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日経新聞の当該記事は、「影の銀行」・「理財商品」(理財産品)・「信託」といった概念を未整理のまま使っており、正確性を欠いている。
中国の銀行業監督管理委員会が、「2013年3月末の残高が8兆2000億元(約130兆円)」と発表したのなら、対象はシャドーバンキングのなかの「理財産品」に限ったものであろう。
「信託」も同程度の残高だが、「理財」という言葉を含む名称を使っているのなら、短期(1年未満でほとんどが3ヶ月〜6ヶ月)で小口化された「理財産品」である可能性が高い。
「信託」は、長期で担保もしっかりしており、債券の販売先は固定客化されている富裕層である。「信託」の残高は、少し前に7.2兆円(114兆円)で、「理財産品」と合わせて14.5兆元(230兆円)ほどの残高と報じられていた。
記事は、「理財商品を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の不動産・インフラ投資に流れており、個人や企業にリスクが広がっている」と説明しているが、地方政府の不動産・インフラ投資は、長期の借り入れでなければならないから、「理財産品」ではなく「信託」である。(非金融事業者が直接融資するケースもある)
「理財産品」は、民営企業の運転資金(借り換え・債務履行のための借り入れを含む)が主たる融資対象である。
それゆえ、記事の「理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在。信託会社などが組成し、主に銀行を窓口に販売する。利回りは約3%の1年物定期預金金利を上回る5〜10%。低金利に不満を持つ預金者の需要を取り込み、数年前から急膨張してきた。集まった資金の運用先は地方政府傘下の投資会社(融資平台)の貸出債権や債券、短期金融市場など様々な種類がある」という部分はシャドーバンキング全体の説明としては間違ってはいないが、記事のテーマになっている「理財産品」の説明としてはズレている。
「信託」は、信託会社が組成し、富裕層は1口が最低でも300万円超(最低数千万円のものもある)で投資し10%前後の利回りを得る。信託会社は2〜3%の手数料を得、借り手は10〜13%の“利息”を負担することになる。
「理財産品」は、銀行がブローカーなどと共に組成し、小口化した証券を預金者に販売する。銀行が管理費として4%、ブローカーとノンバンクが手数料として5%、証券利回りは5%というのが相場とされている。借り手は、なんやかやで14%ほどの“利息”を負担することになる。
リスクが高いのは、担保も甘く信用力も低い企業を融資先にしている「理財産品」や目利きではない事業者が直接融資するケースである。
リスクが高いからこそ、銀行業監督管理委員会は、「理財産品」の残高を8兆2000億元(約130兆円)」と発表したのであろう。
「理財産品」は、担保権は行使するが元本の回収リスクを預金者(投資家)にかぶせているので、焦げ付いても、銀行はほとんど傷つかない。
上述したように、「理財産品」については、債務を履行するために借り入れをするというケースがけっこうな割合であるはずなので、高利回りどころか、元本さえ回収できない預金者(投資家)がけっこうな数で出現すると思われる。
銀行にとっての問題は、直接融資の部分である。そのなかには、融資したお金が“又貸し”(財テクとも言うらしいが)に使われているケースもあるので、連鎖的な債務不履行に直面する可能性もある。
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中国「影の銀行」の高利回り商品、残高130兆円に[日経新聞]
2013/6/30 0:30
【上海=土居倫之】中国の銀行業監督管理委員会の尚福林主席は29日、高利回りの資産運用商品である理財商品の2013年3月末の残高が8兆2000億元(約130兆円)に達したと明らかにした。理財商品を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の不動産・インフラ投資に流れており、個人や企業にリスクが広がっている。
上海市で同日閉幕した金融フォーラムの講演で明らかにした。理財商品の残高は中国の12年の名目国内総生産(GDP)の約16%、人民元預金残高(67兆元)の約12%に相当する。
理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在。信託会社などが組成し、主に銀行を窓口に販売する。利回りは約3%の1年物定期預金金利を上回る5〜10%。低金利に不満を持つ預金者の需要を取り込み、数年前から急膨張してきた。集まった資金の運用先は地方政府傘下の投資会社(融資平台)の貸出債権や債券、短期金融市場など様々な種類がある。
規制のはざまで拡大してきた金融商品で、当局の監視の目が行き届いていない。デフォルト(債務不履行)時に投資家である個人や企業、販売者である銀行、インフラ開発の実質的な主体である地方政府など、誰が損失を負担するのかも曖昧なままだ。投資プロジェクトなどが行き詰まれば、幅広い関係者が損失リスクを負担しなければならない可能性がある。
尚氏は講演で「正確な対応措置さえ取れば、リスクは十分管理可能だ」とリスク管理の重要性を訴えたが、米著名投資家のジョージ・ソロス氏は「米サブプライムローン問題に似ている」と警告している。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2902G_Z20C13A6MM8000/?dg=1
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