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アベノミックス 努力する人 探さない消費
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/379.html
投稿者 山鳩ポスト記者 日時 2013 年 6 月 09 日 12:54:37: HuCMHLx1tYPmU
 

努力する人 探さない消費者
現代ニホンは努力を貨幣としたカルト世界である。
これは、プロテスタントが禁欲的であるのと同じ意味を持つ。

プロ倫である。

いずれも決められた項目以外には無効となるのが(なれるのが)特徴である。

努力しない(とみなされた)者はニンゲンではない。イジメにあう。

これに天皇制がアベノミックスされると非国民になる。

また、嵌まった殺人なら了とする、悪魔的儲けシステムである。

この、審判の日に向かうシステムでの、消費とは何なのだろうか?

それは祝福された私の獲得のためになされる。blessed me 、若しくは私が全てのアナタの人類補完である。

"努力" か "だよねー"のための消費である。

何時でもニホン人の目の前にはAmazonがある。調べなくとも教えてくれるGoogleもある。天皇制は今でもテレビからやってくる。

消費すべき項目をブレインチャージしてくれる。

安い、便利、安心、気持ちいいがキーワードだ。

第N次宗教改革の今だが、当然ながらその前提に心的不安定を必要とする。

地震や破綻、テロを煽るのはそのためでもある。

このカルト化した神的支配経済、論理無効なのは必然である。

変化する自然の不条理は神々を生むが、外界は不変であり、どうしようもないのは自分でしかない世界情況時に一神教が開始される。更に真の問題が内面にあるとされればキリスト教の始原である。


努力と、よく調べれば分かる、は同根である。

神の定めた(とされる)分かりやすいアイテムをゲットするのがフツーの努力であり、隠された(とされる)神の叡智、ステイグマをみつけるは科学的(とされる)努力である。

セカイはニンゲンと他の創造物のみからできているのだから。

カミは見えなくても、その代理階級はテレビからコトバを発し、スマホは知らぬ間にブレインチャージしてくれる。  

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コメント
 
01. 2013年6月09日 17:15:38 : mHY843J0vA

>努力しない(とみなされた)者はニンゲンではない。イジメにあう。

公務員や高額年金受給者などですか


>現代ニホンは努力を貨幣としたカルト世界である。

努力というより成果でしょうが

誰かが労働して、その成果を人々に提供しないと、結局、皆が貧しくなるからでしょうね


02. 2013年6月09日 19:30:05 : icg7wRBYEY
安倍君は努力した人が報われるとか何度も繰り返し発言している。

阿呆の安倍君はブラック企業の権化、渡部美樹とかいうオッサンを候補者にした。人を365日24時間働かせ自分は利益をかすめとる。

普通程度のの能力をもっている人が努力したと認められるには、長時間労働をして残業手当ももらわないということ。

それを安倍以下その政策の賛同者は努力したと評価するらしい。


03. 2013年6月09日 21:07:35 : KO4C9oEhYU
>02
自民党はその程度の党です。いつからか党首もわけの分からないやつがなるようになりそれが総理大臣になるようになった。確かに学歴はいらないが、教養、人格、資質は最低いる。そんなものは誰も持っていない。持っているのは地盤、看板、カバンだけだ。日本はそれで十分なのだろう。官僚がしっかりしていればそれもありかとは思うがその支える官僚が腐ってしまっているから日本はついにシッチャカメッチャカになってきた。

