02. 2013年6月13日 17:54:29
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【第339回】 2013年6月13日 田中秀明 [明治大学公共政策大学院教授] アベノミクス第3の矢・成長戦略を斬る 低成長の原因究明がなく“踊る処方箋” ――明治大学公共政策大学院教授・田中秀明 アベノミクス第3の矢である成長戦略の概要が固まった。14日には閣議決定される予定だ。その内容を検討すると、低成長の原因究明がなく、各省庁の予算獲得に向けたウイッシュリスト(欲しいものリスト)の域を出ない。 たなか・ひであき 明治大学公共政策大学院教授 1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年)。 さる6月5日に安倍首相がスピーチを行い、2013年の初めに放った第1の矢(金融緩和)、第2の矢(機動的な財政政策)に続き、最後の第3の矢である成長戦略の大枠がわかった。成長戦略は、正確には、これまで第1弾、第2弾そして第3弾が発表されており、今回の成長戦略はこれまでの集大成である。成長戦略の重要性は論を待たないが、これまで歴代の内閣が成長戦略を繰り返しつくっており、安倍成長戦略は従来と何が違うのか。14日の閣議決定を前に、成長戦略の課題と問題を検討してみよう。
検討する「場」の問題点 最初に取りあげるのが、成長戦略の検討の過程である。安倍政権の成長戦略に関する指令塔が「日本経済再生本部」であり、本年1月8日に第1回の会合が開催された。同本部は、安倍総理を本部長、麻生副総理を本部長代理、菅官房長官・甘利経済再生担当大臣を副本部長とし、全閣僚が本部員となっている。 同本部は、これまで6回開催された(最新の第6回は本年4月2日)。成長戦略について議論が始まったのは第3回(1月25日)からであり、第4回(2月26日)では、関係4大臣からの所管に関する成長戦略の説明、第5回(3月15日)では、TPP(環太平洋パートナーシップ)についての議論、第6回では、電力システム改革についての議論がなされた。 総理や閣僚で構成される日本経済再生本部は儀式を行う場であり、実質的な検討を行うために、日本経済再生本部の下に、成長戦略の具体化と推進について調査審議するために「産業競争力会議」が設置された。同会議は、安倍総理を議長、麻生副総理を議長代理、甘利経済再生担当大臣・菅官房長官・茂木経済産業大臣を副議長とし、12人の議員(山本・稲田の2大臣、2人の学者、8人の企業経営者)で構成される。 産業競争力会議は、第1回(1月23日)から第10回(5月29日)まで精力的に検討を進め、直近の第11回(6月5日)は、成長戦略の素案が示されている。会議では、毎回、関係大臣や民間有識者から、膨大な資料が提出され、それぞれの立場から成長戦略のあるべき方向や内容についての説明がなされている。 首相や閣僚、そして学者や企業経営者などの民間人が一緒に加わる会議は、小泉政権において指令塔となった経済財政諮問会議や民主党政権における社会保障・税一体改革関連の会議などがあり、今回の産業競争力会議もそれらに倣うものだが、実は極めて特異な会議である。 諸外国でも日本の審議会に相当する会議はあるが、それは、一般に、特定の分野における専門家が、プロフェッショナル・スタンダードに基づき検討し、政府に助言や意見具申をするものである。筆者は寡聞にして、諸外国で政治家と学者等が一緒に議論して、何かを「決定する」機関を聞いたことがない。諸外国では、専門家の検討を参考にしつつ、それを採用するか、実施するかは、政府、なかんずく内閣の仕事である。つまり、専門性に基づく検討と政治的な検討や配慮は区別されている。 では、政治家と民間有識者が一緒になって議論し決定することで、何が問題となるのか。産業競争力会議の検討過程では、官僚と民間議員の間で軋轢が生じたことが報道されている。例えば、『朝日新聞』(4月24日)では、民間議員が「株式会社の農業参入の全面自由化」や「混合診療」(公的な医療保険が使える診療と自由診療を組み合わせて使えるもの)を提案したが、これらの規制緩和には業界団体などが反対しているため、農林水産省や厚生労働省が抵抗し、十分な議論はされず、提言も曖昧になったという。省庁の役人たちは勝手に反対しているのではなく、当然、大臣の了解をえて、あるいは指示の下に反対しているわけだ。 筆者は政治的な調整や配慮がおかしいと言っているのではない。また、政治家と民間有識者が一緒に議論してはいけないと言っているわけでもない。大いに議論すればよいが、民間有識者としての提案・決定なのか、政治家の提案・決定なのかがわからないことが問題なのである。民間の提案が常に正しいとは限らないし、それぞれの利益を代表した発言の場合も多い。民主主義である以上、国民から選ばれた政治家が、配慮や調整を行うことは当然である。しかし、両者は区別するべきだ。 何が言いたいかというと、成長戦略を検討する場にそもそもの問題があるということである。