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黒田日銀異次元緩和の副作用か…住宅ローン上昇、賃金抑制、国債取引市場混乱 (Business Journal) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/410.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 11 日 07:13:00: igsppGRN/E9PQ
 

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130611-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 6月11日(火)4時39分配信


 安倍晋三首相の「アベノミクス」政策にも陰りが出てきたようだ。急速に1万5000円に駆け上がった日経平均株価は、上昇した時以上のスピードで下落している。輸出企業の業績回復の命綱だった外国為替相場は、一時の円安傾向が嘘のように円高に振れ始め、1ドル=100円を割り込んでいる。

 エネルギー資源を中心に食品価格など輸入物価が上昇し、また、金利上昇と連動して住宅ローンが上昇するなどの影響が出始めている一方で、給与所得は増えず、景気が回復している実感のない状態が続いている。

 その一因となっているのが、アベノミクスの象徴でもあった黒田東彦・日銀総裁の“異次元緩和”による副作用だろう。市場関係者が“バズーカ砲”と表現したほどの金融緩和は、政府が発行した国債の7割を買い取る政策。

 金融機関はいつでも保有する国債を日銀が買い取ってくれると確信したことで、保有国債の売却を手控えるようになる。売却量が減少すれば、買い手も減少する。買い手が減少することで、必要な時に必要な分の国債を売却できないのではないかという疑念が生まれ、高値警戒感が強まることになる。

 こうした状況の中で、国債の売却を行おうとすれば、買い手よりも売り手が多いのだから価格が下落し、長期金利が上昇することになる。買い手が日銀に集中することで、民間金融機関同士の売買が減少し、価格変動リスクが増加することになる。民間金融機関による“正常な”市場取引が阻害され、破壊されていく。

 一度価格が乱高下すると、悪循環が生まれ、価格変動リスクを回避しようとする金融機関が国債の保有を敬遠するようになる。これにより、国債の入札が変調を来すことになり、政府の国債発行が順調に進まない状況が生まれてくる可能性がある。

 日銀は市場参加者との対話を通じ、オペの方法を変更するなど、市場の落ち着きを取り戻すような手段を探っている。しかし、現在の“異次元緩和”は、これまで投与したことのない薬を多量に服用しているようなものだ。どんな副作用が起こるか想定できない状況にある。

 中長期的な財政再建策が打ち出されていない状況で、異次元緩和のような政策を継続することは、長期金利の急上昇から国債の利払い負担の増加を招き、財政破綻の引き金を引く可能性がある。

 国債価格の急落、財政危機の可能性について、政府・日銀はどのような対策を打つのであろうか。ここに驚くべき事実がある。

 11年6月、当時は野党であった自民党が「X-dayプロジェクト」という報告書をまとめた。国債価格の暴落と財政破綻への対処について検討した報告書だ。

 そこには国債価格の暴落により、

(1)一部金融機関の経営不安や金融システム不安。
(2)企業の資金調達の停滞や過大負債企業の経営困難。
(3)市中金利の上昇に伴う個人への影響。
(4)政府財政の一段の悪化、1%の金利上昇は1年で1兆円、2年で2.5兆円、3年で4.2兆円の利払い費増加を招く

と想定されている。

 その対応策として挙げられている金融政策は、

(1)日銀は前例に囚われない思い切った潤沢な資金供給を金融市場に対して機動的に行う。
(2)国債の買い切りオペ額の大幅な増額を行う。
(3)リーマンショック時に米国FRBが講じた一連の非伝統的な措置や量的緩和策を参考に、リスク資産等の購入も思い切って行う

というもの。

 この危機時の金融政策として想定された内容は、黒田日銀が実施した“異次元緩和”そのものなのだ。

 黒田総裁は“異次元金融緩和”の実施にあたり、「やれることは出し惜しみせず全て行った」と言っている。とするならば、国債価格暴落の危機時には、“すでに打つ手はない”ということではないか。野党時代だったとは言え、自民党は自らが国債価格暴落時の危機対応策として検討していた政策を、アベノミクスが掲げる「デフレ経済からの脱却」「2%のインフレ目標」のために差し出したのか。

 国債価格の暴落という緊急事態が起こらないことを祈るばかりだ。

鷲尾香一/ジャーナリスト


 

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コメント
 
01. 2013年6月11日 08:54:20 : nJF6kGWndY

>国債価格の暴落と財政破綻への対処 危機時の金融政策として想定された内容は、黒田日銀が実施した“異次元緩和”そのもの

財政破綻を防ぐには、増税、財政支出削減、成長戦略が必要であり、
基本的に、どれも日銀の役割ではなく、政治の役割

ただデフレは実質的な財政支出増と減税であり、財政を悪化させるから
適度な金融緩和(財政ファイナンス)による円安インフレは、実質国民負担の増大により
財政破綻の抑制と、景気回復にプラスの効果がある