04. 2013年6月10日 22:17:04 : niiL5nr8dQ
アベノミクス
安倍首相の「実験」
BREAKINGVIEWS
2
アベノミクス : 安倍首相の「実験」
目次
序文…………………………………………………… 4
過去、そして現在の安倍首相……………………… 5
● 安倍首相の与党敗北、円キャリーの魅力減じる可能性
● 日本の選挙‐分かりにくい人への入門書
● 安倍政権発足で、円相場は3ケタに
● 日本がデフレから脱却するための手引き
● アベノミクスの成否を点検する新指数を作成
● アベノミクス、日本の人口問題克服に寄与
● 1980年代の再来願う日本の労働者
● アベノミクス、真の課題への対処効果は現時点では不透明
日銀の革命………………………………………… 17
● より大胆な策をいかに実現するかが日銀の難題
● 日本の財政刺激策で求められる日銀の行動
● 日銀総裁候補面接での安倍首相の想定問答集
● 次期日銀総裁はマネタイゼーションを受け入れるべき
● 日銀総裁人事、何故黒田氏が好ましい選択肢なのか
● デフレ脱却目指し黒田氏は野心的な新計画を策定
● 日銀の参戦で強まる世界的金融のうねり
BREAKINGVIEWS
3
債券、株、そして円…………………………………… 25
● ドル100円突破、今後は一方的な円安見込めず
● 日本の遅すぎる参加で混迷増す通貨安競争
● 日本のインフレ期待、世界のリスク資産にとって朗報
● 日本株の上昇、今回こそは過去の局面と異なるか
● 日本からのマネー大流出は現実ではなく期待
企業の難題……………………………………………… 31
● 日本企業の海外M&A、円安進行でも衰えない理由
● 日本、原発にもう一度チャンスを
● 円安で恩恵の日本家電メーカー、真の復活へ売り上げ回復を
● ソニーは再生できるのか
● 日本車メーカー「黄金期復活」には馬力不足
About us
2012年12月18日、衆院選挙での自民党勝利翌日、国会内で記者団に語る安倍総裁
(ロイター/Toru Hanai)
目次
アベノミクス
安倍首相の「実験」
BREAKINGVIEWS
4
アベノミクス : 安倍首相の「実験」
序文
再登板
2012年9月26日の自民党総裁選で票を投じる安倍晋三現首相(ロイター/Toru Hanai)
日本経済再生に向け、安倍晋三首相の「実験」が進行中だ。昨年12月に劇的に首相の座に返り咲いた安倍氏は、経済の停滞からショック療法で抜け出すべく3本の柱から成る政策を打ち立て、投資家を驚嘆させた。この大胆な賭けが日本と世界の経済政策にとって意味するところは計り知れないほど大きい。
20年もの間、国際的なマクロ経済の場では日本は教訓として取り上げられるだけだった。長引く経済不振から抜け出せない日本の姿は、経済危機に見舞われた際に「とるべきではない対処方法」のチェックリストを提供した。しかし、今や状況は一変した。西欧諸国が金融危機の余波にあえぐ中、安倍首相の「3本の矢」からなる経済改革、
“金融政策の強烈な転換”“強力な財政刺激策”“より長期の構造改革”が再生へのロードマップかもしれない。
安倍首相への期待は最初から高かったわけではない。2008年の世界金融危機や福島の原発事故の動揺がまだ残る日本にとって、かつて首相を辞任して国民を失望させた安倍氏の再登板は変化を予期させるものではなかった。首相の選挙公約は、政権が変わるたびに繰り返される偽りの約束だと思われていた。
しかし就任後の首相は、懐疑論者の予想を超えた。予定を前倒しして就任した日本銀行の黒田東彦新総裁は、インフレ率を2%に高めるために国内のマネタリー・ベースを2倍にすると発表し、投資家に衝撃を与えた。円が対ドルで急落し、輸出業者は安堵し、アジア近隣国は苦情を唱えている。首相はまた、貿易障壁を軽減する政策を打ち立て、国内で力を持つ利益団体に挑む形になった。
実際には、日本の改革の道のりはまだ遠い。インフレ期待の高まりが経済にとって好条件となるのは、労働者が賃金引き上げを望んで支出を増やす場合であり、企業が投資を積極化する場合であり、さらには女性の社会進出で人口減尐を埋め合わせられる場合である。同時に、安倍首相と日銀は国債への信認の喪失及びそれに伴う危機を避けなくてはならない。これは日本だけでなく、過去5年で公的債務の水準が劇的に上昇している世界にとっても重要な課題だ。
日本と西欧では多くの違いがある。日本はディスインフレーションではなく、本物のデフレに苦しんできた。これを解決するには相応の大きなショックが必要だ。また、日本の企業や家計は借金を減らすことに多くの時間をかけてきたので、投資や消費が再開される可能性は高まっている。さらに、国債のほとんどは依然国内投資家に保有されており、国債から発生する損失も国内問題にしかならない。
このような違いはあるものの、安倍首相の掲げるアベノミクスによって、日本は世界のテストケースと化した。裕福で高齢化が進んだ重債務国が成長を取り戻せるのか、もしくは不可避の低迷を受け入れざるを得ないのか、世界はその動向を注視することになるだろう。
Peter Thal Larsen, Asia Editor, Reuters Breakingviews
2013年5月
BREAKINGVIEWS
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過去、そして現在の安倍首相
過去、そして現在の安倍首相
安倍首相の与党敗北、円キャリーの魅力減じる可能性
By Edward Hadas
脆弱な政府は普通弱い通貨と併存するものだ。しかし安倍晋三政権の選挙での弱体化は円高につながるかもしれない。
一見すると、安倍首相率いる与党が2007年7月29日の参院選で惨敗したことは投資家が気にするべきことではない。自由民主党は予想よりもひどい敗戦となり、立候補した121人のうち、37議席しか獲得することができなかった。それでも有権者は政府の改革路線に反発したわけではない。もしそうだとしても、改革はゆっくりとしか進んでおらず、変化があったとしても気づかれないほどだ。
金利にしても、選挙の結果は影響しない。なぜなら金利を定めているのは政府ではなく、政府から独立している日本銀行だからだ。しかし政府が利上げに抵抗していることが中銀内のハト派を強くしているというのが大勢の見方だ。選挙後に自民党重鎮で利上げ反対急先鋒の中川秀直氏が(自民党幹事長を)辞任したことは、中銀タカ派にとっては援護材料になるかもしれない。
