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安倍政権が放った「打ち上げ花火」−−。一瞬、夜空に輝いたが、株価急落と中味のない成長戦略によって、花火は急速にしぼんでいった。それでも火花と共に安倍政権が消え去るだけならいい。真っ暗な空に向かって上がっていった火の玉は、「国債暴落」という巨大な爆弾に火をつけてしまったのだ。もう取り返しがつかない。日本経済の「破滅」が空から降ってくる。
買い支えるのは日銀だけ
安倍首相はサミットから帰国すると「日本の経済政策は各国首脳から評価された」と自画自賛し、東京都議選を有利に戦った。この期に及んでも、7月の参院選までは国民に「株価急落は一時的。アベノミクスで日本は再生できる」と思いこませようとしている。
それで本当に景気がもち直すのであれば、大変結構な話である。
しかし、国民をいくら誤魔化せても、東京の株式市場を動かす世界の投資マネーが安倍首相の言葉を信じなければ、株価急落も国債相場の乱高下も止まるはずがない。事実、国際金融のプロの見方は、安倍首相の楽観思考とまったく逆だ。
日本ではほとんど伝えられていない重大な発言を紹介しよう。
さる6月5日、スイスに本拠を置く世界的な投資銀行、UBS銀行のグローバル最高投資責任者アレックス・フリードマン氏は、米国3大ネットワークNBC系列のニュース専門チャンネル(CNBC)に出演し、アベノミクスが日本経済に悲劇的な結末をもたらす危険性をこう警告した。
「資産インフレに経済成長が伴わないスタグフレーションが起きる可能性がある。私たちはハルマゲドンならぬアベマゲドン(ABEGEDON)を目の当たりにするだろう。
そのシナリオでは、投資家が日本の国債をさらに売り払うドミノ倒しが起きる。日本の債務水準が今後も維持できるかどうかに懸念が生じているためだ。日本の借金はGDP比で300%に近づくだろう。そうなると金融システムには深刻な打撃が加わり、地方銀行の自己資本が大きく毀損されてしまう」
そのように「国際暴落」による金利急上昇を予測した上で、
「最悪の場合、今後数か月の間に日本経済がクラッシュするかもしれない」
と指摘したのである。
国民にとって恐ろしいのは、予測の内容もさることながら、UBSという巨額資本を運用する投資銀行の最高責任者が「日本売り」勧めていることだ。
世界の投資マネーは、相手が弱いと見るや容赦なく売り浴びせて自分たちの利益を稼ぐ。かつての韓国や東南アジアの通貨危機、最近では欧州の金融危機がそうして深まったことは公然の事実だ。フリードマン氏の言葉は、今や日本がそのターゲットにされていることを示している。
国内にも国債暴落が引き起こす経済クラッシュを懸念する専門家は少なくない。
「黒田東彦・日銀総裁の異次元の金融緩和が国債暴落のパンドラの箱を開けた」
と国際金融論が専門の相澤幸悦・埼玉学園大学経済経営学教授が指摘する。
「日本の国債発行残高は770兆円に達し、国と地方をあわせた借金総額は1000兆円を超えている。財政が危機的な状況であることはいうまでもない。
それでも国債価格が安定し、政府が低い利回りで毎年50兆円前後の国債を発行できたのは、国内の銀行、生保、郵貯、年金基金などが、みんなで買えば恐くないと国債を買い続け、満期まで保有し続けてきたからです。国債暴落の危険性はこの20年来指摘されてきたが、これまでは欧米の投機筋が国債を売り浴びせても、値下がりしたところを日本勢が喜んで買うから値崩れしなかった」
ところが、黒田バズーカがその「みんなで買えば恐くない」国債買い支えシステムを破壊した。その引き金は、日銀が金融緩和のために金融機関などが保有する国債を大量に買い上げる方針を打ち出したことだ。
「日銀が国債を大量に購入すれば価格は上がり、金利は下がるはずでした。その一方で、黒田氏は政府と2%のインフレ目標を打ち出した。それは国債価格が下がり、金利が上がることを意味する。一体、日銀は上げたいのか下げたいのかどっちなのか、と混乱するものであり、国債相場も乱高下を繰り返したわけです。
金融機関は大量に国債を保有しているから価格が下がると損失が出る。だから欧米のヘッジファンドが国債を売ると、それまで買い支えてきた日本の大手銀行まで、今のうちに保有額を減らそうと売り始めた。今や買い支えるのは日銀しかない。ヘッジファンドが売る浴びせてきたとき、国内の機関投資家の援軍がなければ日銀だけで支えるには限界がある」(相澤氏)
防波堤というのは一か所でも穴が開くと決壊は早い。メガバンクばかりか、国債の大口引き受け手だった生保業界も、「これ以上、国債を買いに行くスタンスを取りにくい」(松尾憲治・生保協会会長)と、買い支えファミリーからの脱落をほのめかしている。
日本の「国債防衛ライン」は風前の灯火なのだ。
では、暴落は一体いつ起きるのか。
(to be continue)
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