>国債価格暴落の危機時には、“すでに打つ手はない”ということではないか
>国債価格の暴落という緊急事態が起こらないことを祈るばかり

よほど頭が悪いということらしいな


02. 2013年6月11日 20:56:50 : h4VUkkbcQo
政治の役割か、金融取引に消費税だな。

03. 2013年6月12日 18:28:49 : e9xeV93vFQ
アングル:設備投資にも動意の兆し、非製造業に投資余地
2013年 06月 12日 13:39 JST
[東京 12日 ロイター] - 長らく凍り付いていた国内設備投資にようやく動意が見え始めた。12日発表の4月機械受注や前日公表の法人企業景気予測調査から、今年度の設備投資計画が企業のマインド好転を反映し、自動車や小売りを中心に持ち直している姿が浮かび上がった。

中でも高齢化需要の取り込み投資拡大などで、非製造業が設備投資のけん引役になるとの期待が大きい。規制緩和で成長分野を創出できれば、安倍晋三首相が掲げる年間70兆円の設備投資復活も、あながち遠い夢ではなくなるとの見方が出ている。

<株式活況や消費好調、投資にも解凍効果>

4月機械受注(民需)は前月の大型受注反動減もさほど大きくなく、月7000億円台を維持でき、内閣府関係者もほっとした表情を浮かべていた。みずほ証券では、今回の反動減が限定的だったことから、4─6月には機械受注が増加に転じるとみている。

設備投資もタイムラグをもって今年秋には増加基調となる可能性が出てきた。昨日公表の4─6月期法人企業予測調査でも、今年度設備投資計画が7.2%と大幅に上方修正され、財務省も企業マインド好転を映したものとみている。

アベノミクスの目玉である期待への働きかけが、出遅れていた設備投資でもその効果が波及しつつあると言えそうだ。BNPパリバ証券では「円安や株価の上昇で設備投資意欲は徐々に持ち直している」と、金融市場を介した効果が出ていると分析している。

4─6月期の法人企業景気予測調査では、昨年凍結していた更新投資を再開させただけでなく、新規投資もある程度実施していることがうかがえる。けん引しているのはコンビニなど小売チェーンの新規出店やそれに伴う惣菜など食料品製造設備、自動車業界による新車対応の生産ライン増設や研究開発投資、株式取引の活況に対応した金融機関のシステム投資だった。

<投資需要は国内非製造業にあり>

ただ、こうした経済指標の調査時点は、5月半ば過ぎの金融市場のボラティリティ拡大直前だった。その後、5月末調査の景気ウォッチャー調査では、消費関連企業で先行きを懸念する声があるほか、雇用関連でも企業の求人動向への影響を心配する見方があったが、企業自体からは直接のコメントは少なかった。

金融市場の乱高下があっても「企業の設備投資姿勢にすぐに変化を与えるわけではない」(BNPパリバ証券)と見られ、むしろ内外の需要動向と企業の中長期の戦略が大きな要因となる。

そうした視点で眺めると今後、国内投資が活発化しそうな非製造業への期待が大きそうだ。製造業に関しては「これまで企業は着実に生産の海外シフトを進めてきた。企業センチメントを短期間で転換させるハードルは高いとみられる」(みずほ証券)ためだ。

最近の円高是正で多少は海外移転を思いとどまる企業があるとはいえ、製造業は為替動向に翻弄されずに需要地での生産体制を整える方向にあり、海外投資の比率を高めている。法人企業景気予測調査でみると、製造業はリーマン前と比較して4─6月の投資額は6割強にとどまる。

一方で、非製造業は投資額自体が製造業の2倍弱にのぼり、すでにリーマンショック前の8割程度まで投資額が戻っている。伊藤忠経済研究所では「これからは高齢化社会で医療や小売りなどでの需要が伸びることから、成長戦略としてこれを取り込む非製造業の設備投資に期待できそうだ」と見ている。機械受注統計でも底堅く伸びているのは、運輸業や卸・小売業やその他製造業といった非製造業だ。

従来、設備投資の波は製造業から始まり、非製造業へと波及してきたが、製造業の国内投資回帰に大きな期待が持てない現在、けん引役は変化しつつあるようだ。

<70兆円投資目標、規制緩和で成長分野創出で可能性も>

安倍首相が掲げる年70兆円の設備投資の目標も、成長分野が創出できれば無理ではなさそうだ。設備投資に動意が表れつつある中で、この目標額について専門家からは「投資集中期間の3年間での達成は難しいとしても、無理な数字ではない」(伊藤忠経済研究所)との声がある。12年度の設備投資は名目GDPベースで約63兆円。物価が上昇に転じ年1%ずつ上がっていくことを前提にすれば、あと7兆円の上積みは視野に入りそうだ。

企業サイドでは、設備投資を促進するためには法人減税が必要との声が圧倒的に多い。ロイター調査でも成長戦略への期待は半数が法人減税を挙げている。「新規事業分野へのトライを促すための余裕を生み出せる」(サービス業)といった声が寄せられた。

ただ、政策当局者や民間専門家からは、必ずしも法人減税が設備投資に使われるとは見ていない。内部留保は高水準に積み上がっているにも関わらず、設備投資は減価償却の範囲内にとどまってきたのは、需要そのものが国内で見当たらなかったためと分析している。

BNPパリバ証券では「70兆円という目標が自己目的化して財政支援策を出すよりも、規制緩和で新たな成長分野を創出して企業が投資した結果として、70兆円が達成できるという本来の姿を作りだすべき」と指摘する。

