04. 2013年6月21日 10:27:00
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広木 隆 第1次通告は受け取ったバーナンキのメッセージに敬意を示した米国市場 台風4号の接近で梅雨前線が活発化、広い範囲で雨模様となっている。列島は梅雨まっただ中である。 死は一度 梅には梅のはなが咲き 雨の降る日は天気が悪い (小島ゆかり) この歌を詠んだ歌人の小島ゆかりさんによると、「雨の降る日は天気が悪い」というのは、ことわざだそうで、その意味するところは、「当然のこと、わかりきったこと」。 FOMC後の記者会見で米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、年内に証券購入のペースを緩める可能性があるとしたほか、2014年半ばごろに購入を終了する可能性があるとも述べた。これを受けてNYダウは200ドルを超える下げとなり、ドル円は一時97円をつけるなどドル高円安に振れた。バーナンキ議長の発言が、市場の想定以上にややタカ派的なトーンだったことが意外感をもって受け止められた、とする解説が多い。 米国景気の改善ペース次第で量的緩和の縮小があるというのは、当然のこと、わかりきったことではなかったか。今回、初めて(漠然としたものではあったが)時期について言及したのがサプライズだという指摘もあるが、年内縮小の可能性は市場でさんざん取り沙汰されてきたことだから、「意外」「サプライズ」というのは的外れだろう。 バーナンキ議長は、年後半からの量的緩和縮小はFOMCの「コンセンサス(合意)」だという正式なメッセージを市場に送った。そして市場はそれを受け取ったということを態度で示したのだ。市場は驚いたのではない。当然の反応を示したまでだ。市場では中央銀行や政府のアクションに対して「敬意を示す」ということがよくある。量的緩和を縮小するよ、というメッセージをバーナンキ議長が正式に表明した。それに対して市場が無反応では失礼というものだ。ダウが200ドル超下げ、ドル円が1円、ドル高円安に動く。市場からの返礼である。「第1次通告、確かに受け取りました」と。それが昨日の米国市場のリアクションだと思う。 量的緩和縮小は日本株にとって好材料 東京市場の反応はどうか。日経平均は一時1万3000円割れまで売り込まれる場面があったものの、結局引け値では1万3000円を維持して終えた。今週の株式市場はFOMCを控えて見送り気分が強く、東証1部の売買代金は月曜、火曜と2兆円割れが続いた。日経平均の終値は月曜日が1万3033円、火曜日が1万3007円。日経平均は昨日237円上げて、今日はその分をそっくり吐き出す230円安。終値は1万3014円で、結局、FOMCの前の水準に戻っただけだ。 主力株は比較的堅調でTOPIXコア30の下落率は1.2%。これは日経平均に換算すれば150円安程度。午後に下げ幅を拡大したが午前中はしっかりで一時は前日比プラスになる場面もあったほどだ。 この程度なのだ。NYダウ平均の200ドル安に「敬意を表して」連れ安してみたものの、かたやドル円は97円台だ。売り込んでばかりいられない。そもそも米国景気の回復を前提として量的緩和が縮小されるならば、それはドル高という日本株にとってポジティな材料を提供してくれることにほかならない。日本株がここで売られるほうが不思議なくらいである。 今日の下げは、一応、米国株安(=リスクオフ)に連れ安してみせたのと、5月下旬以来の調整が続いていること(特に5月以降の木曜日が7週連続で下落となっている「暗黒の木曜日」のジンクスが意識されたのかもしれない)に加えて、6月のHSBC製造業PMIが予想以上の落ち込みとなったことなどが絡みあっての下落だろうと思われる。 インドルピーが過去最安値を更新するなど新興国からの資金流出が顕著に意識されてきた。このあたりの「気持ち悪さ」が相場の重石となったようだ。 今後の相場見通し 前回のレポートで、裁定取引や高速高頻度取引が相場の下げを主導しているのではないと述べた。「それなら何が相場下落の要因だと考えるのか自分の見通しを示せ」とのご意見をいただいた。 僕のレポートの読者のなかには、毎回欠かさず継続的にお読み下さっている方も、たくさんおられることは、もちろん認識している。それでも、こうしてインターネットで誰もが読める形式をとっていて、かつマネックス証券に口座をお持ちでない方は、バックナンバーが読めないのだから、僕が過去にどういう見通しを述べてきたかご存じないのだろう。 