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2013年6月10日 植草一秀の『知られざる真実』
6月7日のNYダウが207ドルの上昇を示したことで、安倍政権は胸をなでおろしていると思われる。
6月7日の東京市場では、日経平均株価が続落し、12877円で引けた。
5月22日の終値15627円から12営業日で日経平均株価は2750円も下落した。
昨年11月14日の終値が8664円で、半年かかって6963円上昇した値幅の39.5%にあたる2750円が、わずか半月で消滅してしまったのである。
アベノミクス絶賛の嵐のなかで、参院選に臨もうとしていた目論見が潰えかけている。
安倍晋三氏の狙いは、自公とみんな維新で国会を占拠することにある。
衆参の議席の大半を占拠して、国政選挙空白の3年間を迎える。これが、安倍晋三氏が描いているシナリオである。
ところが、株価急落が持続すれば、このシナリオが狂い始める。
憲法96条改正先行論を牽引するもうひとつの主役が橋下徹氏が共同代表を務める「維新」であるが、こちらもすでに取り返しのつかない状態に陥っている。
マスメディアが懸命に橋下維新の応援団を買って出ているが、日本の主権者に思考能力があるなら、橋下維新の復活はあり得ないと思われる。
順風満帆の航海の前途に、にわかに暗雲が垂れ込めてきているのである。
6月5日には安倍晋三氏がアベノミクスの三本目の矢だとする成長戦略を昼の講演会で、意気揚々と開陳した。
この演説を受けて、株高に弾みをつけて、夜の7時、9時のNHKニュースで華々しく取り上げてもらう段取りだったのだと思われる。
NHKニュースウォッチ9などは、CGでなく、スタジオにリアルな大パネルを用意して、「成長戦略」の大キャンペーンを用意したが、株価急落で、こちらも目算が狂ったことだろう。
安倍氏が講演で成長戦略を語った直後から、株価は音を立てて崩れて、午後の取引だけで、日経平均株価が700円も急落した。
その後も株価の下落は止まらず、為替市場では、1ドル103円台後半まで円安に振れた円ドルレートが、6月7日には、1ドル94円台にまで急反発した。
円安−株高の流れが、円高−株安の流れに転換してしまい、ここに、米国の株価急落が重なれば、安倍政権の致命傷になりかねない情勢が急浮上していた。
米国金融市場と日本市場との関係は、微妙なものになっている。
日本の株式市場では、2011年以降、明確に円ドル連動の傾向を維持している。
円安が株高、円高が株安の関係が続いてきた。
この関係からすれば、円安、ドル高が進むことが、日本の株価上昇要因になる。
ドル高になる環境とは、米国景気が強く、米国長期金利が上昇するような局面だ。
この意味からは、米国経済指標は強めが良いということになる。
ところが、米国の金融市場がいま、一番気にしていることは、FRBの金融緩和政策の縮小である。
QE3と呼ばれる、量的金融緩和政策が、いずれかの時期に縮小される。
米国の株高は、量的金融緩和を背景に進行してきた経緯があるため、米国の金融政策が量的緩和を縮小する場合、株式市場には少なからぬショックが走ると警戒されているのだ。
6月7日の米国5月雇用統計は、緩やかな景気回復持続を示すものになった。
この統計を受けて、米ドルは上昇し、NYダウも200ドルの反発を示したわけだ。
ドル高は円安で、週明けの東京市場では、為替の円安反転とNYダウ上昇を受けて、大幅に株価が反発して取引が始まる可能性が高い。
とりあえずは、目先の底値確認との見方も浮上するかも知れない。
しかし、それだけをもって、手放しの楽観はできない。
なぜなら、米国景気が強く、米金利が上昇し、ドル高が進行するという経済環境は、米国金融政策を緩和縮小の方向に一歩近づけることになるからである。
米国景気が堅調でドル高傾向が生じるのは、日本の株式市場にフォローの風となるが、その延長上に、猛烈な逆突風をもたらす可能性があるのだ。
ここから先は、非常に複雑な連立方程式を解いてゆかなければならない局面に入る。
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