12. 2013年7月04日 06:00:50
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『経済も世界の流れも大変換している』、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 『悲劇から喜劇への米国の中東支配 』シリアでは、ロシアは米国と肩を並べている。ロシアは、米国が中東で引き起こしている悲喜劇の二枚目役である。中国も、ロシアより目立たないが、中東外交に必須の存在。 米欧以外の途上諸国の多くは、米欧によるアサド転覆の試みに反対 悲劇から喜劇への米国の中東支配
2013年6月25日 田中 宇
http://tanakanews.com/130625mideast.htm
-------------------------------------------------------------------------------- 「歴史は繰り返す。1度目は悲劇として、2度目は喜劇として」という格言がある。ヘーゲルが、弁証法的な歴史の繰り返しを指摘したのに追加して、マルクスが、フランス革命を例にとり、歴史が繰り返すとしたら1度目は悲劇として、2度目は喜劇としてだと書いた。この格言は、911から今までの米国の中東戦略を表現するためにも適している。(Obama's Syria Policy Looks a Lot Like Bush's Iraq Policy) 米国の中東戦略の悲喜劇的な繰り返しのひとつは「大量破壊兵器」をめぐる、イラク侵攻からシリア内戦への流れだ。米政府は03年、国連決議に反して大量破壊兵器を持っているとしてイラクに侵攻してフセイン政権を倒して占領したが、実のところイラクは大量破壊兵器を持っていなかった。亡命中のイラク反政府組織が捏造した文書を、米政権内のネオコンが意図的に本当らしい証拠にでっち上げた。米政府は、イラクが大量破壊兵器を持っている証拠をうまく世界に示せなかったが、米欧日などのマスコミは、フセイン政権を悪者に描いて米軍の侵攻に賛同する世論を喚起した。(米イラク攻撃の表裏)(実は悪くなかった「悪の枢軸」) 今また、米政府は、シリア政府軍が化学兵器(サリン)を使って反政府軍や自国民を殺したとして、シリア上空に飛行禁止区域を設け、シリア反政府勢力に武器を支援する方針を打ち出している。しかし実際のところ、シリア政府軍が化学兵器を使ったとする根拠は薄い。今年3−4月にシリアで化学兵器が使われたことは事実のようだが、使用したのは政府軍でなく、反政府軍だった可能性が高い。国連が派遣した調査官が、そうした結論を報告書に書いている。(Chemical weapons experts still skeptical about U.S. claim that Syria used sarin)(大戦争と和平の岐路に立つ中東) 5月にトルコ政府が、スンニ過激派(いわゆるアルカイダ系)のシリア反政府勢力「アルヌスラ」(Al Nusrah)のトルコ国内の拠点を家宅捜索したところ、サリンの原材料が見つかった。シリアでサリンを使ったのはアルヌスラだった可能性が高い。にもかかわらず、米政府はシリア政府軍が化学兵器を使ったと根拠の薄い主張を続け、化学兵器を使った張本人で、しかも米国の仇敵のはずのテロ組織アルカイダを支援してシリアの政権転覆を起こそうとしている。(Israeli Intelligence News: Syria Rebels Possess Chemical Weapons, US-NATO Delivering Heavy Weapons to the Terrorists) また、米国がシリア上空に飛行禁止区域を設定すれば、かつてのイラクよりずっと多くの武器を持つシリア政府軍と交戦になり、イラク侵攻以来の戦争に米軍が巻き込まれる。とはいえ、オバマは本気でシリアと戦争する気でないようだ。オバマは6月14日に「シリア政府軍が化学兵器を使ったことが確定的になった」として、飛行禁止区域の設定や、反政府勢力への武器支援を本格化すると発表した。(Obama Decision to Arm Syrian Rebels Has Nothing to Do With Alleged Chemical Weapons Use)(US should stay out of Syria, American expert warns) だが4日後、オバマはマスコミに対して「シリアと戦争する準備ができているわけでない」「シリア政府軍が反政府勢力を攻撃するのを押し返すのは困難だ」と表明し、シリアと戦争する気がないことを示唆した。