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「異次元緩和」の失敗・・・ (イーグルヒット) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/430.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 11 日 22:45:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://eagle-hit.com/a/post-4762.html
イーグルヒット管理者 (2013年6月11日 20:00)


「日本版LTRO」見送りで円高・株安に、不安定化なお懸念
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE95A03V20130611

日銀 が10日、11日に開催していた金融政策決定会合で、年0.1%の低利による長期資金の供給オペ「日本版LTRO」の導入を見送り、東京市場は円高、株安、債券安に動いた。乱高下を繰り返す長期金利の安定に向け、海外投資家の間で導入への前のめりな観測が広がっていたが、その思惑が外れたためだ。
黒田日銀としては「戦力の逐次投入はしない」という筋を通した格好だが、追加措置をめぐる思惑は、足元の相場安定につながってきただけに、再び不安定な展開になることを懸念する声が強い。「今回は(緩和方向に)折れると思ったが、折れなかった。金融緩和を迫られればそれに応じていた白川日銀とは異なり、市場を突き放した」──。ニッセイ基礎研究所の矢島康次チーフエコノミストはそう指摘する。
この日の会合をめぐって、市場では固定金利オペの期間延長だけでなく、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の増額などの思惑が飛び交っていた。しかし、それらがすべて見送られた。この日正午前、実質ゼロ回答のヘッドラインが伝わると、昼休みだった株や債券市場の動きを待たずに、円相場は急ピッチに円高に振れた。それまで1ドル=98円75銭前後で推移していたドル/円は、あっさり節目の98円を割り込み、下げ幅は今日の高値から1円を超えた。海外のファンド勢が一斉に売りに傾いたためという。これを受けて株価は大きく値下がりし、日経平均.M225は一時200円安の1万3300円前半で推移。円債市場では先物相場が売られ、中心限月は一時前日終値より59銭安い142円35銭で取引された。
追加措置の観測は最近の市場安定につながっていた。それだけに今後、再び荒っぽい展開になりかねないとの見方が市場では強い。東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「市場はかなりの部分を織り込んでいただけに、一定の失望感からボラティリティが高まりやすくなりそう」と指摘する。
FXプライムの上田眞理人取締役は「4月以降は政策期待で上昇してきたが、その持続力に陰りが出るなかでの『ゼロ回答』。取引一巡後のドル/円は、いったんは下げ止まっているが、今後、海外市場でドル/円の下値リスクが高まる可能性がある」とみる。(中略)
IG証券の石川順一マーケットアナリストは「今後の焦点はやはり海外動向だろう」と指摘する。そのうえで「アベノミクスの成否は海外の景気動向にかかっており、ここがとん挫すれば一気にリスク回避に傾いてもおかしくない。黒田総裁もおそらくこれを認識していて、だからこそ今回は弾を撃つのではなく、弾を装てんして様子を見る形になったのではないか」と話す。
海外動向に関連して、三菱東京UFJ銀行の小田尚志調査役は「9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で(発表される見通しで、予測対象が)1年延びるまでは、米国の長期金利が3%なのか、2.5%で均衡するのか、フェアバリューを探り合う展開が続く。こうした状況は日本の国債市場にも影響しそうで、向こう3カ月間は日米とも水準調整を余儀なくされる可能性がある」とみている。【ロイター 14:54】

海外勢の失望売りが主因として挙げられているが、円安誘導のための異次元緩和は、黒田総裁が「出せる手はすべて打った」と当時明言したように、もはや打つ手はないのである。これ以上やると、副作用リスクの大きくなるからだ。
つまり、金利高騰である。

国債は日銀が引き受け、株式や外債、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)のリスク資産への投資を投資家に促しながら、インフレ目標を達成しつつ、金利上昇を抑えるというのが、そもそもの矛盾であり、両立しないのだ。
それがゆえ、黒田日銀は身動きがとれなくなっているというのが実情であろう。
その意味で、今回の日銀政策決定会合は、失望というより、"終わった"のである。

さらに言えば、記事中に、海外の景気動向がアベノミクスの成否を握っており、<とん挫すれば一気にリスク回避に傾いてもおかしくない。黒田総裁もおそらくこれを認識していて、だからこそ今回は弾を撃つのではなく、弾を装てんして様子を見る形になった>と述べられているように、海外景気が頓挫する恐れがあることを黒田総裁は知っているのだ。

いみじくも米中首脳会談が行われたばかりだが、これまで円安容認でアベノミクスを隠然と支えていたオバマ政権は、中国へ軸足を移そうとしている。
金融危機が勃発する恐れのある中国・習体制と、政治的危機に直面しているオバマ政権は、もはや日本どころの話ではなく、次なる一手を裏側で密議した可能性がある。

海外の動向に左右されるほどに中身のなかったアベノミクスと異次元緩和は、頓挫を余儀なくされ、やがて激しい副作用に見舞われることなるだろう・・・。


 

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コメント
 
01. 2013年6月12日 06:09:29 : uF8yrCupxY
どうすればいいんですか? もう不安でしょうがありません、
私たち一般庶民はどうやってこれに対応していいのか分からないのです、助けてください!


はい、「イーグルヒット会員」になりましょう。 そこに解決方法はあります。

「サイトから入会できますよ。」今すぐクリック!


02. 2013年6月12日 11:49:44 : e9xeV93vFQ

>「異次元緩和」の失敗

と言うより、「異次元緩和」に頼り過ぎた投資家が失敗しただけ

黒田も別に株価を上げるためにQEしているわけではなくデフレ脱却目的なのだから当然だ
 
ただQEだけでインフレ率を上げるのは元々、無理があるから

財政政策や国際経済、国民の期待や不安などが、今後の動向を左右していくことになる



03. 賢者の石 2013年6月12日 12:38:51 : Qf5ShLuWtoZHs : DICmDnrvEk
イーグルヒットどのへ

私は投稿制限くらったし、

文字数制限をサーバーでかけないor動画投稿もできないサイトには

レトロすぎて萎えるので以後、あほらしくてつきあいきれんのでおりる!