東京大学経済学部の福田慎一教授は「企業は円安・株高で経営にプラス効果があったことは間違いない。しかし少子高齢化など構造問題が解決していない中で、様々な意味でまだ慎重だ。設備投資が本格的に出てくるのもこれからにかかっている」とみている。

(ロイターニュース:中川 泉 編集:田巻 一彦)

 

不透明感濃く投資家は手控え、揺らぐ緩和と景気のバランス
2013年 06月 12日 16:52
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トヨタの米市場シェア、中期的には14─17%で推移する=幹部

[東京 12日 ロイター] - マーケット全体を覆う不透明感は濃く、多くの投資家は手控え気味だ。米景気が着実に改善しているからこそ、米金融緩和の早期縮小観測が強まっているのだが、「出口」に向かう方法はまだ不明で、欧州や新興国などでは景気減速への不安も広がっている。

長らく続いてきた金融緩和と景気回復という本来なら相容れない両者のバランスが揺らいでいることが、金融相場変調の背景だ。日本株やドル/円は戻りを試す動きもみせているが、反騰の勢いは弱い。

<見通し上方修正でも売られた米国債>

米国債の見通しが引き上げられれば、米国債の買い要因となるはずだが、10日の米市場では全く反対のことが起きた。格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国の格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げたにもかかわらず、米債は下落。見通しが引き上げられれば、米国債の信認が上がり、本来なら米国債にとってプラスであるはずだが、市場は売り要因と受け止めた。

「見通し引き上げの背景にある米国経済の改善を評価する動きだった」とりそな銀行・総合資金部チーフストラテジストの高梨彰氏は言う。7日に発表された5月米雇用統計は玉虫色の内容となり、「出口」観測の決着は持ち越されたが、市場では着実に米経済の回復とFRB(米連邦準備理事会)による金融緩和の早期縮小を織り込み始めている。5月初めに1.6%台だった10年米債金利は10日、昨年4月以来の2.2%台に跳ね上がった。

米金利上昇は、低金利をおう歌してきた米経済を圧迫するが、SMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏は米長期金利が3%程度に上昇しても十分耐えられると指摘する。「住宅ローンの3.6%に対し家賃利回りは9.6%ある。1%程度ローン金利が上昇しても利ザヤは十分だ。企業の設備投資も資本収益率は10%程度あるのに対し、銀行の企業向け貸出金利は4.5%程度。また銀行の資金調達コストはほぼゼロであり、借りるほうも貸すほうも両方メリットがある状況だ」という。

<世界に波及する米金利上昇>

このまま米経済が回復していけば、「出口」にもスムーズに向かえそうだが、米金利の上昇は世界のマーケットにも大きな影響を及ぼす。世界の金融市場の中核である米国債の金利上昇は、他国の国債金利を上昇させる要因になる。経済が回復していないなかで金利だけが上昇すれば大きなダメージだ。グローバル化した経済では、海外の需要減速や株価下落は国内経済に大きな悪影響をもたらすため、米国といえども無傷ではいられない。

実際、アジアなど新興国の金融市場では、株価だけでなく、通貨や債券市場も大きく変調している。米金利上昇を背景に、投資家がマネーを引き揚げていることが要因だとみられている。米経済は消費や住宅など内需が堅調だが、外需の影響が大きい生産関連の経済指標は低調だ。

11日の海外市場では米国をはじめ各国で軒並み株価が下落。日銀が金融政策決定会合で固定金利オペの期間延長などを見送ったことがやり玉にあがったが、三菱東京UFJ銀行シニアマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は、日銀の「ゼロ回答」は後付け的な材料であり、FRBの「出口」に関する不透明感が大きな背景だと指摘する。「QE3を縮小するにしても方法が不透明だ。長期国債を減らすのか、MBSを減らすのかもわからない。世界景気の不安に加え、そうした不透明さが市場参加者を不安にさせている」という。

<日本株は商いが減少>

不透明感を嫌う投資家は様子見姿勢を強めている。東京株式市場では商いのボリュームが急速に減少。日経平均.N225は1万3000円大台を割り込んだ後、下げ渋っているが、東証1部売買代金は2兆2768億円と前日よりも約5000億円減少した。ここ3日間は3兆円の大台を割り込んでおり、日経平均が636円高と今年最高の上げ幅を記録した10日も売買代金は2兆5760億円だった。市場エネルギーは低下気味で、反騰の勢いは乏しい。

米「出口」観測は本来なら、ドル高・円安要因で、日本株を下支えてくれるはずだった。しかし、積み上がった円ショートポジションの整理が続く外為市場ではドル/円の上値は依然として重い。円安が進まない中で、金利上昇を嫌気して米株が下落すれば、リスクオフの波及が日本株にも及ぶ。米金利上昇は日本の金利上昇要因でもある。

第一生命経済研究所・副主任エコノミストの藤代宏一氏は「このところ引け際の処分売りが減少し、後場のパフォーマンスに安定の兆しが出ている。オーバーナイトリスクが低下し、投資家心理が落ち着く方向にあるのではないか」と指摘。相場の雰囲気が極端に悪化しているわけではないと話す。そのうえで、「米量的緩和縮小の議論が続くうちは米国株の上値が抑制される。日本株が上値を試すにも新たな好材料が必要だろう」との見方を示している。



