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年収差は40代で、2倍以上になる −正社員vs非正規「一生に貰えるお金」全比較 (PRESIDENT) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/496.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 18 日 12:00:00: igsppGRN/E9PQ
 

              図1 年収/図2 生涯賃金


年収差は40代で、2倍以上になる −正社員vs非正規「一生に貰えるお金」全比較
http://president.jp/articles/-/9742
PRESIDENT 2013年3月4日号 大塚常好(プレジデント編集部)=文


同じ正社員でも生涯賃金に大きな差が! その鍵は、福利厚生と手当と退職金だった。就活大学生も必読のセキララお金調査。

3人に1人――。派遣社員や契約社員、パート・アルバイトなど非正規の雇用者の割合は1990年代から増加を始め、現在35%台にまで達している。

5000万人余りの全雇用者のうち、3000万人余りが正社員、残り2000万人弱が非正規で、正社員が減り非正規が増える構図は今後も変わりそうもない。肝いりのアベノミクスでも、その傾向に歯止めをかけるのは簡単ではない。

その正社員と非正規社員という雇用形態の違いによって、「一生に貰えるお金」にどれほどの差が出るのだろうか。

まずは年収だ。厚生労働省「賃金事情等総合調査」をもとに世代ごとの月収と賞与を合算し、正社員と非正規の年収(男性)を算出した(図1)。

http://img.asyura2.com/us/bigdata/up1/source/14481.jpg

「20代は両者にそれほど収入の差はないですが、30代以降、その差が急拡大します。30代以降、非正規の収入の伸びが鈍化するのがその理由です。契約社員の場合、正社員と仕事量が変わらないことが多いので、その収入差に雇用形態の重要性を思い知ることになります」


図3 福利厚生/図4 実際、みんないくらもらっているか?
http://img.asyura2.com/us/bigdata/up1/source/14482.jpg

とは社会保険労務士でFPの井戸美枝氏である。全世代の平均年収は正社員510万円、非正規290万円だが、40代でその格差は2倍以上にも広がる。

そして勤続38年間として単純計算した生涯賃金は非正規が約1億円なのに対し、正社員は1億9000万円となった。別のデータ(図2)では大卒正社員のそれは平均2億5000万円、社員1000人以上の企業なら3億円弱と、非正規の最大3倍となることがわかった。

給料以外にも、格差をより大きくする要因がある。それは、福利厚生費だ。

案外よく知られていないが、正社員に対して企業は福利厚生費を月平均10万円以上も払っている(図4/日本経団連調査)。8万円近くにもなる健康保険や厚生年金保険など社会保険の会社負担分の「法定福利費」に加え、社宅・寮の費用や賃貸住宅の家賃補助などの住宅関連の費用や、医療・健康関連(健康診断など)財産形成(財形貯蓄制度や社内預金制度)、保険・生活用品の割引販売といった各社ごとの「法定外福利費」が計2万5000円を超える。これがやはり勤続38年間で総計約4700万円にもなる計算だ。

■正社員の福利厚生費は毎月10万円以上!

図5 「生活関連手当」の多い業種
http://img.asyura2.com/us/bigdata/up1/source/14483.jpg

「法定福利は直接現金として貰っているわけではないので正社員も実感しづらいですが、非正規社員は一定の条件を満たさないと厚生年金保険などに加入できないことが多いことを考えれば大変メリットの大きい制度といえます。一方、法定外福利は、非正規社員の場合は一部を除いて貰えません。最近はやや減額の傾向にありますが、給料のほかに定期的に貰えるものなので正社員にとってもお得感が非常に大きいですね」(井戸氏)

とりわけ大企業の正社員が加入する健康保険組合などは、入院・手術により医療費の自己負担額が2万円を超えるようなケースで、その超えた分を払ってくれることがある。つまり万が一のとき、安上がりですむということなのだ。

また、差額ベッド代や傷病手当金、出産手当金などに対する上乗せなど、さまざまな付加給付があることも。さらに正社員の互助会や福祉会からも別途給付金を受けられるケースが少なくないのだ。


図6 退職金/図7 年金
http://img.asyura2.com/us/bigdata/up1/source/14484.jpg

これらのほかにも職務手当や技能手当、生活関連手当などがつく企業も多い。調べてみると、例えば生活関連手当(家族手当、通勤手当など)の全産業の平均は約2万円。業種別では「新聞・放送」「電力」のそれは実に4万円以上であることがわかった(図5)。こうした手厚い手当は非正規では望むことはできない。