米諜報機関のNSAがインターネット上の人々の個人情報を勝手にのぞき見していたスキャンダルなどが発覚して困窮するオバマ政権が、目くらましのために、シリアと戦争する決意表明をした後、火消しに回ったのだろうとも言われている。(Obama: US `Not Ready' to Attack Syria)(Why Obama is Declaring War on Syria)(全人類の個人情報をネットで把握する米軍諜報部) 6月17日からのG8サミットでは、米英がシリアのアサド政権に対する非難文を共同声明に盛り込もうとしたが、ロシアのプーチンに強く反対され、シリア内戦を終わらせるための和平会議の開催目標のみが盛り込まれ、アサドに対する言及は全くなかった。米欧以外の途上諸国の多く(アラブ以外)は、米欧によるアサド転覆の試みに反対しており、ロシアの反対論は国際的に広く支持されている。(G8 Backs Syria Peace Talks, Doesn't Demand Regime Change) ロシアは、シリアに軍艦を寄港させたり迎撃ミサイルを売ることで、米欧がシリアと戦争するならシリアの肩を持つ姿勢を打ち出し、戦争抑止に一役買っている。ロシアはソ連崩壊以来、国際社会での力を失い、米国より劣った存在になっていたが、プーチンは自国を米国と肩を並べる存在に戻したい。シリアをめぐる米露の駆け引きは、プーチンが野望を実現するための舞台となっている。(Russia Flexing Its Muscles With Syria And The World Takes Notice) イラク侵攻の時、ロシアはほとんど何もできなかった。リビア侵攻の時、ロシアは戦後処理の会議に呼ばれもしなかった。しかし今回シリアでは、ロシアは米国と肩を並べている。ロシアは、米国が中東で引き起こしている悲喜劇の二枚目役である。中国も、ロシアより目立たないが、中東外交に必須の存在に成り上がっている。(露中主導になるシリア問題の解決) ブッシュ政権は、大量破壊兵器を持っていないイラクに本気で侵攻してしまい、米国の軍事財政力や国際信用を浪費する、米国にとっての悲劇を挙行した。オバマ政権は、大量破壊兵器(化学兵器)の使用者を(間抜けにも、もしくは意図的に?)取り違え、シリアに侵攻するようなことを言いつつ実はせず、米国の国際信用をますます落としている(財政力はすでに落ち、軍事力はこれ以上使いたくない)。おまけに、米国のライバルであるプーチンのロシアが、米国よりも正しくて国際政治力が強いことが示されてしまった。二度目は、喜劇というより茶番劇である(もともとマルクスも、喜劇という言葉を風刺的に使ったようだが)。シリアやイラクの地元の人々にとっては、1度目も2度目も大惨事の悲劇である。(Brzezinksi: Obama Syria plan is `chaos, baffling, a mess, tragedy') シリアをめぐる動きで、新たな茶番劇の役者として登場したのは、モルシー大統領のエジプトだ。モルシーは6月16日、シリアとの外交断絶を宣言した。連立与党内のサラフィー勢力(サウジと親しい)は、自国民や他のアラブ人たちに、シリアに行って(スンニ派の)反政府勢力の戦争に参加し(非スンニの)アサドや(シーア派の)ヒズボラを倒せとけしかけている。これはスンニとシーアの宗教戦争の激化に見えるが、本質的にはそれよりも、財政難が続き、米欧やIMF、サウジ・カタールなど湾岸のアラブ成金国からの資金援助が必要なモルシー政権が、金をもらうために、米欧や湾岸成金が喜ぶアサド政権との断交に踏み切った感じだ。(Obama's weapons-for-peace program)(Egypt's Invitation to Jihad Could Have Long-Term Effects) モルシーはムスリム同胞団だが、同胞団傘下のガザのハマスも、アサドに荷担するヒズボラへの非難声明を出した。以前は、ハマスとヒズボラが南と北からイスラエルを挟み撃ちにする構図だったが、ここにきて両者の仲違いが如実になり、イスラエルにとって有利になっている。(Hamas political bureau urges Hezbollah to leave Syria and focus on Israel) 最近、悲劇から喜劇への米国支配の繰り返しが起きているもう一つの場所はアフガニスタンだ。