 


コラム:円高進行3つの要因、警戒すべき新興国市場=佐々木融氏
2013年 06月 12日 16:22
佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 債券為替調査部長(2013年6月12日)

ドル円相場は、昨年11月中旬の79円台半ばから、今年5月22日に103.74円をつけるまでの半年間で30%も急騰した。半年でこれだけ急騰したのは恐らく1970年以降初めてのことである。

しかし、同期間に80%上昇していた日経平均株価が5月23日に1000円以上暴落すると、ドル円相場も反落を始め、米5月雇用統計が発表された6月7日に94.98円をつけるまでの12営業日で8.4%下落した。この短期間でこれだけ大きく下落したのは、2008年12月以来4年半ぶりのことである。

その後、ドル円相場はいったん99円台まで反発したものの、今月11日には再び95円台まで反落。依然としてドルの上値は重く、さらなる円高進行もありそうな気配である。なぜ急に円高・ドル安が進み始めたのだろうか。

<日銀が飛び込んだマネーゲームの難しさ>

第1の要因は、日本の長期金利上昇とそれを受けた日経平均株価の急落である。4月4日に黒田東彦日銀総裁が示した、「イールドカーブ全体の金利低下を促すことによるポートフォリオリバランス効果」に対する期待とは裏腹に、日本の10年国債利回りは急騰した。

そして、黒田総裁が5月22日に「中央銀行は完全に長期金利をコントロールできるものではない」と発言すると、マーケットは梯子(はしご)を外された形となり、その翌日に10年国債利回りは1%に達し、日経平均株価は暴落した。黒田総裁の狙い通り、イールドカーブ全体の金利が大きく低下するのであれば、投資家が株や外債に資金を移す可能性は十分ある。しかし、金利は上昇してしまったので、株の極端な上昇が支えられなくなったと考えられる。

6月11日の決定会合では市場の予想に反して、金融政策の変更は行わず、株安・円高を誘った。マネーゲームに自ら飛び込み、債券・為替・株式市場を大きく動かそうとした日銀は今、ゲームの難しさを実感していることだろう。期待で動いた相場は、すぐに期待を織り込んでしまい、次の期待を持たせてくれることを際限なく要求してくる。実体経済に本当の変化が起きるまでこの心理戦は続くのである。

第2の要因は、エマージング市場の不安定化だ。米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和政策を縮小させるとの期待が高まる中、米国の金利が上昇し、その結果エマージング市場から資金が流出し、同市場は全体的に不安定な状態が続いている。そこにトルコ反政府デモの激化が加わったこともあって、一部のエマージング通貨・債券・株は大きく下落し、ボラティリティも上昇している。

トルコの株価指数は反政府デモが始まった5月31日から1週間で15%程度急落している。エマージング市場全体でも、5月最終週頃から不安定化し始め、同月29日以降の2週間で見ると、ブラジルやインドネシアの株価指数は11%、タイは10%、フィリピンは8%、ロシアは7%も下落している。また、通貨でも南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアルなどが大きく売られている。

5月半ばまでの半年間で進んだ円安は、ほとんどが海外短期筋の円売りに起因する。したがって、市場に積み上がった円ショート・ポジションは非常に大きいだろう。そして、円ショートの反対側でロングになっているのはエマージング市場の通貨・資産である場合も多いと考えられる。このままエマージング通貨・資産の売りが続くということは、ポジションが閉じられる、つまり、円が買い戻されることを意味するのである。

<円は安全資産だから買われるのではない>

第3の要因は、ほかならぬドルの下落だ。5月半ばまでの半年間のドル円相場急騰のほとんどは「円安」に拠るところが大きいが、5月9日の100円台乗せ以降は「ドル高」に支えられた部分も大きかった。量的緩和縮小に対する期待の高まりなどを背景に、ドル名目実効レートは5月9日から約2週間で3%超上昇した。そのドルが6月に入ってから反落を続けており、上昇分の半分以上をすでに失っている。

実効レートで言うと分かりづらいかもしれないが、ユーロとポンドが対ドルで6月に入って上昇しているのは、ドルが全体的に弱くなってきたからである。ドルは米長期金利が引き続き上昇トレンドにある中で下落に転じており、こうしたトレンドが続くようであれば、ドル円相場に下落圧力をかけるだろう。

このように、日本の債券・株式市場の不安定化、エマージング市場の不安定化、ドル安という3つの要因が今後も続くようだと、ドル円相場の下落トレンドはもうしばらく続くかもしれない。

ただ、第1と第3の要因はそれだけでドル円相場が80円台まで下落するほどのインパクトとはならないだろう。最も怖いのはエマージング市場の不安定化である。ここから出てくる資金の多くは円に戻ってくるはずだからである。よく「安全資産としての円に資金が向けられ」などと言われるが、円は安全資産だから買われるのではない。もともと、円を調達し、それを売って、エマージング通貨・資産を買っているのだから、そのポジションを閉じる時には、円を買い戻し、返す必要があるというだけのことだ。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。