あの赤かぶとかいう偏った奴が削除依頼して妨害したのだろう

だが私の投稿は天地神明に誓って、中立で状況認識に皆の役立ったと思う

以後、がんばってくれ!


04. 2013年6月12日 18:36:59 : vPuji5lJDk

QEだけでインフレ率を上げるのは元々、無理があるから>> 02

  ーーー  は読みが浅い、

QEは隠れたデフレ政策、インフレは論外


<だからこそ今回は弾を撃つのではなく、弾を装 てんして様子を見る形になったのではないか>

弾を撃ったら地獄行き, 弾を装てんも駄目−−様子を見る時間がない、甘い、
速やかに撤退あるのみ

QEは時限爆弾、拾った時点で失敗
日米衝突の種となる。
早く捨てろ、


05. 2013年6月13日 00:57:14 : e9xeV93vFQ

ベネズエラに忍び寄るハイパーインフレの影
2013年06月12日(Wed) Financial Times
(2013年6月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


今年4月、ウゴ・チャベス前大統領の死去に伴う大統領選で辛勝し、新大統領に就いたニコラス・マドゥロ氏〔AFPBB News〕

 ベネズエラでハイパーインフレが生じる可能性が出てきた。5月の物価上昇率が月次ベースで過去最大を記録する一方、ベネズエラ経済は景気後退局面に入りつつあり、ニコラス・マドゥロ新大統領の支持率は低下している。

 消費者物価は5月に6.1%上昇(前年同月の上昇率は1.6%)し、2013年1〜5月期の累計インフレ率が19.4%に達した。2012年通年のインフレ率(20.1%)にほぼ匹敵するレベルだ。

 4月にも物価が4.3%上昇して既に警鐘が鳴っていたが、急激なインフレ昂進を受け、ゴールドマン・サックスではベネズエラがハイパーインフレの瀬戸際にあるとの不安が広がった。同社は、季節調整後の年率換算で40%を超す物価上昇をハイパーインフレと定義している。

 ハイパーインフレについては、確固たる定義は存在しない。国際会計基準審議会(IASB)は、3年間の累計で100%の物価上昇をハイパーインフレの基準としている。現時点では、ベネズエラの年率換算のインフレ率は35.2%だ。

経済は既に後退局面、深刻な外貨不足で生活必需品も不足

 物価が跳ね上がる一方で、経済は勢いを失い、2013年第1四半期の成長率は0.7%にとどまった(前年同期の成長率は5.9%)。ロンドンのコンサルティング会社キャピタル・エコノミクスのアナリストらは、ベネズエラは既に景気後退に入った可能性があると見ており、国内総生産(GDP)が今年1%減少すると予想している。

 石油輸出国機構(OPEC)加盟国であるベネズエラの経済問題の根底にあるのは、複雑に絡み合った物価統制と為替管理だ。これが輸出収入の96%を稼ぐ石油産業の問題と相まって、外貨不足を招いた。

 輸入に依存するベネズエラ経済は外貨なしでは回らず、外貨不足が食品を含む生活必需品の不足を招き、インフレを一段と悪化させている。

 ベネズエラで最も人口の多いズリア州は、基本的な食品20品目を配給制にすることを検討したが、マドゥロ氏は「正気の沙汰ではない」として、この計画を一蹴した。

 スタグフレーションは今やすっかり定着したが、4月半ばの大統領選挙でマドゥロ氏が2%足らずの僅差で勝利してからは、政情不安もベネズエラを揺るがしている。勢いづいた野党は、この選挙結果を認めることを拒んでいる。

今日選挙を実施すれば野党指導者の勝利

 与党・統一社会党内の内紛もマドゥロ氏の人気を損ねている。カラカスに本拠を置くIVADが最近実施した世論調査では、今日再び選挙を実施したら、野党連合の指導者であるエンリケ・カプリレス氏が勝つという結果が出た。

 カラカス・キャピタル・マーケッツのマネジングパートナー、ラス・ダレン氏によれば、問題は、10年にわたる厳格な為替管理の結果生まれた闇市場でドルの為替レートが過去3年間で3倍以上に高騰し、輸入品の値段が跳ね上がったことだ。

 「もしマドゥロ氏がドルを見つけ、お金を迅速に市場に回すことができれば、その状況を変えられるだろう。残念なことに、今のところはキューバ人が物事を仕切っているようで、ズリアの配給モデルのようなキューバ型の解決策が出てくる」と同氏は話している。

By Benedict Mander in Caracas


 


 

誇張されているインフレリスク
当面のリスクはむしろ低すぎる物価上昇率
2013年06月13日(Thu) Financial Times
(2013年6月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 3年近く前に中国・天津で開かれた世界経済フォーラム(WEF)の「夏季ダボス会議」に参加した時、米共和党のある政治家が、米国は2年以内にハイパーインフレに陥ると話しているのを耳にした。その時、筆者は愕然としたが、ハイパーインフレがやって来ると信じている人は多い。

 もし米国が苦境にあるなら、英国も間違いなく苦境にある。これらの予測に信頼性はあるのだろうか? この問いの答えは、あるかもしれないが、それはかなり長期的な話だ、というものになるだろう。ただ、目下のリスクは、インフレ率が「高すぎる」ではなく「低すぎる」というものかもしれない。また逆説的だが、そのせいでインフレのリスクは長期的に高まっている。

 そもそも、インフレの原動力は何なのか? 故ミルトン・フリードマンが残した古典的な答えはこうだった。「インフレは、産出よりも速いペースで貨幣の量が増加することによってのみ生じており、かつそれによってのみ生じ得る現象であるという意味で、いつでもどの場所においても貨幣的な現象である」――。

 だが、これでは一体なぜ貨幣(マネー)の量が産出よりも速いペースで増加するのかが説明されない。

 これについては、インフレを恐れている人々が2つの答えを用意している。1つは、中央銀行が「量的緩和」を通じて「マネーを印刷しており」、いずれ広義のマネーの量が爆発的に増加するというもの。もう1つは、政府がいずれ公的債務の予想残高に促され、インフレによる債務不履行(デフォルト)を目指すようになるというものだ。

