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ECB債券購入、破綻回避でなくユーロ防衛が目的=ドラギ総裁 2013年 06月 11日 07:04 JST [フランクフルト 10日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、ECBの債券買い入れプログラム(OMT)はユーロを守るためのもので、ユーロ加盟国の破綻回避を支援する目的で債券市場に介入することはないと言明した。債券買い入れプログラムに関する独憲法裁判所の公聴会が11─12日開催されるのを前に、独ZDFテレビのインタビューに応じた。ドイツではECBの債券買い入れをめぐり、負担増への懸念が高まっている。 総裁はその中で「ユーロ圏に信頼感に対する危機が存在し、これによりある国の支払い能力がファンダメンタルズの範囲を超えずに脅威にさらされている場合、ECBには介入する用意がある」と述べた。 ただ、「こうした国の財政が放漫である場合、 われわれは加盟国の支払い能力を確実にすることを目的に介入はしない」と述べた。 債券買い入れプログラムに関する独憲法裁判所の判断は、9月22日のドイツ総選挙以降にならないと下されないとみられている。 ドラギ総裁は、ECBが過去に実施した債券買い入れ規模は他の主要中銀の買い入れ規模を下回っているとも指摘。OMTの発表以降、市場が沈静化したことで「ドイツ納税者のリスクは1年前に比べて著しく低下した」との認識を示した。 またECBの政策金利は景気回復への信頼感が戻れば再び引き上げられると述べた。 ドラギECB総裁は、ユーロ加盟国では前年、財政赤字・公的債務の削減、および競争力の向上で目覚しい進展が見られたと指摘。このため、それぞれの国に対し異なる水準の金利が必要との主張は部分的にしか正しくないとの考えを示し、「それぞれの国のファンダメンタルズを反映するスプレッドは必要だが、こうしたスプレッドを人為的に縮小させることは完全な誤りだ」と述べた。 その上で、ECBは「ユーロに対する信頼性の危機によるスプレッドを取り除くこと」にコミットしていると述べた。 ECB政策スタンス、必要な限り緩和的であり続ける=ドラギ総裁 2013年6月6日 ユーロ圏経済に安定化の兆し、OMTは市場安定に寄与=ECB総裁 2013年6月3日 ドルが対円で3営業日続伸、強い米雇用統計後の買い続く=NY市場 2013年5月7日 ECB当局者、財政再建の堅持不可欠と再表明 2013年4月25日
【第3回】 2013年6月11日 神足恭子 「第三の移民の波」を迎えるドイツの国内課題 少子高齢化の日本が学ぶべき経済・移民制度改革 第三の移民の波を迎えるドイツ 東欧・南欧からの流入が急増
?ドイツは経済のみならず移民受け入れの面でも、欧州において強さを示している。ドイツは欧州の移民受け入れ大国であり、約8200万人の人口の5分の1は移民の背景を持つとされている。 ?2011年の在住外国人は約730万人で、全人口の約9%を占め(日本は1.63%)、うちトルコ人が約161万人(23.3%)、イタリア人が約52万人(7.5%)、ポーランド人が約47万人(6.8%)、ギリシャ人が約28万人(4.1%)と続く。また、ドイツからの移民の流出も多いが、2010年の欧州金融危機以降はネットでの流入がプラスとなっている。 ?ドイツの移民流入の第一の波は、第二次世界大戦後の経済復興期に労働力確保のため、西ドイツがイタリアやトルコなどと二国間協定を結んで外国人労働力を大量に受け入れたことに始まる。この結果、1950年には約50万人であった外国人定住者数は、1970年には約300万人に増加する。 ?1973年の石油危機で、政府は国内の雇用確保の観点から労働者の国外募集を禁止し、帰国促進政策をとったが、すでに流入していた外国人労働者は長期滞在し、家族を呼び寄せるなど、外国人の数はトルコ人を中心に80年代から再び増加する。 ?第二の波は、冷戦末期から1990年代初頭にかけて、東欧および旧ソ連の政治的変化を背景とした庇護申請者の大量流入や、バルカン情勢の悪化に伴う旧ユーゴ地域からの難民の大量流入である。 ?また、同時期に、「アウスジードラ―」と呼ばれる19世紀ごろからロシア・東欧に定住したドイツ人子孫のドイツへの帰還民の入国も増加した。 ?この背景には、ドイツはナチスによる政治的迫害への反省から、政治的迫害を受けている者に対する庇護請求権が容認されていることがある。 ?そして今、ドイツは第三の移民の波を迎えている。EU域内からの移民の流入が急激に伸びているのである。 ?昨年ドイツに来た外国人は約100万人で、1995年以来最多であり、そのうち約3分の2は東欧や南欧などのEU域内からの流入であった。特に、重債務に悩むイタリア、ギリシャ、ポルトガルといった国からの流入は前年比40%以上伸びている。 ?EU市民は1992年のマーストリヒト条約で、自国と同様の待遇で他の加盟国で働くことが認められており、この制度を利用して流入が増えている。 少子高齢化と高度人材不足のドイツ 高い失業率に喘ぐ南欧と東欧諸国 ?移民には受け入れる側のプル要因と送り出す側のプッシュ要因とがあるが、ドイツの場合のプル要因は、少子高齢化と良好な経済状況下での高度技術者の労働力不足だ。 ?連邦統計庁によると、2011年にドイツの人口に占める現在65歳以上の割合は20.6%であり、日本の23.4%に続き世界で2番目の高齢国である。