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株高で一気に上昇した期待を維持するのは難しい(黒田総裁、撮影:尾形 文繁)
「国債買い入れ」にいそしむ日銀 金融政策で追加的なサプライズは起こせず
http://toyokeizai.net/articles/-/14286
2013年06月12日 井下 健悟 :東洋経済 記者 東洋経済オンライン
日本銀行は11日の金融政策決定会合で、4月4日に決めた金融緩和策の現状維持を全員一致で決定。景気判断は前回の決定会合で「持ち直しつつある」としていたものを、輸出の持ち直しや底堅い個人消費の推移を背景に「持ち直している」と上方修正した。
先月の会見と同様、今回も4月の金融緩和で「低下を促す」とした金利がむしろ上昇していること対する質問が多く出た。黒田東彦総裁は「国債の買入れでリスクプレミアムには低下圧力がかかっている。毎月の購入を進める中でそれが強まっていく」と繰りし説明した。
また、「ボラティリティ(変動率)が高まって金利が上昇するのはよくない」と述べたが、緩和以後に上昇した現状の金利水準をさらに「低下させる」とまでは言わなかった。要は、金利水準が4月の金融緩和前より高いものの、日銀としては債券市場が混乱して金利が乱高下しなければ、現状の水準を許容するというスタンスだろう。
日銀が金融緩和で狙っている効果は@金利の低下、A国債市場の金利低下に伴って、投資資金が株や外国債券などほかの金融商品にシフトするポートフォリオリバランス効果、B大胆な金融政策による投資家や消費者の「期待」の変化、という3つ。@は日銀の狙いとは逆に動いている。Bについては、アベノミクスや日銀の大胆な金融緩和を受けて、各種指標から物価上昇期待や消費者マインドの改善など前向きな期待の変化が見られたものの、ここに来て足踏みも見られ始めた。
■高まっていた期待が一服
それが顕著だったのが10日に内閣府が発表した景気ウォッチャー調査。昨年末から現状、先行き判断DIともに大幅な上昇が見られたが、5月の現状判断DIは前月比0.8ポイント低下の55.7(12年11月は40.0)と、2か月連続で低下した。また、先行き判断DIは、前月比1.6ポイント低下の56.2(同41.9)と、こちらは2カ月ぶりに低下するなど、これまでの上昇基調が一服している。
先行き判断の詳細を見ると、「最近の株価の下落ぶりと金利上昇の影響で将来不安が生じる。アベノミクスの効果がまだ一般的には波及しておらず、効果を実感できていない」(テーマパーク職員)、「株価の急落があったように、今後一本調子で株価が上昇すると考えられず、資産効果だけではなく、ボーナス、給与、雇用など実体経済がよくならなければ、継続的な景気拡大は期待できない」(百貨店営業企画担当)など、5月下旬の株価下落を判断理由に入れるコメントが散見された。
景気ウォッチャー調査の動向について、黒田総裁は「(判断は)短期的な株価の動きよりも、趨勢的な動きに影響されると思う」と述べた。また、「消費者のマインドは経済全体や雇用情勢にも影響される。失業率や有効求人倍率は改善しており、消費者マインドにプラスの影響を与えるだろう」とも説明。短期的な株式相場の変動に金融政策が振り回されないように、予防線を張ったといえる。
4月の会見で、「戦力の逐次投入をせず、現時点で必要な政策をすべて講じた」(黒田総裁)と断言しており、今後は巨額の国債買入れを推し進めるほかない。金融政策で追加的なサプライズを起こすことは難しい状況だ。
アベノミクス3本の矢を構成する成長戦略について、会見で黒田総裁は「戦略を作ったうえで、細部を詰めるとともにタイムリーに実行することが重要」と述べた。しかし、金融政策決定会合で機動的に決定できる政策とは違い、成長戦略の実行には一定の時間を要する。株高で一気に上昇した期待を維持することは容易ではない。消費者マインドの変化が実需の増加として持続するかどうかが、より注目されそうだ。
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