 本稿ではこの、英国にとって大きな問題を取り上げることにしよう。英国では公的債務が増加傾向にあり、最近のインフレ率も比較的高くなっている。

短期・中期的にはインフレは「幻影」

 長期的にどんな危険があるかはともかく、向こう2年程度の見通しは正反対だ。英国のインフレ率は、一時的な変動要因を除去したコアベースで見ても、これを除去しない総合ベースで見ても十分に低い。賃金インフレ率はゼロに近く、生産性の低下にもかかわらず、単位労働コストの伸び率は年2%を下回っている。

 為替レートもコモディティー(商品)価格も安定している。国際通貨基金(IMF)は、コモディティー価格が向こう数年間下落する公算が大きいと予想している。つまり、短期的なインフレ圧力は非常に弱いということだ。英国でそうなのだから、米国やユーロ圏ならなおさらだ。

 では、次の5年間の見通しはどうなるだろうか。この時期は、需要と生産能力の稼働率が重要になってくる。残念ながら英国の国内総生産(GDP)は現在、危機前のトレンドを16%下回っている。公的機関の推計によれば生産能力もかなり余っており、IMFが計算する今年の「産出ギャップ」――実際のGDPと潜在GDPとの差――は、潜在GDPの4%相当に達している。

 失業率も、思われているほど高くはないとはいえ、8%前後に達している。また、中央銀行のバランスシートは拡大しているが、民間銀行による貸し出し意欲の低下を打ち消すには至っていない。その結果、供与されている信用の額と市中にあるいわゆる「広義のマネー」の量が減少している。さらに、政府はかなり緊縮的な財政政策を採用している。

 そのため、中期的に見ても、インフレは単なる幻影ではないと考えることは難しい。では、長期的にはどうだろうか? 例えば2020年代にインフレ率が急上昇することはあり得るのだろうか? 

長期的にインフレ昂進を見込む根拠は?

 急上昇すると考えている人は多い。なぜなら、商業銀行が中央銀行に置いている準備預金と、商業銀行による企業などへの貸し出しとの間には直接的なリンク――いわゆる「貨幣乗数」――が存在するからだ。銀行は準備預金よりも多い額の資金を貸し出すのだから、現在の準備預金残高が高水準であることはマネーの量が将来増えることを示している、と彼らは考えているのだ。

 しかし、支払い能力のある銀行は、必要な準備預金を中央銀行から調達できる。また中央銀行は、支払い能力のある銀行が準備不足に陥らないようにするだろう。そうしなければ、決済システムが崩壊しかねないからだ。では、何が銀行の貸し出しに歯止めをかけるのか? それは銀行の支払い能力であり、銀行の顧客の支払い能力だ。

 従って、民間銀行がマネーを創造する能力を決める要因としては、準備預金よりも銀行の自己資本の方がはるかに重要だということになる。また、もし中央銀行が銀行の過剰準備を減らしたいと思ったら、その時は国債を市中に売却するか、所要準備額を引き上げればいい。

 つまり、準備預金残高が高水準であるから広義のマネーの量は将来間違いなく増えるという見方は誤りなのだ。

 高インフレの可能性について論じるのであれば、説得力のある根拠は、高インフレは現在の政策の必然的な帰結だということではなく、むしろ政策立案者が公的(あるいは民間)債務の過剰状態に対処する最も簡単な方法だということだろう。

 この見方では、債権者と債務者、あるいは若者と高齢者の間の分配を巡る対立は、インフレによる債務デフォルトで解消される。このようなインフレによる富の再配分の前例は簡単に思いつく。結局のところ、インフレに代わる道筋があるのか? 大雑把に言えば、代替策は緊縮、成長、そして金融抑圧(恐らくは為替管理などの投資家に対する規制を伴う金利の低下)の3つだ。インフレは、これらの代替的な要素とうまく馴染む。

多額の債務を管理してきた英国

 実際、近代の英国には、高水準の公的債務を管理してきた興味深い歴史がある。第2次世界大戦後、純債務はGDP比200%を超えていた。1970年代初頭には、債務比率は50%に低下していた。

 この目覚ましい変化はいかにして起きたのか? 1948-49年度から1970-71年度にかけて、名目ベースの債務残高が29%しか増加しなかったのに対し、名目GDPが336%増加した、というのがその答えだ。

 実質GDP(91%増加)と物価水準(128%上昇)の双方がこの幸せな結果に貢献した。年平均成長率(CAGR)を見ると、名目GDPのそれは6.9%、実質GDPは3%、物価水準は3.8%だった。

 英国が実は過去20年間の日本とそっくりだったという話にならない限り、GDPに対する公的債務の水準は、大半の予想に基づくと、2020年代に1948年当時の半分以下に減少する。そう考えると、名目GDPの成長率が年間4%でも、目的を果たせるはずだ。

 この見込みは、2020年代初頭までにプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の赤字を、例えばGDP比2%の黒字に転換することができ、また、長期の実質金利が2%を超えないことを前提としている。こうした前提に基づくと、成長によって債務から抜け出す戦略は完璧に妥当になる。

最大の脅威は実質GDPの急減

 では、最大の脅威は何か? その答えは間違いなく実質GDPの急減であり、それが住宅価格を暴落させ、失業率を上昇させ、経済をデフレに陥れ、場合によってはさらなる金融危機を生み出す事態だ。こうなると、公的債務という分子がさらに大きくなり、名目GDPという分母が一段と小さくなる。その影響を唯一相殺できるのは金利低下だ。

 しかし、日本の経験が示しているように、超低金利でさえ、非常に長期にわたる財政赤字とデフレの悪影響から経済を守ることはできない。解決策は、力強く、持続可能な成長だ。そうした経済成長は、インフレの脅威を張子の虎に変えることができる。

By Martin Wolf

 

 


欧州の銀行同盟:現行計画なら大失敗
2013年06月13日(Thu) The Economist
(英エコノミスト誌 2013年6月8日号)

不十分な基礎の上に新たな欧州通貨を作ってはどうか? 最初は非常にうまくいったのだから・・・。

 欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は、ユーロを救うためなら「どんなことでもする」という計画を明らかにした時、アメとムチをうまく組み合わせた。ECBに流通市場で自国国債を買ってほしいと思う国は、改革プログラムを受け入れなければならなかったのだ。