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知財と税金の意外な関係

グローバルタックスマネジメントで企業競争力を高める

2013年6月12日(水)  小林 誠

 日本の法定実効税率は平成24年4月1日以降開始事業年度より38.01%に下がったとはいえ、世界的に見れば米国(40.75%)に並ぶ高い国である(財務省「法人所得課税の実効税率の国際比較」参照)。タックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる法人税の低い国や地域、優遇税制などのメリットを巧みに活用した“グローバルタックスマネジメント”を実施している大企業の話題が後を絶たないが、例えば図1にある通り、日本国内で税金を納める企業が、低い法人税率を誇るアイルランドと同額の分配可能所得を得るためには、アイルランドと比較して1.5倍の利益を稼ぐ必要があると試算される。「どこで税金を払うか」という問題が、企業間競争において強い影響力があることは言うまでもない。

図1:アイルランドと同額の分配可能所得を実現するために必要な利益増加率

出所 アイルランド政府産業開発庁、アイルランドの税制
 2012年11月、英国議会の公聴会で米国を代表する企業である米グーグル、米アマゾン・ドット・コム、米スターバックスの幹部らが同国での課税を回避しているとして糾弾を受けた。スターバックスは、英国内において累計30億ポンド(約4200億円)の売上高に対し連結ベースの利益率(15.5%、スターバックスの2012年Annual Reportより)より4億7千万ポンド(約650億円)の税引前利益が推定されるが、支払い法人税額は860万ポンド(約12億円)にとどまっていたという。

 これら大企業のグローバルタックスマネジメント戦略は、法人税率の低い国で課税所得を引き上げ、税率の高い国で所得を圧縮するという非常にシンプルな仕組みと、テクニカルな知的財産のグループ内での最適配置に基づくものである。今回は、これら大企業のグローバルタックスマネジメントを可能にした、知的財産のマネジメント手法に着目し、節税スキームの事例紹介とその解説を試みたい。

グローバル化する知的財産

 一般的に知的財産に関する権利の帰属先は、研究開発を誰が行い、誰がリスク負担(≒費用負担)をしたかによって決定される。これまで日本企業は、日本国内でのみ研究開発活動を実施し、知的財産を保有、海外子会社に対してはライセンスを付与するケースが多かった。今日、技術・ノウハウなどの獲得を目的としたM&Aや特許権の売買、海外での研究開発・生産拠点や市場の確保に対する積極的な海外展開による外国特許出願の増加により、企業が保有する知的財産のグローバル化が進行している(図2)。

図2:知的財産のグローバル化の背景

 実際に、日本企業における外国特許出願比率は、過去15年で約2倍に増加しており、日本企業が海外展開を積極的に実施しようとしている状況が如実に表れている(図3)。

図3:日本企業における国内+外国出願件数比率(1997-2011年)

World Intellectual Property Organization資料より筆者が作成
知的財産を各拠点で管理させるか?一元管理か?

 グローバルな知的財産マネジメントの手法には大きく多元管理と一元管理がある。すなわち、各拠点で生み出された発明を、それぞれの拠点で管理するのか、それとも一カ所で集中して管理するのかのいずれかだ。

図4:知的財産の管理手法による権利の利用関係の違い

 多元管理の下では、グローバルに展開される各研究拠点で生み出された発明品は、研究と管理の距離が近いため権利化可能な知的財産の発掘が容易で、現地の手続きに即した対応で迅速に権利化できる。また、権利を他法人に使用させることによる収益が見込まれるので、個々の現地法人にとって積極的なライセンス活動及び発明のインセンティブにもなる。個々の現地法人にとっては最適化を目指す環境にある一方で、グループ全体で俯瞰した場合には、特に地域の特性が大きく反映される製品の場合、知的財産の情報を横展開する必要が低く、グループでの管理コスト負担は増加することがデメリットとして考えられる。

 他方、一元管理では、多元管理に比べ権利化前の知的財産に対する権利化の可否判断が統一され、権利化手続きが集中することにより管理コストは低減される。また、情報の一元化と権利の集約化により、知的財産の横展開及び技術料/商標料の管理がしやすくなる。それとともに、グループ内における統一された知的財産戦略・知的財産管理ポリシーなどの実行、移転価格税制や税務メリットに対する全社的対応、競合他社に対する権利行使やライセンス・標準化活動に関する経営の意思決定の迅速化を図ることができる。つまり、結果として知的財産の一元管理は、知的財産を使ったタックスマネジメントや、他社への権利行使も含めたライセンス活動が積極的に行える環境を整備するものとも言える。

 例えば、欧州に存在する子会社、もしくは新設する子会社をグローバルでの知的財産管理会社に位置付け、本社や国内子会社、海外子会社を含めて世界中に点在していた知的財産を集約し、一括してその維持・管理・活用に責任を負わせるとする。一般的に欧州はアイルランドなどをはじめ、日本に比べて法定実効税率が低い国が多い上、統括会社に対する優遇税制を有している国も多く、税務上のメリットを享受できる可能性がある。また、ライセンス活動を行う場合、契約の不備や違反による技術流出を防ぐためライセンシーの監督・管理の徹底は必須であるが、一元管理下では権利の利用関係が1対多数の関係となるため、契約の管理がしやすいスキームであるとも言える。