まずは、専門家がそのプロフェッショナル・スタンダードに基づき検討し、提案すべきであり、それを受けて、総理大臣を中心とする内閣が判断し、決定すべきだ。 成長戦略の内容 次に、これまでの第1弾から第3弾までの内容を振り返ってみよう。 第1弾は、4月19日の安倍総理のスピーチである。総理は、成長戦略の全体像として、「挑戦:チャレンジ」、「海外展開:オープン」、「創造:イノベーション」の3つのキーワードを挙げている。具体的には、健康長寿の産業育成、日本版NHI(アメリカの国立衛生研究所に相当するもの)の創設、難病対策、失業なき労働移動、海外留学者の拡大、就職活動の後ろ倒し、女性の活用、待機児童解消加速化プラン、子育て後の再就職・起業支援などを提案している。 第2弾は、5月17日の安倍総理のスピーチである。第2弾では、参考資料も配布され、そこには、@民間投資を喚起する成長戦略、Aイノベーションを促す実証先進国、B世界に勝てる大学、C民間投資の拡大、D攻めの農林水産業、Eクールジャパン戦略の6つの柱の分けて、詳細なプランが示されている。 第3弾は、6月5日の安倍総理のスピーチである。内容としては、インターネットによる一般薬品の販売の解禁、先進医療の保険外併用の範囲拡大、国家戦略特区の創設、電力システム改革、レセプトの電子化による新たな産業の創出、インフラ分野での民間活力の活用、PPP/PFIの積極活用などが明らかにされた。また、いくつかの数値目標も示され、3年間で民間投資70兆円を回復させる、2020年にインフラ輸出を30兆円にする・外国企業の対日直接投資残高を2倍の35兆円に拡大する・農林水産物・食品の輸出額を1兆円にするなどである。 この総理のスピーチの元は、第11回の産業競争力会議で示された「成長戦略(素案)」である。実に、100ページに近い報告書である。総論に続いて、3つのアクションプランが詳しく説明されている。第1は、「日本産業再興プラン」であり、@緊急構造改革プログラム、A雇用制度改革・人材力の強化、B科学技術イノベーションの推進、C世界最高水準のIT社会の実現、D立地競争力の更なる強化、E中小企業・小規模事業者の革新の項目が並んでいる。 第2は、「戦略市場創造プラン」であり、@国民の健康寿命の延伸、Aクリーン・経済的なエネルギー需給の実現、B安全・便利で経済的な次世代インフラの構築、C世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現が挙げられている。 第3は、「国際展開戦略」であり、@戦略的な通商関係の構築と経済連携の推進、A海外市場獲得のための戦略的取組み、B我が国の成長を支える資金・人材等に関する基盤の整備が挙げられている。 この会議では、素案に加えて、「成長戦略中期行程表(案)」も示されている。各項目ごとに、予算要求、検討、実施、取組推進、そして達成すべき「成果目標」(KPI)などが細かく書かれている。 成長戦略に欠けているもの 以上、成長戦略の内容を網羅的に書いたが、その政府資料は驚くべき分量である。各省庁や事務局の作業には敬服の至りである。資料には、これでもかというほどの政策の提案が書かれている。また、チャレンジングな数値目標などもあり、安倍総理の強い意気込みが感じられる。政権が成長戦略を重視しているからに他ならない。 が、これらの資料から読み取った率直な感想は、政府は全知全能の神様であり、何でもできるのだという考えである。素案には、成果指標の導入を初め、女性の活用などの良いこと、優れた提案も多い。しかし、これらはほんとうに実現できるのかと正直疑問に思ってしまうのだ。各省庁の役人が、今までの2倍も3倍も働いても実現できるだろうか(全知全能の神様の部下として)。しかも、公務員給与は民主党政権時代から1割も削減されているにもかかわらずだ。 ここで成長戦略の個別の政策を一々評価する余裕はないが、最大の疑問は、個別の政策が真に成長に寄与するのか、よくわからないことである。例えば、国家戦略特区である。特区の可能性を否定しているのではないが、一部の地域のみでの規制緩和や取り組みで、なぜ国全体の成長が高まるのであろうか。全く寄与しないと言っているのではなく、資源の投下に見合って有意に効果があるかである。また、良質な医療・介護へのアクセス、フリーアクセスによって、どうして成長が高まるのか。現在、フリーアクセスによって、膨大な医療資源が無駄遣いされているのに、なぜ成長が高まるのか。その他にも、疑問を抱かざるを得ないものが多くある。 こうした疑問を抱くのは、成長戦略に盛り込まれて政策と成長との因果関係が曖昧だからである。もっといえば、日本が成長できない基本的な問題分析が欠けているのである。成長戦略には膨大な政策が列挙されているが、日本の経済が低成長を続けている問題分析はほとんどない。 例えば、頭が痛い、胃が痛い、足が痛いなどの症状があり、元気がない患者を考えてみよう。医者は、一体何がこうした症状をもたらしているかを、検査や機器、問診などを行い調べる。