 ドラギ総裁は「モラルハザード」に気を配っていた。モラルハザードとは、すなわち、ひとたび圧力が取り除かれると、債務国が規律を失う危険のことだ。

 だが、モラルハザードは債権国にも影響を及ぼすことが分かった。昨年発表された「アウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)」は、ユーロ圏の債券市場が落ち着きを取り戻す助けになった。OMTプログラムに対するドイツ連銀の近視眼的な反対意見(6月上旬にドイツ憲法裁判所の審理でつまびらかになる予定だった*1)にもかかわらず、OMTは目覚ましい成功を収めた。

 だが、OMTは一方で、ユーロ圏を安定させるために必要な制度改革の推進を迫る債権国への圧力も和らげることにもなった。

 欧州各国は2012年6月、弱い銀行と衰弱した国々との致命的なつながりを断ち切るために銀行同盟の創設に着手することに同意した。だが、ユーロ圏最大の資金拠出国であるドイツと一部の国は、それ以来、銀行同盟に対するコミットメントを弱めた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相とフランスのフランソワ・オランド大統領が5月30日に示した共同文書は、その最新の証拠だ。

 真の銀行同盟には3本の柱が必要になる。単一の監督機関、共同救済基金へのアクセスを持つ単一の破綻処理機関、そして共同の預金保険制度だ。仏独両国の計画は、1本半の柱を使って、大きな建造物が倒れないことを祈るようなものだ。

ドイツのせいで骨抜きに

 昨年6月からある程度の前進はあった。ECBは来年に、ユーロ圏の大手銀行の単一監督機関になる準備を進めている。ECBは、欧州の銀行の健全性を評価し、国益を超越するのに最も適している。だが、効果を発揮するためには、監督機関がその意志を実行できなければならない。

 このことは、経営難に陥っている銀行に直接介入し、株主と債権者に損失を割り振り、必要なら、残る穴を補填するために必要な公的資金を供給できる破綻処理機関を設置することを意味している。

*1=6月11、12日の両日、OMTがドイツの法律に違反しているかどうかについて審理が行われた

 ドイツは自国の納税者が他国の銀行問題の責任を負わされることを恐れて、各国の破綻処理機関が統一の規則に従い、自国の資金を使う制度を強く求めてきた。それでは十分ではない。

 ECBは、監督機関の役割を引き継ぐ前に、欧州の銀行のストレステストをもう1度実施する。ECBが銀行のバランスシートに新たな民間資本では埋められない穴を見つけたと仮定しよう。ドイツのモデルでは、各国の当局にボールを投げることになる。

 弱い国は、いつの間にか、キプロスと同じ立場に立たされる恐れがある。つまり、可能であれば、問題を無視する誘惑に駆られるし、それが無理なら、さらに多くの債務を引き受けるか、債権者に大幅な損失を強いることを余儀なくされるのだ。

 破綻した銀行の債権者に損失を負担させるのは、正しい行動だ。だが、それが、危機時に資本の穴を埋める唯一のやり方だと見なされた場合には、安定性に対するリスクが生じる。短期の債権者は、銀行から資金を引き揚げる気になるからだ。

 保険の対象となる預金者でさえ、自国の政府が弱いと見なされた場合には、逃げることを考えるかもしれない。実際、キプロスはこうした預金者に損失を負わせることを検討した。

1本半の柱では・・・

 そこで必要になるのが、悲しいことに仏独計画で無視された3本目の柱だ。つまり、保険対象の預金者を守るコストをユーロ圏諸国の間で分担する共同の預金保険制度である。

 平時には、銀行の年間拠出金で預金者の保険を賄うことができるが、メルトダウンが生じた時にシステムをしっかりと守ることはできない(米国の事前拠出型制度は保険対象の預金のわずか1.35%しかカバーしていない)。

 どのような預金保険制度も政府支援に頼らなければならない。ドイツはそれを嫌がる。だが、銀行同盟――そして、それゆえユーロ――は、こうした制度がなければほとんど意味を成さない。この場合、3本の柱のうち1本半の柱しかないことは完全な失敗だ。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
 


06. 2013年6月13日 01:09:18 : e9xeV93vFQ
http://totb.hatenablog.com/archive/category/%E9%87%91%E8%9E%8D%E6%94%BF%E7%AD%96%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E8%A7%A3%E8%AA%AC
2013-06-11
金融政策の基礎解説D:金融政策のトリレンマと日本の最後の一手
金融政策の基礎解説
Dではマッカラム・ルールを取り上げると予告していましたが、予定を変更して金融政策の理解に欠かせない金融政策のトリレンマについて解説します。
金融政策のトリレンマとは、
1. 自由な資本移動
2. 金融政策の自由
3. 為替レートの安定
のうち三つしか同時に達成できないことを指します。
1.と2.を選択すると、外国の金利が上昇(低下)すれば資本が流出(流入)して自国通貨の為替レートが減価(増価)してしまうので3.が達成できません。1.と3.を選択すると、内外金利差を保つために外国金利に合わせて自国金利を変化させなければならないので2.が達成できません。資本移動が自由なら、金融政策の自由を選択して為替レートは外国為替市場の変動に任せるか、為替レートの安定を選択して金融政策を外国に合わせるか、の二者択一ということです。
これより、金融政策の操作変数は金利と為替レートの二つに大別できることが分かります。どちらを選択するのはその国次第です。1.と2.を選択している国で利上げ・利下げに外国から干渉されない独立性が認められるのと同様、1.と3.を選択している国では為替レートの増価・減価に独立性が認められます。[1]
金融政策で他に考慮すべきは、目標とする操作変数の操作手段、対象市場、増減する需要の項目、副次効果です。ここでは景気刺激の場合を考えます。
金利を操作する1.と2.の選択国で景気を刺激する方法は利下げですが、これは中央銀行が国内の金融市場にマネタリーベース供給を増やすことで実現されます。銀行の現金調達コスト低下→銀行の貸出余力増大→貸出金利低下→企業や家計の借り入れコスト低下→設備投資や住宅投資増加、という波及経路(transmission mechanism)を通じて目的が達成されます。
副次効果は為替レート減価とそれに伴う純輸出増加です。資本移動が自由なら、国内金融市場と外国為替市場の間を資金は自由に移動します。そのため、国内金利低下→内外金利差拡大→外貨買い・自国通貨売り→為替レート減価→純輸出増加、が起こるのです。
一方、為替レートを操作する1.と3.の選択国では、中央銀行が外国為替市場で外貨買い・自国通貨売りによってマネタリーベース供給を増やして為替レートを減価させます。自国製品需要の増加・外国製品需要の減少→純輸出増加の波及経路によって目的が達成されます。副次効果は、マネタリーベース供給増→国内金利低下→投資増加です。
以上を整理したのが下表です。

