04. 2013年6月18日 06:56:05
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【第282回】 2013年6月18日 真壁昭夫 [信州大学教授] あっという間に異次元金融緩和の効果が台無しに “大荒れドル円相場”がこれほどの悪循環に陥った真相 相場展開に頭を抱える者が続出 いつになく値動きが激しいドル円相場 足もとの株式や為替などの金融市場が不安定な展開になっている。特に、為替市場のドル円レートは、大きな材料がないときでも値動きが激しくなっている。しかも、値動きの要因がわかりにくく、従来の理屈が通用しない展開になっている。為替市場関係者の中でも、難しい相場展開に頭を抱える者もあるほどだ。 昨年から今までのドル・円相場の展開を振り返ると、昨年9月まで1ドル=70円台後半で推移していたドル・円レートは、その後、米国経済の回復期待が盛り上がったこともあり、徐々に円安方向に進み、4月上旬には1ドル94円程度になっていた。 そこに4月4日、日銀の“異次元の金融緩和策”が発表された。それは、ドル・円の為替レートに決定的な要素として作用した。日銀がそれまでの常識を覆す大規模な資金供給を行うことによって、円安が加速されるとの思惑が台頭したからだ。 ヘッジファンドや為替ディーラーなどは、発表直後から多額の円売り・ドル買い注文を市場に出し、ドル高・円安の傾向が一挙に進むことになった。その勢いは5月22日まで続き、ドル・円レートは103円台まで進んだ。 ところが5月23日、前日の米国におけるバーナンキFRB議長の金融緩和策の出口に関する発言もあり、ヘッジファンドなどは積み上げてきたドル買い・円売りの利益を確定する巻き戻しのオペレーションを出した。 その結果、株価やドル・円レートは大きく反転した。それ以降、株式も為替も値動きが荒く、明確な方向感の見えない不安定な推移が続いている。足もとの金融市場の動向を解き明かす鍵は、ヘッジファンドなど投機筋の動きにあるだろう。 昨年の春先以降、ヘッジファンドの一部やディーラーなどは、わが国の貿易収支の赤字拡大や米国経済の回復期待を材料にして、ドル買い・円売りの持ち高を積み上げ始めていた。そうしたオペレーションは水面下で続き、秋口以降、為替市場では徐々にドル高・円安傾向が定着し始めた。 そして今年4月4日、投機筋にとってまたとない収益チャンスが到来した。日銀の“異次元の金融緩和策”が発表されたからだ。金融緩和策の主な内容は、日銀がベースマネーの量を向こう2年間で約2倍まで増加させ、消費者物価指数を2%まで引き上げるというものだった。それらが本当に実現されると、どう考えても円安になると考えられる。 それに加えて、米国経済の回復期待も少しずつ実現可能性が高まった。それらの要素を考え合わせると、短期的にはドル高・円安の方向性は疑いの余地はないように見えた。それに目をつけたのは、それまであまりドル・円の為替に手を出していなかったヘッジファンドだったと言われている。 ドル買い・円売りと日本株の先物買い 円安傾向を演出したヘッジファンド 彼らは迷うことなく、大挙してドル買い・円売りに走った。結果的に、5月23日までのドル高・円安傾向を演出したのは主に彼らだった。彼らは、通常では考えられないようなペースでドル買い・円売りと日本株の先物買いのオペレーションを行った。 その結果、ドル・円相場は、それまでの94円台から一時103円台まで変動した。同時期、日経平均株価は約30%の上昇率を記録することになった。いわば“短期バブル”の様相だった。 しかし、バブルはいつまでも続かない。5月23日、FRBのバーナンキ議長の議会証言や中国の経済指標が不芳だったことをきっかけに、多くの投機筋は利益確定のポジション手仕舞いに出た。 彼らは買ったものは売り、売ったものを買い戻して利益を確定するため、日本株先物売り、ドル売り・円買い戻しのオペレーションをすることになる。その結果、一挙に日本株が下落し、円高・ドル安に相場が転換することになった。 