原因の追究である。病気をもたらしている真の原因がわからないと、正しい処方箋が書けないからである。今回の成長戦略は、例えて言えば、日本経済が成長できない真の理由を分析せずに、処方箋ばかりを書いているのだ。 従って、処方箋で病気が根治できるかどうかよくわからない。いろいろ試して、たまたま当たる可能性もあるかもしれない。しかし、日本の低成長の原因はそう簡単なものではないのではないか。原因を特定しなければ、対症療法を繰り返すだけになるだろう。資源は常に限られているのであり、患部に資源を集中投入しなければ、病気は治せない。 必要なことは、規制が単に強いか弱いではなく、問題の原因についてのデータに基づく分析である。労働市場、生産市場、規制等手続き、生産性などについて、詳細な分析を行った上で、何が欠けているかを明らかにし、それを是正する具体策を成長戦略に盛り込むべきである。しかし、今の成長戦略は、問題分析などまったくなしに、処方箋を出しているのである。 成長戦略では民間投資の喚起に重点が置かれているが、その阻害要因を除去するための手段として規制改革の検討も行われ、その結果は、「規制改革に関する答申」としてまとめられている。これも膨大な報告書だ。規制を所管する各庁省と細部を詰めた努力には敬意を表したいが、これも本当に成長に寄与するのか、にわかにはよくわからない。 規制は極めて技術的な検討が必要なので、筆者も正直分からないことが多いが、例えば、「燃料電池自動車の世界統一技術基準の確立におけるリーダーシップの発揮」、「カルテ等の電子化」、「社会福祉法人の財務諸表の公表」などは、一体、規制改革、そして成長とどのように関係するのだろか。薬のネット販売の規制などはテーマとして理解できるが、そうではないものも結構多く、成長促進にどの規制改革がカギなのかよくわからないのである。 規制というのは、ビジネスにとって「負担」である。それが、規制による便益(国民生活の安全など)と比べてどうなのかという視点で検討すべきではないか。また、電力改革や医療分野の話は、個別の規制の話ではなく、それぞれの市場を全体としてどう改革するべきかという問題ではないか。答申でも、そうした趣旨で書かれている部分もあり、規制改革の話とするのはやや無理がある。 各省庁のウィッシュ・リスト 安倍戦略の内容は、確かにすごい。その分量と意気込みが、である。しかし、残念ながら、本質的には、従来型の域を出ない。成長戦略に魔法の杖はないが、歴代政権がこれまで幾度となく戦略を出しており、それと類似では同じ轍を踏むだけである。 成長戦略の概略を紹介したが、メニューは豊富な一方で、予算制約がない。予算の制約がないのであれば、いくらでも政策を並べられる。しかし、現実には予算に制約はあるわけで、従って、政策の実行可能性が疑われるのである。中期行程表には、今後、予算要求を行うということが堂々と書かれている。 予算制約がないのは当然である。この成長戦略は、従来と同様、各省庁がこれから予算を取るためのウィッシュ・リスト(欲しいものリスト)だからである。だからこそ、予算制約がないといってもよい。最初に予算制約があれば、要求にならないからである。 成長戦略の第2弾や素案をみると、まさに総花である。数は多くても、せめて最優先に3つの施策を実施するといったメリハリがあればよいが、そうではない。総花でなければ予算獲得の材料にはならないからだ。もっともらしく政策は整理されているが、その本質は各省庁が出した玉をホチキスで綴じたものである。 予算を含め資源には常に制約がある。日本が成長できない問題を特定し、それに優先的に政策と資源を投入しなければ、問題は解決できない。 英国の成長戦略 ではどうするか。ここでは、論より証拠として、2011年3月に英国財務省が発表した英国の成長戦略(“The Plan for Growth”)を紹介しよう。同戦略では、まず、4つの目標、すなわち、@G20諸国中最も競争的な税制を構築する、A英国を欧州で最もビジネス環境がよい場所にする、Bより均衡した経済をつくるために投資と輸出を喚起する、C欧州で最も柔軟性があり教育訓練された人材を育成する、が示される。 この4つの目標ごとに3〜5個の達成度を計測するベンチマークが導入されている。例えば、@の税制の目標については、法人税率の低さ、欧州で最も競争的な法人本社の立地、簡素で安定した税制システムである。Aのビジネス環境については、主要な国際的な競争指標での英国の順位、低い規制負荷、許可申請の迅速な処理などである。Bの投資と輸出については、英国への外国直接投資、重要市場における輸出増、低炭素技術への投資増などである。Cの教育雇用については、世界の大学ランキング、欧州地域での雇用規制の低さなどである。 そして、4つの目標を達成するための具体策が書かれているが、それは、既に政府が実施したことに加えて、明確な日程が入った実施予定の政策である。予算額も記載されている。要するに、省庁のやりたいことを並べているのではなく、成長促進のために必要かつ「できること」を書いているのだ。 