。前回の記者会見の中でも、要するに欧米が行っている無制限ないし無期限に対し、日銀はそれを行っていないけれどもやはり緩和しているのだ、というご指摘がありました。今回、あえて『無制限』というキャッチフレーズを使われた理由について、日本も緩和姿勢が相当強いことを示していくのだというニュアンスがあるのかどうかを、お伺いしたいと思います」(2012年10月31日)
これらはある意味で、日銀の理論が前提になった質問だった。
つまり「すでに金融は緩和している状態であり、それでも景気がよくならないのは政府の規制緩和が足りなかったり、民間投資が弱かったりするからだ」というものだ。アベノミクスで例えれば、第一の矢である金融政策は限界までやっているのに、第二、第三の矢が放たれていないということなのだろう。
しかし、アベノミクスで重要なのは第一の矢だ。大胆な金融緩和があってこそ、財政政策も成長戦略も効果を発揮する。財政政策は金融緩和とセットでなければ十分な効果を発揮しない。財政政策も成長戦略も歴代内閣は検討・実施していたが、デフレからの脱却はできなかった。しかしバブル崩壊以降、金融政策の大転換を主張した政権はなかった。この事実ほど、デフレの正体を証明しているものはない。
だから金融政策が第一の矢であり、これまでの日銀の金融政策とは次元の違う「異次元緩和」はデフレ脱却のために必要な措置だったのだ。しかし、黒田日銀になってからの記者会見では、「異次元緩和」を問題視する質問が目立つ。
「日銀は、日銀による国債の大量買入れの目的はインフレの拡大だと述べました。しかし、政府累積債務が1000兆円を超え、政府の収入が約45兆円という現在の水準では、インフレに際して、政府債務に関して2%の利息というのは明らかに低いものです。日銀は、この状況からどのように抜け出そうとしているのでしょうか」(2013年4月27日)
「この20年間、マネタリーベースは大体4〜5倍に増えていると思いますが、この間、消費者物価および名目GDPはほぼ横ばいだったと思います。これを単純にみると、マネタリーベースを増やしても成長率や物価にはあまり働き掛けられないことが読み取れると思うのですが、それでも『デフレは貨幣的現象』だとお考えなのか」(2013年4月27日)
「長期金利は、足元では、1%をうかがうような水準に上がっています。4月に金融緩和を決める頃よりもむしろ上がっているということで、この理由をどう分析しているのか、決定会合でどのような議論があったのか、この急ピッチの上昇を抑えるために何か対応を考えているのかどうか、その辺りについてお聞かせください」(2013年5月23日)
「マネタリーベースは、3割増という大幅な伸びになっていますが、銀行貸出やマネーストックは2%増であり、日銀が大量にお金を出していても、経済に回っていくお金の伸びはまだ鈍いと思えるのですが、効果は中長期的に見ていくとすると、現状認識としては、『まだ効果は明確に出ていないけれど、これからである』ということなのでしょうか」(2013年6月12日)
筆者は2012年2月15日の定例記者会見から参加しているが(質問が許されるようになったのは同年4月の定例会見から)、白川時代と黒田時代を比べて、質問内容に変化が起きたのを感じる。簡単にいえば、白川時代は「見通しを教えてください」というものが多かったのに対し、黒田時代は「金融政策は効くのか」というものが大半になったという印象だ。
白川時代には、日銀の金融政策を問い詰めるような質問はあまり出てこなかった。メディア自体が、異次元緩和にいまだ慣れていないということなのかもしれない。そしてそれは、メディアだけでなく、金融機関もそうだと前出の片岡氏は言う。
「金融機関も日銀が思い切った政策を行ったことに対し、どう行動したらよいのかという落ち着き先がまだ見えてないのが現状だと思います。15年以上デフレで、国債以外のリスク資産に投資すると損をするという状態が繰り返されてきました。今回も同じ状況になると予測する人が現段階で多くいるとしても不思議ではありません。金融政策の変化をマーケットが理解するかどうか。もう少し、いまのような状況が続くのではないでしょうか」
日銀の体制変化から3カ月。15年続いたデフレから脱却するのは容易ではない。いま経済を見る目に必要なのは、「体制が変わった」ということを正直に受け止めることだ。そしてその体制とは、「デフレから脱却させるためにあらゆることをやると日銀が覚悟を決めたこと」と言える。注目すべきはその日銀の覚悟を揺るがそうとする旧体制側の発言、つまり「金融緩和は効かない」という意見ではないだろうか。
島田健弘/ライター
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