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コラム:米国が直面する「賃金危機」
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/662.html
投稿者 金剛夜叉 日時 2013 年 6 月 29 日 23:41:09: 6p4GTwa7i4pjA
 

http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE95R05I20130628

米国の勤労世帯は現在、「賃金危機」にある。仕事の質は低下し、低賃金労働者層は増加、そして米国の賃金格差は紛れもなく恥ずべきレベルにある。

皮肉にも、公正労働基準法(FLSA)が制定されてから6月25日で75周年を迎えた。現在では米国での大半の職種や労働者に適用されるこの法律が、制定当初の1938年に定めた最低賃金は時給25セント。2009年以降は時給7.25ドルにまで上昇した。

しかし、最低賃金の価値はかつてとは異なる。1960年代後半の最低賃金は平均賃金の約半分であり、最低賃金でも正規雇用者1人の年間所得で、3人世帯を養うことができた。だが、今は違う。最低賃金は平均賃金のわずか37%で、それだけでは貧困線を下回る生活を余儀なくされる。

もし最低賃金が1969年以降の物価上昇を反映していれば、現在約10.70ドルに、生産性上昇を加味していれば約18.72ドルに、最富裕層1%の賃金上昇に一致させるなら28.34ドルになる。

このように最低賃金の価値が下がる一方で、最富裕層の実質賃金は過去30年で275%増と天井知らずだ。

最低賃金の価値が低下しているだけではない。低賃金労働者の仕事の質も低下している。1979―2007年は、全体として賃金は上昇、労働時間も増加したが、最低所得者に限ってみれば、労働時間は最も増加しているにもかかわらず、賃金上昇率は最低だった。

また、労働者の平均年齢と教育水準が上がっているにもかかわらず、年間給与が3万7000ドル以上で年金や医療費も給付される「良い仕事」に就いている労働者の割合も減少した。 続く...

 

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コメント
 
01. 2013年6月30日 07:17:37 : YsENrW54A1
2013年 6月 28日 18:27 JST
米国で見込まれる5500万の雇用創出、大学へ行く十分な理由がここにある 
By LAUREN WEBER
 大学の学費が上がり続け、学生ローンの負債が全国的な問題となっているなか、大学に通う意味を問う米国人が増えている。

 少なくともここに1つ、高等教育を支持する報告がある。26日に公表された新たな報告によると、中等教育後の少なくともいくつかの課程――大学の卒業資格ではなくても、準学士や何らかの大学単位――を完了していない人は、景気回復が続くなかでも仕事を得る機会を逃しているという。

 ワシントンにあるジョージタウン大学の「教育・労働力研究センター」によると、米国では2020年までに5500万件の雇用機会が創出され、そのうちの65%は高校より上位の何らかの教育を受けていることが要求されるだろうという。

 5500万の雇用機会のうち、2400万は年配の労働者が退職することに伴う新規採用となるとみられている。なかでも、ヘルスケア、地域サービス、科学・テクノロジー関連の業種は雇用の成長が最も早いセクターになるとみられている。

 入学者数と卒業者数の現在の比率がそのまま続けば、米国では中等教育後の資格をもった労働者が500万人不足する、とセンターは試算している。

 米国経済が工業中心のものから、より知識に根ざしたものへと移行するのに伴い、仕事内容に従来より上位の教育が要求されるようになった。センターによると、1973年には雇用の72%が高校卒業かそれ未満の資格で足りたが、2010年にはその割合が41%となり、20年には36%へ減るだろうとみられている。

 教育・労働力研究センターのアンソニー・カーネベール所長は「雇用主はスキルを求めている」と話し、賃金アップへの良い兆候だと続けた。同センターの調査では、大学卒業資格を持った人は高校卒業資格しかない人よりも生涯賃金が84%多い結果が出ている。しかも、この格差は拡大し続けるだろうという。

 07年から09年のリセッション(景気後退)以降に創出された雇用の過半数は主に、小売業や在宅医療、外食産業といった低スキル・低賃金の職種であることが、複数の機関の統計で分かっている。例えば、米国の低賃金労働者の擁護団体であるナショナル・エンプロイメント・ロー・プロジェクト(NELP)による2012年の調査では、景気回復期に増加した雇用のうちの58%はそういったカテゴリーに入る。