さらに退職金も非正規には基本的にはない。会社の規模によるが大卒の正社員は平均で2600万円貰っている(図6)。「最近、運用次第で受給額が変わる確定拠出年金(日本版401k)に正社員が掛け金を上乗せできるマッチング拠出を導入する企業が急増しています。これは節税効果が大きいんです」(井戸氏)。

老後にも正社員と非正規の差は如実に表れる(図7)。非正規は年収が低い分、年金も低くなる。井戸氏が標準的な月給を基に20年間分の年金を受給したとして試算したところ、厚生年金に未加入(国民年金のみ)の非正規は正社員の4割程度の年金額になることがわかった。

各データの出典など/(1)「年収」、(2)「生涯賃金」(非正規分)、(5)「生活関連手当」、(6)「退職金」、は厚生労働省「平成23年賃金事情等総合調査」のデータを基に編集部作成。(2)「生涯賃金」(正規分)は独立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2012』より。(7)「年金」はFP井戸美枝氏による試算(「正規」は平均月収48万円がモデル。基礎年金78万6,500円+厚生年金の合計119万9,700円=198万6,200円×20年。「非正規」は平均月収20万円がモデル。厚生年金加入の場合、基礎年金+厚生年金の合計128万6,400円×20年。厚生年金未加入の場合は、基礎年金のみ)。(3)「福利厚生費」は日本経済団体連合会「2011年度福利厚生費調査結果」のデータを基に編集部作成。月々の福利厚生費10万3,298 円×12カ月× 大卒から60歳定年までの38年間の合計額。


 