さらに、戦略では、規制、競争政策、金融、コーポレート・ガバナンスなどの各制度面の分析と対応策が書かれている。また、製造業、医療ケアと生命科学、デジタル産業、専門サービス、小売、建設、観光、宇宙といった重要8分野における市場構造や生産性などの分析と対応策が書かれている。そして、定期的に進捗状況がレビューされている。 英国の成長戦略が成功するかどうかはわからないが、日本と比べて雲泥の差があることは明らかだ。成長戦略のための財政出動、予算獲得のための成長戦略など本末転倒である。国際通貨基金等の研究では、債務残高の上昇は長期的には潜在成長率を低下させることがわかっている。非効率な政府部門を拡大させるからである。経済協力開発機構は、日本の停滞の理由や改革の課題として、労働市場、生産性、参入規制、農業補助金、税制、イノベーションの枠組みなどを挙げているが、今般の成長戦略がこれらの問題に応えているのだろうか。 税制改革の重要性 日本で成長戦略の立案を主導しているのは経済産業省である。経産省にはアイデアはあっても、予算編成や税制改正を主務官庁として所管していない。だから、今後、成長戦略の具体化は財務省に移っていく。しかし、日本の財務省に成長促進のための資源配分や税制改革を行う能力はあるだろか。 今紹介したように、英国で成長戦略を作成しているのは財務省である。この戦略は、正確には、ビジネス及びイノベーション省との共同作成である。なぜ英国では財務省が成長戦略を作っているのか。それは、世界の財務省は、予算中心の役所ではなく、マクロ経済に責任を持つ役所だからである。英国財務省は予算編成も所管しているが、それはあくまでも経済政策の一環である。経済が成長しなければ、財政再建もできないからだ。そして、英国財務省がつくった成長戦略の第一番は税制改革である。 成長のための税制の重要性は世界の常識になっているが、安倍成長戦略にそれはない。財政規律を守ることは当然だが、課税ベースの拡大と税率の引き下げなど、成長促進税制のための知恵を出すべきだ。それは、単に投資減税といった租税特別措置を導入するといった話ではなく、法人税・所得税などについて、財源を確保しつつ、成長促進のための税制をパッケージとしてどのように設計するかということである。 最後に、高等教育、雇用訓練、成長の基盤整備などを所管する教育イノベーション省の設立を提案したい。もちろん組織を作れば問題が解決するわけではないが、目的達成のためにどのような組織をつくるかは、政治の意思そのものである。 安倍戦略は従来以上の意気込みであり応援したいが、これまでできなかったことがなぜ可能になるのか、残念ながら説得的な材料に乏しい。今後、成果指標に基づき、成長戦略を評価することになっている。それは評価するが、政府は、投下資源に対して真に効果をあげているのか、データに基づき説明する必要がある。 http://diamond.jp/articles/print/37345 【第8回】 2013年6月13日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 不安定化した金融市場 円安・株高バブルは、投機でもたらされた 株価や為替レートの乱高下が続いている。日本の金融市場は著しく不安定化した。
株式市場における株価変動の度合いは、「ボラティリティ」という指標で表される。東京証券取引所が計算する株価のボラティリティは、図表1に示すとおりだ。 単にボラティリティが増しただけでなく、株価や為替レートの動向も一転したように見える。2012年秋以来ほぼ一貫して円安になっていた為替が円高になり、上昇してきた株価が、13年5月になって変調した。
こうした状況は、なぜ生じたのだろうか? 以下では、その理由は、昨年秋以来の為替レートと株価が投機によって動かされたことにあると論じる。 具体的には、つぎのとおりだ。 (1)12年11月頃に、13年5月頃までの期間の円安投機が行なわれたと考えると、為替レートの状況を説明することができる。それによって、株価が変動した。 (2)投機を行なう手段としては、直物取引と先物取引がある(注1)が、これらは(取引コストの差を無視すれば)本質的に同一のものである。したがって、投機か否かの差は、直物取引か先物取引かの差ではない。 (3)投機か否かの差は、一定期間経過後に手じまって利益を確定するか否かの差である。これは、投機家の意図の問題であり、データで検証することは不可能だ。 (4)金利は、投機可能性に影響を与える。日本の金利が低下すると、円安投機を誘発しやすくなる。 (5)価格の乱高下は、安倍晋三内閣の経済政策が必然的に引き起こしたものだ。これまでの政策方向からの転換が求められる。 (注1)直物(じきもの:スポット)は、契約した日から2日以内に受け渡しをする取引。先物(フォワード)とは、将来の一定期日に受け渡しをする取引。なお、株式や商品の場合には、「現物」と「先物」という言葉が用いられる。 