米政府は6月20日、これまで拒否していたタリバンとの交渉を開始することを発表した。(US drops preconditions for Taliban talks) タリバンは、01年の911事件後のアフガン侵攻まで、アフガニスタンで政権をとっていたイスラム主義の武装勢力で、1990年代半ばに米国の同盟国であるパキスタン軍の諜報機関が、内戦が続いていたアフガン平定のためにタリバンの結成を後押しし、政権をとらせた。タリバンがアフガンを武力で平定していく過程に、米国は暗黙の支持を与えていた。しかし911事件で一転してタリバンはアルカイダの盟友として米国に敵視され、米軍に蹴散らされて政権を追われ、故郷の山村に戻ってゲリラ活動をしていた。アフガンの政権には、米国傀儡のカルザイ大統領が就いた。(タリバンの復活) ところが今、財政難の米国は、来年末までにアフガン駐留軍(同盟国軍を含むNATO軍)を撤退することを進めている。米欧軍が撤退した後、カルザイ政権傘下のアフガン国軍が国内の治安維持やタリバンなどゲリラとの戦いを引き継ぐことになっている。しかし、米国の傀儡下で作られた国軍には、愛国心でなくカネ目当てに集まる兵士が多い。ナショナリスト(パシュトン民族主義)の勢力であるタリバンとの戦いの場に出ると、国軍は逃亡やタリバンへの寝返りが相次ぎ、軍隊の体をなしていない。(アフガンで潰れゆくNATO)(Taliban Step Toward Afghan Peace Talks Is Hailed by U.S.) 米欧は表向き「国軍は訓練を受け、うまく育っている」と発表するが、実際のところ、米欧占領軍が去った後のアフガン国軍が弱体化し、カルザイはタリバンに政権をとられる可能性が高いと予測している。米欧軍は、これ以上占領を続けてもアフガンが安定しないと判断し、すでにアフガンで戦闘行為を行っていない。米欧は、カルザイとタリバンを何とか協調させて連立政権を作る道筋をつけた上で軍事撤退しようとしている。だから米国は、タリバンとの交渉を開始し、そこにカルザイも同席する戦略をとった。米国はこれまで、タリバンがアルカイダとの決別を宣言することを交渉の前提としており、タリバンが拒否してきたため、交渉に至っていなかった。今回、米国は、軍事撤退の期日が迫る中、この前提条件を外し、交渉開始となった。(NATO to stop combat operations in Afghanistan: chief) 交渉開始に際し米国は、タリバンが交渉の拠点としてカタールの首都ドーハに代表事務所を持つことを許した。6月18日、代表事務所の開所式が、カタール政府の副首相も参加して盛大に行われたが、これはカルザイ政権にとって驚きの出来事となった。タリバンは事務所に「アフガニスタン・イスラム君主国」と書いた看板を掲げたからだ。これは、01年に米軍に侵攻されて崩壊するまでのタリバン政権が自らにつけていた国名だったからだ。タリバンは当時の国旗も事務所に持ち込んでいだ。カタールは以前から、アルカイダやタリバンなど過激なスンニ派イスラム主義勢力を支援することを国家戦略としており、シリア反政府勢力にも、米国に代わって最も多く武器を支援してきた。アフガンにタリバン政権が復活することは、カタールにとって願ってもないことで、だからタリバンが事務所に以前の政権の名称や国旗を掲げて亡命政権の体裁をとることを積極支持し、開設式に副首相を送り込んだ。(US Struggles to Reassure Karzai, But Are Taliban Talks Dead?) カルザイ政権は、タリバンがドーハに亡命政府まがいの事務所を開設し、それを米国が「交渉に必要だから」と言って黙認していることに驚愕した。これはまるで、米欧軍が去った後、タリバンがカルザイを追い出して政権を再獲得することを、米国が黙認しているかのようだった。カルザイは、米国とタリバンとの交渉への同席を拒否する怒りの声明を出した。その後、米政府がカルザイをなだめている。(Karzai withdrawal from Afghan peace talks leaves tough road ahead) 米国は、アフガンから軍事撤退した後、唯一の頼みの綱が傀儡のカルザイ政権だ。タリバン政権の復活は、米国にとって悪夢だ。それなのに米国は、タリバン政権の復活を容認するかのようなドーハ事務所の開設を許し、カルザイをないがしろにしている。