 ただし、実際に一元管理を実行するためには、現行の事業形態から大きな変更を要する事項が多いため、スキームの設計・実行に際しては、綿密な検討・試算などを要する。また、特許権等の知的財産を移転する際には、グループ内であっても適切な譲渡対価を設定する必要があるため、まずは知的財産の価値評価を実施する必要がある。

グローバル企業が批判を受ける知的財産税務戦略

 グループ内での知的財産の一元管理と各国の税法を巧みに結びつけたグローバルタックスマネジメント戦略として注目を浴びているスキームとしては、ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ(Double Irish With a Dutch Sandwich、以下DIDS)が挙げられる。DIDSは近年開発されたような新しいスキームではなく、従来から活用されてきたもの。低税率国であるアイルランドを活用したグローバルタックスマネジメントスキームを利用しているアップルは批判を受け、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が米議会上院の公聴会に招致されたことは記憶に新しい。

図5:DIDSによる知的財産のグローバルタックスマネジメントスキーム

 DIDSでは、オランダ法人の子会社(N社)を1社、そしてアイルランド法人の子会社を2社(IrX社、及びIrY社)設立する(図5)。アイルランド法人の子会社2社の間にオランダ法人の子会社を挟むことから、DIDSと呼ばれるわけだ。アイルランドの子会社の内1社(IrX社)は英国領バミューダ諸島などの低課税国で管理。もう1社(IrY社)は従業員を抱える電子商取引などのサービス会社とする。その上で権利やロイヤリティの関係は以下のようになる。

米国法人であるグローバル本社は、IrX社へ特許やデザインなどの一定の知的財産を譲渡(あるいは特許権は譲渡せずに米国本社が保有し、ライセンス契約やコスト・シェアリング契約を締結し、IrX社に専用実施権を付与するケースもある)。
IrX社は、英国領バミューダ諸島で管理されているため、アイルランド税法上は非居住者企業となり、3.および4.で受領したロイヤルティ(ライセンス料)についてアイルランドの法人税(12.5%)の課税を回避。
米国グローバル本社とIrX社間でライセンス契約を締結し、米国グローバル本社はIrX社に対して米国事業におけるロイヤルティを支払う。
オランダ法人N社とIrX社間でライセンス契約(サブライセンス権付)を締結し、N社はIrX社にロイヤルティを支払う。ただし、オランダはロイヤルティに対する源泉税が無税のため、IrX社へのロイヤルティ支払について課税を回避。
N社はIrX社より実施許諾を受けたライセンスについて、IrY社とサブライセンス契約を締結。IrY社は実施許諾されたライセンス権をもとに米国外事業を行い、同事業からの収益を計上。IrY社の収益の大半がライセンサーのオランダ法人へロイヤルティとして支払われるが、アイルランド−オランダ間の租税条約により、アイルランドからオランダへのロイヤリティ支払いには源泉税が徴収されないため課税を回避。
 アイルランド法人からアイルランドにある非居住者企業への支払に対しては20%の源泉税が発生するが、この間にオランダ法人を挟む(ダッチサンドイッチ)ことにより、全く税金のかからない形でIrY社が生み出す莫大な利益に対するロイヤルティ収入をIrX社が吸い上げられる。国外の余剰資金を米国グローバル本社に還元しようとすれば配当に対し源泉税が生じるが、そのまま海外子会社での再投資に回せば事業は拡大し、グループ全体の利益は膨らむことになる。また、一部課税されるものの事前確認制度(APA:Advance Pricing Agreement)を活用し、米国内に利益を還流させているケースもある。

 実際にDIDSや類似のスキームを活用したグローバルタックスマネジメント戦略を実行していると言われるグーグルやアップル、マイクロソフト及びサムスンの実効税率を分析した(図6)。

図6:グローバル企業の実効税率比較(法人税には当年度分及び繰延税額を含む)

出所 グーグル、アップル及びマイクロソフトは2012年度のForm 10-Kより、サムスンは2012年度の監査済み財務諸表より金額抜粋
 特徴としては、海外で稼いだ利益に対する実効税率はアップル、グーグル、マイクロソフトがいずれも10%を切っていることである(残念ながらサムスンの財務諸表からは海外分についての記載なし)。これにより米国含めた全社的な実効税率は19%〜25%程度と米国の法定実効税率(40.75%)を大幅に下回る実効税率を実現している。また、3社ともに米国本国以外の海外事業における利益はグループ全体の利益の6割以上を占めており、グローバルタックスマネジメントによる節税効果が大きなものとなっている。

開発拠点の誘致が狙いのパテントボックス税制

 上記のようなタックスヘイブンの国や地域を活用したグローバル企業のタックスマネジメント戦略のトレンドに対し、主に欧州諸国を中心に外国企業の研究開発拠点の誘致と国内企業の研究開発拠点の流出防止を目的とした新たな優遇税制の創設・改正の動きがある。対象知的財産から生じる収益に対して課税が軽減される、いわゆるパテントボックス税制である。既に英国、フランス、ハンガリー、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、スイス、中国の計8カ国で同様の制度が実施されている。当然のことながら国ごとに制度の条件や対象が異なるが、ここでは英国のケースを簡単に紹介したい。