利益確定の手仕舞い売りが殺到 5月23日以降の円急上昇の要因 5月23日を境に、金融市場はそれまでの相場展開を大きく変えることになったのだが、金融市場を取り巻く世界経済の状況に大きな変化は見られない。強いて言えば、米国FRBの金融緩和策の出口に関する発言が増えた程度で、相場動向を大きく変えるような要件とは考えにくいだろう。 むしろ、世界的な金融市場の動向を変えるきっかけになったのは、ヘッジファンドなど投機筋の持ち高=ポジションのリバランスだったと考えるとわかり易い。彼らは、時に常識では考えにくいほど多額のポジション調整を行うことがある。そのため、どうしても彼らの動きが、短期的に市場を大きく動かしてしまうことがある。 今回のケースでは、4月4日から5月22日までの約1ヵ月半の間に、思い切り積み上げた多額のポジションの巻き戻しを行ったため、そのインパクトが過大になってしまったと考えられる。ポジション調整は、基本的に経済の基礎的な条件=ファンダメンタルズなどに関係なく、各投資家が抱えるポジションという個別の事情によって行われるため、経済状況の変化などとは必ずしも符合しないことになる。 たとえば、米国の金融緩和策が縮小されるのであれば、米国の金利水準が上昇して、日米の金利差が拡大することが予想される。日米の金利差が拡大すると、ドルが強含み、円が売られやすくなるはずだ。 しかし実際には、5月23日以降、円高・ドル安方向に動いている。その背景には、投機筋のポジション巻き戻しに加えて、米国の金融緩和策縮小懸念から世界的に株価が下落したことで、投機筋が抱えるポジションのリスク量が上昇したことがある。 ポジションのリスク量が増加すると、リスク量を減らす=リスクオフのため、持ち高を絞ることになる。その結果、保有しているドル買い・円売りのポジションを手仕舞うことが必要になる。 一時1ドル=94円の円高に逆戻り 今後の金融市場はどう動くのか? もう1つ無視できない要因の1つに、新興国の株安・通貨安がある。もともとヘッジファンドなどの一部の投機筋は、インドネシアやフィリピン、タイなどの株価上昇を見込んでいた。彼らの一部は、金利が低くしかも上昇する可能性の低い円を、ファンディング通貨として使っていたフシがある。 金利の安い円で資金を調達し、それを為替市場で新興国通貨に変えて、当該国の株式に投資を行っていたのである。それによって、円安による為替差益と、新興国株式の値上がり益の両方を手にすることができるとの目論見だった。 ところが、米国の金融緩和策の出口論が盛り上がり、世界的に投資資金の量が減ることが予想されると、新興国の金融市場から多額の資金が流出することになる。流出した資金の一部は、ファンディング通貨である円に回帰するはずだ。結果として、新興国通貨が下落する一方、円が買われて強含みになるのである。 最近の為替市場での円の動きを見ていると、つい最近までは円安が進むと日本株が買われる傾向があったのだが、最近では、むしろ世界的に株価が下落すると円が買われる傾向が見て取れる。その背景には、新興国の株価が下落によって、投資資金が円に戻る可能性が高まることが考えられる。 足もとの金融市場は変動幅が大きく、不安定な展開になっていることもあり、一般の投資家が手を出しにくい状況になっている。一般投資家の参加が減っていることが、投機筋などによる値動きの荒い相場展開を加速している。悪循環に入り込んでしまったということができる。 しかし、そうした相場展開が永久に続くことはあり得ない。日銀の“異次元の緩和策”以降のミニバブルの調整は早晩終了するはずだ。相場展開が落ち着きを取り戻せば、それなりに安定した推移に戻るはずだ。 そのときを冷静に待てばよい。むしろ、金融市場がオーバーシュート(売られ過ぎ)になれば、絶好の収益チャンスになることも考えられる。 http://diamond.jp/articles/print/37529 【第63回】 2013年6月17日 藤井 英敏 6月7日の底入れ説は本当か? 来るバーナンキ・ショックに備える投資法とは? 1 2 3 ボラタイルな相場が続いています。