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コメント
 
01. 2013年6月18日 12:14:26 : nJF6kGWndY

同一労働(同一責任)、同一賃金を目指すのは間違いではないが

ただ、平均値で細かい数字を比較しても意味はないだろう

地域(東京と沖縄)、職種(介護、外食と金融・・)、働き方で、正社員間や非正社員間の格差も大きい


02. 2013年6月18日 12:28:23 : e9xeV93vFQ
人生の「決算」は、3億円台と1億円台 −正社員vs非正規「一生に貰えるお金」全比較【2】
2013年6月18日
PRESIDENT 2013年3月4日号 掲載
同じ正社員でも生涯賃金に大きな差が! その鍵は、福利厚生と手当と退職金だった。就活大学生も必読のセキララお金調査。
前回の比較を総合すると正社員と非正規が働き始めてから死ぬまでに稼ぎ・貰える額の合計は片や3億円台、片や1億円台。どんなに少なく見積もっても、おおよそ2億円の差が生まれる。
収入や保障の面で恵まれている正社員とはいえ、もちろん気楽な稼業ではない。仕事の責任は重く、長時間労働を強いられ、転勤で単身赴任させられ、陰湿な社内イジメや半ば強制的なリストラが横行する……といったことも起こる。仕事も上司も部下も自分では選べない。自分のやりたくない業務であることのほうが多いのだ。それでいて業績への貢献度でシビアに評価され、賞与が目減りすることは珍しくない。加えて最近は、低待遇な「名ばかり正社員」も増えている。
しかし、それでも「正社員でいる」ことの重要性は今後さらに高まるにちがいないと語るのはFPの山崎俊輔氏である。
「正社員の座を維持することは人生設計上とても大事です。スキルを絶えず磨き、社内外で通用する人材であることが正社員の座を揺るぎないものにします」
そうして正社員を全うすることで貰える退職金のありがたみはかなり大きい、と山崎氏は続ける。
「30〜50代は出費がかさみ、老後資金を蓄えることは優先順位が低くなります。その結果、貯金ができなくても退職金があればとても助かるはずです。また、年金支給開始が65歳以上となる関係で60歳以上も働ける環境を整える企業が増えていますが、正社員はそのまま継続雇用される可能性が高い。仮に年収250万円程度に減っても無収入の人に比べ65歳以降の生活が楽になります」
前出・井戸氏は大学生のキャリア相談をしているが、入社3年以内にあっさり会社(正社員)を辞める若者が多いことに、こう苦言を呈する。
「やりたい仕事ではない、自分の将来像が描けない、と言って3年未満で辞めた人を採用する企業はほとんどありません。つまり、せっかく厳しい就活を勝ち抜き正社員になったにもかかわらず、その後は非正規という雇用形態で働き続けることになるかもしれない。それは生涯で2億円以上の損をするかもしれないということを強く認識すべきです」
一方、稼ぎの面では不利な立場にある非正規の人はどうすべきだろうか。非正規は正社員に比べてその働き方にメリットもある。まず自分の好きな、もしくは自分に向いている仕事を選択することができ、定年退職などとは関係なく長く働き続けられる。50代以上になってリストラされ「使い捨て」される正社員も少なくないなかで、常にアンテナを張り経験を積めば独立・起業も視野に入れることができる。またそれが成功すれば収入面でも正社員を大逆転する可能性もある。
「そもそも収入が多くても幸せとは限りません。高収入の正社員世帯でも浪費癖で家計がボロボロの場合も多いですからね。非正規の世帯では節約と貯蓄を心がけ、その働き方に見合ったレベルの生活を構築することができれば幸せな生活を送ることは十分可能です」(山崎氏)
もちろん正社員への道を模索し続けることも重要だと山崎氏は言う。そして、人生のマネープランのひとつとして、「現在契約や派遣として働く職場で正社員の伴侶を見つける努力もすべきですね。共稼ぎは経済的安定として重要です。仕事は辞めずにしっかり稼ぎ続ければ教育費負担、住宅購入、老後準備も乗り越えられるはずです」(山崎氏)。
逆に言えば、非正規の独身者で将来、親の住む家を貰えるアテがないなら、マネープランも若いうちから綿密に組まないと老後が苦しくなる。
既婚男性が「一生に貰えるお金」をより多くしようと考えた場合、正社員と非正規の両方に共通して言えるのが、妻の収入を増やすようにすることだ。
「夫婦ともに正社員の世帯のメリットは、ダブルインカムだけでなく、双方に退職金があることです」(山崎氏)
「共稼ぎ夫婦でいずれも非正規雇用という世帯でも、正社員の夫と専業主婦の妻の世帯よりも世帯収入が多いこともありますからね」(井戸氏)
夫が正社員で妻が専業主婦の場合も、「妻が年収100万円の仕事を10年間するだけで、その1000万円の蓄えが老後(20年間だとして)に年金プラス月々約4万円のゆとりになる」(山崎氏)。
井戸氏の試算によれば、妻が130万円以上稼ぐと妻の社会保険料の支払いが開始され、夫と合わせた世帯の手取額は減少するケースがある(図8、9)。妻の収入が増えると配偶者特別控除が段階的に減るなどして夫の負担が高まり、せっかく妻が働いたのに損することもあるのだが、「妻がたくさん働けば老後に妻自身が受け取る年金額も増え、夫婦で一生に貰えるお金は多くなります」(井戸氏)。
各データの出典など/(9)「妻の収入で夫婦の手取額」は井戸氏による東京23区における試算(概算)。健康保険は協会けんぽ(東京都)で夫婦ともに40歳未満という設定。
(大塚常好(プレジデント編集部)=文)

03. 2013年7月09日 12:47:52 : niiL5nr8dQ
年収200〜400万円の"新中間層"が生きる道
藤原和博(その5)
渡邉 正裕:My News Japan編集長2012年12月10日
過去10年、日本の仕事をめぐる状況は様変わりした。
『10年後に食える仕事 食えない仕事』。仕事の未来をマトリックスで4分類している。
インド、中国では毎年数百万人単位でハングリーな大卒者が誕生。また、ネット・通信環境が大きく改善したことで、定型業務やIT開発を新興国へアウトソーシングできるようになった。仕事の枠を日本人同士で争っていればよい、という時代は終わった。さらに、人口減少に伴う国内マーケットの縮小も追い打ちをかけている。
これから日本の仕事はどう変わるのか? 10年後にも食えるのはどんな仕事なのか。当連載では、ベストセラー『10年後に食える仕事 食えない仕事』の著者であるジャーナリストの渡邉正裕氏が、"仕事のプロ"たちとともに、仕事の未来像を探っていく。

(司会・構成:佐々木紀彦)

【対談(その4)はこちら】

――前回の対談では、「大学と宗教が日本ではうまく機能していない」という議論から始まり、後半では、「これから“準公務員”という仕事が生まれてくる」という話になりました。今回は、“準公務員”に代表される、新中間層のキャリア設計について話を進めていきたいと思います。

渡邉:藤原さんの話では、これから若者の多くは、準公務員的な仕事に就くことになるということでした。ただ、今はそうした制度がないので、難しいですよね。当面、若者はどんなキャリアを追求することになりますか。

藤原:まず、一部の人たちは、「自分は絶対、人の100倍努力してグローバルで成功し、年収を今の10倍から100倍に持って行く」という方向に進むと思う。たとえば、オリンピックのアスリートを目指す人もいるわけじゃないですか。そういう人は、スポーツやビジネスの世界に限らず、あらゆる分野で増えてきているんではないかな。

渡邉:増えていますかね?