出生率も世界で最も低い国の1つであり、2012年は1.41と算出されている(CIAファクトブック。日本も今月5日厚労省の発表では1.41)。 ?15歳から64歳までの生産年齢人口は、国連の試算では2010年から2050年までの間に約25%減少するという(日本は32%)。もはや、移民なくしては労働力を維持できない状況となっている。現に、ITや機械、電気、医療などの分野で人手が不足している。 ?このドイツの高度人材の需要は、南欧諸国のプッシュ要因とマッチする。南欧諸国は国内の経済の急激な悪化により、若者が就職口を求めてドイツに流入している。 ?ギリシャやスペインといった国々は15歳から24歳の若者の失業率が50%以上と高く、ポルトガルやイタリアでも35%程度である。彼らは従来の移民と異なり、高学歴の若者が多く、即戦力ある働き手となり得るため、ドイツでは現在のところ「頭脳流入」として歓迎をされている。 ?一方、東方に拡大した新EU加盟国の国民にとっては、地理的に近く、経済状況が良いドイツが魅力に映る。ハンガリーやポーランドは2004年に、ルーマニアやブルガリアは2007年にEU加盟したが、特に後者からのドイツへの移民は、EU加盟以来6倍に増え、併せて25万人の移民がドイツ国内に居住している。 ?この東欧からの移民は、必ずしもドイツでは歓迎されているわけではない。彼らの一部はロマ族など貧困層を含み、ドイツ国民の社会保障負担が増えることへの懸念が存在する。 ?こうしたドイツへの移民が増加したそもそもの背景には、シュレーダー社民党政権の経済構造改革以降、強い経済が維持されていることがある。東西ドイツ統一後の1990年代は、東ドイツ地域の再建がドイツの財政に重くのしかかり、経済社会改革が停滞した。 ?1998年に誕生したシュレーダー政権は、「アジェンダ2010」と呼ばれる抜本的な労働市場・社会保障改革を行った。この改革の効果は直ちに現れなかったものの、それを基本的に継承したメルケル政権のもとでドイツ経済は徐々に回復軌道を歩み、失業率は大幅に改善し、国際競争力を回復した。 抜本的な経済構造改革に加え 移民国として統合政策も推進 ?シュレーダー政権が行ったもう1つの改革である移民の統合政策も、現在のドイツの移民受け入れの基盤となっている。90年代後半には、第二、第三世代の移民が増え、ドイツ社会と遊離した独自の移民社会の形成が進行し、社会不安の潜在要因となるという、いわゆる「並行社会」が問題となっていた。 ?特にトルコ系移民については、若者が十分な教育を受けていないため深刻な雇用不安にさらされ、また、居住や雇用などで閉鎖的な移民コミュニティが形成されていた。 ?そこで、シュレーダー政権は1999年に国籍法を改正し、部分的に出生地主義を導入し、8年以上国内で合法的に滞在する外国人から生まれた子にドイツ国籍を容認した。血統主義が強いドイツで、コール保守政権では認めてこなかった、ドイツが「移民国」である事実を認めたという点で画期的であった。 ?また、2004年には移民法を制定し、長期滞在する外国人や新規移民、EU市民などを対象とした600時間のドイツ語コースと30時間のドイツの法秩序、文化、歴史などに関するオリエンテーションコースを規定した「統合プログラム」が設けられた(07年の法改正で時間数は変更)。 ?2006年からはメルケル首相主催の下で、連邦政府や自治体など統合に関わる関係者による統合サミットが開催され、統合に向けた計画を討議している。 社会の右傾化も懸念されるが 極右政党の勢力伸長は他国と比べ限定的 ?こうした経済構造改革と移民制度改革により、ドイツは移民の受け入れの社会的インフラを整えてきたといえよう。 ?確かにドイツでも、外国人排斥に関わる事件が2011年に前年比16.7%増となる約2500件起きるなど、社会の右傾化も懸念されている。今年5月に裁判開始で話題となったネオナチ過激派組織によるトルコ系移民など10人の殺害などの事件は、ネオナチの活動が継続していることを示していよう。 ?東欧の移民が多く滞在する旧東ドイツを中心に、ネオナチが一部支持を得ていることも事実である。しかし、ドイツでは、反ユーロを掲げたポピュリズム的な新政党は躍進しても、先月のイギリス地方選のように、極端な国家主義や移民排斥の主張を掲げる極右政党が既存政党を脅かすという状況は現れていない。 移民受け入れで経済活性化を模索 課題もあるが日本が学ぶべき点は多い ?もちろん、ドイツの移民政策にはいまだ課題が山積しており、今秋の総選挙を前に様々な議論が展開されている。与党はメルケル首相を中心に労働力確保のために女性、退職者とならんで高度技術力をもつ移民をより積極的に受け入れるべきとの議論を展開している。 ?一方で、野党はすでにいる移民の教育の向上や二重国籍の容認など、さらなる移民の受け入れの前に、移民の統合について取り組むべき問題があると主張する。長期滞在する移民に対する社会保障費の負担の増額や不法移民の取り締まりも、課題である。 ?また、東欧や南欧諸国の経済回復により、近い将来、現在の移民の流入は停滞することが予想される。したがって、EU域外からの労働力確保のための社会的なインフラ整備も喫緊の課題である。 ?昨年8月から導入されたEUブルーカードの下で、EU域外国の高度な資格を有する人材に対し、ビザ発給手続きや在留許可制度の措置が緩和されたが、域外国の人にとっては依然言葉や文化の壁は厚い。 ?こうした課題は抱えつつも、今ドイツはEUの「労働力の自由移動」の制度を最も享受していることは間違いない。失業率が高止まりする他のEU諸国の高度人材を雇用し、移民国として経済の活力維持を図る方策を模索し続けている。 ?日本はドイツとほぼ同様の人口形態にある。もちろんEUという枠組みにあり、歴史的経緯や地理的背景も大きく異なるドイツと日本は異なる。 ?しかし、移民の社会への統合政策など、日本が今後、少子高齢化の下での経済成長を考えていく場合に参考とするべき点も多い。 (研究員?神足恭子) http://diamond.jp/articles/print/37201