そうなれば、日本の金利先高感が広まり、高金利通貨に投資するために低金利の円を借りていた外国人投資家は戦々恐々とするだろう。日本の通貨安は、このキャリートレードと言われる取引の増加によってほとんど説明がつく。世界市場が6月半ばに不安定化する前の1年間で円は対ドルで10%も下落した。
しかし選挙以前に、すでに金融市場の不安定化が円キャリートレードの魅力を損なわせていた。この1カ月で、円は過去1年の対ドルでの下落幅の半分を取り戻した。投資家はあらゆるリスクを回避するようになり、米国での利下げが現実味を増してきた。そして今、キャリートレードの魅力は、日本側の状況によって減らされつつある。
もし世界的に楽観論が続いていたなら、選挙後の注目点は全く違っていただろう。自国経済への信頼感を失っている日本の国内投資家は、円を売って海外への投資をするだろう。しかし市場の風向きが変わったので、投資家の議論も当然変化している。
キャリートレードはファンダメンタルズに基づいた取引に取って代わられる可能性があり、日本の巨額な貿易黒字と極小のインフレ率に視点が移るかもしれない。そうなればすでに混乱している金融市場で、円は更なる動揺をもたらすかもしれない。
2007年7月30日
2007年9月12日に安倍晋三首相が政権1期目途中で辞任を表明した際、首相会見の生中継を電器店で見守る人たち(ロイター/Yuriko Nakao)
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日本の選挙‐分かりにくい人への入門書
By Andy Mukherjee
2012年11月30日、日本の安倍晋三現首相・自民党総裁が野田佳彦当時首相・民主党総裁の隣で話す様子(ロイター/Yuriko Nakao)
今回に限っては、日本で選挙の結果が意味を持つかもしれない。この国の政治家は20年も続いた経済の不振を好転させるには力不足だということを証明してきた。有権者は中道左派の政権に失望し、保守政党の自民党に政権を再度委ねるかもしれない。しかし表面上だけの変革にはもう忍耐は尽きてきている。
日本の政治にとって保守政党は何を意味するのか?
自民党は3年前にもう無くなったも同然と見なされていたが、また新たなチャンスを与えられた。世論調査によると12月16日の総選挙で、有権者の5分の1はどの党に投票するか未定としているものの、自民党は最大勢力として勝利すると見込まれている。日本維新の会が現与党の民主党に続く第三の勢力として浮上しているという点で、日本の政治は一層競争が激しくなっている。
スタンフォード大学の政治学者フィリップ・リプシー氏は政権の変化が政策の変化に結びつかない現象を日本のパラドックスと呼んでいるが、有権者はこれには飽き飽きしている。安倍晋三自民党総裁と日本維新の会を率いる石原慎太郎前東京知事はそんな有権者に対してより強力な政策を約束した。石原氏の維新の会は、日本の政治停滞の元凶ともいえる参議院を撤廃したいと考えている。安倍首相のデフレ対策は保守的政治家が予想するよりもかなり大胆なものだ。
新政権はデフレを克服できるか?
15年も続く物価の下落は経済のパイを10%減らし、消費者の心理にデフレを深く刻み込んだ。金融危機と2011年3月の震災や津波がさらに追い打ちをかけた。安全資産である円への資金逃避は、日本の輸出の阻害要因となっている。日本経済は第3・四半期に定義上では2008年以来3度目となるリセッション(景気後退)に陥った。その間、国内総生産(GDP)比で237%近くに膨れ上がった公的債務に駆り立てられ、野田佳彦首相は現在5%の消費税率を2015年までに2倍にする法律を成立させた。伸び悩む収入から税金を絞り出すことは、民間消費を害してデフレ圧力をさらに強くさせる可能性がある。
政府歳出が救済方法であることは明らかだ。日本の政府は新幹線の路線をどこへともなく建設しているという批判があるにも関わらず、GDPに占める公的歳出の比率は2008年以前に既に減尐に転じている。金融危機と大震災のショックを受け政府支出は一時的に増加したが、デフレを克服するためには持続的な財政からの押し上げが必要だ。しかし民主党が提案した子供手当てのような社会保障の政策は、骨抜きになってしまった。10年物国債利回り(長期金利)が0.7%を下回っていることに鑑みれば、日本は赤字国債に裏付けられた支出を増やす余地がある。
BREAKINGVIEWS
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日本銀行はどこに組み込まれるのか?
ゼロ金利の日本では政府と中央銀行が経済対策で協調することが不可欠だ。新しいマネーの創出があれば、100円の財政支出はGDPを380円押し上げるとニューヨーク連銀エコノミストのガウティ・エガートソン氏は見積もる。このような金融と財政の協調がなければ、追加的歳出は無駄になるだろう。
首相を経験したことのある安倍氏はこれを分かっている。同氏は公共投資拡大を赤字財政で賄いたいと考えており、その間日銀のインフレ・ターゲットを3%に押し上げようとしている。これは金融当局の1%目標、さらには自民党のマニフェストに書かれた2%を上回る。もしかしたら無鉄砲と思われるかもしれない。しかし3%のインフレ率が5年続いても、物価は1998年の水準に戻るだけだ。
他の政党は何を考えているか?
民主党のマニフェストには、政府と日銀が一体となりデフレ克服に最大限の努力を行うとしか書かれていない。そして同党は過度の円高には「断固たる措置」を講じると約束しているが、結局ここ数週間で円安を引き起こしたのは安倍氏の無制限金融緩和の主張でしかない。
日本維新の会は自民党が処方する公共投資増発に反対しており、消費税を11%に上げると主張している。しかしこれにはリスクが伴う。そのうちに、日本は歳入と歳出の対GDPの比率を、OECD諸国内でも低い今の水準より引き上げなくてはならない。しかし今は消費の拡大が優先事頄であり、税率の引き上げは待った方が良い。項番を間違えると経済に悪影響を与えかねない。