僕は今回の下げは、一本調子で上がり続けたことに対する自律調整の域を出ないと考えている。 さらにお伝えすると、僕は日経新聞社が主催する「日経平均ダービー」という月末の日経平均の値を予想するという「当てッこゲーム」に駆り出されている関係で、毎月末に翌月末の予想値を出している。先月末に提示した6月末の日経平均の予想は1万3500円である。目先の底値は、概ねつけたと考える。テクニカル面、バリュエーション面などから値幅の調整はじゅうぶんである。しかし、これだけ大きな値幅の調整をすると、しばらく日柄調整に時間がかかるというのが従来からの主張である。 7月に入れば、「参院選後」を意識して再び上昇基調に回帰するものと考える。7月下旬から始まる第1四半期の決算発表も改めて企業業績の改善期待に目を向けさせる要因となるだろう。 バックナンバーをお読みになれない方のために。 僕はFRBによる出口政策の検討が相場にとって最大のリスクと述べてきた。3月4日に書いたレポートである。(『遠慮近憂 - 相場の終わりを意識する 正しいバブルの踊り方』ご参照) 日経平均が1万5000円の大台を超えた翌日5月16日に出演したテレビ東京ニュースモーニングサテライトでもそのリスクを指摘した。この相場で気をつけるべき点を聞かれた僕は、FRBの量的緩和縮小の議論による混乱に注意すべきだと答えている。モーニングサテライトのウェブサイトにその時の動画がアーカイブされているので確認してほしい。(「モーニングサテライト」と検索→特集・企画のタブ→特集→特集アーカイブの下の日付プルダウンを2013年5月に→「5月16日 日経平均 年度内に1万8,000円も」 ) http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/nms/feature/post_41332/ 2013年06月20日 第29回 野村不動産オフィスファンド投資法人の増資について 【J-REIT投資の考え方】 J-REITの価格は、やや落ち着きを取り戻した状況になっています。東証REIT指数は前回の連載時(6月6日)以降、1,300ポイントを挟んだ展開で推移しています。前回の連載で記載した日銀のREIT買入れ枠に関して、6月11日に黒田日銀総裁が2013年末時点の買入れ枠1,400億円には拘らない、というコメントを出しています。ただし、具体的な数値の発表がない点や日銀は6月11日以降も1億円という過去最低水準での買入れ実施を続けているため、相場反転の要因にはならないものと考えられます。当面はアメリカFRBの金融緩和の動向にJ-REIT価格も影響を受ける可能性が高くなっています。 さて今回は、オフィスビルに特化して運用を行う野村不動産オフィスファンド投資法人(証券コード8959、以下NOF)が6月14日の取引時間終了後に公表した増資(以下、今回の増資、という)について記載して行きます。NOFの株価は、増資公表後に急落し6月18日には年初来安値となる425,000円を付ける局面(同日終値は429,500円)もありました。増資公表前1週間(6月10日から6月14日)の終値平均値は503,600円でしたので15%を超える下落になっています。株価から見て、NOFの今回の増資は、投資家に不評であったと言えるでしょう。 投資家に不評となった最大の要因は、1口あたり分配金を大幅に減少させる増資であったためと考えられます。NOFは5月1日に第20期(2013年10月期)の1口あたり予想分配金を11,300円と公表していました。しかし増資後に修正した第20期の1口あたり予想分配金は11%減少の10,000円としています(図表)。さらに第20期10,000円の予想分配金は、5月1日に公表した業績予想には含まれていなかった物件売却益の内部留保を取り崩す前提としています。修正後の業績予想では内部留保1億5600万円を取り崩すとしています(※1)ので、1口あたり418円程度が上乗せされて1口あたり10,000円の予想となっているのです。なお、同時に公表した第21期(2014年4月期)の1口あたり予想分配金10,000円も物件売却益の内部留保を取り崩す前提としています。 このように大幅に分配金が減少する最大の要因は、物件取得額を大幅に上回る資金調達を行う増資(以下、オーバーエクイティ、という)になるためです。具体的には、取得予定3物件の合計112億円強(取得諸経費を含む)に対し350億円弱を調達(※2)する予定としています。