今週は18〜19日に開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)と、FOMC後のバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見が世界の金融市場を大きく動かすことになる見通しです。バーナンキ議長が量的緩和縮小に言及した5月22日以降、世界の金融市場は不安定さを増しています。 今回議長は市場を落ち着かせようとするとみられているようですが、それで、米金融政策の先行き不透明感が後退すれば、株式市場で買い安心感が広がることでしょう。 その一方、それでも動揺が収まらなければ、さらに投資家の不安が強まる可能性も否定できません。このため、FOMC後の議長発言を受けた市場の反応を確認できるまでは、多くの投資家は様子見スタンスを崩せそうにありません。 日経平均は6月のSQ値1万2668.04円に注目しておく 実際、東証一部の売買代金は9516億円と、1兆円大台を割り込み、薄商いでした。このため、今週の東京株式市場は引き続きボラタイルな動きと、円相場に対して神経質な動きを継続することでしょう。日経平均の想定レンジは下値は26週移動平均線(14日現在1万2333.33円)〜25日移動平均線(同1万4050.68円)です。ボラティリティーが高止まりしているため、想定レンジも非常にワイドせざるを得ませんね。 日経平均の日足チャート(6カ月)。緑が5日、赤が25日、青が75日の移動平均線(出所:株マップ) 今週以降については、6月のSQ値1万2668.04円を上回れば25日移動平均線を目指し、逆に下回れば26週移動平均線を目指すと考えています。
SQ値は足元で最も商いをこなした価格であり、これより上なら好需給で相場は上がり易く、下なら需給が悪化し相場は下がり易いとみています。なお、短期的には、日足ベースの「一目均衡表の雲」は抵抗帯として強く意識されそうです。また、バーナンキ・ショックが発生したら、26週移動平均線はあっさり割れることでしょう。 確かに、5月23日以降、乱高下を繰り返した6月物の先物・オプションが、14日のSQで清算されました。この結果、先物・オプション市場での手仕舞い売りの懸念は大幅に低下したことは事実です。これを機に、先物市場の需給の混乱が収まる可能性が高まりました。これは需給面のポジティブ材料です。 なお、真偽の程は不明ながら、一部で株価上昇の切り札に郵貯マネーを活用するのではとの観測が報じられています。 次のページ>> 日本株の調整はすでに十分なレベルに ゆうちょ銀行は190兆円の資産のうち、9割を日本国債で運用し、株式はゼロ。そこで安倍政権が主導し、ゆうちょのポートフォリオを見直すとの見立てです。かんぽ生命の90兆円近くがプラスとなれば総額は280兆円に上り、その10%でも株式に回せば、30兆円近くの資金が市場に流れ込むことになると指摘しています。これが実現するようなら、日本株の急激な底入れがあるでしょうが、それの実現確度が高まるまでは相場が織り込むには無理がありますね。 調整は値幅、率ともに十分なレベルに来た それはさておき、日経平均は5月23日の1万5942.60円から6月13日の1万2415.85円まで、16営業日で3526.75円(22.12%)下落しました。調整としては、幅・率共に十分です。 また、14日の終値は1万2686.52円と、25日移動平均線(14日現在1万4050.68円)との乖離率はマイナス9.71%です。そして、14日の東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)が69.60%に低下しました。騰落レシオの70%割れは2012年6月6日以来およそ1年ぶりのことです。これらの売られ過ぎを示唆するテクニカル指標からも、現在の相場は十分に底値圏といえます。 このため、今週以降、余程の悪材料が出ない限り、相場は底堅さを発揮する見通しです。しかしながら、底堅いからといって、それが即、自律反発入り、すなわち、上がるわけではないとみておく必要があります。底練り、底値圏での横ばいという相場が継続するという状況も十分ありえます。