ギリシャのガス公社DEPA入札に応札なし、民営化計画に暗雲 2013年 06月 11日 06:33 JST [アテネ 10日 ロイター] - 国有資産売却を進めるギリシャ政府が実施したガス公社DEPAの入札は、最有力候補だったロシアの政府系天然ガス大手ガスプロム(GAZP.MM)が最終段階で手を引いたことから、10日の期限を迎えても1件の応札もなく、失敗に終わった。
ギリシャ政府はDEPAの売却により最大9億ユーロ(12億ドル)の資金調達を見込んでいたが、入札が頓挫したことで今年の国有資産売却を通した資金調達目標が未達に終わる恐れも出てきた。 ギリシャは9月末までに国有資産売却を通して総額18億ユーロを調達する必要がある。 ただギリシャ政府は、今回の入札は失敗に終わったものの、同国が受けた国際支援に影響は出ないとしている。入札は後日、再度実施される。 前年に実施された暫定入札では、ガスプロムは約9億ユーロでの応札を提示していた。 ガスプロムの広報担当者、セルゲイ・クプリヤノフ氏は、「取得契約調印後に、DEPAの財務状態が悪化しないとの十分な保証が得られなかった」と述べ、DEPAの財務状態に懸念があったことが入札を取りやめた理由と説明した。 ただギリシャ側は、ガスプロムがDEPAを取得する場合、欧州連合(EU)が厳格な条件を提示する可能性があるとの懸念から同社が手を引いた可能性もあるとしている。 ガスプロムはDEPAが扱う天然ガスのうち、約3分の2を同社に供給している。このことが、ガスプロムがDEPAを取得する場合、EUが阻止するか、厳しい条件をつける可能性があるとの懸念につながったとみられている。 DEPA傘下のガス輸送システム運営会社DESFAについては、アゼルバイジャンのSOCARが唯一応札。ギリシャ政府はDESFAの売却は先行して行うとしている。 政府は、DEPAの株式35%を保有する国有石油精製企業のヘレニック・ペトロリアム (HEPr.AT)について、民営化の時期を再考する可能性があるとしている。
【第9回】 2013年6月11日 芥田知至 [三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員] 内部の意見対立続くOPEC 生産据え置きで原油価格下落 ?5月31日に開催されたOPEC(石油輸出国機構)の第163回総会では、生産目標の据え置きが決定された。これを受けて原油先物価格は下落した。据え置き決定は、「ほぼ」予想通りであったが、OPEC内での意見の対立が原油価格の下落につながった。
?1バレル当たり100ドル前後の原油価格は、消費国・産油国の双方に受け入れやすい水準とされるものの、OPECの中で、高価格を志向する強硬派と、需要の安定を志向する穏健派とでは、立場がやや異なっている。 ?例えば、総会前にイランは生産目標削減を求めると表明していた。4月に北海ブレント原油が100ドルを下回って下落した際には、ベネズエラやアルジェリアも原油価格押し上げを志向する発言をしていた。こうした状況は、2011年夏場にイラン、ベネズエラ、アルジェリアなど強硬派の意見が過半数を制したときと似ていた。 ?しかし、今回は、5月に入って、国際指標とされるブレント原油が100ドル台を回復する中で、生産目標の据え置きでまとまったようである。 拡大画像表示 ?原油先物市場では、増産を想定する市場参加者はほぼ皆無だったと思われるが、強硬派の意見表明が事前に目を引いたために、減産が決定される可能性があると想定した市場参加者はいたと考えられる。そのために、生産目標の据え置き決定は原油価格の下落材料になった。
?OPECとしても、この決定がある程度原油相場を押し下げることは、想定の範囲内だったと思われる。OPECは原油市場の情勢に応じて、随時生産量を変更するとしているが、12月4日の総会までに生産目標が変更される可能性は小さいだろう。 ?もっとも目先は、下振れリスクが残る。北米でのシェールオイルの増産などが続く一方で、欧州や中国の景気が想定よりも下振れする状況が続き、需給緩和観測が強まっているからだ。 ?また、夏場のガソリンの需要が、過去数年と同様に今年も伸び悩みそうだ。乗用車の燃費向上などを背景に、最大消費国の米国を中心にガソリン需要が抑制される傾向が続いている。 ?また、シェールオイルには、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油などと同様に、ガソリンなどを多く生産しやすい成分(軽質分)が多いことも、08年までのように、ガソリン需給逼迫懸念を背景とした原油市況の高騰を起こりにくくしている。 ?バドリOPEC事務局長は、シェールオイルやシェールガスが議論の対象だったことを明らかにした。ただし、その影響は他のエネルギー源の動向と同様に重要だとしており、必ずしも脅威だと受け止めているわけではないようだ。品質面から見てアフリカ産原油はシェールオイルと競合するが、中東産原油はあまり競合しないといった具合に、各国による事情の違いもあり、OPEC全体で対応する問題にはなりにくいのが実情だ。 ?(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員?芥田知至) http://diamond.jp/articles/print/37164
