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2013/6/13 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
株式市場の乱高下に個人投資家が悲鳴を上げている。トリガーを引いたのはアベノミクスであることは言うまでもないが、問題は今後だ。はっきり言おう。待っているのはゾッとするような地獄だ。「バブルの死角」(集英社新書)を上梓した大阪経済大客員教授の岩本沙弓氏が緊急提言――。
今のジェットコースター相場は、「大胆緩和で長期金利を押し下げる」と説明してきた日銀の黒田総裁が「やっぱりできません」と白旗を揚げたかのような発言がきっかけとなっています。緩和で長期金利をコントロールできないことは、金融の世界ではいわば常識。それでも、黒田総裁は「できる、できる」と言われたので、何かしらの秘策があるかと思ったら、何もなかった。その失望から黒田総裁への期待は低下せざるを得ない、というのが現場の声として聞こえてきます。現状は参院選前の調整局面であり、相場は一時的に落ち着きを取り戻すんじゃないでしょうか。
本当に怖いのは、お祭り騒ぎが終わった後です。最悪のシナリオの場合ですが、数年後に賃金が上がらずに物価と金利が上がる「スクリューフレーション」という現象が日本を襲う可能性があるかもしれません。景気が低迷し、インフレが進む「スタグフレーション」と似ていますが、最大の特徴は「中間層の貧困化」(スクリューイング)を伴うことです。オイルショックに見舞われた40年前は、インフレと同時に賃金も上昇したから、庶民は最悪の事態を免れました。ところが今は企業がいくら儲けようが、サラリーマンの賃金にはこれまでのところ反映されていません。そんな状況にもかかわらず、安倍政権は、物価目標の数値を提示し、実現しようとしている。このままでは円安による食料価格高騰と消費税が追い打ちとなり、庶民の生活は厳しくなってしまいます。
そもそも、原発が停止され、海外からの化石燃料にこれまで以上に依存しなければならない状況の中で円安誘導しようとするメリットはあまりありません。
◆世界は未曽有の大恐慌へ
円安誘導の手段としては為替介入がありますが、一滴で大海を動かそうとする無謀さに例えられます。10年前に1ドル=100円近辺だった為替水準は、今もほとんど変わりません。
小泉政権から民主党政権まで60兆円もドル買い介入し、買ったドルのほとんどは米国債の購入に充てられていると考えられます。小泉政権がドル買いに使った42兆円は、結果的にブッシュ減税の財源に回った公算が大きい。日本の富が米国に渡り、米国民が潤う。そんな図式です。
安倍政権も50兆円の米国債購入を検討しようとしているという、ブルームバーグの驚くような報道がありました。さて、「安倍50兆円ファンド」は何に使われるのでしょうか? 海外に渡す資金の余裕があるのなら、日本に財政不安はない、ということになります。海外よりもまずは日本の減税のために資金を使うべきでしょう。
長期的には史上最悪の大恐慌に踏み込もうとする可能性も否めません。紙幣をどれだけ印刷しても、対症療法に終われば市場経済の本質的な修復は不可能。それでも先進各国は紙幣印刷の輪転機を回しっぱなしにしている。安倍政権も乗り遅れまいと大胆緩和に踏み切りました。これまでバブルのツケはバブルで帳消しにしてきましたが、地球規模のバブルになれば、吹き飛ばせる次のバブルはありません。帳消しは不可能となってしまいます。選択を間違えれば、恐らく数年後に「資本主義最後のバブル」が起き、瞬く間にはじける可能性もあります。世界経済が崩壊に向かわないよう、注視する必要があります。
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