これにより、差額の230億円弱を借入金返済に充てることで借入金比率が低下します。 ただし、今回の増資に違和感を持つ投資家が多いものと考えられます。その理由は、NOFは資産規模が3,700億円を超えているため、112億円程度の物件取得は借入金で充分調達できると考えられるためです。J-REITが増資によって借入金比率を引き下げることは珍しい事例ではありませんが、オーバーエクイティは希有な事例です。オーバーエクイティを行った直近の事例としては、日本ビルファンド投資法人(証券コード8951、以下NBF)の2013年1月の増資が挙げられます。ただし、NBFは増資公表後の2月下旬に大型物件の取得を公表することで、実質的にオーバーエクイティを解消しています。この事例を参考にすればNOFが今後、大型物件の取得を行うことが考えられます。増資により資金的な余裕を持ち、交渉中の大型物件取得に目処を付けるという戦略です。そうなれば、NOFの分配金は、一定の回復も期待できそうです。 一方で、NOFは第18期(2012年10月期)末時点で含み損が418億円強も発生しています。第18期の含み損を考慮した借入金比率は50%(※3)を超えていたため、物件取得を借入金で行うことが難しい状態になっていたとも考えられます。NOFは、増資の理由として「取得余力の創出を図るため」(※2)と記載していますので一定規模の物件取得の可能性はありそうですが、この場合には、前述の大型物件取得は期待できないことになります。 ※1:NOFが6月14日に公表した「平成25年10月期運用状況の予想の修正及び平成26年4月期運用状況の予想に関するお知らせ」に拠る。 ※2:NOFが6月14日に公表した「新投資口発行及び投資口売出しに関するお知らせ」に拠る。なお調達金額の前提としている株価は518,600円となっている。 ※3:算出式=(総資産397,375百万円―含み損41,883百万)÷有利子負債182,650百万円 コラム執筆:アイビー総研株式会社 関 大介 http://lounge.monex.co.jp/pro/special1/2013/06/20.html 第278回 「ツートップ」の強さ 第276回「長い上ヒゲに勝てるのは長い下ヒゲ」と題し、5月の長い上ヒゲに対抗できる買いサインは「長い下ヒゲ」です、と強調しましたが、6月は現在のところ5月とは対照的に長い下ヒゲとなる可能性が高まってきています。6月の終値が確定するまで、あと1週間程度あるわけですが、13,000円台後半ぐらいまで戻しますと、7月以降は悪くてもモミ合い? 下ブレ懸念は当面薄れるような気がします。日経平均の月足の一目均衡表では転換線が9月に向けて13,000円ぐらいに上昇、順調ならば12月には14,000円ぐらいまで上昇しますので、そこらを中心にモミ合いが続くイメージを持ちます。ただ、5月の売買代金が75兆円できたことを考えると、モミ合いから年内のうちに上ブレといったイメージは、現時点では頭の中に薄っすらとしか持てません。 さて、6/14現在の3市場の信用残高は前週に比べ777億円増加し、再び3兆円台を回復しました。信用倍率(買い残÷売り残)は7倍台に乗せ、約13年ぶりの高水準。買い意欲旺盛はポジティブな側面ではありますが、経験則では買い残の増加は高値から最初の調整局面で増えやすいのです。買い残の多い銘柄ほど戻り圧力が強めに出る可能性があるため、全体がリバウンドするならば、買い残の増えていない、むしろ減少した銘柄を選別する必要があるかもしれません。 例えば、今期増益予想、買い残が6/14時点で前週比10%以上減少した、信用倍率4倍未満、テクニカル面では日経平均が直近安値でサポートになった「100日移動平均線」が上昇トレンドにある銘柄(6/18現在)を基準にしました。その基準に当てはまり、25日移動平均線を下回っている銘柄から、キャンドゥ(2698)、KOA(6999)、クリエイトSDH(3148)、浜ゴム(5101)、シスメックス(6869)、旭ダイヤ(6140)、カワチ薬品(2664)、小森(6349)など。逆に、25日移動平均線を上回っている銘柄から、前田道(1883)、東鉄工(1835)、日立国際(6756)、積水ハウス(1928)、マキタ(6586)、東芝プラ(1983)、タダノ(6395)、イエローハット(9882)、良品計画(7453)などを選んでみました。6/18現在ですが、参考にしてください。