【第279回】 2013年6月11日 加藤 出 [東短リサーチ代表取締役社長] 意外にも経常収支が大幅改善 高失業率でも陽気なスペイン人 ?先日スペインに行った。ある都市では筆者を見て「アジア人だ」と認識すると、韓国のラッパー、PSYの「江南スタイル」を踊り始めた。
?日本と韓国の違いは彼らにはわからず、サービス精神で喜ばせようとしてくれているのでむげにはできない。パブの外で大勢がビールを飲んでいる場所を通り過ぎようとしたときは、十数人が「江南スタイル」を踊り始め、脱出するのが大変だった。陽気なスペイン人だが、彼らの何割かは失業中だっただろう。5月31日にスペイン中央銀行は「失業率は許容できない水準に達している」と危機感を表明した。第1四半期の失業率は27.2%、25歳未満は57.2%だ。 ?しかし、これほどの高失業率の割にはスペインの治安は荒れていない。将来不安の高まりからデパートや高級レストランの売り上げ減少は顕著だが、ホームレスは米国よりはるかに少ない。理由の一つは、親族の中に困った人がいると、皆で支え合う「親族のセーフティネット」にある。「高失業率は問題だが、薄らいでいた大家族主義が戻ってきたことは喜ばしい」という声が聞こえた。 ?また、税務署に捕捉されない副業など、地下経済からの収入が家計を補助してきた面もある。2010年のVISAの資料によると、スペインの地下経済の推計規模は対GDP比19.5%と高い。 ?スペインの経常収支は意外な大幅改善を示しており、今年は通年で黒字転換すると当局は予想している。ただし手放しで喜べない面がある。内需が駄目なため輸入が大幅に減り、企業は輸出を増やすしかなく、結果、貿易収支が改善した。食品(オリーブ油、イベリコ豚、ワイン)、高速鉄道、自動車(欧州で生産台数2位)など輸出できる品目が多い点は、スペインはギリシャとは決定的に異なる。 ?しかし、住宅バブル破裂に伴う不良債権処理の道のりはまだまだ長い。スペイン国債の利回りは昨年7月に比べると劇的に低下したが、スペイン経済全体を見渡すと、火種はまだ残っている。 ?Pew Researchの5月発表調査によると、EUに好意を抱くスペイン人は、昨年の60%から46%に下落した。だが、ユーロにとどまるべきは67%、ペソに戻るべきは29%、財政緊縮策を支持する人は67%、支出拡大を望む人は28%だった。多くのスペイン人は、ユーロにとどまるために今後も続くつらい緊縮財政に耐えなければならないと思っている。 ?(東短リサーチ代表取締役社長?加藤 出) http://diamond.jp/articles/print/37163 米政府の個人情報収集問題の波紋
自分自身と民間企業に傷を負わせたオバマ大統領 2013年06月11日(Tue) Financial Times (2013年6月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 外国人は、米国の政治の二極化に驚かされることが少なくない。しかし米国政府が行っている一連の監視活動については、共和党と民主党の間に見解の相違はほとんどない。少数のリベラル派とリバタリアンを除く大多数の連邦議会議員は、党派の違いを超えて、国家安全保障局(NSA)の情報収集を支持している。 米国の軍産複合体ならぬ「データ会社諜報機関複合体」の拡大について懸念しても、高い評価は得られない。 大西洋をまたぐ二極化 NSAによる大規模な情報収集活動についての情報が英ガーディアン紙と米ワシントン・ポスト紙にリークされた先週には、放送でNSA批判を展開する連邦議会議員をケーブルテレビチャンネルが探し回ったが、1人も見つからなかったというケースもあった。片や欧州では、疑念を表明したい政治家が列をなしていた。 バラク・オバマ米大統領は7日、リークで明るみに出た米情報機関の監視プログラムについて、米国民に対し「誰もあなたの通話内容を聴いてはいない」と述べ、同プログラムを強く擁護した〔AFPBB News〕
バラク・オバマ大統領にとって最大の問題――そして、大部分は自分で招いたと言える問題――はここにある。米国政府による監視活動のあるべき範囲を巡って見解が二極化しているとするなら、それは大西洋をまたぐ二極化だ。 オバマ大統領は、電子的なプライバシー侵害を米国の人々が容認する度合いについて巧みな評価をしてみせたが、これは今のところ、それが外国人の耳にどう聞こえるかを全く理解できていないことを露呈した形になっている。 大統領は7日、NSAが電話会社から通話の「メタデータ」を収集していたことと、「プリズム(PRISM)」というプログラムで外国人の電子メールにアクセスしていたことについて質問された際、米国内の問題にだけ対応し、プリズムに対する懸念はさっさと片付けた。 「インターネットと電子メールのことについては、米国市民には適用されない。米国内に住んでいる人々にも適用されない」と述べたのだ。 