この展開は、1953年の朝鮮戦争の停戦交渉で、米国の傀儡だった韓国の李承晩政権が怒って調印を拒否し、米国が韓国抜きで、北朝鮮や中国と調印した時を思い起こさせる。米国は、傀儡を邪険に扱って、哀れな状況に追い込む隠れた長期戦略が持つかのようだ。オバマは、ライバル国の習近平と親密で濃密な2日間を過ごしたくせに、傀儡国の安倍晋三とは、以前からなかなか会おうとしない。傀儡は悲しい。(カルザイとオバマ) 米国は、カルザイ抜きでタリバンとの交渉を開始したが、タリバンは米国と真面目に交渉する気などないだろうと言われている。米軍は、タリバンとの交渉が成功しなくても、財政的な理由から、来年末にアフガンから撤退せざるを得ない。米国が撤退したら、タリバンは、カルザイが協調的であろうがなかろうが、カルザイを追い出して政権をとるだろう。きたるべきタリバン政権は、米欧から承認されなくても、中国やロシア、イランなど上海協力機構の国々とつき合ってもらえる。(An Afghan Peace?) タリバンの生みの親であるパキスタンの、ゲリラがいるアフガン国境沿いで、米国は、無人戦闘機による空爆で殺人を繰り返している。その多くは誤爆で無実の市民を殺しており、パキスタンのシャリフ新政権は米国に対し、無人戦闘機による空爆を禁止したが、米国側はそれを無視し、アフガン側から越境して空爆を続けている。パキスタンは、米国から距離を置かざるを得なくなっている。米国に代わって中国がパキスタンに経済支援するようになっている。(Pakistan's Sharif declares end to secret approval of drone strikes) 米国は、イラクやアフガンに侵攻して巨額の軍事支出と無数の殺害を行ったのに、結局のところ、利権の面でも国際政治の面でも、イラクでもアフガンでも、何も得ずに終わる。イラクのマリキ政権は反米的になり、同国の石油利権の半分以上が、米国のライバルである中国の手にわたる事態になっている。世界最大級の銅鉱山など、アフガンの経済利権も中国がとっている。(China Is Reaping Biggest Benefits of Iraq Oil Boom)(Ron Paul: We've learned nothing from Iraq, Afghanistan) 米国はイラクやアフガンから何も学ばず、議会もマスコミも好戦的なままだ。2期目のオバマ政権の外交顧問には、国際法を無視しても人権や民主を侵害している国を経済制裁したり軍事介入すべきだと考えるスーザン・ライス(前国連大使)が任命された。後任の国連大使に就任するサマンサ・パワーとあわせ「米軍侵攻が世界を平和にすると、いまだに思っている大馬鹿ども」と酷評されている。これからも、米国が世界に迷惑をかける歴史が繰り返されそうだ。(White House Shakeup: Susan Rice to National Security Advisor, Samantha Power to UN Ambassador) 私がこのように書くと「やはり君は反米だね」と揶揄する人がいそうだが、日本が国家として最重視する日米同盟の安定的な継続には、米国が国際法を守り、中露や途上諸国や含む世界の多くの国々が、米国に世界運営を任せて良かったと思う状態になることが望ましい。日本の上層部は、国際法を無視して無茶を続ける911以来の米国を、ひそかに迷惑と感じている(傀儡の悲しさで、米国に物申せないが)。日本にとっても、ライスやパワーや、かつてのネオコンなどは、権力中枢にいない方が良い。私は日本と米国を愛しているからこそ、このように書いている。 (Troubling Implications of Susan Rice's Appointment as National Security Adviser) ほかに、最近中東で起きている「歴史の繰り返し」として、イランの大統領選挙で比較的穏健派のロハニが勝利し、97年からのハタミ政権の時のように、米国とイランが和解すると期待されていること(期待に反して和解しないだろう)とか、イスラエルとパレスチナの和平する、しないの繰り返し、トルコとエジプトの政権転覆をめざした民主化運動の類似点と相違点などを書こうと思ったが、ひとつひとつが長くなりそうなので、またの機会にする。(Erdogan says same forces behind Brazil and Turkey protests) |