 対照的に、ジョージタウン大学の調査は中間クラスの職種が近い将来、創出されるという楽観的な見通しを示している。カーネベール所長は、この調査はNELPのような研究よりも幅広いデータを利用していると指摘。また、米経済は2010年から20年に緩慢ではあるが安定的に成長するとの見通しがベースになっているという。(NELPは国勢調査局の人口動態調査から取られた少数のサンプルに頼っている。)

 カーネベール所長は「米景気と労働市場には現在、ある一定の勢いがある。すべての経済指標は同じ方向を向いている」と述べた。

 教育・労働力研究センターは、11年の研究で、高等教育を受けた労働者の不足は25年までに、年間で約5000億ドルの経済的な損失を米国に与えることになるだろうと予測していた。


02. 2013年7月01日 11:27:13 : e9xeV93vFQ
不確実な未来を予測するコツ、教えます

自分の頭で未来予測をするためのお勧め本

2013年7月1日(月)  出口 治明

 読者のみなさん、こんにちは。月1度の書評コラムです。

 今回は、不確実な今の世の中で、「未来予測」をモノにするための本をご紹介します。まず、書籍のご紹介を始める前に、予備知識です。最近発表された日本経済研究センターによる「2050年への構想」という、長期の経済予測をご覧いただきたいと思います。一部分はこちらでアップされています。(ウェブのリンクはこちら)

 世界経済の先行きは言うまでもなく不確実です。アベノミクスも、始まったころは市場も熱狂し、株価も為替も一本調子で盛り上がり、債券市場もおとなしかった。「あっ、割とうまくいきそうだな」と思っていましたが、このところ、株も債券も乱高下し、若干不安感が広がっています。

 高度成長期の経済は、実に将来を読みやすかった。行くべき世界がある程度見えた。しかしこれからは、先の読みにくい時代になっていくのだと思います。実際に去年、アベノミクスを予測した人なんていなかったわけです。日本も、キャッチアップ型の経済をやめ、海図なき航海に出ていかなければなりません。政府ですらそう警鐘しています。ビジネスパーソンにとって先をいかに読むかというのは、大変重要です。

 逆説的ですが、先の読めない時代だからこそ、先を読む能力を備えないといけません。ただし、重要なのは方向性の話です。1年先がどうかとか、物価上昇率がどうなるとか、そのようなことは乱暴に行ってしまえばどうでもよいのです。必要とされるのは、どの方向に向かっているのか?という大きな方向性の予測能力です。かといって数字の裏付けがない妄想を膨らませたところで役には立ちません。そうした意味では日経センターの長期予測は、方向性も考え、検証可能な数字をベースにしているのでお勧めします。

 さて日経センターの長期予測によれば、やはり米国中心の経済が続くということになっています。日本の成長実現には、(1)女性・若者・高齢者の潜在力発揮を拒む雇用の壁、(2)国内外からの新規参入を阻む資本・規制の壁、(3)十分な電力が確保できないエネルギーの壁という「3つの壁」を打破する必要がある――としています。これを1つのシナリオとして、まずは将来を考えるよすがにしてもいいのではないでしょうか。

「収入より満足に目を」「消えゆく物に興味を持つな」

 しかし2050年といったら、40年も先の話です。数字を積み上げても、前提の置き方やちょっとした数字の積み上げの仕方の違いなどで大きく変わります。やはり、もっと広い歴史的な視点、あるいはより幅広い立場から日経センターの予測を検証する本があるといいでしょう。それが、ヨルゲン・ランダース氏の名著、『2052 今後40年のグローバル予測』(日経BP社)です。こちらは3つのポイントでお勧めします。まず1点は、日経センター予測は楽観的な世界を描いているのに対し、ランダース氏は悲観的だということです。


『2052 今後40年のグローバル予測』(日経BP社)
 『2052〜』は、およそ考えられる悲観論のすべて、考えるポイントのほとんどすべてを網羅している素晴らしい本なのです。この本さえ読んでおけば、今後40年間に起こるチェックすべき項目を見逃すことはないでしょう。もし結果が良ければそれでよしとすればいいのです。大雨を予測し、晴れていたらラッキー、といった感じでしょうか。