直物価格が所与なら先物価格は一意的に決まる まず、先物取引について説明しよう。この説明はテクニカルな内容になるが、重要なことであり、また誤解が多いので(大新聞の解説記事でも誤解が頻繁に見られる)、やや詳細な説明を行なっておくことにしよう。 以下では外国為替市場での先物について述べるが、基本的なメカニズムは、株式の場合も同じである。 簡単化のため、円とドルの取引しかないものとし、為替レートは1ドル当たりの円で表示するものとしよう。また、手数料等は無視する。売買益に対する課税も無視する。 先物レートと直物レートの間には、つぎの関係がある。この式は、「金利平価式」と呼ばれる。 (先物レート)/(直物レート)−1=(日本の金利)−(米国の金利) 例えば、2012年11月初めの時点で、13年5月初めに決済する先物を考えよう。 数値をつぎのように設定して数値例で説明しよう。11月初めの時点で、為替レートは1ドル=80円、6ヵ月金利は日本で年利0.08%、米国で0.16%とする(以上は数値例のための設定であり、現実の数字とは正確には一致していない)。 日米金利差は、年利でマイナス0.08%、半年分なのでマイナス0.04%だ。したがって、先物レートは、1ドル当たり、80×0.9996=79.968円となるはずである。 なぜ金利平価式が成立するのか?その理由は、つぎのとおりだ。 仮に、先物レートが1ドル=79円だとしよう。この場合、つぎのような取引を行なうと、確実に利益を得られる。 11月時点で、1ドル借りて、それを直物外国為替市場で売り、80円を得る。他方、先物市場で、80.032円売り、80.032/79=1.013063291ドル買いの契約をしておく。 13年5月の時点では、11月時点で買った80円は、元利合計で80×1.0004=80.032円になっている。これを用いて先物を清算し、1.013063291ドルを得る。他方、ドルの借入に対しては、元利合計1×(1+0.008)=1.008ドルを支払う。したがって、差し引き0.005063291ドルの利益が発生する。 このような取引を、裁定取引と言う。ここで示した裁定取引が利益を生むのは、先物の円が円高すぎるからだ。このため、先物で円を売り、直物で円を買う取引が利益を生むのである。 このような取引は、先物レートが79.968円より円高である限り続く。だから、先物レートは79.968円より円高ではありえない。 他方、先物レートが81円だとしよう。この場合、つぎのような取引を行なうと、確実に利益を得られる(図表2のAを参照)。 11月時点で、80円借りて、直物市場で80円を売って、1ドルを得る。他方、先物市場で1.008ドル売り、81.648(=1.008×81)円買いの契約をしておく。
13年5月の時点では、11月時点で買った1ドルは、元利合計で1.008ドルになっている。これを用いて先物を清算し、81.648円を得る。円の借入に対して、元利合計80×1.0004=80.032円を支払う。したがって、差し引き1.616円の利益が発生する。 この場合は、先物レートが円安すぎるのだ。したがって、先物で円を買い、直物で円を売ればよいのだ。この取引は、先物レートが79.968円より円安である限り続く。だから、先物レートは79.968円より円安ではありえない。 以上の理由により、先物レートは1ドル=79.968円以外ではありえないのである。 先物を用いる投機 以上で見たように、金利が所与なら、直物価格と先物価格は1対1で決まる。何らかの要因で直物価格が決まっているなら、先物価格は一意的に決まる。 先に述べた金利平価式から明らかなように、米国の金利が日本より高い限り、先物は必ず直物より円高になる。 ところで、先物価格は、将来価格の予想ではない。各人(あるいは各機関)の予想は、先物とは必ずしも一致しない。一致しなければ、投機が生じる可能性がある。 最初に、「投機とは何か?」という問題から考えよう。 ここでは、「ある取引を行なうが、一定期間後に反対取引を行なって利益を確定しようとする取引」と定義することにしよう。 先に用いた数値例の場合に、いかなる投機が可能かを説明しよう。A氏は、2013年5月初めのレートは1ドル=81円になると、11月時点で予想したとしよう。つまり、先物レートより円安になるだろうと考えていた。そして、このような価格変化から売買益を得ようとしたとする。 A氏が取りうる手段としては、2つのものがある。第一は、先物を用いる取引だ(図表2のBを参照)。 前述のように、11月初めの時点における5月初め決済の先物レートは1ドル=79.968円だ。そこで、「79.968円売って1ドル買う」という先物取引をする。 5月初めの時点で、先物契約を清算するには79.968円を所有している必要があるので、これを借りる。そして、先物契約を実行して1ドルを手に入れる。 つぎに、この1ドルを直物市場で売る。為替レートがもくろみ通りに1ドル=81円になっていたとすると、81円が手に入る。したがって、79.968円の借入を返済したあと、1.032円の利益を得られる。 