巨大な「データ会社諜報機関複合体」への不信感 この対応は恐らく間違いだった。米国のメディアや人権擁護団体などは今、プリズムにかけられているという歯止めに疑問を抱いている。NSAがインターネットに仕掛けている底引き網に米国人が捕らえられることはないという説明は、ほとんど信じられていない。 しかし、米国政府が大丈夫だと説明しても、同じくインターネットに接続している24億人の非米国人には何の関係もない。オバマ氏は、プリズムを使えるのはNSAが国内の通話記録を収集する時と同様に、米政府内のほかの2つの部局から許可が下りた時だけだと強調した。 だが、自分たちのプライバシーは米国の秘密裁判所によって守られていると言われても、外国人は安心できないかもしれない。この裁判所は、選抜された一部の連邦議会議員の監督下にあり、この議員たちも秘密の厳守を宣誓させられているからだ。これ以外の歯止めもやはり秘密にされており、安心感をもたらしてはくれそうにない。 政府にもっと打撃を与える情報がリークされれば、85万4000人を雇用するに至ったと見られるほど巨大になった「データ会社諜報機関複合体」なるものをこれ以上成長させてはいけないという方向に米国の世論が傾く可能性はある。 外交と通商に及ぼすインパクト しかし、オバマ氏は当面の間、この問題が外交と通商に及ぼすインパクトに最大の関心を払うべきだ。米国は、インターネットの運用が各国の法的枠組みによって別々に規制される状態を阻止することを目指しているが、この目標は信頼を失いつつある。 オバマ氏はまた、グローバルなインターネットの自由を擁護し、中国のグレートウォール(万里の長城)ならぬ「グレートファイアウォール」やほかの国々のインターネット規制を批判してきたが、こうした一連の主張には今後、懐疑のまなざしが向けられるようになるだろう。 米国政府は世界を照らしてくれる灯台なのか、それとも人の人生を記録する一種のビッグブラザーなのか? 外国人なら、ジュリアン・アサンジのようなインターネットアナキストたちの身勝手な陰謀理論に与していなくても、そんなジョージ・オーウェル的な疑問を抱いてしまう。「あなたの電話を誰かが聞いているということはない」。オバマ氏は7日、米国民にそう保証した。「政府は適切なバランスを取っていると私は考えている」とも述べた。 確かめる術はないものの、オバマ氏の説明は正確なのかもしれない。ただ、市民の安全とプライバシーのトレードオフに関する同氏のソクラテス的な理解が、米国の諜報機関にも届いているとは限らない。 ビジネス・インサイダー誌によれば、米中央情報局(CIA)のアイラ・ハント最高技術責任者(CTO)は、情報技術のおかげでデータ収集の黄金時代の幕が切って落とされたこの時代では「(情報は)常に多ければ多いほど良い」と述べている。同氏は今年3月にニューヨークで開かれた会議で、我々は既に「歩くセンサープラットフォーム」になっているとも語っていた。 また、IBMが開発した「ワトソン」のような認知機械の時代は始まったばかりであり、「持っていない点と点をつなげることはできないため・・・我々は基本的に、何もかも収集して永久に保存することを試みている」とも述べた。「人間が作り出したすべての情報に基づいて計算ができるというレベルまで、本当にあと少しというところまで来ている」という。 先週の情報リークは、グーグルやフェイスブック、そしてその他の米国大手インターネット関連企業にも悪いニュースになる可能性があった。世界のインターネット利用者の90%超は非米国人だ。 何のかんのと言っても、大半のインターネット利用者はGメールやヤフー、ホットメールといった米国企業の電子メールアカウントを持っていたり、ユーチューブを介して動画を鑑賞・共有したり、フェイスブックのような米国のソーシャルメディアサイトに自分の情報を掲載したりしている。 情報に関する法令が米国よりもはるかに厳しい欧州では、既に、プライバシーに対する米政府のアプローチにかなり強い懸念が持たれていた。今後行われる大西洋間の通商交渉ではこの点が問題になると予想されていたが、これはもう確実な情勢だ。 ドイツ政府のデータ保護担当者であるペーター・シャール氏は先週、プリズムを「とんでもないもの」だと評してみせた。 米国の巨大ネット企業に挑むならデータプライバシーが格好の武器に 外国人と米国人はともに、次の爆弾を待っている状態だ。ファイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は今回の情報リークについて、「みなさんの情報を安全かつ守られた状態に保つために、我々は積極的に戦い続ける」という声明を発表したが、フェイスブックのデータマイニング手法について冷笑的な見方があることを考えれば、これを読んでほっとしたという人はほとんどいないだろう。 ほかの国が第2のグーグルやアマゾンを生み出すことは想像しにくいが、もし米国以外の企業がこうした巨人に挑みたいという場合には、データプライバシーを武器に選ぶべきだろう。 もちろん米国人でない人々、とりわけ欧州の人々はまだオバマ氏をとても信頼している。だが、実はこれも問題である。オバマ氏が創設を手助けした仕組みがオバマ氏の退任後も長期にわたって稼働することは、非米国人も分かっているからだ。 オバマ氏は初めての大統領選挙の時、自分が勝てば世の中が変わるというメッセージを送るために、自分が憲法学者だったことを強調した。だがその世の中は、ずっと同じ状態でいられるように変わっただけのように思われる。 By Edward Luce http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37985