 また、日経センター予測は米国を高く評価し、中国を相対的に厳しく見ていますが、ランダース氏は逆に米国を相対的に厳しく見て、中国の未来を楽観的に捉えています。アメリカと中国、この巨大な2国、「G2」の動きは今後40年間を考えるうえで注視すべきポイントですので、楽観論、悲観論双方の視点からこの2国を見ておくのは、未来予測のうえで大変ためになるでしょう。

 もう1つお勧めするポイントとして、悲観論とはいいながら、ランダース氏の筆致は知的なユーモアにあふれている点です。巻末には、個人として備えておいた方がいいことが親切にも書いてある念の入れようです。大変面白いですので一部を引用しておきます。

 「収入より満足に目を向ける」「やがて消えていく物に興味を持たない」「最新の電子エンターテイメントに投資し、それを好きになろう」「子供たちに無垢の自然を愛することを教えない」「生物多様性に興味があるなら、(いずれなくなるので)今のうちに行って見ておこう」「決定を下すことのできる国に引っ越しなさい」「成長はよいことだという考え方から脱却する」「社会不安に敏感でないものに投資しよう」「政治において、限りある資源の平等な入手は、言論の自由に勝ることを認めよう」

「次なる科学のフロンティアは生物学」

 悲観論にもかかわらず「仕事がなくなることなどない」と言い切ってしまうあたりにも上質なユーモアがあふれているので、日経予測と合わせて読めば、これからの世界を展望するうえではこの2冊だけでもかなりいい結果が得られるでしょう。さて、これらを頭の隅に入れていただいた後では、もう1冊、『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』(文藝春秋)がお勧めです。こちらは、英国人の専売特許でもある辛口の未来予測ですので、腹を立てないで読んでください。こちらも、前者2冊と対になる本です。


『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』(文藝春秋)
 「日本のGDP(国内総生産)は韓国の半分になる」と言っているし、「今後も、欧米や日本などの国々が高齢化による財政の悪化に苦しみ、低成長を余儀なくされる」「(アジアの中で)日本は相対的に、急速にプレゼンスを失っていく」などとも言っています。読んだら不機嫌になりそうですが、「次なる科学のフロンティアは、化学でも物理学でもなく生物学にある」「技術そのものよりも、その使われ方に開発の重点は移っていく」など、ヒントになりそうな情報も満載です。しかも各章の終わりにまとめがあって頭に入りやすいですから、ぜひおさえておきましょう。

 さてこの3冊は、実務的な、あるいは数字や計量をベースにした未来予測ですが、人間はずいぶん昔から、未来を夢見る動物でした。本を読む以上は、数字をベースにした3冊だけではなく、古典の世界で未来がどのように扱われてきたのかを、この際に勉強しておくのがいいのではないかと思います。まず未来予測といえば、外せないのはこれです。16世紀に書かれた古典、トマス・モアの『ユートピア』(岩波文庫)です。


『ユートピア』(岩波文庫)
 『ユートピア』の書名はご存じでも、読んだことのある人は本当に少ないと思います。薄い本ですし、「なるほど、ユートピアという考え方というのはこの本から来たのか」ということがよく分かります。書かれた時代はイギリス・ルネサンス真っ盛りの16世紀初頭、王侯貴族やエリートが階級社会の中、下層階級を酷使して作り出したものを消費し、贅沢を尽くしていた封建主義のど真ん中でした。マルティン・ルターが福音主義を唱えた宗教改革も起こっていました。ユートピアという言葉はモアの造語で、「どこにもない国」という意味です。そこでは、伝聞のスタイルを取りながら、第1巻で堕落した英国王侯政治の痛烈な批判、第2巻で仮想の理想郷「ユートピア」の内実が描かれています。