やはり、25日移動平均線を上回る、前田道と東鉄工の"ツートップ"はチャートがいいですね。 6/19付け日経新聞によると、NTTドコモ(9437)が取り扱うスマホ、ソニーの「エクスペリアA」が発売後約1ヶ月の販売台数で64万台を超えたそうです。ドコモのスマホとしては過去最高のペース。サムスン電子の「ギャラクシーS4」も好調だということですから、このドコモの"ツートップ"効果が株価にどんな影響を及ぼすのか。米国市場では、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)がいち早く高値更新です。リーマン・ショック直後の戻り高値6,800円を5月に少し上回り、短期的な調整局面にあるディスコ(6146)に注目です。 東野幸利 株式会社DZHフィナンシャルリサーチ 前の記事:第277回 幅の調整の後は時間の調整へ −2013年06月13日 http://lounge.monex.co.jp/pro/tandcfr/2013/06/20.html
村上尚己 ドル高円安への回帰〜バーナンキ議長の自信〜
昨晩(6月19日)判明したFOMC声明文では、下振れリスクが小さくなっていると経済環境へのポジティブな評価が示され、そしてバーナンキ議長は「2014年半ばにかけて債券購入規模を縮小させる」という見通しを明言した。 もちろん、バーナンキ議長が示した量的緩和縮小は、2%を上回る成長そして雇用回復が続くというFRBの想定どおりの経済状況が続けば、という前提がついている。今後の経済情勢次第で、債券購入規模を縮小、あるいは再び拡大させる、というスタンスは声明文でも引き続き明示されている。 6月18日レポートで、量的金融緩和縮小について議長は具体的に予見せずに、「経済指標次第」であることだけ言及するのではないかと、の筆者の見通しをお伝えした。この筆者の予想は外れ、バーナンキ議長は、現在の経済環境が続くことを前提に、債券購入(量的金融緩和策)を段階的に縮小させるプランを明示した。 最近のインフレ率低下(海外経済の停滞が一因)、製造業の景況感悪化などから、景気回復が続くとしても、無視できない景気減速リスクがあり、「緩和縮小」のスケジュールを明示するメリットは小さい、と筆者は判断した。バーナンキ議長が、昨晩この点にはっきり言及したのは、国内経済回復の持続性について、より強い自信があるということだろう。 あるいは、市場では、量的金融緩和縮小を巡る様々な観測が入り乱れていた。先週から、米国金利とドル円の動きが乖離していたが(6月14日レポート)、FRBの政策に対する不確実性の高まりがもたらしていた面があった。量的緩和縮小の見通し、そしてそれが何を意味するかを明示して、市場が抱く不確実性を小さくするメリットがあると判断したのかもしれない。先週から度々ちぐはぐな動きを示していた、米債券、為替市場において、米金利上昇、ドル高と両市場の方向が一致する格好で反応した(グラフ参照)。 一方バーナンキ議長は、量的金融緩和の「規模縮小」の見通しを示すと同時に、この政策自体は、経済成長やインフレを抑制する「引締め政策」ではない点を強調した(FRBのバランスシートは増え続ける)。今回同時に示された、FOMCメンバーの政策金利見通しをみると、2015年時点の政策金利の想定は若干高まった(景気判断が楽観的なことと整合的)が、来年2014年中は政策金利をほぼゼロに据え置く、「マイナス実質金利」を続けることを示した。 FRBが目指す、完全雇用である失業率(5〜6%)はまだまだ先で、景気刺激効果をもたらす、「緩和的な」実質金利を保ち続け、経済成長を促すスタンスは続けるということである。 4―6月のGDPは緊縮財政の影響で停滞するが、7月以降の雇用や景気指標が堅調な回復を示せば(その可能性は高いと考えている)、バーナンキ議長が本日示したように9、10月のFOMCにおいて、債券買取規模の縮小が決定されるだろう。 今後、FRBの金融緩和縮小が意識される一方、日本銀行による大規模な量的金融緩和は2014年中も続くことになる。5月半ばからドル円相場は荒っぽい展開が続いているが、米日の金融政策の相違を反映する格好で、秋口にかけて再び1ドル100円を超える円安が進むと予想する。 村上尚己著「不透明なインフレ経済を見通す 新しいお金のルール」中経出版より発売中! http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/er/economic.htm |