スウェーデン暴動の根底にあるもの(下) 「我々」と「彼ら」の間の深い溝〜北欧・福祉社会の光と影(14) 2013年06月11日(Tue) みゆき ポアチャ ストックホルム郊外で大規模な暴動が発生し、同様の動きが全スウェーデンのいわゆる「移民コミュニティ」に飛び火した。そして現在、国内で大きく議論されていることは「我々の移民統合政策は、失敗だったのか」だ。これは、移民による事件が起きるたびにくり返される議論でもある。 そして結論的には、「やはり移民統合政策は、失敗だったのだ」という論調が多い。移民統合政策とは、出自にかかわらず社会の成員全員が公平・平等に権利と義務を負う社会を構築することだ。 いわゆる移民が引き起こしたとされる事件は、数年おきに発生している。 数年おきに発生する移民がらみの大事件 1998年10月、第2都市ヨテボリで、移民の少年らが満員のディスコの出口で火の付いた新聞紙を放置したことにより大火災を招いた。この時、逃げ場を失った63人の若者が焼死し、数百人が障害を負っている*1。 スウェーデンで一番外国人が多いマルメ・ローゼンゴード地区では、過去に何度も暴動が起きている(写真は2008年10月に起きた暴動の様子)〔AFPBB News〕
2009年にも、ヨテボリで移民の少年たちによる車両への放火など大規模な暴動が起きている。 それに続いて、マルメ・ローゼンゴード地区でも同様のことが起きた。同地区はスウェーデン国内でも一番外国人が多い地域で、住民2万2000人のうち86%は「両親が外国生まれ」の人だ。 彼らのルーツはイラク、旧ユーゴスラビア、レバノンが多い。20〜64歳の失業率は38%に上る*2。この地区で生まれ育ったサッカー・スウェーデン代表FWのズラタン・イブラヒモビッチ選手は、自伝の中でここを「ゲットー」と呼んでいる。 実は、ローゼンゴードでの騒ぎの際、暴動それ自体よりも大事件として認識された問題があった。当時はその隣のルンドに住んでいたのでよく覚えている。 この時、暴動に加わったとして逮捕された21歳の男性の公判で、警察が現場の様子を撮影した際のビデオを証拠として法廷に提出した。が、このビデオで図らずも露呈したことは、地域住民に対する警察のすさまじい差別意識だ。 *1=http://en.wikipedia.org/wiki/Gothenburg_discoth%C3%A8que_fire *2=http://sv.wikipedia.org/wiki/Roseng%C3%A5rd これは、1人の警官がたまたまビデオカメラで現場での出来事をフィルムに収めていたもので、バス内での警察官同士の会話の内容も記録されている*3。 ――「あのクソ猿。あいつを捕まえたらガキができない体にしてやろうか」 ――「足腰が立たないようにめちゃくちゃに叩きのめしてやる」 ――「そいつを捕まえた時、言ってやった。『お前らは間違ったコミューンに来たようだな、ブラッタヤブラル』」 ブラッタは、しばしば「移民」に対する蔑称として使われる語である。 この語を発した警察官は、同僚がビデオ撮影をしていることに気がつかなかったと言っている。 暴動以上に警察の移民差別にスウェーデン中が騒然 この内容を南スウェーデンの地方紙シードスベンスカンがスクープし、トップニュースとして掲載した。さらに全国紙DN(ダーゲンス・ニーヘテル)をはじめ、国内の他紙も取り上げた。 同日のスウェーデンテレビのニュースでは問題のビデオが放映され、このニュースは翌日にも引き続き同紙のトップを飾り、全スウェーデンを巻き込んだ大きな論議に発展した。 その後、マルメ警察学校での教育課程で、犯罪者の例として「ニグロ・ニガーソン」や「オスカー・ニグロ」といった、いかにも移民風の名前を使用していることが判明した。 さらには、ヨテボリ警察の警察官らがヌードパーティーを行い、下半身をむき出しにした格好でピストルを振り回したり、ホモセクシャル的な行為を行なったり、その場に男性ヌードストリッパーが登場したり、などということまで明るみに出ている。 これらの一連の出来事は警察機構の人種差別意識と並んで、倫理観や判断力の欠如とされ、警察に対する信頼を損なうものであるとして当時大きく問題視された。 *3=http://www.youtube.com/watch?v=Nb76hkXVEmQ, http://www.youtube.com/watch?v=cgR7lleZDW4 毎日が「戦い」の警察は意識が表に出やすいだけで、実は一般的なスウェーデン人も潜在的には差別意識を抱いているのではないか――〔AFPBB News〕