 ユートピアは「何ものも私有でない」国であり、「公共の利益が熱心に追求され」ています。人々は勤勉で、毎日6時間だけ適性に応じて勤勉に働きます。奴隷やユートピアのルールを逸脱した犯罪者が、つらい仕事を一手に引き受けています。家すらも似たようなつくりで定期的に引っ越すように決まっています。日々の生活に必要なものは所定の場所に取りに行けば必要なだけ手に入るので、通貨が必要ありません。また必要以上のモノを作りません。「身なりは質素がいい」という価値観が刷り込まれ、人の振る舞いに贅沢や貪欲さを見ると、条件反射のように軽蔑します。

衣食住は満たされ、物はすべて共有される社会

 個人があらゆる神を信じることが許される一方、それを他人に強制したり、扇動したりすることは厳しく禁じられています。また、一夫一婦制は厳格で、男女の結婚も事前に離婚の恐れがないよう入念にチェックされます。戦争は強欲で戦闘好きな国外の傭兵を雇い、必要に応じて高いお金を出して引き受けさせています。

 「規範」を守ってさえすれば生活の不安も人間関係の不安もなく暮らせるのですが、ユートピアが尊重する価値観から逸脱する行動をする者は、すぐに奴隷になったり死刑になったりするのがミソです。また、病人は整った病院で医師や看護師から手厚く看護されますが、病になって回復の見込みがない人は、自発的に生に執着しなくなるよう、日々諭され、自ら苦しまずに安楽な死を迎えたいと望むように誘導されます。

 なぜこのような体制が実現しているかといえば、「国家の発展に必要適切な正しい信念を叩き込むために、(司祭たちは)懸命な努力をする。この信念がひとたび子供の頭にしみこんでしまえば、(中略)国家の平和を守り保ってゆく上に重大な役割を演ずる。国家が衰えるのに、腐った思想から生ずる背徳によらない場合は1つもない」と考え、実行しているからなのです。つまりは徹底した「思想管理社会」なわけです。

 『ユートピア』では、ユートピアを旅した語り部が「ユートピアの人々には悩みがない」などと言うのですが、そうした話の数々を聞き手が到底納得できない、という内容を手紙で独白する形で終わっています。私は、人類が未来を展望する原点は、まずはこの『ユートピア』にあると思います。

 さて古典『ユートピア』を堪能して知的な世界に遊んだら、次は近年の有名な未来予測の作品を読みましょう。英国人ジョージ・オーウェルによる20世紀最大の文学とも言われる『1984年』(ハヤカワ文庫)です。未来の「逆ユートピア」を描いた最高傑作です。ちょうど新訳が出たところですので、お勧めするタイミングとしてもよいと思います。

徹底した個人生活の管理がもたらす安定


『1984年』(ハヤカワ文庫)
 オーウェルが、当時から40年後にあたる未来『1984』を書いた1949年は、いわゆる「赤狩り」の真っ最中でした。作品の舞台である「オセアニア」では、ニュースピークという新しい言語を開発しつつ、当局が双方向テレビによる屋内外の監視や拷問、洗脳などで人々の思考が深まることを防ごうと思想管理を徹底します。歴史を日々改ざんし、思想や言語、結婚、感情や日記をつけることなどという日常的な市民生活すべてが管理・統制されます。

 ここで描かれるのは、49年当時、ソビエト社会主義共和国連邦で絶大なる権勢をふるったスターリンをモデルにしたとされる「ビッグ・ブラザー」が率いる党に監視される悲観的な未来社会です。本書は、「思想統制のもとでの市民生活」が描かれている点では『ユートピア』と共通しますが、見聞を聞く形で書かれた『ユートピア』と違い、こちらは管理される側の視点です。主人公は厳しく禁じられる「個人的な日記をつけ始め」たり「恋をする」など、禁じられている行為に手を染めたために「愛情省」に連行され、徹底的に洗脳され、拷問を受け、心から「ビッグ・ブラザー」を愛しながら、かつ悲惨な最期が近いと自覚しながら、死を待つのです。

 さて、「力」による恐ろしい思想統制を『1984』で疑似体験した後は、対になる『すばらしい新世界』(講談社文庫)を読んでみましょう。


『すばらしい新世界』(講談社文庫)
 全編に不穏で陰鬱な空気がただよう『1984』とは対照的に、『すばらしい新世界』が描くのは、薬物と科学技術によって人工的な幸福感と快楽に浸って若々しく一生を生きる人々の姿です。ただしこの新世界では、「自分で考える」という行為が徹底的に否定され、科学的にあらかじめ排除されている点で、本質は『1984』と同じです。

