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黒田日銀総裁に聞こえているのは市場の声か、それとも政府・与党の声か
Photo by Ryosuke Shimizu
株下落で政府・与党が危機感 日銀に突きつけた“宿題”
http://diamond.jp/articles/-/37877
2013年6月25日 週刊ダイヤモンド編集部
政府・自民党がいよいよあわて始めている。日経平均株価は6月13日、843円もの急落を見せ、ドル円相場は94円台まで下落した。
それ以前から、株価の下落が止まらないことに政府は危機感を強めつつあった。6月10〜11日に開催された金融政策決定会合の前、麻生太郎財務相は黒田東彦・日本銀行総裁の元を訪れた。
「ETF(上場投資信託)を買い増してくれないか」
関係者によれば、黒田総裁は「検討します」と返答したという。
ところが、この会合でETF購入枠の増額はなかった。7月21日に参議院選挙を控える中、株価が下落し続ければ支持率も下がりかねないだけに、政府内にはピリピリした雰囲気が漂っていたようだ。
■日本に興味失う海外勢
もっとも、6月13日の動きに限って見ると、必ずしも「日本政府の成長戦略に失望した」といった理由で、海外勢が日本株を売ったというわけではなさそうだ。
海外ヘッジファンド勢は第1、第2の矢という、いわば彼らにとっての“おもちゃ”で十分遊び、円安でも相当もうけた。もちろん当初は、「第3の矢(成長戦略)も楽しませてくれそうだ」(ヘッジファンド関係者)と期待してはいたものの、ここにきて真新しいメニューも出てこず、「あんまり楽しめそうにない」(同)と一時的に興味を失いつつある。
実際、海外ヘッジファンドとのカンファレンスコールを控えていた東京の金融関係者は、突如キャンセルが入ったと明かす。むしろ今は新興国を注視している状況で、日本どころではないのである。
その引き金は5月末、FRB(米連邦準備制度理事会)のQE3(量的緩和第3弾)縮小観測だった。これにより、足元のところ新興国が不安定化しているのだ。
海外から新興国に流入していた資金が逆流し始めており、インド、タイ、フィリピンなどアジア新興国の他、ブラジルやロシアでも株価が下落。通貨でも南アフリカランドやブラジルレアルなどが軒並み売られている。新興国市場では、「とにかく流動性がない」(外資系証券)との嘆きが聞こえてくる。
となると、リスク回避姿勢が強まる中で日経平均も売られ、さらには新興国通貨・株・債券を買って円をショート(売り)していた海外勢は、円が安全資産かどうかに関係なく、「その逆の動きを見せる」(佐々木融・JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部長)ことになる。つまり、必然的に円を買い戻しているため、円高に動いているわけだ。
こうした状況に対し、参院選前の政府に残された手だてはほぼ見当たらない。2%のインフレ目標を掲げる日銀にとっても、政府・自民党が選挙で多数を固めて成長戦略の実行を確実なものにしてくれないと、実需をつくり出すこともままならない。
であれば、またぞろ政府が日銀に対して水面下で要求し、日銀側も参院選前の7月10〜11日の決定会合でETF購入枠の増額に応じてくる可能性は否定できない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)
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