私がこの時感じたことは、事件や問題と日々直接対峙する警察はむき出しの差別意識を露出するのだろうが、結局これはスウェーデン人総体が移民に対して潜在的に持つ意識が露呈されたものなのだろうということだ。 今回のストックホルムの暴動でも、警察は「移民が多い地域」、一般的には「問題が多い」と認識されている地域で住人を射殺し、遺体を真夜中に密かに持ち出し、マスコミには病院で死んだという偽情報を出している。 これにより、この地域が公式に権力の横暴が是認されている地域であるという印象をさらに強め、地域に対する偏見を助長する結果になったのではないかと思う。 逆差別の構造とスウェーデン人が内々に抱く苛立ち 前回、「社会の成員全員が公平・平等である社会の構築に向けて、スウェーデン人は涙ぐましいほどの努力を重ねてきた」と書いた。 一般的なスウェーデン人は、例えば人の身体的な特徴などを絶対に口に出して言わない。誰かが差別的な発言をすると、それが人種差別だろうと性差別だろうと障害者差別であろうと徹底的に叩く。 暴動が収束して後、極右スウェーデン民主党が、暴動に関与した子供の親から養育手当ての権利を剥奪することを要求したが、これは直ちに他の議員から批判され、メディアも「惨めで情けない暴動の分析」などと揶揄した。 スウェーデン人は、差別を徹底して嫌う立派な人たちだ。そしてそれが、彼ら自身が心の中で作り上げ、保とうとしている自己イメージだ。しかしさらにその根底では、高い税金を払い移民や難民への生活費を負担しているのは自分たちでもあると考え、イライラしてもいる。 具体的には、朝早くに出勤し、仕事帰りにスーパーで大量の冷凍食品を買って大急ぎで帰宅する人たちは、うちの中に座って自国の放送局のテレビを見ているだけで、スウェーデン語を話そうとせず、仕事もなく、福祉の援助だけで暮らして、来月はどうやって行政からカネを取るか・・・ ということしか考えていないように見える人たちにイライラしている。 移民統合政策、つまり至れり尽くせりの移民保護政策が、自立を阻害し差別と分断を深める結果になっているということだ。 ヒュースビー地区は今年5月の暴動のきっかけとなった場所〔AFPBB News〕
政府が推進する都市郊外発展計画は象徴的だ。 そのうちの1つ、「JARVALYFTET(ヤルバリフト)」と呼ばれるプロジェクトは、ストックホルム北西部のヒュースビーとその近隣地区に数十億の予算を投資し、雇用を創出して移民を引きつけ、地域を成長のエンジンにするという壮大なプロジェクトだ。 が、同地区の失業率は依然として他の地域の2倍になっており、プロジェクトが開始した2007年時より上昇している。学校の状況も悪化した。地価は最大で65%上昇している。 移民を引きつけるどころか、高所得の住民に対して魅力的に地区が改善されただけで、結局元からの住民を追い出す結果を招いている。このプロジェクトは住民の期待に沿うどころか、その反対の効果をもたらし、さらに都市の分断化を進めたのだ*4。 夫の同僚である社会学者のホーカン・ソーン氏は、「北欧国の中で、スウェーデンの都市が最も分断されている」「都市の分断は、失業と社会の不平等を増大させることにつながる」とスウェーデン・ラジオのインタビューで話している*5。 また、ストックホルム大学の社会学者リツァルド・ツルキン氏は、「我々の次にくる世代は、髪の色で下層階級かどうかが判断されるようになる明確なリスクがある」と話している。貧困層が拡大しており、その多くが出自に関係している。このため、髪や目、肌の色が明るい人は中産階級、暗い人は貧困層と明快に分断されるようになるということだ*6。 こうして、カネを出して移民を庇護するスウェーデン人は、貧しく汚く、命からがら逃げてきたかわいそうな移民・難民をますます彼岸の彼方に追いやり、惨めな存在に仕立て上げていく。こうして、移民を際限なく受け入れ続ける社会は分断と疎外を強めていき、両者の溝はますます深まっていく一方だ。 それでは、スウェーデンで生まれ育ち、完璧なスウェーデン語を話す移民2世、3世たちは差別を受けていないと言えるのか。「両者の溝」と言った場合、彼らは、「スウェーデン人側」なのか、「非スウェーデン人側」なのか。 ストックホルム暴動の若者と 「ラブ・レフュジー」の間 スウェーデンに来たばかりの頃、アメリカ人の英語教師と、「どういう理由でスウェーデンに来ることになったのか」という話になった。彼はスウェーデン人女性とアメリカで出会って結婚し1児をもうけ、長く米国に住んでいたが、妻の両親のたっての希望もあり、話し合った結果ここへ来ることになったと言った。 私自身も「ロンドンで知り合ったボーイフレンドがスウェーデン人だったから」という至極単純な理由だ。すると彼は「じゃあ君も僕も、ラブ・レフュジー(愛の難民)なんだね」と言って笑った。 これが私が「ラブ・レフュジー」という語を覚えた最初だ。普通のレフュジーとラブ・レフュジーの間には、大きなギャップがある。私たちラブ・レフュジーは、ここに住むことを自らの意思で選択して来ている。自国に帰ろうと思えばいつでも帰ることができる。 スウェーデンにいるラブ・レフュジーは、私やこの英語教師と同様、アメリカ人と日本人が典型的だ。若い人とおしゃべりしていて、「スウェーデン人の彼氏 とどうやって知り合ったの」と聞くと、「インターネット」などと言うのは大抵アメリカ人か日本人だ。いつでも好きな時に、自由に国境を行き来できるのがラブ・レフュジーなのだ。 *4=http://bygg.stockholm.se/jarvalyftet *5=http://sverigesradio.se/sida/artikel.aspx?programid=2024&artikel=5542860 *6=http://www.svd.se/nyheter/inrikes/samre-integration-i-sverige_7680330.svd しかし一般的な移民・難民は、選択がほかになく、ここに来ざるを得ない究極の状況下で入国している人が大半だ。 