藤原:増えていると思うよ。サッカーで言うと、私が小学生のとき、世界レベルで活躍していたのは釜本邦茂だけだった。それが今では、海外組が20人以上になっている。日本代表メンバーも、海外で活躍している選手ばかりになったでしょう。これはすごいと思うんですよ。

ほかにも、欧州が源流のクラシックバレエやピアノやバイオリンでも、日本人がマスターになったり、グランプリを取ったりしているでしょ。そこにはちゃんとおカネも落ちている。だから実は、ものすごく多様化した中で、世界に出て行っている人たちは多いんですよ。僕らが気づいていないだけで。

ただ、問題になるのは、普通にサラリーマンをやっている人たちだよね。渡邉さん流に言えば、その人たちは、どこにジャパンプレミアム(日本人ならではの価値、差別化)を見つけるかということです。

渡邉:そうです。実際、半導体の技術者や、薄型テレビを作っている人たちは、日本で仕事をしていても、韓国には全然勝てません。これまで1万時間以上かけて半導体一筋でやってきた人は結構悲惨です。希望退職を強いられて、40歳ぐらいで仕事がなくなっている人はいっぱいいます。ほかの分野でも、こういうふうに転落していく人がどんどん増えて行くわけですよ。

藤原:時代の流れに気づくか気づかないかは、もっぱらその人たちの責任だと思う。渡邉さんは、そういう人まで救おうという気持ちを持っているのかもしれないけれど、それは難しいんではないかな。

渡邉:ただ、そういう人が生活保護に頼らざるをえなくなると、税金の負担が増えてしまいます。だから、結局はみんなで支えないといけない。犯罪と一緒で、国全体として何とかしないといけないわけですよ。

藤原:なるほど、そうか。国家の安全保障問題だと。

渡邉:その人の子どもまで被害者になるっていう話になってくるので。

――では、そういう人はどうすればいいのでしょうか。

藤原:中国に行ってもダメでしょ?

渡邉:ダメですね。サムスンに雇用されて出稼ぎにいくというケースは増えていて、僕も何人かに取材しています。ただ、それは突出した技術がある人だけであって、普通の中間管理職の人は厳しい。

藤原:工場の配置から、何から何まで決められるような人は、どこに行っても強そうだよね。現地語が話せなくても、ナレッジがあればいいわけだから。


藤原和博(ふじはら・かずひろ)
杉並区立和田中学校・前校長 
東京学芸大学客員教授
1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長 などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長 を務める。08〜11年、橋下大阪府知事ならびに府教委の教育政策特別顧問。著書に、人生の教科書シリーズ、『リクルートという奇跡』『つなげる力』等。最新刊の『坂の上の坂』が10万部を超すベストセラーに。
渡邉:そういう人は、サムスンに雇われるからいいんですよ。

藤原:そうではない非常に中途半端な人の話ですね。

渡邉:高卒でライン労働者をずっと工場でやってきた人とか。

藤原:でしょう。だから、そういう人は第3回目で話した「災害救助予備隊」に入ればいい。

渡邉:40歳で「災害救助予備隊」ですか(笑)。確かに、みんな準公務員にしてしまうしか選択肢はないかもしれません。ただ、そうした人は、経済的な付加価値を生みませんよね。

藤原:でも、北欧はすでに半分以上が公務員でしょう。準公務員まで含めたら、6〜7割まで行くんじゃないかな。

渡邉:それは税金が高いからできる話ですよ。

藤原:日本でも、今の流れだと、そうなっていくでしょうね。それが嫌なら、移民を数千万人から1億人ぐらい入れる覚悟が必要になると思う。

渡邉:現在、重力の世界(グローバル競争を強いられる、技能集約的な分野の仕事:詳細は第1回)の人たちは、50歳くらいになると、最後の拠り所が警備員やタクシードライバーぐらいしかありません。こうした仕事は、特段のスキルはいらないので、欧米では移民の人がやっています。もし日本に移民が入ってくると、重力の世界の人は、ますます仕事にありつけなくなってしまう。