日本維新の会は日本憲法を改正し、防衛費を引き上げて成長を促進することを主張するが、東アジア地域の緊張の高まりが中国との貿易や投資関係を弱めたら何も得るものはないだろう。
新政権はどれだけ続くか?
これに関しては悪い前兆しかない。過去20年で日本は14人もの首相が交替した。しかし1期目安倍政権の直前に首相を務めた小泉純一郎氏は5年続き、政策でも大きな足跡を残した。力強く安定的な政権が日本において希尐ではないと証明できるかどうかは、新しい首相次第である。
2012年12月11日
過去、そして現在の安倍首相
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
安倍政権発足で、円相場は3ケタに
By Andy Mukherjee
2013年4月5日、外国為替取引業者の社員が対ドル円相場を示すモニターの前を通りすぎる様子 (ロイター/Toru Hanai)
安倍晋三の時代は劇的な円安到来を告げるだろう。新たに選出された安倍首相が慢性的なデフレを克服すると約束したことは、
日銀が10年以上行ってきた身の入らない量的緩和の幕引きを意味する。2013年のいつかの時点で、1ドルは100円かそれ以上の価値になっているだろう。
1997年以来、日銀は日本のマネタリー・ベースを対GDP比で10%から27%に拡大してきた。しかし日銀は、物価の持続的な上昇を許容すると市場に信じてもらうには至らなかった。選挙によってそれは変わった。投資家は直に、日銀がバーナンキ議長下の米連邦準備理事会(FRB)のように無鉄砲な紙幣増刷機関となってしまったことに気付くだろう。
選挙戦の間にも世論調査が安倍首相の自民党の圧倒的勝利を予告していたために、円は既に下落を始めていた。それでも、円が対ドルで3ケタの数字になれば選挙前からは20%近く下落することになる。そのような急激な変動は、リーマン・ブラザーズ破綻後の15カ月の間にも起きたが、それ以降は無い。前回の急変の際は、金融危機と欧州のソブリン債の問題で日本円の安全資産としての価値が高まったため円高となった。
安倍首相の戦略とは、財政支出によって建設投資を徐々に動かすことであり、同時に日銀に市場に出回る政府発行債の大部分を買ってもらうというものだ。安倍氏はまた、日銀のインフレ目標を1%から3%に上げることにも触れている。安倍氏の自民党はマニフェストで目標を2%と記述している。
政策の転換が確認されるのは4月になるだろう。4月に安倍首相は、1998年の物価水準に戻すための必要条件である最低5年間のインフレ率3%を受け入れられる誰かを日銀総裁に指名し、任期が終わる白川方明総裁と交代させる予定だ。そして、2013年の夏に自民党が参院選で勝利すれば、安倍首相は日銀の外国証券購入を可能にする法案を提出するだろう。現在外国証券購入が可能なのは財務省のみだ。そうすれば、日本の為替介入もより強力なものとなる。
タイミングは安倍首相次第だ。米国が「財政の崖」から落ちでもしない限り、FRBは新たな緩和策を2013年中に打ち出すことはないだろう。安倍首相の力強い一押しで、円は急落するだろう。
2012年12月17日
BREAKINGVIEWS
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過去、そして現在の安倍首相
日本がデフレから脱却するための手引き
By Andy Mukherjee
日本はデフレを終わらせる現実的なチャンスをつかんだ。しかし当局が大胆に行動することが必要だ。日銀はただ正式なインフレ・ターゲットを導入しただけでは、10年間溜まってきた悲壮感を拭い去ることは難しいだろう。日銀と財務省は、国民に10年間起きなかった物価の上昇が今から起きるということを信じ込ませることを目標にするべきだ。事実上の為替ペッグがそのような期待感を醸し出す方法かもしれない。
インフレ期待の萌芽を育てることは日本にとって必要不可欠である。名目金利がゼロの下でも、デフレ期待があるため実質金利は今までプラス圏にあった。人々がインフレを期待するようになると、実質金利はマイナスになり、投資を刺激する。
1月21日から始まる金融政策決定会合では、日銀は政府とアコードを結ぶことのメリットを議論するとみられる。日本の安倍晋三新首相が推進するこの政策協定は、正式な2%のインフレ目標を明確化し、場合によっては雇用の拡大を中銀の責務として盛り込むかもしれない。
これは現状の改善を意味するが、このような協定は十分ではない。昨年の2月から日銀はプラス1%のインフレ率を「当面」目指すとしてきた。正式なターゲットを導入しない言い訳は、現代の中央銀行の一番有効な武器である短期金利がゼロ近辺であるためにターゲットの達成は不可能、ということだ。そして2001年から日銀は量的緩和を実施してきたが、お札を刷ることはインフレの目標に到達するための確かな方法ではない。その理由は、民間セクターは中央銀行によって供給された過度な流動性は一時的なものでしかないとみなすからだ。その結果、いかなるインフレ目標も何年間も到達できないリスクを伴う。インフレ目標は年間物価推移の目標でしかないので、未達が続いても、日銀の更なる努力への圧力を強めるものでは必ずしもない。そうするうちに、目標の信ぴょう性は失われる。
それよりも良い戦略は、期間は特定しないが「中期的に」消費者物価指数が年間平均プラス1%で推移することを日銀の目標とすることだ。日本を既に苦しめているデフレの埋め合わせをするために、物価が踊り場に入った(図参照)1999年を開始年とすればいいだろう。今まで累積してきたデフレを相殺するために、日銀は物価を16%上昇させる必要がある。
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
この手法を最初に提案したのは元プリンストン大学エコノミストのラルス・スヴェンソン氏だが、利点としては、もし日銀が目標に未達ならば、望ましい物価の道筋に経済を誘導するために更なる努力が必要ということだ。物価が正しい方向に向かって初めて日銀は責任を果たしたことになる。物価目標は、国民にとっても分かりやすいという追加的な利点がある。
ターゲットを設定することと、それに到達する手段があるかどうかは、全くの別問題だ。現在に至るまで、日銀が好んできた手法はお札を刷って国内の資産を購入することだった。しかし今のところこれはあまり機能している兆しがない。量的緩和は日本経済のベース・マネーを対国内総生産(GDP)比で27%増加させたが、インフレを引き起こすことはなかった。