目標とする操作変数は違っても、手段(マネタリーベース供給増)と結果(金利低下・為替レート減価→投資と純輸出増)は同じです。金利低下と為替レート減価のどちらがコインの表でどちらが裏かの違いに過ぎないということです。
しかし、利下げと為替レート減価には決定的な違いが一つあります。それは、為替レートはいくらでも減価できるが、金利はゼロが下限であることです。このことからは、金利ゼロでも景気刺激効果が不十分な場合には、操作変数を為替レートに切り替えて減価(←マネタリーベース供給増)となるはずです。[2]
ところが、多くのエコノミストは、ゼロ金利の次は量的緩和(超過準備額増加→マネタリーベース供給増)と提唱しています。確かに、為替レート減価も量的緩和もマネタリーベース供給増は同じですが、家計・企業・海外部門に働きかける効果には大差があります。為替レート減価→自国製品と外国製品の相対的な価格が変化→自国製品需要増・外国製品需要減→純輸出増、となりますが、超過準備額の増加には為替レート減価のような波及経路は存在しません(「インフレ誘導で経済再生」の論点整理を参照)。
マネタリーベース供給を増やすのなら、有効性の高い為替レート減価を選択するのが合理的なのですが、わざわざ有効性の乏しい量的緩和を選択しているために、景気がほとんど刺激されないわけです。エコノミストたちは「利下げや量的緩和の結果として円安になるのはOKだが、円売り介入して円安にするのは外国に認められない」と説明しますが、これが理論的にナンセンスであることは「同じコインの裏表」の説明から明らかでしょう。
日本がゼロ金利政策の次に為替レート目標に踏み切れなかった理由としては、
• 円売りは外国(特にアメリカ)に許されないという恐怖心理
• 外国為替市場介入は日銀ではなく財務省が所掌している
の二つが主なものとして挙げられます。アベノミクスでは政府と日銀が緊密に協力するため、後者の問題はクリアされていますが、前者をクリアできるかは微妙です。日本経済復活には1ドル=110円程度の円安が必要ですが、量的緩和によってそれが実現する保証はありません。安倍首相がアメリカを恐れて円売りを自主規制すると市場参加者に見透かされれば、円売りが一気に逆流して日本経済が「ジ・エンド」になる可能性も十分あります。政府・日銀が理を貫いて外圧と円売りタブーを克服できるかが、日本の未来を左右します。

[1]為替レートを金融政策の操作変数にしている国の代表例がシンガポールです。
• Monetary Policy Framework(Monetary Authority of Singapore)
[2]日本が確実にデフレから脱却できる方法としてこれを提唱したのがスウェーデン人のスヴェンソンです。もっとも、日本人からは否定・黙殺されました。
• The foolproof way of escaping from a liquidity trap: Is it really, and can it help Japan?(Lars E.O. Svensson)
prof_nemuro 1日前

2013-04-07
金融政策の基礎解説C:貨幣乗数と過去の銀行業
金融政策の基礎解説
「学校で誤った金融知識を教えられる高校生」で説明しましたが、過去の銀行業における信用創造(≒貨幣供給)とは、
1. 金貨や銀貨など、それ自体が額面上の価値を持つ貨幣(本位貨幣)が銀行に預けられる。
2. 銀行は本位貨幣との交換(兌換)を保証する預かり証を発行する。
3. 預金者が銀行を信用して金貨を預けたままにするのであれば、銀行は金貨の全額を引き出しに備えて保有しておく必要はない。仮に預かった金貨の10%を手元流動性として保有しておけばよいのであれば、残り90%の金貨に対しても「兌換保証書」を発行できる。
4. この「兌換保証書」は、もはや単なる「預かり証」ではなく、貨幣として機能する紙幣(銀行券)である。この例では、最初に預金された金貨の10倍の金額の銀行券が発行される。
というものです(厳密性は欠いていますが、ここでは深入りしません)。 この場合、貨幣供給量=銀行の紙幣発行額を増やすためには、銀行に預けられる金貨を増やせばよいことになります。
話を現代の日本に移します。金貨⇒マネタリーベース(現金+日銀当座預金残高)、銀行券⇒銀行預金に置き換えれば、「日銀がマネタリーベース供給を増やせば、銀行預金額も増える」ことになります(日銀当座預金は、銀行の「日銀券倉庫=在庫置き場」のようなもの)。(現金+預金)/マネタリーベースを貨幣乗数または信用乗数と言います。
バブル期の貨幣乗数は約13だったので、過去の銀行業のロジックを適用すると、「日銀がマネタリーベースを10兆円増やせばM2は130兆円増える」はずです。バブル崩壊から数年間は、このロジックに基づいた「M2の伸び率が低下したのは日銀が銀行への資金供給を絞ったためだ」、「日銀がマネタリーベースを供給を増やせばM2の伸び率は回復する→経済成長率も回復する」という主張が多く聞かれました。