底入れ後、明確に相場が上昇に転じるためには、それなりの理由、きっかけが必要でしょうね。 ただし、ここにきて気掛かりなことがあります。 次のページ>> バーナンキ・ショックに備える投資戦略 皆の相場観が一致する時は危ない というのは、日経平均が13日安値が1万2415.85円と、7日安値1万2548.20円を割り込んだものの、TOPIXの13日安値は1040.31ポイントと、7日安値1033.02ポイントを死守しました。これを根拠に、私の周りの多くの友人が7日底入れ説で一致していることです。このように皆の相場観が概ね一致するときは、えてして逆の目が出るものです。 日経平均の日足チャート(3カ月)。緑が5日、赤が25日、青が75日の移動平均線(出所:株マップ) このため、確率は低いかもしれませんが、TOPIXの1033.02ポイント割れを意識しておく必要がありそうです。万が一、1033.02ポイント割れになるようなら、狼狽売りが加速し、セリング・クライマックスが訪れることでしょう。
現時点では確率的には7日で底入れした可能性が高いとはみてはいます。 しかし、確率が低い相場想定でも、十分起こり得ると考えるべき局面では、成り上がりたいあなたは、発生確率の低い事象でも発生したケースでの相場展開を予めイメージしておく必要があります。そのようなイメージをしておくことが、万が一の相場が実現した場合、他の投資家よりも的確、かつ、迅速な対応が可能になるからです。 バーナンキ・ショックに備える投資法とは? このような相場想定でお勧めするポジションは、ストラングルの買いです。 ストラングルの買いとは、オプションへの投資戦略の一つで、同一限月、異なる権利行使価格のプットオプションとコールオプションを同数買う戦略のことです。具体的には、例えば、7月限の権利行使価格1万3750円のコールと、同1万2250円のプットを同枚数買うことです。 ただし、バーナンキ・ショックが発生しなかったら、コールはホールドし、プットだけはすぐに損切りする必要があるでしょう。逆に、バーナンキ・ショックが発生したら、プットをひきつけて利食い、その後の反発局面でコールを手仕舞えばよいでしょう。なお、このポジションは発生確率が低い、バーナンキ・ショックが起こった場合でも収益を獲得することができる戦略です。 多くの投資家は発生確率の高い事象が起きた時に儲かるポジションを組みがちです。しかし、成り上がりたいあなたは、発生確率の高い事象が起きた時はもちろん、発生確率の低い事象が起きた時でも、儲かる可能性が高い戦略を常に追求するべきだと思います。 http://diamond.jp/articles/-/37571?page=3
【第88回】 2013年6月18日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役社長] 政府の成長戦略に頼るのはもう止めよう 政府は6月14日、日本再興戦略(JAPAN is BACK)を策定した。それによると、「民間の力を最大限引き出す」、「全員参加・世界で勝てる人材を育てる」、「新たなフロンティアを作り出す」ことにより、10年間の平均で名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の実現を目指し、10年後には1人当たり名目国民総所得の150万円以上の拡大が期待される、としている。
具体的な数値目標が 多いことは評価できる 政府は上記の成長実現に向けた具体的な取組みとして、下図の3つのアクションプランを掲げた。 (出所:首相官邸HP) 今回のアクションプランの特徴は具体的な数値目標が数多く設定されていることである。少し、煩雑になるが、それらを書き出してみよう。
