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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130613-00010011-bjournal-bus_all
Business Journal 6月13日(木)19時52分配信
ワタミ株式会社(以下、ワタミ)をめぐる6月13日発売の「週刊文春」(文藝春秋/6月20日号)の記事が話題となっている(http://shukan.bunshun.jp/articles/-/2807)。文春の報道によれば、ワタミが運営する老人ホーム「レストヴィラ元住吉」に入居し、不適切な介護によって死亡した男性の遺族に対して、同社の渡邉美樹会長は「1億欲しいのか」と言い放ったとのこと。
このような告発が後を絶たないワタミだが、同社が”ブラック企業"としての地位を不動にした、2008年の過労死事件から5年。この事件がいまだ遺族との和解に至っていないにも関わらず、渡邉会長が東京都知事選に続き、今夏の参院選に出馬の意向を表明していることから、反発の声が相次いでいる。
この渡邊会長が06年に出版した著書『きみはなぜ働くか 渡邉美樹が贈る88の言葉』(日本経済新聞社)を、今あらためて紐解いてみると、白いカバーには不釣合いの黒光りした言葉のオンパレードとなっている。佐川急便のトラックドライバーから出発し、一代で売上高1577億円(平成25年3月期)の優良企業を築き上げた渡邊氏。しかし、売り上げの黒字化の裏で、12年には「ブラック企業大賞2012」にノミネートされるという偉業を成し遂げてみせた。
ここでは彼の語る哲学をじっくりと見聞してみよう。
毎月ワタミ全店舗に送られるビデオレターをもとにして構成された本書。「夢を追う人は人生を後悔しない」「どんなときも『敬天愛人』の心をもって」といった人生訓から「想像力があれば、シゴトはすべてうまくいく」「プロのシゴトに『裏ワザ』はない」といった仕事論まで、渡邊氏が培ってきた考えが余すことなく詰め込まれている。
まず、渡邊氏の座右の銘となっている「夢」について。「きみたちに今夢がないのは、親の責任である。親に夢がないから、子どもにも夢がないのだ」と独自の理論を展開し、「夢なくして何が人生か!」と啖呵を切る。彼の人生において、「夢を追い求めなければならない」という思考は一貫している。
では、ほかの面ではどうだろうか? あいさつをすること、敬語を使うこと、約束を守ることなどを例に挙げ「今、人間が人間として生きる上での常識が、少し欠如しているような気がする」と昨今の世相を嘆く渡邊氏。しかし、彼の「常識」の中には「長時間労働は法律違反」という文字が欠落しているように感じるのは気のせいか。
また、仕事論では、朝顔が花を咲かせるために夜の冷気と闇を必要とすることになぞらえ「勉強がつらい、シゴトがつらいと思っている人がいるかもしれない。しかし、きみにとってそれは必要な冷たい空気であり、必要な闇ではないだろうか」と説く渡邊氏。解釈次第では、まるでワタミ=闇=ブラックであることを肯定しているかのような印象を読者に与える。その闇を抜け出せぬまま精神を傷つけた元社員たちの存在を、彼はどのように考えているのだろうか?
さらに、週刊文春でも報じられた「365日、24時間、死ぬまで働け!」というメッセージも本書には採録されている。「言葉のとおりそうしろというのではない。そんな気持ちで、働いてほしいということだ」と慌ててフォローを入れるが、実際に社員が過労死を遂げた現在となっては、悪い冗談にもならない。過労死事件が発生して以降も、この言葉が取り消されずに、ワタミ社内文書に掲載され続けているというから怒りを通り越して呆れるばかりだ。
「この本を手にとったみなさんが、それぞれの夢に向かい、キラキラと輝くような一生を送られることを願っています」というあとがきで締めくくられる本書。奴隷のように長時間働かされ、満足に寝ることもできない環境で、ワタミ社員たちは、どうやったら「キラキラと輝く一生を送」ることができるのだろうか。そもそも、本書のタイトルである「きみはなぜ働くか」という問いに対して、渡邊氏は「ワタミのためです!」と回答することを望んでいるのかもしれないが……。
参院選の出馬会見において、渡邊氏は「若い方々が元気よく夢を語れる社会にならなければならない」と語った。ブラック企業の経営者が国政に進出し、日本を"ブラック国家"に……そんな黒歴史になることだけは、絶対に勘弁してほしい。
萩原雄太
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