藤原:だから、移民でも年収50万〜100万円しか稼げないでしょうね。

渡邉:50万円で働かせるわけですか。その年収では日本で生活できませんよね。

藤原:だから、寮はきちんと準備しなきゃ。その代わりに、本来であれば、250万円払うべき年収を、100万円に抑えると。

渡邉:そうすると、会社の経営者がますます儲かるだけのような気がしますけど。

やっぱり移民は難しいですよ。移民を入れると、ますます失業率が上がって、ひどい国になってしまう可能性があります。そうすると、やっぱり「災害救助予備隊」かな、とも思いますが、この人たちは、付加価値を生まず、納税者になりえないという問題があります。

藤原:でも、目下の時点でアップルもグーグルも生み出せていない日本ですからね。

渡邉:そう。日本には雇用をつくる人がほとんどいないんですよ。

――コミュニティのために頑張る人たちが、雇用をたくさん生み出すというシナリオは考えられませんか?

渡邉:そうなればいいですけど、そうした仕事が社会の中でメジャーになるとは、到底思えない。そういう仕事は「社会に貢献する」という強い動機がないと絶対できない。でも、ほとんどの人はそこまで強い貢献動機を持っていないと思う。

藤原:20年くらいのタームで考えると、親世代から子世代への土地の移転が起こって、住宅を相続で引き継げる人が増える。そうして住居費がぐっと下がると、年収200万〜400万円ぐらいの人たちが中間層と呼ばれるようになると思う。今は中間層というと、年収400万〜800万円くらいのイメージだけど、それが変質していくんですよ。

では、その人たちが不幸せかといえば、そうでもない。

米国にも1億人くらい低所得者層がいて、ヒスパニック系で、英語がほとんどできない人もたくさんいる。その人たちが、幸せでないかというと、そうでもなくて、階層を変わりたいかというと、そうともいえない。コミュニティで楽しくやっている人も多いわけです。

だから、ちょっと言い方が悪いかもしれないけれど、日本にもすでに、米国におけるスパニッシュなコミュニティに似たものが出てきていると考えられませんか。

渡邉:スパニッシュの出生率は高いですし、変質した中間層は、ちゃんと子どもを産むかもしれません。

藤原:もし住宅が供給されて、それがある程度広くて、そんなにおカネがかからないようになればね。本当は次に政府がやるべきは、高校の無償化ではなくて、小中学校の無償化なんですよ。ただ、それにはすごくおカネがかかる。

小中学校の場合、月に教材料が約5000円、給食費が約5000円かかっている。だから、月に1万円、年間で12万円くらい、小中学校の9年間を通じて私費がかかっているんですよ。これを放っておいて、高校を無償化するのは、本当はおかしい話なんだけど、義務教育費の無償化は莫大なおカネがかかるので、民主党はできなかった。

渡邉:年収200万、300万円の人同士で結婚して、世帯年収が500万くらいあって、教育費がもうちょっと下がれば、確かに暮らしていけそうですね。

藤原:住居費が下がった前提で教育費が下がればね。

渡邉:ただ、みんなが大学に行く今の時代に、教育費がそんなに下がりますかね。一人の子どもを大学まで出すのに、1000万〜2000万円かかると言われますし。

藤原:はっきり言えば、今の大学の半分はいらない。実際、今の大学生の半分は、大学生になってはいけない人たちであって、本当は職業訓練をやるべきなんですよ。今の大学が生き残るためには、半分は職業訓練校になる必要がある。

あと10年くらいすると、「普通高校からどうでもいい大学に行っても何もない」ということが常識になると思うんです。そして、頭のいい子の中から、「高校・大学まで行って、嫌いな英語や数学をなぜ学ぶ必要があるんだ。そんなムダな時間を使うよりも、徹底的に好きな技術を身に付けてやる」という例が出てくるんじゃないかな。

技術は、漆の技術でも、和船の製造技術でも何でもいいんですよ。頭が悪くて、しょうがなく職業訓練校、工業高校に行くというのではなく、頭がいいからこそ、人と違う道を選んで、20年後に一発逆転しようという子が出てくるのではないかと。