しかし日銀は通貨を利用してインフレ期待を起こすことができるかもしれない。スタンフォード大学のエコノミスト、ロナルド・マッキノン氏が主張する戦略は、日本と米国が非常に長い間、二国間の為替レートを安定化させるというものだ。これによって、日本の消費者心理に深く組み込まれているデフレ期待を取り除くことができる。
強気の政策を主張する安倍首相が就任する以前から始まった円の下落がもし続けば、4月に日銀の新総裁が任命される前に対ドルで1ドル=100円を付ける可能性がある。それを事実上のペッグにすればいい。もし円がその水準より強くなるならば、介入の権限がある財務省が日銀が刷るお金で無制限に円を売る用意をすれば良い。さらに言うならば、日銀法を改正して、日銀が直接為替市場に介入できるようにすれば尚良いだろう。
明示的に為替レートを目標にすることは通貨戦争の火種になりかねない。しかし米政府が過度に苛立つことはないだろう。その理由は1ドル=100円はひどい円安という水準ではないからだ。もう1つの理由は、日本がデフレを制御できれば、将来的には日本の財貨・サービス輸入が増えるからだ。
正しいターゲットと正しい手法があれば、日本はデフレの罠から脱出できるが、今はどちらも欠けている。
2013年1月10日
アベノミクスの成否を点検する新指数を作成
By Andy Mukherjee
安倍晋三首相は日本経済に広がる腐食を食い止めたいと考えている。それも迅速に。首相は就任から4カ月足らずで、世界で最も野心的な財政出動と金融緩和のプログラムを打ち出した。かつて日本経済にあったダイナミックさを失わせ、15年間で9%も経済規模を縮小させたデフレの根を断ち切ることが目標だ。しかし「アベノミクス」は望むような効果をもたらすのだろうか。
BREAKINGVIEWS
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長引くデフレは一朝一夕にインフレへは移行しない。その前に起こるべき現象はたくさんある。賃金や消費が上向き、借り入れ需要や新規投資が拡大し、将来の物価が上がるとの期待がもっと強まらなければならない。株式と債券の投資家は信念を曲げない必要があるだろう。
BREAKINGVIEWSはこうした「アニマルスピリット」の指標10頄目を合成した「アベノミクス指数」をまとめ、毎月更新していく。ユーザーはこの指数から有効性が低いと思う頄目を除いて、カスタマイズが可能だ。
ではアベノミクス指数はこれまでどのように推移してきたのか。過去12年を見ると、指数の前年比の変化は日本の需給ギャップに密接に連動している。回帰分析における決定係数は約50%となった。
次に初期段階の診断としては、これまでの指数はアベノミクスにとって心強い内容となっている。指数は2月まで3カ月連続で上昇して94.6となった。もちろん、まだまだやらなければならない仕事は多い。日本経済がリーマン・ブラザーズ破綻前の水準に戻るには、指数が96程度まで上がる必要がある。2000年初め以降で失われた分を取り戻すには、指数は100に達することが求められるだろう。
貸出資金がもっと思う存分に流れ出さないと、道のりは険しくなる。2001─06年に当時の小泉純一郎首相は、壊れていた銀行システムを立て直したが、その後回復した融資の伸びは08年の金融危機で失速した。そして民間セクターが借金をしても安心、との思いを強めるのは、安倍首相の経済政策が次の段階に入って、財政赤字を削減し始めてからになる。アベノミクス指数は、そうした緊縮策が実行される時期が早くても数年先になると示唆している。
2013年4月15日
過去、そして現在の安倍首相
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
アベノミクス、日本の人口問題克服に寄与
By Andy Mukherjee
2006年9月17日敬老の日前日、東京のショッピングモールへ向かう女性たち(ロイター/Toshiyuki Aizawa)
日本は人口動態上深刻な不利益を抱えている。つまり人口の減尐と高齢化だ。しかし状況は、尐なくとも今のところ、安倍晋三首相の経済再生計画を台無しにするほどひどくはない。
日本の15─64歳の労働力人口は過去10年で6%縮小した。今後25年で減尐率はもっと急激になるかもしれない、と国立社会保障・人口問題研究所は予想している。しかし、たとえ労働力人口が今後10年で13%、つまり1億人減ったとしても、日本の国内総生産(GDP)の潜在成長率は依然年率1.5%を維持するというのが、ロイターBreakingviews計算表がはじいた数字だ。この成長率は過去18年の実質成長率の2倍だ。
BREAKINGVIEWS
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潜在成長率を決める要因の一つは、生産増のために投入される追加的労働時間だ。つまり、雇用の拡大である。他の要因も重要な役割を果たす。つまり労働者がより優れた技能を持っているか、そして追加的資本と優位性のあるテクノロジーを利用できる環境にあるかだ。
それでも尚、需要が欠如していれば成長率は潜在成長率に満たない。それがデフレ国・日本の現状だ。国民は将来物価が下がることを見越して消費を先送りしている。
安倍首相の大きな賭けは、需要を促進することでデフレが終わるだけではなく、経済の供給サイドも持ち上げるということだ。積極的な財政と金融の緩和によって、企業が投資を増やして新たな、もっと給料の高い職を創造し、好循環が生まれる。そうすることで、より多くの人が労働人口に加わることになるはずだ。しかし日本の人口問題と外国移民への嫌悪感を考えると、労働に加わる人はまだ残っているのだろうか。
その質問に答えるには、働く女性のことを先ず考える必要がある。日本の女性の労働人口への参加率は63%で、先進国の中でも低い部類だ。もし安倍首相の政策が、例えば国が運営する幼稚園増設などで、ワーキング・マザーを支援できればこの比率は上がるだろう。それでも文化的な制約によって、日本がスウェーデンのようになるのは難しいだろう。スウェーデンでは労働年齢の女性の10人に8人が仕事があるか、仕事を探している。しかし女性の労働参加率を70%まで上げることは達成可能に思える。