11月初めのA氏の取引は、先物市場での円売りドル買いだ。したがって、このような取引が巨額になれば、先物為替レートは、11月から次第に実際に円安になっていくだろう。それは、他の投機家による投機を誘発する可能性もある。 ところで、こうした取引は、先に述べた金利平価式によって直物レートに影響する。金利が不変とすれば、先物レートが円安になるにしたがって、直物レートが円安になっていく。 5月初めのA氏の取引は、為替レートにいかなる影響を与えるだろうか?まず、先物契約の実行で円を売ってドルを買うが、これは為替レートに影響を与えない。なぜなら、為替市場は、このような取引が行なわれることを知っているからだ。そして、円売りドル買いの裁定取引が起こって、為替レートは円安になっていた。 投機を手じまう(利益を確定する)ためにA氏が行なうドル売り円買いは、為替レートに円高方向の影響を与える。 結局、A氏が以上のような取引を行なうと、為替レートはつぎのように変動することになる。 まず、11月初めから、徐々に円安が進む。そして、5月になって急激に円高に反転する。 では、A氏がこうした投機を行なうのは、いかなる場合だろうか?A氏が予測に絶対の自信を持っているなら、5月初めのレートが先物レートである79.968円より円安である限り、こうした投機を行なうだろう。 しかし、普通は予測は完全なものではない。外れることもある。だから、予測の期待値が79.968円より一定程度離れていない限り、投機は行なわれないだろう。この差のことを「リスクプレミアム」と言う。 直物を用いる投機 投機を行なう手段は、先物だけではない。直物取引を用いて投機を行なうこともできる(図表2のCを参照)。 具体的には、11月初めの時点で円の借入をし、直物為替市場で円を売ってドルを買えばよいのである。例えば、80円借りれば、1ドルを購入できる。そして、これを預金しておく。 5月初めの時点では、ドルの元利合計は1.008ドルとなっている。これを直物為替市場で売って円を買う。もくろみ通り1ドル=81円になっていたとすれば、1.008×81=81.648円が手に入る。他方、円での借入の元利合計は、80×1.0004=80.032円になっている。この元利合計額を返却した後、1.328円の利益を得る。このように、直物によっても、先物を用いる場合とまったく同じように投機ができる。 11月初めのA氏の取引は円売りドル買いなので、為替レートに円安方向の影響を与える。このような取引が巨額になれば、為替レートは11月から次第に実際に円安になっていくだろう。 5月初めのA氏の取引はドル売り円買いなので、為替レートに円高方向の影響を与える。 つまり、この場合の為替レートの推移は、先物で投機が行なわれている場合とまったく同じである。 以上で見たように、直物によっても、先物を用いる場合とまったく同じ投機ができることに注意が必要だ。これらの取引の間に本質的な差はないのである。 違いは、取引コストにある。これまでの数値例で明らかなように、直物で投機をするには、11月初めの時点で円の借入をする必要がある。これは、容易ではないかもしれない。 それに対して、11月初めに先物で円売りドル買いを行なう場合には、基本的には何の元手もなく契約できる。現実には、一定の証拠金を提出する必要があるが、直物投機の場合の借入に比べれば、はるかに容易だ。その意味では、巨額の投機は、先物を用いて行なわれる場合が多いと言えよう。 日本の金利低下は、円安投機を誘発する A氏の投機の例を今一度思い出そう。すでに説明したように、彼の予想が(先物価格+リスクプレミアム分)より円安であれば、円安投機をする。 ところで、直物レートが所与のとき、日米金利差の絶対値が大きくなるほど先物価格は円高になる。こうなるのは、日本の金利が低下するとき、あるいは、米国の金利が上昇するときである。 例えば、前に用いた例(11月初めで、為替レートは1ドル=80円、6ヵ月金利は日本で年利0.08%、米国で0.16%)で、日本の金利が0.06%に低下したとしよう。日米金利差は、年利でマイナス0.1%、半年分なのでマイナス0.05%だ。したがって、先物レートは、1ドル当たり、80×0.9995=79.96円となって、前の場合の79.968円より円高になる。 A氏の将来レートに関する予想が一定であれば、こうなった場合ほど、投機を行なう確率は高くなる。 つまり、日本の金利低下、または米国の金利上昇は、円安投機を誘発するのだ。 しばしば、米国の金融緩和QE3の終了予測が株価下落の要因であると言われる。しかし、為替レートに関して言えば、QE3の終了は米国の金利上昇を意味し、したがって円安投機を促進する要因であることに注意が必要だ。 投機の存在は、データではわからない 直物を用いる投機が行なわれている場合も、先物を用いる投機が行なわれている場合も、先物市場と直物市場で円安が進む。そして、先物が用いられている場合も、裁定取引によって直物市場での円売りドル買いが行なわれている。 