 まず、英国のパテントボックス制度の概要を説明する(図7)。企業の利益を知的財産(「パテント」)などの無形資産から生じる収益とそれ以外の「ボックス」に分け、前者に対しては軽減法人税率10%が適用される。無形資産から生じる収益の算定では、事業に係る総利益から販売活動やマーケティング活動から生じる利益を除算することで、特許から生み出される純粋な収益に対してのみ軽減税率を適用する仕組みとなっている。なお、パテントボックスの名が示すとおり、商標権や意匠権は適用対象外である。

図7:英国パテント・ボックス税制対象所得のイメージ図

 適用対象となる特許は、英国企業又は英国内にある恒久的施設、英国知的財産庁(UKIPO)や欧州特許庁(EPO)、欧州経済領域(EEA)諸国で登録されている特許。このような特許を保有、又は排他的な特許権の使用権を有している状態である場合に適用可能となる。また適用対象となる収益だが、上記の特許権から生じる収益で、具体的にはロイヤルティ収入、発明品から生み出される製品売上、特許そのものの譲渡益、特許侵害による損害金などとなる。

 パテントボックス税制は、欧州で既に開発、生産、販売などを行っている日本企業にとっては多大なる恩恵が期待される。また、英国に限らず欧州諸国のパテントボックス制度のほとんどでは、研究開発が海外で行われていても軽減課税の対象となりうるため、日本で開発された既存の特許権や買収した特許のライセンスを英国子会社に移転して、欧州での生産・販売の拠点とするなどの利用方法が考えられる。

 欧州諸国のこうした動きを受け、日本で知的財産の空洞化加速を懸念する声があがっている。2012年10月に経団連が発表した「平成25年度税制改正に関する提言」では、研究開発促進税制拡充の一環として「パテントボックス・イノベーションボックスの創設」が盛り込まれた。「わが国の現状を放置するならば、日本企業の研究開発拠点あるいは無形資産が当該制度の導入国に移転しかねない。当該制度の創設を急ぐべき」と危機感をあらわにしている。

 しかし政府の対応としては、知的財産戦略本部の知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(2013年4月)の議論において「パテントボックスを平成26年度税制改正に盛り込むのは難しい」との発言がある。これを見る限り、日本での導入は早くても数年かかりそうである。日本企業および日本の国際競争力を高めるためにも、政府は早期に日本版パテントボックス・イノベーションボックスを導入すべきであろう。

日本企業が知的財産を通じて勝ち残るために

 多くのグローバル企業が知恵を絞り、グローバルタックスマネジメント戦略を実行している現状について、いくつかの事例を紹介した。しかし、ここで紹介したDIDSはその手法から、一部では非合法の「脱税」とまではいかずとも「課税逃れ」であるとの批判が高まっている。欧州各国やオーストラリアにおいてはこうした税の抜け穴を阻止する税制改正の動きも浮上している。

 政府や消費者の反発を受けてまで租税回避を実行することを推奨するつもりはない。ただ一方で、日本企業は高い法定実効税率の下で事業を実施せざるを得ない状況にあり、一部の国内企業においては法定実効税率以上の税金を支払っているケースも散見される。この場合、日本企業がグローバルの競合他社に対して、同様の事業内容・製品で同様の売上・利益を計上したとしても、税引後の利益が大きく異なり、国際競争力の低下に繋がる。日本企業としては知的財産の技術的な側面からの競争力を重要視するだけではなく、知的財産を通じたグローバルタックスマネジメント戦略を真剣に検討する必要があるのではないだろうか。

 日本の国内市場がシュリンクしていく中で、今後益々海外展開を積極的に実施していかざるを得ない日本企業にとって、グローバルタックスマネジメントは、単なる節税対策という枠を越え、リスクマネジメントやコンプライアンスの観点からも、非常に重要な経営戦略のひとつとして認識されるべき課題であろう。本稿が、自社の知的財産がどのように管理されているかを再認識し、知的財産を通じたグローバルでのタックスマネジメントに取り組み、節税できる余地はないかを改めて検討いただく機会になれば幸いである。

(本コラムの内容は、筆者の私見であり、グーグル、アマゾン、スターバックス、アップル、マイクロソフト、サムスンが認証した記事ではない)


知財情報から見える企業イノベーション

企業の知的財産部門は、自社の知的財産としての機密情報を扱っているだけでなく、特許情報を中心とする他社の重要な技術情報を日々、入手・分析できる極めて重要かつ特異なポジションにある。これらの知財情報を駆使しつつ、非知財情報(技術情報、リアル情報、市場情報など)による補完をもってすれば、情報戦略戦のハブとなるポテンシャルを秘めている。実際に、アップル、サムスンに代表される先進企業は、知財部門が重要な役割を担い、様々なイノベーションを起こしている。このような先進企業の知財戦略を分析すれば、これまでの日本企業とは違ったアプローチで、イノベーションを起こすことが可能となる。
本連載は、「AIPE認定 知的財産アナリスト」を中心メンバーとして知財と経営を連動させるための様々な方法論を検討する勉強会「知的財産アナリストの会」が担当する。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130605/249182/?ST=print



 

