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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130610-00014242-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 6月10日(月)8時0分配信
安倍政権誕生以降、急激な円安が進み「為替」への関心が高まっている。円安は本当に日本経済を救うのか? それとも輸入物価の高騰を招き国民生活を疲弊させてしまうのか? そこで、『円安vs.円高 どちらの道を選択すべきか』を著し、「円安こそ日本再生の最強の処方箋」と主張する藤巻健史氏に、日本のあるべき通貨政策について語ってもらった。第2回目(第1回はこちら)「通貨政策がいかに国家の命運を決めるのか」、さらには「アベノミクス政策の見通し」について明らかにする。
円安による再生というと、すぐに輸出産業のことが頭に浮かぶでしょうが、円安で再生するのは輸出業者だけではありません。農業も再生するのです。内需産業の代表格である農業をダメにしたのも、実は円高だということを述べたいと思います。
■ 農業をダメにしたのも円高、円安ならTPPも怖くない
先日、沖縄に旅行した際、名産のサトウキビ畑が1980年代に訪れたときと比べて激減した印象を受けました。往時の1ドル=240円から80円と円が3倍も強くなり、外国産砂糖が3分の1の値段で買えるようになったからです。沖縄産のサトウキビが競争力を失うのも無理はありません。農業も製造業と同じで、国内需要をいくら喚起しても、円高を是正しなければ、儲かるのは国内の生産者ではなく外国の生産者ばかりです。農業問題の核心は一農家、一農業団体の努力の限界を超えた為替問題にあると見るべきでしょう。
ですから、TPP(環太平洋経済連携協定)問題も、為替の視点を持たないと事の本質を見誤ってしまいます。TPPの議論を聞くたびに思い出すのが、2001年に安い中国産野菜の輸入が急増したときのことです。農業団体が霞が関の経済産業省前に押し寄せ、「セーフガード(緊急輸入制限)の本格発動」を求めるビラを配っていました。あのとき、私はこう思ったものです。農家の人たちは経産省の前ではなく、通りを渡って反対側の財務省か、あるいは国会の前で「円安を! 」のビラを配るべきだと。TPP問題もまったく同じ構造なのです。
報道によると、政府・与党は「TPP参加ですべての関税が撤廃された場合、国内総生産が3兆円超増える半面、安い農産品の輸入で農林水産業の生産額は最大3.4兆円落ち込む」との試算をまとめました。「安い農産品の輸入……」とありますが、そもそも外国産農産物が高いか、安いかを決める最大要因は為替であり、関税ではないはずです。たとえば10%の関税障壁をなくしても、円が10%安くなれば輸入農産物の国内価格が上がり、撤廃された関税分はチャラになるのです。
私は、日本経済にとってTPP参加は不可欠だと思っています。だからこそ日本の農家や農業団体には、ぜひ「円安を! 」と声を上げていただきたい。もともと味や安全性の点では折り紙付きなのですから、円が大幅安になれば、関税の厚いコメは別にしても、大半の国産農産物は十分に国際競争力がつくはずです。TPP、恐れるに足りません。
■ 米国は、本心ではでドル安を望んでいない
ちなみに米国の農業団体や自動車労組は「ドル安を! 」と主張して、よくニュースになったりしています。政治家もそうした産業従事者の地元では、リップサービスとして「ドル安が好ましい」と匂わせる発言をします。だからと言って、米国は本気でドル安を望んでいるのでしょうか。私が「円安がいい」と言うと、「ドル安を願う米国に怒られるから、円安政策は無理だ」と奇妙なロジックを持ちだす人がいますが、本当にそうでしょうか。
ドル安で自国の農業や自動車産業を守ることと、「基軸通貨」としての強いドルの地位を守ることの、どちらが米国にとって重要かということです。論をまちません。ドルが「基軸通貨」であり続けることのほうが、はるかに大きな国益なのです。したがって「その地位を失うリスクのあるドル安政策」を採るはずがありません。ドルが強い基軸通貨であるかぎり、米国はドルを刷りさえすれば、世界中の富を手に入れることができます。こんなおいしい話はないのですから。