したがって、直物を用いる投機が行なわれている場合と先物を用いた投機が行なわれている場合は、現実のデータによっては区別ができないわけだ。 「先物を用いた投機が行なわれる場合は、まず先物レートが円安になり、時間をおいて直物レートが円安になる」などということはない。裁定取引は瞬時に行なわれるため、「どちらが先に動いたか」などという判別はできないのである。少なくとも、公表されているデータを見るだけでは判別ができない。 「先物残の多さで投機の程度を判断できる」ということも、しばしば言われる。例えば、5月で決済する先物取引の残高が多額であるとすれば、「5月初めに、投機の手じまいのためにドル売り円買いが起こるから、円高になる」というのである。 しかし、先物のすべてが、このように手じまわれるわけではない。「何らかの理由で5月初めにドルが必要であるために先物で手当てした」という場合もある。例えば、5月初めに農産物を輸入する必要があり、輸入代金を円建てで確定しておく必要がある場合などだ。先物の本来の機能は、こうした目的のためにドルを手当てしておくことなのである。こうした場合には、ドル売り円買いは起こらないから、急激な円高も起こらない。 逆に、直物による投機が行なわれて、前の例のように手じまわれる場合もある。その場合には、5月時点で急激な円高が起きる。つまり、先物残がないにもかかわらず、投機の手じまいによって円高が生じるのだ。 このように、投機の有無は、直物か先物かという形式を見るだけでは判断できない。取引者の意図がどうであるかが問題だ。つまり、一定期間後に反対取引をして手じまい、利益を確定する予定であったか否かである。それは外部からはわからない。 「先物取引は投機に用いられて価格の変動を拡大するから、規制すべきだ」との意見がある。しかし、すでに述べたように、先物取引の本来の機能は、価格変動に対するヘッジだ。それを規制しては、ヘッジができなくなる。投機が望ましくないというなら、そうした規制を行なうのではなく、後で述べるように、投機を挫くような努力をすべきだ。具体的には、安易な金融緩和を行なわず、また、投機を誘引するようなメッセージを発しないことだ。 なお、現実には、価格下落への投機規制が叫ばれる半面で、価格上昇への投機は放置されることが多い。株式市場では、株価の下落期には、カラ売りが規制されることが多い。しかし、株価が上昇するときには、先物による投機は何も規制されない。このように、著しい非対称性がある。 ボラティリティの増大は、投機の存在を示唆する このように、データによっては、投機の存在を確認することは難しい。 ただし、いくつかのデータが傍証になる。 第一は、価格推移だ。これまで述べてきたように、2012年秋から円安と株価上昇が生じ、13年5月で傾向が反転したという現実の価格の推移は、「5月頃までを期間とする投機が11月頃から行なわれた」と考えれば、うまく説明できる。 投機が存在したもう一つの傍証は、冒頭で述べた株価のボラティリティ増大だ。仮に、株価の上昇が、企業の生産性上昇、新技術や新事業の開発、経営効率化等の実体的要因によって生じたのであれば、このようなボラティリティ増大は起こりにくい。 本当に必要なことは、実体経済を変える地道な努力を続けることである。金融政策については、金融緩和が常に投機を誘引することに注意し、投機をおびき寄せないように注意することだ。 http://diamond.jp/articles/print/37340 【第69回】 2013年6月13日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] 失望売りと報道された 日銀政策決定会合の見方 日銀は10〜11日、金融政策決定会合を開き、「量的・質的金融緩和」を継続することを決めた。決定の発表は11日11時48分。東京証券取引所の前場は11時30分まで後場は12時30分からで、その間は昼休み。通常後場に日銀の政策決定会合の発表が行われるが、今回は昼休みの間で公表となった。前場は決定会合を控えて様子見であったが、後場から一時決定会合の結果への失望売りがでた。 後場の後に行われた黒田東彦総裁の記者会見でも、長期金利の上昇懸念にはゼロ回答とかで、円高加速という局面もあった。これらから、市場関係者は日銀に失望などと報道されている。アベノミクスはもう終わりとかいう意見もでている。日銀の金融政策をどのように考えたらいいのだろうか。 市場関係者たちの誤解 まず市場関係者によくある話だが、自分の予想通りでないと失望という話だ。もちろんポジション・トークなので、正直といえば正直だ。 そもそも日銀の金融政策は、株式市場、為替市場などの資産市場の価格に影響を与える目的でやっていない。一方、資産価格は金融政策の結果、マクロ経済変数の動きに左右される。このため、日銀にとって資産市場価格は見るだけであるが、資産市場関係者にとって日銀の一挙手一投足は目が離せない。 いうなれば、資産市場関係者から日銀への片思いだ。