(1)日本産業再興プラン ◆3年間で設備投資を10%増加させ、リーマンショック前の民間投資の水準(約70兆円/年(昨年度63兆円))に回復 ◆5年間で失業期間6ヵ月以上の者の数を2割減少させ、転職入職率を9%(2011年7.4%)に ◆2020年に女性の就業率(25歳〜44歳)を73%(2012年68%)に ◆今後10年間で世界大学ランキングトップ100に我が国の大学10校以上に ◆イノベーション(技術力)世界ランキングを今後5年以内に世界第1位に ◆2015年度中に、世界最高水準の公共データ公開内容(データセット1万以上)を実現 ◆2020年までに、世界銀行のビジネス環境ランキングで日本を先進国3位以内(現在15位)に ◆世界の都市総合力ランキングで東京を3位以内(現在4位)に ◆開業率・廃業率10%台(現状約8%)を目指す ◆2020年までに黒字中小企業・小規模事業者を70万社から140万社に増やす ◆今後5年間で新たに1万社の海外展開を実現する (2)戦略市場創造プラン ◆国民の「健康寿命」の延伸 <目標> (出所:首相官邸HPをもとに筆者作成) ◆クリーン・経済的なエネルギー需給の実現 <目標>
(出所:首相官邸HPをもとに筆者作成) ◆安全・便利で経済的な次世代インフラの構築 <目標>
(出所:首相官邸HPをもとに筆者作成) ◆世界を惹き付ける地域資源で稼ぐ地域社会の実現 <目標>
(出所:首相官邸HPをもとに筆者作成) (3)国際展開戦略 ◆2018年までに、貿易のFTA比率70%(現状19%)を目指す ◆2020年に約30兆円(現状約10兆円)のインフラシステムを受注 ◆2020年までに「潜在力」・「意欲」ある中堅・中小企業等の輸出額を2010年比で2倍に ◆2018年までに放送コンテンツ関連海外売上高を現在(63億円)の3倍に増加 ◆2020年に対内直接投資残高を35兆円(2012年末時点17.8兆円)に倍増
仮に政府の目論見通りに事が運べば、雇用だけでも2030年までに約550万人の増加が見込まれる。また、数値目標の中には、「大学ランキングトップ100に10校」「ビジネス環境ランキング3位以内」「FTA比率70%」等、かなり野心的な目標も含まれている。正直なところ、例えば、これらの数値目標の半分が達成されるだけでも、わが国経済はかなり好転するのではないか。このように、具体的な数値目標を数多く設定したことは、それなりに評価されていいと考える。それにもかかわらず、日本再興戦略が不人気に見える(≒市場が反応しない)のは一体どうしたわけだろう。 人口を増やす等の 大きな柱が抜けている 企業の売上高に端的に表れているように、経済とは、つまるところ、件数×単価である。これをGDPに近似的に引き直せば、人口×消費額、もしくは人口×生産性と表すことができる。いずれにせよ、前にも当コラムで指摘したように、少子高齢化に直面しているわが国では、「人口を増やす政策を総動員すること」こそが最大の成長戦略であり、焦眉の急なのだ。 ところが、今回の政府の日本再興戦略には、肝心要の人口を増やす政策がスッポリと抜け落ちている。どのように出生率を嵩上げするのか、移民問題をどう展望するのか、等の処方箋が、どこにも見当たらないのだ。わずかに観光客の増加(訪日外国人)が取り上げられているに過ぎない(因みに、人口の増加は必ずしも定住人口にこだわる必要はない。留学生や観光客の増加は、立派な人口政策である)。 次に、消費額を増やすためには、老後の安心が欠かせないのではないか。消費が低迷している大きな要因は、将来が不安で思い切ってお金を使えないからだ。「国民の健康寿命の延伸」も大切だが、むしろ健康でなくなった後の老後をどのように過ごすのかが、より切実な問題となっているのではないか。その意味で、税と社会保障の一体改革を断行し、国の社会保障をサステイナブルなものに改革、再構築することが、実は骨太の成長戦略に他ならないのだ。この至極真っ当な視点も、日本再興戦略には欠如している。 さらに、生産性を上げるためには、労働の流動化が欠かせない。この問題については、前回のコラムでも取り上げたので再述は避けるが、日本再興戦略が今一つ盛り上がりに欠けるのは、こうした大きな柱が何本か抜けているからではないか。例えてみれば、市場には、心柱を欠いた五重塔のように映っているのではないか。 成長戦略に頼るのは もう止めよう ところで、今回に限らず、わが国では、政府に成長戦略の策定を迫る経済人が後を絶たない。摩訶不思議な現象ではないか。