男性の労働参加率を上げるのは簡単ではないだろう。労働年齢の男性の100人に84人が既に雇用されているか職を探している。それよりも上をいく国もある。スイスでは男性の労働参加率は89%だ。しかし、アベノミクスが上手くいけば、日本の男性の中には労働を減らすことを選ぶ人が出てくるかもしれない。男性の労働参加率はせいぜい
85%まで微増するというのが、妥当な予想だろう。
更に高齢者がいる。退職年齢を65歳より上げれば、高齢者により長く働くよう促すことになる。インフレが復活すれば、退職金の貯金が目減りし、お金を稼ぎ続けることの強力な誘因となるだろう。フィンランドでは高齢者の34%が勤労者もしくは職を探しているが、これは日本が真似するには高すぎる比率だ。しかし、今後10年で、65歳超の労働参加率が20%から22%まで上昇するという予想は現状にそぐわないわけではない。
最後に、アベノミクスは失業率を低下させるかもしれない。失業率は日本にとって大きな問題ではない。潜在成長率以下の経済成長が何年も続いても、失業率は昨年末で4.3%に留まっている。それでも、経済の見通しが良くなることで、失業率は3%まで低下するだろう。
労働人口への参加を増やすことが人口減尐の完全な埋め合わせをするわけではない。ロイターの計算式の中心的シナリオは、日本の被雇用者人口が現在の6273万人から2022年には6115万人に減ると示している。毎年0.25%減る
計算だ。しかしそれでも、男性、女性、高齢者の各労働参加率、及び失業率が変わらないと仮定した場合の、毎年1%の減尐よりはましだ。
それならば、どうやって日本は成長できるのだろうか。それは、労働者の生産性が上がるか下がるを決める要因にある程度依存する。つまり、各自の技能や、資本やテクノロジーだ。日本の労働者の教育水準は既に高いが、労働の質は近年では毎年0.45%向上している。この上昇が続くと仮定してみよう。
日本のような先進国では、1人当たりの人的資本が大きく増加すると予想するのは妥当ではない。しかし最新のデータである2000─2006年に見られた年間1%の成長は続くと予想される。
最後に、テクノロジーの進歩がある。日本の工場生産性は年間0.4%しか向上していない。円安によって、日本の電気・自動車輸出産業がより多くの費用を研究費に使えるようになれば、この比率は良くなるだろう。
もし生産性が若干しか改善しなくても、今まで述べてきた要因の組み合わせて日本の経済は今後10年で年間1.5%の
成長が達成できるだろう。人口の問題はアベノミクスが約束する経済再生の妨げにはなるが、克服できない障害ではない。
2013年3月14日
過去、そして現在の安倍首相
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
1980年代の再来願う日本の労働者
By Andy Mukherjee
日本の労働者は1980年代に戻りたいと思っている。日銀が掲げる2%のインフレ目標が難題だとすれば、それを黒田東彦新総裁が約束した通り2年間で達成するのはもっと難しい。日本銀行が成功するためには賃金が過去20年間よりも速いペースで伸びなくてはならない。
日本のインフレ率と賃金はこれまで非常に緊密な関係があった。Breakingviewsの計算表によると、物価が年率2%で上昇するためには、労働者の賃金は年間約5%上昇しなくてはならないだろう。
日本の労働者は久しくそのように大きい賃上げに恵まれていない。1997年以来総賃金収入は15%減尐している。背景にあるのはベビーブーマーの定年退職であり、若い世代の労働者人口では補えきれていない。その結果、所得の減尐に歩調を合わせて消費者物価が落ち込み、物価の落ち込みが被雇用者の賃金交渉力を低下させるという悪循環が生まれている。
しかし労働者人口が縮小していることが今後は吉となるかもしれない。日本で職探しをする人が潜在的に尐ないということは、日銀の政策が新しい投資を呼び起こせば、失業率はすぐに下がるかもしれない。UBS証券のエコノミスト、青木大樹氏によると、賃金が5%上昇するには、失業率は現在の4.3%から2.7%以下に低下しなくてはならない。
しかしなぜ日本企業は経済の悪い時に社員を解雇しないのに、良い時には採用を増やすのだろうか。1つの理由は労働市場の逼迫傾向だ。日本の求人倍率は過去30年の平均よりも高くなっている。そして今年の第1・四半期には、2008年の金融危機以来初めて、雇用人員が不足と見る企業の数が過剰と見る企業の数を上回った。
昨年11月から対ドルで円が20%下落したことも、日本の輸出産業が利益率を犠牲にすることなく賃上げすることを可能にする。しかし対照的に、輸入業者は収益への下押し圧力を感じるだろう。ロイターの最近の調査では、円安を理由に賃金の引き上げを考えている企業は全体の8%しかいなかった。
これは日銀にとっては懸念材料だ。賃金の回復に時間がかかれば、黒田総裁が約束した2年で2%のインフレ率達成は難しくなり、日銀の信用にとって打撃となるだろう。
2013年4月23日
BREAKINGVIEWS
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過去、そして現在の安倍首相
アベノミクス、真の課題への対処効果は現時点では不透明
By Edward Hadas
2013年3月1日、ショッピング街でバーゲンセールポスターの前を歩く女性(ロイター/Yuya Sghino)
安倍晋三首相は「日本経済の活性化」を望んでいる。首相にとってこれはデフレの終息と国内総生産(GDP)成長率の押し上げを意味する。しかし「アベノミクス」が対処しようとする課題はそれほど深刻なものではなく、アベノミクスは日本が抱える真の課題には対処できないだろう。
日本は深刻で長期的なデフレに見舞われてはいない。実際のところ、いかなるデフレにも悩まされていないのは明白だ。
過去20年間を振り返ると、2005年を100とした毎月の消費者物価指数(CPI)は98.9─104.2の範囲に収まっている。直近では99.2。食品とエネルギーを除く「コア指数」ではもう尐しデフレ傾向が強かったが、それでも過去10年間の年間下落率は1%以下にとどまる。