 この作品は、大恐慌が世界を襲って間もない大不況時代のさなかである1932年に発表された、2004年を描く未来小説です。しかし米国の自動車王ヘンリー・フォードを「神」と奉っている以外には、全く古さを感じません。

「すべての人間はすべて他の者のために働く」

 西暦2004年に最終戦争が終結した後、暴力をなくすため、世界は完全に機械化されます。過去の歴史はすべて抹消され、人間も機械に培養されて徹底的な品質管理のもとに「生産」され、役割に沿って階級が決められます。そしてその階級に満足するよう、胎児のころから思想が刷り込まれます。親も家族も存在せず、結婚もありません。特定男女の長い関係は奨励されないのです。技術の進歩により60歳でぽっくり死ぬまで若さが保たれ、労働と消費活動を続けます。衣食住は満たされ、気分が沈めば副作用のない薬物「ソーマ」を飲みます。人々は「万人は万人のものである」「すべての人間はすべて他の者のために働く」と幼少から何百回も教え込まれています。これまた恐ろしい未来です。

 『ユートピア』を含む3作品に共通するのは、一見平等ながら、権力が情報や思想、価値観まで支配し管理する圧倒的な管理・階級社会ですが、引き換えに社会と生活の安定が約束されています。ただし本人たちがそれに疑問を持つことは決して許されません。貧富の差がなく、物が隅々まで行き渡る社会の安定を図ろうとした結末は、徹底した自由な思想のコントロール、自由意思の管理と統制に行きついてしまうわけです。

 さて、現実社会を悲観的に振り返ってみましょう。人工授精の技術はどんどん進んでいますし、抗老化の研究も進みます。インターネットが普及し、人の細かい行動も監視しやすくなりました。我々は知らないうちに様々な情報を大量に刷り込まれています。今はわれわれはそこまで管理されていませんが、技術的にすべてを管理できるようになる日は遠くないかもしれません。

 そしてここで再び、冒頭のヨルゲン・ランダース氏による読者へのアドバイスを振り返ってみます。最後のアドバイス、「政治において、限りある資源の平等な入手は、言論の自由に勝ることを認めよう」としている中で、以下のようなことを書いています。

 「社会に害を及ぼさない限り個人は自由に利益を追求できるという考え方は、何世代にもわたって普遍的な指針であり続けた。そうして言論の自由を含む基本的人権が確立された。しかし、資源に限りのある世界では、時間はかかるかもしれないが、この状況は変わると私は予想する。(中略)ますます人口が増えていく世界では、全体の幸せは個人の権利より大切になるからだ」

悲観論の方が面白いから、歴史に残る?

 …と、古典3冊を含めてここまで読み込んでいくと、人間は楽観論よりも極端な悲観論を好むことに気づかれたかもしれません。人間は必ず死ぬ運命にあるので、どうしても未来を悲観的に見たくなるのかもしれません。とはいえ、人間は天邪鬼な動物ですし、ハッピーエンドや楽観論は面白くない、悲観論の方が面白いから読むという部分もあるのかもしれません。いずれにせよ未来を描いた名著に悲観論の方がより多く残っている事実は、とても興味深いと思います。それがなぜなのか、読者のみなさんも考えてみてください。

 最後にヒントを2つ。『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』は「2050年までに、すべてを効率と個人の利益に換算して考える『経済第一主義』とこの『公共心』が大きな対立事項になり、民主主義を揺るがしていくことになる」と指摘しており、ランダース氏は「あなたに課された義務は、人々と協力して、国家の幸福度を測定するための指標と枠組みを、30年以内に完成させることである」と助言しています。

 では今月はこのあたりにしておきましょう。また来月。

(構成:広野彩子)


出口治明の「ビジネスに効く読書」

自他共に認める「活字オタク」であるライフネット生命保険の出口治明会長兼CEO(最高経営責任者)。その柔軟な発想や思考を支える無数の読書歴の中から、ビジネスや悩み解決に効く、とっておきの本を毎回、数冊ずつ紹介します。


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