わが国には、そもそも成長戦略に対する大きな誤解があるように思えてならない。 わが国の官僚は世界でも優秀の部類に属すると考えるが、アメリカのように投資銀行のトップが財務長官になるような国ならいざ知らず、わが国の官僚は、大学卒業後ずっと1〜2の官庁で働いてきた人ばかりであって、自ら商いや投資をやった経験のある人はほとんどいない。そんな人に成長戦略が本当に描けるだろうか。キャッチアップの時代であれば、先進国の政策を翻訳すればそれで良かったので、成長戦略を描くことは可能だったかも知れないが、海図なき現在ではそうはいくまい。 実際、今回の日本再興戦略の策定プロセスでも、民間の経営者等が多くの助言を行っていた。もちろん、他国の例をよく研究して、競争環境を整えること等、政府にしかできない仕事も数多く存在するが、およそ具体的な成長市場や成長産業を政府が主導することは、できっこないと考えるべきである。それを行えば資源配分を歪めてしまうだけである。 加えて、商いや投資経験のない人に書いてもらった成長戦略にそのまま従って、本気で儲かると思っている経済人が本当にいるのだろうか。そもそも、政府に成長戦略の策定をお願いするような経済人が取り仕切っているような社会が、果たして成長するのだろうか。 政府にできることは、規制緩和と、ビジネスを行い易くする土俵(人口政策や税と社会保障の一体改革等)を整えることがほとんど全てだと考える。成長戦略は、民間企業が、そして市民が、自発的に行動することによってしか本来描けないものだと考え直そうではないか。成長市場や成長産業は、所詮は試行錯誤の中から生まれてくるものでしかないのだ。政府の成長戦略に頼るのはもう止めよう。日本再興戦略が、そのように市民の自覚を促す契機となれば幸いだ、と考えるがどうか。 (文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である) http://diamond.jp/articles/print/37534
ドルが対円で上昇、FOMC控え緩和堅持の期待で=NY市場 2013年 06月 18日 06:21 JST [ニューヨーク 17日 ロイター] 17日終盤のニューヨーク外為市場では、米連邦準備理事会(FRB)が19日に発表する連邦公開市場委員会(FOMC)声明が金融緩和の堅持を投資家にあらためて確信させる内容になるとの期待から株価が上昇する中、ドルが対円で5営業日ぶりに上昇した。
ドル/円は日経平均や欧米の株価上昇に支えられ一時、この日の高値となる95.21円まで上がり、その後0.5%高の94.96円となった。海外市場では先に94.08円まで下げていたが、昨年9月から今年5月までの上昇分を38.2%戻した93.57円近辺が下値支持線とみられている。 円は他の主要通貨に対しても売られ、ユーロ/円は0.6%高の126.30円。豪ドルは対円で0.6%上昇、カナダドルも対円で0.8%上がった。 ユーロ/ドルはニューヨーク市場の終盤にプラスに転じ、一時は1.3379ドルまで上昇、その後は0.2%高の1.3373ドルで取引されている。
世界経済見通しなお弱い、日本は中期財政計画策定を=G8首脳 2013年 06月 18日 04:01 JST [エニスキレン(北アイルランド) 17日 ロイター] - 8カ国(G8)首脳は17日、米国や日本、ユーロ圏が取った政策対応が一助となり下方リスクは後退したものの、世界経済の見通しは依然ぜい弱との見解を示した。 首脳会議での世界経済に関する協議後、声明を発表した。 日本に関しては、信頼ある中期財政計画の策定という課題に取り組む必要があると指摘した。 声明は「ユーロ圏の下方リスクは過去1年で後退したが、依然リセッション(景気後退)から脱却していない」と指摘。 米経済については、回復は継続しており財政赤字も急速に縮小しているが、より均衡の取れた中期財政の持続可能性、および成長強化への照準を絞った投資に向け一段の前進が必要とした。 また財政政策は目先、経済状況に対応するための柔軟性が認められるべきとし、「財政再建ペースは、各国のそれぞれ異なる経済状況に対応する必要がある」としている。 |