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2013年06月30日(日) ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
10年間で一人当たりの国民総所得(GNI)を150万円以上増やす―安倍政権が掲げたこんな公約が、いま話題になっている。
年収でも所得でもなく、GNIとは聞き慣れない言葉である。われわれが慣れ親しんでいるものとして、国の成長率を測る国内総生産(GDP)があるが、それとも違う。あえてわかりにくいGNIを目標に据えたのはなぜか。隠された官僚の意図が透けて見える。
この話に関係するものとして、かつて国民総生産(GNP)というものがあった。それが1980年頃から、GNPに代わってGDPが使われるようになったという経緯がある。
その理由は、GDPのほうが「国内の景気をより正確に反映する指標」だからと、内閣府のホームページにある。そこでは、「GNPの概念はなくなり、同様の概念としてGNI(Gross National Income)=国民総所得が新たに導入された」とも書かれている。
つまり、GNIはかつてのGNPの復活だということになる。とはいえ現在、国際機関ではGDPが使われるのが常識であり、あえていま日本だけがGNIを使おうとしているのは奇妙である。GNIを政策の目標値に使うことがグローバル時代に適しているのか、大きな疑問である。
こうしたことが起こる場合は、政府の一部が何らかの意図を持っていることがしばしばである。しかも、こうした細かい数字や概念を使ってくるところに、官僚の思惑を感じざるを得ない。では、GDPではなくGNIを使うことに、どんなトリック≠ェ隠されているのだろうか。
2011年度の名目GDPは473兆円で、名目GNIは488兆円。さらに'02〜'11年度までの10年間のそれぞれの平均伸び率をみると、名目GDPは▲0・56%、名目GNIは▲0・43%と、若干名目GNIのほうが低下率が低い。
こうした数値を見ると、少しでもよい数字に見せたいという官僚の気持ちの表れだと推測できるかもしれない。ただ、これはかわいいもの。筆者は、官僚側がさらに隠れた意図を持っていると思う。
マスコミは目新しい言葉に飛びつくという習性がある。まして、不勉強なマスコミはGNIが出てきた理由が書かれている内閣府のホームページなどは読んでおらず、わからない言葉に出くわすと、すぐに官僚に聞きにいく。そうしていると、マスコミの頭はGNIで占領され、他のことに頭が回らなくなる。こうした習性を生かして、肝心要の質問を回避するのは、官僚の常套手段である。
では今回、官僚がマスコミからのどんな質問を避けたかったかというと、「150万円増える」の意味だ。この数字は、GDPで考えても10年間で平均名目3%の増加になる。実はこの数字は、10ヵ月前に民主党が出した名目経済成長率目標と同じなのである。
アベノミクスで異次元の政策だといいながら、その成果ともいえる名目経済成長率が民主党と同じなのはおかしい。その点をどうしても突っ込まれたくないので、まずマスコミが知らない言葉である「GNI」を持ち出し、さらに「名目経済成長率3%」と言わずに、「150万円増える」と言ったのだろう。
後は、「GNI」という言葉と「150万円」という数字だけをマスコミが垂れ流し、国民はその言葉と数字しか頭に入らなくなる。それで、たった10ヵ月前の記憶すら呼び起こされないようにしているわけだ。騙されてはいけない。
『週刊現代』2013年7月6日号より
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