「円安誘導は米国が許さない」などという俗論は百害あって一利なし、早く払拭したいものです。だいたい許すも、許さないもありません。今や欧米では日本経済に対する興味そのものが急速に失われつつあり、極端な話、日本の経済がどうなろうと、知ったことではないのです。いわゆる「ジャパンパッシング」です。世界経済における日本のプレゼンスが、それほど小さくなってしまったということでしょう。もちろん円高を放置して、国力を衰退させてしまったせいです。
■ 中国の躍進も、人民元の大幅安から始まった
そうしたわが国の愚かな行為に学び、かたくなに自国通貨安を守り抜いている国があります。中国です。中国は、国際社会からの人民元切り上げの要求にのらりくらりと対応し、決して応えようとはしません。
1980年代は1人民元=160円でした。それが今では10分の1にまで安くなり、1人民元=16円程度です。「中国は労賃が安いから成長した」とよく言われますが、あの国の労賃が安いのは今に始まったことではありません。それなのに、なぜ「世界の工場」として急成長したかというと、1990年代後半に突然、通貨が安くなったからです。労働力の対価も当然、為替で決まります。これだけ人民元がずっと安かったからこそ、中国は世界の工場として繁栄できたわけです。
■ 残念ながら、アベノミクスは「時すでに遅し」
前回、安倍政権の円安を進めようとする姿勢は結構だが、金融緩和によって円安に導くという「進め方」が違うと申し上げました。アベノミクスについては、その進め方だけでなく、もうひとつ大きな問題を指摘しなければなりません。それは「時期」の問題です。これが最も深刻な結果、つまり日本の破綻につながる最大の要因だと私は考えています。
私は過去20年にわたって、円安による日本再生を主張し続けてきました。ちょうど10年前の小泉改革時においても、構造改革は進んでいて、日本の将来は結構明るいと思っていました。その後も円安対策さえ打てば、経済のソフトランディングは可能だという信念のもと、あらゆる機会をとらえて、さまざまな施策を提案してきたつもりです。
しかしながら、その間に何が行われたかというと、何も行われませんでした。
為替政策は手つかずのまま、構造改革はむしろ明らかに後退しているではありませんか。私の提案はことごとく異端扱いされ、相手にしてもらえませんでした。せめて5年前に円安政策が実施されていたら……そう思うと、自分の至らなさが悔やまれてなりません。
■ 財政は破綻するが円安で市場原理効き、日本は再生へ
残念ながら、安倍首相の経済政策は早晩行き詰まるでしょう。手法を間違えていること以上に、時期が遅すぎたのが致命的です。1000兆円超という現在の政府の累積赤字は、あまりに大きすぎます。ここまで借金が膨らんでしまったら、財政はもうもちません。残念ながら、タイムオーバーです。
家計にたとえれば、年収が460万円なのに銀行から借りまくって900万円も使うような生活をしているのですから。事ここに至っては、微調整の円安誘導によるマイルドなインフレは難しいでしょう。円の暴落とハイパーインフレを伴う過激なハードランディングしかありません。
ここで注意しなくてはいけないことは、「私は財政が破綻する」と言っているのであって、日本が破綻するわけではないのです。第2次世界大戦で「大日本帝国」はなくなりましたが、「日本」は力強く生き延びたのと同じです。
そして、その破綻がどんなに過激であっても、それはいわゆる「創造的破壊」であり、最終的には市場原理が機能して日本は再生すると、私は確信しています。効果のない量的緩和をだらだらと続けて、いたずらに傷口を広げるくらいなら、いっそ早く破裂したほうがいい。破綻の後、円が大幅に弱まれば、日本は一気に救われます。ハイパーインフレが不可避なら、むしろそれを前向きにとらえ、円安をV字回復の足掛かりとすべきなのです。
創造的破壊を早め、その後に続く日本再生をも早めたリーダーとして、安倍首相は歴史に名を残すかもしれません。皮肉ではなく、私は本当にそう思っているのです。
東洋経済オンライン編集部
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