米国の大恐慌時には4年間で物価が27%下落した。このようなひどいデフレでは、銀行が破綻して消費は途絶する。しかし物価がほぼ安定している状況が、日本にどのような害を及ぼしたのかは理解しにくい。金融システムは健全で、インフラは整備されている。アベノミクスの支持者は、物価が緩やかに上昇していれば、GDP成長率はもっと高かったと主張する。だが、実際に日本の成長率は不十分だったのだろうか。
一見したところ、「景気回復」が急務という安倍首相の訴えは、正当に見える。昨年の実質GDP成長率は2007年に比べて2%低い。過去10年までさかのぼっても、年間のGDP成長率は0.7%とさえない数字だ。
高齢化が進む他の先進諸国と同様、日本の潜在成長率は非常に低い。人口が減る中で多くの移民を受け入れているドイツや、南北格差が存在するイタリアを下回っている。
日本が抱えているのは労働人口の減尐だ。20歳から65歳の労働人口は1999年から6%減尐した。また20歳から34歳の層では、2001年のピークから実に22%も減尐し、今後15年間でさらに13%近く減るのはほぼ確実だ。
人口動態に基づいた調整を加えると、日本の数字はもっと良くなる。労働人口1人当たりのGDPは過去10年間に年間1.2%上昇した。これは労働人口が10%増えた米国の0.7%を大幅に上回っている。
日本は移民の受け入れを増やさなくても、もっと高いGDP成長率を達成できるかもしれない。女性の労働参加率を高め、定年時期を先伸ばしし、失業率が下がって生産性がもう尐し上がるかもしれない。しかしそんな必要があるだろうか。
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若い世帯の数が減尐しているということは、日本ではそれに相当する量のGDPが、人口が増えている国よりも多く失われていることを意味する。ライフスタイルを維持するのに必要な新しい住宅、自動車、家電、道路、学校は毎年減っている。人口がさらに減尐すれば、全体としては繁栄が拡大し続けても、GDPは低下し始めるだろう。
アベノミクスの支持者は、GDPが高まれば高齢化問題への対処に役立つと主張する。しかしここには問題が隠れている。日本の政府や社会は多くの労働力や資源を医療や福祉に割かざるをえなくなり、それはGDPを押し上げるかもしれない。しかしこれは高齢者にやさしい経済ができた結果、GDPが伸びただけのことだ。
もっと説得力のあるアベノミクス支持論としては、名目GDP成長率が高まることが日本の公的債務負担を減らす最良の策というものだ。日本の公的債務はGDPの約210%に膨らんでおり、そのほとんどを国内の投資家が保有している。アベノミクス支持者はこの政策による債務圧縮のペースが遅いことは認めており、特に財政赤字の対GDP比が現在の10%から大幅に低下するまでは債務の圧縮が始まることすらないが、ほかにうまい手立ては見い出せていない。
これは悲観的に過ぎる。単に金融と、そしてほぼ国内に限られた問題を解決するために、何十年もかけて実質成長率を不必要に高めるべきではない。必要なのは実際に大胆な金融政策を行う政治的な合意だ。例えば、日銀は紙幣を刷って低利回りの国債の一部を購入することが可能だろう。借り入れから紙幣の供給という、こうした遡及的な政策変更が行き過ぎてインフレ圧力を高めるならば、日銀はその権限を行使して銀行のバランスシートを管理し、望ましくない資金の流れを食い止めるだろう。
尐なくとも、アベノミクスは論理的には日本の公的債務負担を軽減させるかもしれない。経済全体からするとその効果は不透明だ。
2013年4月1日
アベノミクス : 安倍首相の「実験」
BREAKINGVIEWS
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日銀の革命
日銀の革命
より大胆な策をいかに実現するかが日銀の難題
By Andy Mukherjee
日銀はある1つの難題を抱えている。どうすれば、無鉄砲に通貨を発行することを信憑性のある公約にできるか。日銀は10年前に他国に先んじて量的緩和を導入した際、非伝統的手段の入門書を書いた。しかし他の中央銀行も採用に踏み切った今となっては、日銀は悪だくみをする仲間達に置いてきぼりにされつつある。
その仲間たちの先頭に立つのが米連邦準備理事会(FRB)だ。FRBは2015年半ばまで金利をゼロ近辺に据え置くと約束し、月額400億ドルのエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の購入を雇用市場が持続的な改善を示すまで続けるという無制限のコミットメントを表明している。その間、欧州中央銀行(ECB)はユーロ圏で救援を必要とする国の短期債を買うことを宣言している。
こうした中央銀行にとっての自由の季節が到来するなかで、日銀だけはあらかじめ定義された80兆円の資産買取基金という束縛から逃れられずにいる。この基金は時には拡大するが、経済がデフレの深淵に更に入り込みそうになった時だけだ。つまり、日銀はiPhone(アイフォーン)5の真似をしようとしているソニー・ウォークマンのようなものだ。2008年の第2・四半期以来日銀は通貨発行量と当座預金を42%増やしてきた。FRBは同時期にマネタリー・ベースを3倍以上にした。
日銀の限定的な購入基金が対象とする資産にも問題がある。直近の金融緩和は9月19日だったが、日銀は長期国債と国庫短期証券を合わせて10兆円追加で購入することを決めたが、これは2つの理由から不適当だった。まず、これらの資産が購入されるのは来年になってからであり、その時にはもう市場にショックを与えることはない。第二の理由は、1.4%の利回り(年利)がある3年国債を手放しても、手に入れた現金を0.1%金利の日銀当座預金で保有するしか多分方法はないことを知っている金融機関が乗り気にならないことだ。
日銀に与えられた1つの選択肢は、もっと気前の良い値段で買うことだ。これについては日銀は入札下限金利(つまり上限価格)を撤廃することで可能にしている。しかしマイナス金利でさえもはや珍しくない。デンマークやスイスやドイツでは若干のマイナス名目金利は既に出現している。しかも、大幅なマイナス金利は、ゼロ金利を払う競合証券ともいえる通貨が禁止でもされない限り、あり得ないだろう。