ところが、日銀を批判する論者にとっては都合の悪いことに、貨幣乗数は低下を続けました。これは、「マネタリーベースの増加率とM2の増加率は連動していない」ことを意味します(この理由については「金融政策の基礎解説B:預金/現金/日銀当座預金」で説明済み)。実際、日銀が量的緩和(当座預金残高を資金決済に必要な額以上に増やす政策)を始めた2001年には、そのことが明確になりました。「マネタリーベース増加率を高める→M2の伸び率が高まる→経済成長率が高まる」というロジックは、近年の日本経済には当てはまらないのです。名目GDPと比べると、マネタリーベースが過少なことが経済低迷の原因、という主張に無理があることは明らかでしょう。
しかし、「マネタリーベースを増やせば日本経済は回復する/日本経済を悪化させた戦犯は日銀」という信念に取り憑かれた論者はこの程度では引き下がりません。彼らは貨幣乗数に代わる武器としてマッカラム・ルールを持ち出し、日銀批判をさらに先鋭化させています。当シリーズのDでは、マッカラム・ルールについて説明する予定です。

シリーズ記事
• 金融政策の基礎解説@:マネー量/生産量/インフレ/デフレ
• 金融政策の基礎解説@の補足+Aの予告
• 金融政策の基礎解説A:名目GDPに比べた貨幣量の過不足
• 金融政策の基礎解説B:預金/現金/日銀当座預金

2013-03-24
金融政策の基礎解説B:預金/現金/日銀当座預金
金融政策の基礎解説
• 金融政策の基礎解説@:マネー量/生産量/インフレ/デフレ
• 金融政策の基礎解説@の補足+Aの予告
• 金融政策の基礎解説A:名目GDPに比べた貨幣量の過不足
の続きです。
前回は、M2(現金通貨+国内銀行等に預けられた預金)が年率6〜7%で伸びていれば名目GDPは3〜4%で伸びていたであろうことと、M2の伸び率が2〜3%にとどまっていたのは預金の伸び率が低かったためであることを示しました。今回は、預金の伸び率が低かった理由と、その責任が日銀にあるか否かを検証します。
お金や貨幣といえば現金をイメージする人が多いと思われますが、実際には、貨幣(M3またはその一部のM2)の大部分は現金ではなく預金です(最近ではM2の91%、M3の93%)。日銀が供給している現金は貨幣の1割弱しか占めていないのです。

残り9割強を占める預金を供給しているのは銀行です。 そして、預金は銀行が企業等に貸し出すことによって創造されます。銀行が企業に10億円貸し付けるとは、企業の当座預金口座に10億円が振り込まれることです。この時、銀行の資産=貸付金と負債=預金の10億円が同時に無から創造されるのです(これを信用創造と言います)。銀行の貸借対照表は
[借方]貸付金 10億円|[貸方]当座預金 10億円
となります。一方、企業の貸借対照表は
[借方]当座預金 10億円|[貸方]借入金 10億円
です。
銀行は集めた預金を企業等に貸し出していると思っていた人もいるかもしれませんが、実際はその逆で、銀行の貸出金が預金になっているのです。銀行が貸し出すことによって預金が創造(供給)され、貸出金が返済されることによって預金は消滅します(※1)。
銀行は無から預金を創造できますが、二つの制約があるため、際限なく預金を増やすことはできません。
第一の制約は、預金の一部は必ず現金として引き出されることです。現金を創造できるのは日本銀行だけなので、銀行は引き出される現金を日銀から直接または間接的(他の金融機関か預金者)から借りてこなければなりません。日銀及び金融機関間の資金のやり取りは、日銀の当座預金を通じて行われ、この市場が短期金融市場です(※2)。銀行が預金の供給を増やせば、預金者に引き出される現金≒短期金融市場で調達しなければならない日銀当座預金(→引き出せば現金に)もほぼ比例して増えます。この時、日銀が当座預金残高の総額(短期金融市場の資金量)を増やさなければ、資金調達コストが上昇し、銀行はそれ以上の預金供給=貸出ができなくなります。仮に、預金の8%が現金として引き出されるなら、日銀が日銀当座預金に供給する資金量(=マネタリーベース)の12.5倍が貨幣量(預金+現金)の上限になります(※3)。マネタリーベースが預金残高を制約しているのです。
第二の制約は、企業等が借りてくれなければ預金は増やせないことです。銀行から借りた金は利子を付けて返済しなければなりません。したがって、返済期限までに借りた金プラス利子を上回る所得を得る見通しが立たなければ、いくら金利が低くても企業等は金を借りませんし、銀行も貸せません。企業が有望なビジネスプランを考えて銀行に借りに来てくれなければ、銀行は貸出を増やせず、預金も増えないのです。企業の景気見通しが預金の伸びを制約しているということです。
では、バブル崩壊後のM2伸び率低下はどちらの制約要因によるものでしょうか。マネタリーベースの伸びがM2の伸びを大きく上回っていることから、第一の制約要因でないことは明らかです(グラフの縦軸は対数目盛のため、傾きが伸び率を示す)。

企業の純借入額(マイナスは返済が借入を上回ることを意味)の推移を見ると、毎年度のフローは1998年度以降マイナスが続き、ストック(残高)は1995年度末をピークに激減しています。これは、企業が「借り入れて投資する」よりも「利益を借入金返済にあてる」ことを合理的と判断していることを意味します。企業に資金需要があるにもかかわらず銀行が貸し渋りしているために預金が増えないのではなく、企業が「将来の需要増が見込めない→投資するよりも借入を減らすことが合理的」と考え、借入(銀行にとっては貸出)を減らしていること、すなわち第二の制約要因がM2の伸び率低下の原因なのです。

日銀が当座預金残高を増やせば企業の需要予測が上向くのであれば、M2と名目GDPの伸び率低下、すなわちデフレ不況の責任は日銀にあることになりますが、このロジックに無理があることは過去記事で考察済みです。デフレ長期化の全責任は日銀にある、という批判は的外れ(言い掛かり)ということになります。
次回は、「全責任は日銀にある」「マネタリーベース供給が過少だったことが名目GDPが伸びなかった原因」と主張するマネタリーベース万能論者の主張をさらに検証します。