先のアメリカ人教師は、スウェーデンに来る前はカリフォルニアにいて、英語を勉強しに来ている日本人など裕福な家庭の子をたくさん見たと言い、「スウェーデンに来て驚いたことは、生徒たちそれぞれが非常に複雑な事情を抱え、家族とも別れて、あるいは失ってここに来ているということだ」という話をした。非常にショックを受けたという。 私にとっても、スウェーデン語学校で出会ったクラスメイトたちは、いわば別世界の人たちだった。 日本人の私が「差別」を感じない理由 私自身は、この国で差別を感じたことがない。この理由は、恐らく「自分は100%日本人である」という確固としたアイデンティティに裏づけられているからだ。 また、意識的にも無意識的にも、「日本という国は安泰だ」「ここで何かあっても、日本へ行けば何とかなる」、さらに「何か危険な目に遭ったとしても、外務省が何とかしてくれるはず」という絶対的あるいは盲目的な日本という国家への信頼感に基づいているものだ。私の下手クソすぎるスウェーデン語も、私の日本人としてのアイデンティティを強力に裏打ちする。 「差別を感じたことがない」というのは、もちろん私の脳天気な性格によるものだろうが、おそらく私自身がスウェーデン人がウザく感じるほどの近距離に近づかないからだ。彼らは私を、無害な外国人として放置している。 私自身もスウェーデン・コミュニティの中に、排除されて傷つくほどの内部まで割り込もうとはしない。私は『彼ら』の一員ではなく、彼らにとって私は『他者』だ。万が一排除されて傷つくようなことがあったとしても、全然平気だ。スウェーデン語がいつまでたっても上達しなくても、どうということはない。「だって私、日本人だもーん」 そしてこれが、一般的な難民と愛の難民との間の、決定的な溝なのだ。スウェーデンで生まれ育ち、完璧なスウェーデン人然としている肌の浅黒い人たちのほうが、ブロンドで青い目の人たちを恐らくもっとずっとイライラさせている。 不確かなアイデンティティに苦しむ移民・難民 彼ら一般的な移民のアイデンティティは不確かで不透明だ。彼らの多くが所持するパスポートは確かにスウェーデン政府が発行したもので、その意味ではスウェーデン国籍なのだから、「どこから来たの」とか「なに人?」と聞いて、「スウェーデン」と答える人も多い。 しかしその反面、「パレスチナ」とか「クルディスタン」「アッシリア」などと言う人もいる。地図上では抹消され、あるいは消失する寸前であっても、その地に自らの民族としての強烈なアイデンティティを認めようとしているのだろうか。 ここの日本人は少数派なので、私は周囲からは中国人だと思われている。路上でもバス停でも学校でも商店でも「ニーハオ!」と声をかけられることはしょっちゅうだ。が、最近はいちいち「日本人です」と言って驚かれたり珍しがられたりするのも面倒なので、「ニーハオ」と言ったり言わなかったりするだけだ。 私の日本人としてのアイデンティティは、日々強烈に確認する必要はなく、空気のように私にまとわりついている。中国人のように、やたらに「ニーハオ」と声を掛け合い、同胞のネットワークを強力に構築する必要もあまりない。私が属する国家はそこにあって安泰だからだ。 しかし一般の移民・難民の多くは、スウェーデン人でもなく非スウェーデン人でもない、その不確かなアイデンティティの狭間で苦しんでいる。特に2世以降の世代がそうなのではないかと思う。 34歳の劇作家ヨーナス・ハッサン・ケミーリが、57歳の女性司法長官ベアトリス・アスクに宛てて「私はあなたに単純な欲望があります」と言い、「私の肌とあなたの肌を交換しましょう」と呼びかけた公開書簡は、全スウェーデン人の度肝を抜いた*7。 同書簡中、ケミーリは腕をつかまれて警察車両に放り込まれ、20分後に何の説明も謝罪もなく路上に放り出された経験を共有してほしいと司法相に要求し、「外見がスウェーデン人に見えない者」だけを選別して取り締まりをする警察を批判している。 「スウェーデンは社会が明確に分断された差別国」 書簡中で彼が言っているのは、スウェーデンは差別国であり、明確に分断された社会だということだ。 口に出さないだけで、皆が分かっている。そしてこれは永遠に繰り返され、終わりはなく、出口もなく、解決策もない。差別の再生産の構造は消えず、すべてはただ繰り返されるだけだ。スウェーデンのシステムは、固定化された国民の自己イメージを再定式化する、低強度の抑圧の絶え間ない論理的な拡張なのだ。 この長い手紙の中で、彼は司法相に「ベアトリス」と何度も呼びかけ、最後は「さあ、もう行っていいよ」で締めくくっている。この書簡は多くの共感を呼び、オンライン上の記事へのアクセスは50万回を超え、フェイスブックでは12万人以上が「いいね!」をクリックしている。 ケミーリ自身はスウェーデン生まれだが、父はチュニジア人、母はスウェーデン人だ。 スウェーデンで生まれスウェーデンで教育を受け、ほぼ完全なスウェーデン語を話し、ここで結婚し子供を儲け、故国に一歩も足を踏み入れることもないままこの地で死んでいったとしても、彼らはしかし、スウェーデン人にとっては永遠に「外国人」であり「他者」なのだ。 そしてストックホルム暴動を引き起こした根底には、恐らく彼らが警察だけではなく社会の中で、日常的に感じているこの抑圧や疎外感も影響していたのではなかったのかとも思う。 *7=http://www.dn.se/kultur-noje/basta-beatrice-ask/ http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/37975 |