アメリカには、高度にネットを使えるギーク(日本で言うオタク)がいっぱいいて、学歴にかかわらず仕事をしているでしょ。 日本では、そういう子が本当に少ない。だから、日本の伝統技術を誰が引き継いでいるかというと、ほとんど外国人ですよね。カナダ人やスウェーデン人はそういうのが大好きだから。

渡邉:その話は面白い。確かにそうですね。やっぱり「普通の大学に行って卒業しても食えない」ということが、世間に浸透しないとダメですね。

藤原:まだ今は、ごまかせてしまっているの。 そういう意味では、秋田の国際教養大学の中嶋嶺雄学長はすばらしくて、英語教育を徹底的にやっていますよね。一流企業が「御校の学生をぜひ採用させてください」と拝み倒しに行くぐらいで、就職率は100%。この国際教養大学と、国際基督教大学(ICU)、金沢工業大学の3校は、就職率がよいということで、突出して有名なんですよ。

これから、就職率の悪い大学はどんどん淘汰されると思う。親側には、まだしばらくの間は、「大学ぐらい出てほしい」という感覚が残るだろうけど、子どものほうは、頭を軟らかく教育すれば、「あんな大学に行って何の得があるの」という感じになると思うけど。

ただし、サラリーマンを目指して名も知れない大学に行った奴よりも、中学卒業後に職人の道を選んだ奴が、20年後に大逆転するというケースは、まだ出てきてないんですよね。

渡邉:成功モデルが欲しいですね。

藤原:欲しい。10年後ぐらいには出てくると思うな。出てこさせないとダメでしょ。

――渡邉さんは、実家が築地のマグロ問屋ですけど、サラリーマン以外の道を、中学校卒業時点で選ぶことにリアリティはありますか。

渡邉:マグロ問屋は全然儲からないんですよ。回転ずしチェーンは仲卸を通さずに、直接、船ごと一船買いをしてしまう。規制緩和で、仲卸を通さなくてもよくなってから、会社はほとんど利益が出ない体制になってしまった。今は、銀座の高級すし店などに細々と取引している程度だから、僕は実家を継がなくてよかったんです。


うちの会社はまだましなほうですけど、築地のマグロ屋の7割は赤字だと言われていて、豊洲への移転が決まったら、ほとんどが廃業するはずです。

結局、職人の道を選んだとしても、構造改革で、産業構造が変わっていくわけじゃないですか。そうすると、親の仕事を継ごうと思って10代からそういう世界に入ってしまうと、20年後にはその仕事自体がなくなってしまって、修行の1万時間が無駄になってしまう可能性は十分あるんですよ。そういうキャリアショックみたいなものは、たぶんどこの世界でもあると思う。

藤原:確かにそうですね。

渡邉:だから、「自分の仕事を中学生のときに決めろ」というのは結構酷な気がします。子どもには、その判断能力がないですから。

藤原:やっぱり頭を軟らかくして、仕事を乗り換えていく発想が必要になる。「どの仕事が正解なの」という感じで、選ばせてしまったらダメだよね。

渡邉:そうですね。うちの親父は、マグロのセリ人として大成功したわけですが、それは時代がよかったからですよ。

藤原:間に合ったのね。

渡邉:間に合ったんですよ。運がよかったんです。だからもし、もうちょっと早く構造改革が来ていたら、たとえば僕が大学生のときに来ていたら、僕は大学を辞めないといけなかったかもしれない。だから、あの世界は運ですよね。

藤原:それを言ったら、ボクだってリクルートに入ったのは運だしね。

渡邉:だから柔軟性と運が大事。

藤原:運と勘は絶対いる。でも柔軟性というか、頭の軟らかさも絶対いると思う。これだけ変化が激しい時代だから。

20年前には、水をおカネを出してペットボトルから飲む時代になるとは、誰も考えなかったと思うんですよ。 日本は、水がおいしくて、水道の水と安全はタダだと思っていたわけだから。それが今では、水も安全もどちらもすごく高いものになってしまった。同じように、iPhoneなんてものは誰も想像できなかった。これだけ多くの機能が、この薄さに詰まってしまうなんて。

それぐらい変化の激しい時代だから、ものすごくチャンスがある一方で、「これをやっていれば安全だ」というものがない。ということは結局、頭を軟らかくする以外に王道はないんです。

(撮影:梅谷秀司)


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