しかも、資産市場関係者は山ほどいるので、すべての人の話は聞けないし、特定の者の話だけを聞いたら依怙贔屓(えいこひいき)になる。このため、日銀は資産市場価格のデータをちらっと見るだけだ。 このチラ見を日銀では市場との対話とかいうこともある。資産市場関係者はこの言葉を牽強付会に解釈し、自分たちの思いが日銀に伝わると誤解している。資産市場関係者の思いは各人バラバラなので、日銀からみれば、方向感すら意味がないだろう。 例えば、株価が乱高下するといい、あたかも悪いことのように報じられる。しかし、オプション取引をしている投資家から見れば、乱高下はオプション価値が高まるので大歓迎だ。現物取引の投資家だって、乱高下を好む人も多い。失望売りで株価低落といっても、先物で儲けている人にとっては思惑通りだ。 そして、株式市場はいろいろな思惑で取引される。政策決定会合の前日に、一部の新聞で、金融機関に対して年0.1%の低利資金を貸し出す「固定金利オペ(公開市場操作)」の期間を、現行の最大1年から2年以上に延長する案が検討されると報じられた。この案自体は実体経済に与える政策としてはたいした話でないが、思惑で動く投資家にとっては、案が実現するかどうかがポイントだ。 「実現する」に賭けた投資家は株価指数先物などを先回りして買っていた。それが実現しなかったわけだから、今度は売りに回る。それを「失望売り」を報道するわけだ。勝手に賭けてそれが実現しないと「失望」になる。検討されると報じた一部の新聞では、市場関係者の声がでており、思惑に賭ける投資家の「催促」に新聞が応じたのかもしれない。 市場は「駄々っ子」 資産市場は常にこうした話がつきまとっている。言葉は悪いが、市場は「駄々っ子」の集まりのようなものなので、これにいちいち金融政策で対応したら政策として支離滅裂になる。 しかも、資産市場は思惑を取り込むのでオーバーシュートしやすい。下図は、2000年代における日本、アメリカ、イギリスの株価の半年間の上昇率を示したものだ。 これを見ると、リーマンショック時を除き、ほとんどの上昇・下落は20%以内である。40%以上になることはまずない。ところが、最近の株価の半年間の上昇率は80%にも達していた。これでは一時的な調整のための小休止もやむを得ないだろう。ここ2、3週間で下落したといっても、半年間前と比べれば40%程度の上昇になっており、さらにそれ以上を求めるのは強欲というものだろう。
キーワードは予想物価上昇率 このような資産市場の特徴を理解した上で、最近の市場の動向を見ていると、新しい日銀の政策にまだ慣れていないところが大きいと思う。新しい日銀は、政策論としては当然なのだが、市場の予想に働きかけている。 新しい黒田日銀が採用しているインフレ目標には、株式や地価などの資産市場の「価格」は含まれておらず、一般の財・サービスで構成される消費者物価指数が目標対象だ。 それを達成する上で、4月4日以来の日銀の公表文書で頻繁に使われる「予想物価上昇率」がある。前の白川日銀時代には使われていなかった言葉だ。これこそ、黒田日銀のキーワードである。 11日の決定会合でも、「予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる」、金融政策は「実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている」と、4月4日と同じ表現ぶりだった。 予想物価上昇率は、様々な指標でチェックできるが、その一例として物価連動国債から算出するブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)がある。物価連動国債の市場は、財務省がリーマンショック後に発行停止したこともあり流動性にかけているという問題があるものの、一応の参考になる(物価連動国債は今年度中には発行再開になる予定)。 もっともBEIは、最近2週間くらいは低下している。筆者のこれまでの国内や海外での計測では、マネタリーベースの増加から半年程度後で上昇するのだが、今回はかなり先取りして急ピッチで上昇してきた。このため、その調整があったと見ている。ただし、半年前、一年前と比較すれば上昇の傾向には顕著な変化ない。 このBEIの低下と株価の低下はともに同時期に起きている。これまでのデータではこうした現象はない。ということは、BEIも株価も「先取り」の程度が急ピッチ過ぎて、調整が行われたようだ。 予想物価上昇率の傾向的な動きに変化がない限り実体経済も影響も少なく、金融政策が大きく変更されるべきでない。この意味で今回の日銀決定会合での結論は妥当である。目先の市場の動きで金融政策が左右されたら、かえって実体経済に悪影響になる。逆にいえば、予想物価上昇率に変調があれば追加金融政策もあるだろう。 http://diamond.jp/articles/print/37339
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