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金融機関のトレーダーには胃が痛むような日が続く Photo by Satoru Okada
債券市場で噴出し始めた黒田日銀に渦巻く失望と怒り
http://diamond.jp/articles/-/37774
2013年6月24日 週刊ダイヤモンド編集部
金利の不安定な状態が続く債券市場で、日本銀行に対する鬱積した不満が徐々に表面化し始めた。
6月11日、午前11時50分。日銀が金融緩和策の現状維持を決めたことが伝わると、一部の銀行からは「結局何もしないのか」と、深いため息が漏れた。
その前日まで、日銀が0.1%の低利で金融機関に資金を供給する「固定金利オペ」の期間延長など、市場の安定化に向けた対応策に踏み切る、との観測が広がっていたためだ。
そうした日銀の「ゼロ回答」に対するため息が、次第に怒りに変わったのが、同日15時30分から始まった黒田東彦総裁の記者会見だ。中でも金融機関の不興を買ったのが、「(金利の)ボラティリティ(変動率)はだいぶ収まってきている」という発言だった。
なぜなら、債券を売買する銀行や証券会社は今なお、金利が日によって大きく変動しながら、じりじりと上昇することで、「リスク量の増大に頭を悩ましている」(菊池康雄・第二地方銀行協会会長)からだ。
実際に、債券先物で過去(ヒストリカル)や将来(インプライド)の変動率を計測するデータを見ても、「緩和前と比較すると、まだ非常に高い水準にある」と、早乙女輝美・みずほ証券シニア債券ストラテジストは指摘する。
さらに、足元の金利上昇についても、黒田総裁は会見の中で直接の言及を執拗に避け、「毎月毎月オペを重ねていくことによって、リスクプレミアムを圧縮する(金利を低下させる)効果がさらに強まっていく」という、従来の説明に終始した。
金融機関としては、ゼロ回答の代わりに、せめて金利の安定化に向けた強いメッセージを発することを期待していただけに、「債券市場をあまり軽く見ない方がいい」(大手行役員)と、日銀に警告する声さえ出始めている。
そうした警告が暗示するかのように、金融政策決定会合の翌12日には、株価が下落する中でも、長期金利が一時0.9%と、2週間ぶりの水準にまで上昇した。
一度噴出した黒田日銀への不満と怒りのマグマは、簡単には収まりそうもない。
14日15時半。財務省4階の第三特別会議室に、銀行と証券会社の担当部長やトレーダーなど、計24人が集められた。
会合が始まると、財務省の担当者はまず、異次元緩和に対応した今後の国債入札の方針や、物価連動債の発行計画について説明。その後、足元の国債市場の動向について、参加者から意見を求めた。
その中で出てきたのは、黒田総裁が宣言している「2年程度で物価上昇率2%の達成ということと、イールドカーブ(利回り曲線)全体を押し下げるというのは方向性が違う」という、緩和策の欠点を突く声や、「国債市場のボラ(変動率)はまだ高止まりしており、今後低下するのは難しいのではないか」という、市場を突き放したような声だった。
■隠忍自重の財務省
では、国債の発行当局となる財務省は日銀の異次元緩和を、どう見ているのか。
その思いが透けて見えるとして、市場関係者の間で話題となっている一つの冊子がある。財務省が4月末に発行した「日本国債ニュースレター」だ。
年4回発行するこの冊子は、表紙にある新着情報の欄で、翌年度の国債発行計画や債務管理の方針などを掲載しているが、4月末発行分だけは趣が違った。
1ページ目で日銀の異次元緩和策の概要を説明した後、その後の市場動向として、大きく乱高下した長期金利と国債先物の価格の推移をグラフで掲載。さらに、先物のグラフ上では、取引を一時中断する「サーキット・ブレーカー」が相次いで発動したことを、発動時間と回数まで細かく示して紹介したのだ。
金利や価格の過度な変動の抑制と安定消化に、神経をすり減らしている財務省が、日銀に対し軽いけん制球を投げたように見えるが、実際は「それ以上に、拳を握りしめるような思いの人もいる」と同省の幹部は明かす。
異次元の金融緩和から2ヵ月余り。折しも、6月は国債の大量償還があり、「20兆円規模の償還資金が出る」(財務省)。その資金は本来、再度、国債への投資に向かうはずだが、思ったような買いが入りにくく、債券市場の動揺は続いている。
一方で、「市場の期待に働きかける」(黒田総裁)ことを狙った株や為替相場は、緩和前の水準にまで一時逆戻りしてしまった。
「市場の期待に働き掛けるという言葉が、中央銀行が市場を思い通りに動かすという意味であるとすれば、そうした市場観、政策観に私は危うさを感じる」
日銀への風当たりが徐々に強まる中で、白川方明前総裁の退任会見でのこの発言が、今になって、黒田総裁をはじめ新執行部のメンバーに、重くのしかかってきている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
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