• 金融政策の基礎解説@の補足+Aの予告
の最後に出した問題の解答です。
問題にした文章では、日銀が銀行に供給する日銀当座預金が銀行の貸出金の原資になっている、すなわち、銀行は日銀から借りた金を又貸しする機関であるように読めますが、そうでないことは説明した通りです。日銀当座預金にマイナス金利が付けば、銀行は現金化して金庫に保管するか、預金金利引き下げ、手数料引き上げなどによってコスト増を埋め合わせるでしょう。これまで貸さなかった借り手=返済能力の低い借り手にまで貸し出すことが銀行にとって合理的行動でないことは明白です。

(※1)企業が従業員に給与を支払うと、企業の預金口座から従業員の預金口座に預金が移動しますが、預金の総額は変わりません。いったん創造された預金は、銀行に返済されるまで所有者を変えながら存在し続けます。預金も現金と同様に「流通」しているのです。
(※2)日銀当座預金口座は、銀行が現金の在庫をストックしておくヴァーチャルな(事実上の)現金倉庫とイメージすればいでしょう。
(※3)当座預金口座に残す残高と銀行が保有する現金の分だけ、預金者の引き出しに回せる現金は減るため、12.5倍未満になります。


2013-03-21
金融政策の基礎解説A:名目GDPに比べた貨幣量の過不足
金融政策の基礎解説
• 金融政策の基礎解説@:マネー量/生産量/インフレ/デフレ
• 金融政策の基礎解説@の補足+Aの予告
からの続きです。予定を変更して、「貨幣量不足が名目GDP低迷(デフレ&実質低成長)の原因」というリフレ派の主張を検証します。
まずは日本銀行のマネーストック統計に基づいて貨幣を分類します。M1は支払(決済)手段に用いられる貨幣で、現金通貨と預金通貨(当座預金や普通預金)から構成されます。預金には他に、解約すると預金通貨になる準通貨(定期性預金等)があります。国内銀行等に預けられた預金+現金通貨がM2、全預金取扱機関に預けられた預金+現金通貨がM3です(⇒M2はM3の一部)。
基礎解説@に示しましたが、本来、M1残高と名目GDPは比例関係にあると考えられます。実際、1995年に超低金利政策が始まるまでは、M1残高は約30年間ほぼ一定水準にありました。名目GDP比の1980〜1994年平均は、現金通貨が6.5%、預金通貨は19.6%なので、これを2011年度の名目GDP473兆円にあてはめると、それぞれ31兆円と93兆円(統計の見直しを反映させて推計すると121兆円)になりますが、実際には76兆円と446兆円でした。これより、現金通貨は45兆円、預金通貨は324兆円、M1全体では370兆円が余剰だったと推計できます。逆に、現金通貨76兆円に対応する名目GDPは1166兆円になります。「現金通貨増加→名目GDP増加」の因果関係は成り立っていないということです。
リフレ派は「日銀のマネタリーベース供給が過少なことがデフレの原因」と主張していますが、マネタリーベース(=現金+日銀当座預金)のうち現金は過少とは言い難いでしょう。

M1の余剰は準通貨からの大量シフトによるものと考えられるので、次にM2とM3を見てみます(金額のグラフの縦軸は対数目盛なので傾きが伸び率を示す)。


M2伸び率と名目GDP伸び率の差は、1998年のデフレ突入以降も1980年代と同じく約3%ポイントです。この関係が安定的だとすると、M2伸び率が+4%ポイントの6〜7%になっていれば、名目GDP伸び率は3〜4%になっていたことになります(実際にはそれぞれ2〜3%と−1〜0%)。現金の伸び率は十二分だったので、預金(預金通貨+準通貨)の伸び率が足りなかったことになります。リフレ派の主張の当否は、日銀が預金の伸び率をコントロールできるか否かにかかってきます。
基礎解説Bでは、預金が増えるメカニズムについて説明する予定です。


2013-03-10
金融政策の基礎解説@の補足+Aの予告
金融政策の基礎解説
前回記事の貨幣量と生産、価格の関係で書き漏らしがあったので補足します。
貨幣量と生産能力がバランスしている(インフレにならずに生産量すべてが売り切れる=需要と供給が一致している)状態から、生産能力だけが2倍になり、価格が変わらなければ、生産能力の半分が遊休化してしまいます(→失業発生)。
この状態から貨幣量を2倍にすれば、価格は一定のまま生産量を2倍、つまり生産能力をフル稼働させられる(→失業解消)ことは前回に書きましたが、別の結果になることもありえます。
貨幣量が2倍になれば需要も2倍になりますが、何らかの要因で生産量が2倍にならなければ、需要>生産なので、インフレになってしまいます。生産量が2倍にならないことは、生産設備の一部が依然として遊休化している、すなわち失業が残っていることを意味します。これが不況下でのインフレ=スタグフレーションです。企業が需要増大の継続に懐疑的で減産体制をすぐに転換させなかったり、生産設備の再稼動に時間を要する場合に起こりえます。
貨幣量を増やすインフレ誘導政策では、企業の生産体制に目を配ることが重要です。

金融政策の基礎解説Aは、「貨幣量はどうやって決まるのか」の予定ですが、その前に予習問題です。以下のリンク先記事をお読みください。
• デフレ克服、円安頼みでは困難 「マイナス金利」に転換を(ZAKZAK)
現在、日銀は金融機関が日銀から供給を受ける資金に0.1%の金利を付けているが、その金利をマイナスにすればよい。銀行は日銀での当座預金で寝かしていれば、金利をとられるので、一般向け貸し出し増に駆り立てられるだろう。
この引用部分のどこに問題があるでしょうか?
お分かりにならなかった人は、Aでの解説をお待ちください。

2013-03-08
金融政策の基礎解説@:マネー量/生産量/インフレ/デフレ
金融政策の基礎解説
新体制の日本銀行は、デフレ脱却・インフレ転換を目標に金融政策を行うことになると見られますが、「これ以上やれることはない・インフレは起こせない」といったインフレ政策への批判も根強くあります。
• 「黒田日銀」に現実の壁、行きはよいよい帰りは怖い−水野元委員 (1)(Bloomberg)
• リフレ政策では、インフレは起きない(東洋経済ONLINE)
どちらの陣営の論者も立派な肩書を持っているため、一般の人々にはどちらが正しいのか判断することが難しいと思われます。そこで、一般の人が金融政策と経済について判断を下すために必要な知識を得られるように、数回にわたって基礎から解説をしていきます。第1回目は超基礎編で、マネー(貨幣)の量と生産量、物価の関係です。