ブログ:法人税減税は総合的議論を
河口 浩一

[東京 10日 ロイター] - 5日に行われた安部晋三首相の講演では、成長戦略の最大の目玉とみられた法人税減税への言及がなく当日の日経平均は急落した。その後、政権幹部から法人税減税の検討を示唆する発言が相次いでいる。

株安を意識しあわてて取り繕った感は否めないが、ここは財務省の反対を押し切ってでも、実施を真剣に検討する価値はあるのではないだろうか。海外の主要国と比べて高水準にある法人実効税率の引き下げを求める声が経済界から出るのはもちろんだが、グローバル化する経済の中で海外から直接投資を呼び込むという観点からも法人税減税の検討は欠かせない。設備投資減税などでお茶を濁せば禍根が残る。

もともと法人税とは奇妙な税制で草創期から相当な議論が行われてきた。法人を株主とは別個の実在するものと捉えて課税するわけだが、法人の所得は個人に分配されて最終的に個人が消費する。所得が個人に分配された段階で所得税を徴収するなら、法人の所得に課税する根拠は希薄になる。極端なことを言えば人間は生きていれば消費をするわけであり、税制を消費税に1本化しても良いはず。そうすれば膨大な徴税コストの節約にもなる。

税制に関する議論は尽きないが、是非とも解決すべきは法人税と配当所得税の二重課税問題だ。配当は企業が法人税を納めた後の利益を株主に分配したものであり、配当に改めて課税すれば株主は二重に税金を払うことになる。

にもかかわらず2014年1月からは配当にかかる税率が現在の税率10%から20%に倍増する。本則に戻るといった報じられ方が一般的だが、現在の証券税制がスタートする2003年以前には源泉分離課税という優遇された税制が併用されていた。多くの投資家は一方で価格変動のリスクを取りながら、20%もの税率を初めて課されることになる。

NISA(少額投資非課税制度)などで小口投資家を優遇するだけでは恐らく不十分であり、税制全体としてみれば二重課税問題がさらに悪化するのは避けられそうもない。企業の国際競争力という観点だけに目が向きがちだが、二重課税問題の改善という意味でも法人税減税と配当課税の総合的な議論が必要だ。配当増税だけ実施し法人税減税を行わなければバランスを欠く。このままでは年末にかけて富裕層による利益確定売りで株式市場は相当な混乱も予想される。

(東京 11日 ロイター)

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有効な政策をスピード感もって打ち出す必要=投資減税で菅官房長官 2013年6月10日
アングル:株安・円高に対応策少ない政府・日銀、法人税減税に財務省は慎重 2013年6月7日
http://jp.reuters.com/article/jp_blog/idJPTYE95A01720130611



ブログ:長期金利はなぜ上がったか
2013年 06月 6日 10:59

志田 義寧

長期金利が落ち着きどころを模索している。投資家の「押し目買い」目線は明らかになりつつあるが、ボラタイルな展開が続く中で、積極的な買いは手控えられている。長期金利に上昇圧力がかかっている理由はいったい何なのか。ロイターが毎週実施しているJGB調査から探ってみた。

ロイターは2011年からJGB市場関係者を対象に「週次JGB調査」を実施。質問内容は、1)今週末の長期金利は上昇/低下/横ばい、2)その判断理由(株価、為替、需給、欧米金利、景気、物価、金融政策、財政などから選択)──などで、毎回20─30人が回答を寄せている。

長期金利に上昇圧力がかかったのは、日銀が「量的・質的金融緩和」踏み切った4月4日以降なので、この間の長期金利を予想する上での判断材料を調べてみた。

まず「物価」だ。アベノミクスを受けてブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が急上昇したのとは対照的に、判断材料として「物価」を挙げる回答者はゼロ─4.2%にとどまっており、回答者が今後の物価上昇についてかなり冷めた目で見ている様子がうかがえる。

「景気」はどうか。4月8日調査では3.7%にとどまっていたが、4月30日調査では19.2%まで急上昇。一瞬「景気回復による長期金利上昇」期待が高まったようにみえたが、その後は4.2─13.3%に再び低下しており、判断するにはもう少し時間がかかりそうだ。

こうした中、他の要因を大きく引き離し、4月4日以降に実施された8回の調査のうち7回トップとなった項目がある。「需給」だ。本来ならば日銀の大規模購入で需給が引き締まり、長期金利の低下要因となるが、コメントでは逆に流動性低下による「ボラティリティの上昇」を懸念する声が相次いだ。

判断材料ごとに過去8回の選択パーセントポイントを足し合わせると、トップが「需給」の509%ポイントで、以下「金融政策」の391%ポイント、「欧米金利」の252%ポイント、「株価」の236%ポイントと続いている。「景気」は79%ポイント、「物価」は15%ポイント、「財政」は17%ポイントだった。

長期金利の上昇をめぐっては「アベノミクスにより、景気・物価に対する目線が上がった自然な流れだ」「いや、日銀の大規模国債買い入れで流動性が極端に低下したためだ」「やはり米金利が上昇した影響が大きい」といった市場参加者の声が聞かれたが、ロイターJGB調査からは物価でも景気でもなく、ましてや財政懸念でもなく「流動性低下によるボラティリティ上昇が主因」という姿が浮かび上がる。

(東京 6日 ロイター)

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