貨幣には3つの機能があります。
1. 価値尺度(商品の価値を数量化する)
2. 流通手段(商品の交換の媒体となる)
3. 価値貯蔵(貨幣を保有することで価値を貯蔵する)
まずは1.と2.です。
物々交換をしていた社会が現金を導入して貨幣経済に移行するとします。その社会における財・サービスA、B、C、…の交換比率に比例した量の現金をA、B、C、…に付与すれば、物々交換と同じことを貨幣交換で実現できることになります。
では、生産性の上昇や労働力の増加等により、社会全体の生産能力が2倍になったらどうなるでしょうか。価格が一定で貨幣量も変わらなければ、増産分を買う貨幣が無いため、増産分は売れ残ってしまいます。生産量が売り切れるためには、価格が半分に下がらなければなりません(⇒価格調整:デフレ)。価格が下がらないなら、売れ残りを防ぐためには生産能力の半分を遊休化させて生産量を半減させなければなりません(⇒数量調整:不況・失業)。これでは、せっかくの生産能力増大が無駄になってしまいます。失業とデフレを回避するためには、貨幣量を生産能力に比例して2倍にしなければなりません。なお、生産能力の半分が遊休化して失業がある状態から貨幣量を2倍に増やしても価格は不変です。
逆に、生産能力は不変なのに貨幣量が2倍になったらどうなるでしょうか(増加分は退蔵せず支出する前提)。 生産物への需要は2倍になりますが、生産量は増えないため、生産物1単位と交換される貨幣量すなわち価格が2倍=インフレになります。
まとめると、
• インフレとデフレは生産量増加率と貨幣量増加率の差から生じる。
• “生産能力増加率>貨幣量増加率”の場合、デフレ(価格調整)ではなく稼働率低下・失業=不況(数量調整)が生じることもある。
• 余剰生産能力がある状態で貨幣量を増やしてもインフレは生じない。
• 余剰生産能力が無い状態で“貨幣量増加率>生産能力増加率”の場合にインフレが生じる。“(貨幣量/生産量)∝価格”または“価格×生産量∝貨幣量”(∝は比例の意味)。
となります。これよりインフレ誘導(リフレ)派の以下の主張が導かれます。
• 日本経済の生産能力に比べた貨幣量不足がデフレと不況の原因。
• 十分に貨幣量を増やせばデフレと不況から必ず脱却できる。
• 余剰生産能力が解消されるまでは、貨幣量を増やしてもインフレは生じない。
以上を踏まえて日本経済を見てみます。交換手段(決済)に用いられる貨幣には現金通貨以外に預金通貨(当座預金、普通預金等)があるので、現金通貨と預金通貨を合計したM1を用います(統計作成の見直しのため、データは不連続)。経済全体の生産量は実質GDP、価格×生産量は名目GDPです。上のまとめから、M1残高/名目GDP=比例定数と予想されます。

1995年までは比例定数≒0.3弱で予想通りですが、96年以降は比例関係が崩れています。これだけからは、貨幣量は生産能力に比べて不足していない(むしろ過剰)と言えそうですが、実はそうとは言い切れません。
貨幣には、2.の流通手段用とは別に、3.の価値貯蔵用(金融資産用途)もあります。これはその性格上、高金利を追求するので、流動性は高いが無金利・低金利の現金や普通預金等ではなく、流動性は低いが高金利の定期預金に含まれます。ところが、1995年以降の超低金利のため、定期預金の相対的高金利の魅力が薄れ、流動性の魅力の高いM1に価値貯蔵用の貨幣が紛れ込むようになったと推測されます(2011年度の推計370兆円程度)。そこで、価値貯蔵用の貨幣も含めたM2(M1に定期預金等を加えたもの)と名目GDPを見ると、1990年代以降、名目GDPとM2残高の伸び率は同時並行して低下しています。

そのため、名目GDPに対するM2残高のトレンドはほぼ一定です(上昇トレンドは、金融資産蓄積が進む「金融深化」によるもの)。名目GDPに比べた貨幣量(M2残高)は過剰とは言えませんが、過少とも言い切れません。

貨幣量と名目GDPの伸び率が同時並行して低下する相関には、@貨幣量伸び率低下が名目GDP伸び率低下の原因、A名目GDP伸び率低下が貨幣量伸び率低下の原因、B第三の要因が貨幣量伸び率と名目GDP伸び率双方の低下の原因(貨幣量伸び率と名目GDP伸び率は擬似相関)、の三通りの説明が可能です。
次回以降、@と「貨幣量は日銀がコントロールできる」を根拠にするリフレ派の主張を検証していきます。


07. 2013年6月13日 01:33:21 : sUpHQ8Q75g
黒田は財務省国際局外為課出身だ
これまでマーケットと対話した経験はゼロ

日銀から借りた資金を外為市場に突っ込み参加者を右往左往させたのがせいぜい
黒田本人はリスクを負った経験など全くない
そんな輩がリスクそのものである金融マーケットのことなんか分るはずがない

異次元緩和つう言葉も痔罠安倍壺三政権の背後で台本を書いてる香具師の入れ知恵だろう
本当は何も変わっちゃいない上に実務担当者が付き従わなかったことでインチキが早々に露呈した
経験も能力もないボンクラ財務省OBがハッタリかましただけだった
それを無能だが嘘だけは大得意なマスゴミが囃し立てたことで騙された香具師が多かっただけの話

黒田の最重要の仕事は夏までに景気が上向いたように見せ掛ける材料を作り
痔罠安倍壺三政権が来春の消費税率上げを決定し易くすることだ

長期金利の乱高下は
黒田が異次元緩和の大風呂敷を広げたものの
買い手として待ち構えてるはずの日銀の姿がどこにもないw
記者会見とは間逆で買う気なんて全然ないんじゃね?
やっぱりハッタリか?
黒田のことだしなw
つうことだったんじゃないのか


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