2013年2月14日、記者会見を終えた白川方明前日銀総裁(ロイター/Yuya Shino)
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では、何が日本にショックを与えられるのだろうか。2%の新たなインフレターゲットではあくびが出るだけだろう。なぜなら、日銀が2月に掲げた1%の目標でさえ達成できると思っているアナリストはほとんどいないからだ。たとえば名目国内総生産(GDP)のような新たなターゲットを導入することは、物価の上昇を目指すような分かりやすさに欠ける。資産買取基金における社債、指数連動型上場投資信託受益権(ETF)や不動産投資信託の割合を現在の8%水準から高めることもできる。そうすることで日銀のバランスシートのクレジットリスクは高まるが、非銀行系金融機関に流動性が供給され、そういった機関が信用の供給を増やすかもしれない。
より大胆な策としては、当局が増発された通貨を使って、インフレターゲットが達成できるまで米国債を買い続けるというものだ。そのような策は円安を招いて輸出業者の支援となるだけでなく、国内に流動性を供給する。現在は外国証券の購入は、財務相の指示の下、外国為替資金特別会計に蓄えられた資金でのみ行われている。このように、金融ではなく財政オペレーションを通して行われる遠回しな円安誘導は一時的にしか機能せず、世界的なリスク回避が再び起きれば円は安全通貨に戻ってしまう。
日銀が米国債を購入するには日銀と財務省間の機関的取り決めを変える必要がある。また、日本の露骨な為替操作に対して米国からの反発を招くであろう。それでも尚、日銀の米債購入が果たす役割は、中国による巨額の米国債及び米エージェンシー(政府機関)債の購入がつい数年前まで果たしていたものと同じだろう。つまり米国の長期金利が低く保たれるということだ。
日銀は機能していない今の戦略を変える必要がある。新たな景気後退のリスクは高まっている。もし日銀が新しい政策を策定しなければ、国内の消費者は現金を蓄え続け、1999年以来この国の経済が渇望している「わずかなインフレ」も実現不可能になる。
2012年10月11日
アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日本の財政刺激策で求められる日銀の行動
By Andy Mukherjee
日本の新首相は中央銀行に10兆3000億円の財政出動という課題を突き付けた。
安倍晋三政権は、1月11日に2008年の金融危機以来最大となる財政刺激策を発表して、デフレとの戦いに先鞭をつけた。これによって日銀は現在追求している年率物価上昇1%の目標よりも高いインフレターゲットの導入を先送りする言い訳がなくなった。
政府の10兆3000億円に及ぶ財政出動は、実質経済成長率を2%ポイント引き上げると予想されており、今年度で追加的に5兆円相当の国債の発行が必要となる。更なる債務は今後も予定されている。リスク・フリーと考えられている国債の利回りが上昇するのを防ぐためには、日銀は債券市場の余剰供給分を、新しく発行する通貨を使って吸い上げなくてはならない。日銀が次回1月21─22日の金融政策決定会合で、現在101兆円の資産購入基金を増額することはもう決まったも同然だ。安倍首相が圧力をかける中、インフレターゲットを倍にして2%とすることもほぼ確実だ。
政府支出とマネーの供給の組み合わせは正しい方向への一歩だが、財政・金融の二つの当局間の為替レートにおける協力は、経済を更に手助けするだろう。
円の対ドル為替レートを1ドル=100円、つまり現在より12%の円安の水準、に抑え込めば、近年競争力がめっきり弱くなっている日本の輸出産業を押し上げることができる。強い輸出によって雇用と賃金が上向きになり、物価に上昇圧力がかかる。円を発行してドルを買うことでマネーサプライも拡大し、インフレ期待が高まる。
しかし日本では財務省が為替介入についての決定をし、日銀が通貨を発行する。この二つの当局の協調は待つ必要があるが、安倍首相はベストを尽くしてきた。
景気刺激策は既に対国内総生産(GDP)比で237%にも達している公的債務を更に増加させる。しかし追加的財政支出を遮断しようとするのは間違いだろう。安倍首相の洞察は極めて正しい。経済の再生がなければ、日本は財政再建できないばかりでなく、未来さえもないかもしれない。
2013年1月11日
BREAKINGVIEWS
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日銀の革命
日銀総裁任命前2013年2月11日、グループインタビューに答える黒田東彦現日銀総裁(ロイター/Toru Hanai)
日本の安倍晋三首相は、デフレとの戦いを主導する新しい将軍をまもなく迎える。強い信念と豊富な知識を持つ精力的な人物が日銀総裁になれば、安倍首相の構想が実現するかもしれない。
3月に退任予定の白川方明現日銀総裁の後任候補はどの人物も印象が強い。岩田一政氏と武藤敏郎氏は日銀副総裁を務めたことがある。しかし「日銀内部の経験者は政策において失敗する」という負のイメージがある。竹中平蔵氏は小泉純一郎元首相下で金融改革の急先鋒だった人物であり、実績に裏付けられている。そしてアジア開発銀行総裁の黒田東彦氏は豊かな人脈を持っており、これによって日本の国際的な批判を防げるかもしれない。
日銀総裁の任命は衆参両院で承認されなくてはならない。以下は、安倍首相が候補者と面接する際に「アベノミクス」にどれだけ傾倒できるかを試す想定問答集だ。
質問:あなたが円の価値を下げていると批判されたらどう答える?
正しい回答:ありがとう、とお礼を言う。新しい総裁は、日本国通貨の購買力を維持しなくてはいけないという厳格な観念を避けなくてはならない。平時にはそのような観念をもつことが日銀総裁の必要条件と考えられるかもしれないが、日本はデフレという苦境の中にいる。今日より明日の方が同じ円で買えるものが尐なくなると分かって初めて、消費者はより多くお金を使い、従業員は賃金の引き上げを迫り、投資家は現金もしくはリスクフリーの債券を蓄えるのを止めるだろう。
質問:もしインフレが金利上昇を招いて、日銀の保有国債に損失が発生したらどうする?
正しい回答:私は何とも思わない。今まで日銀のデフレへの対処が不十分だった理由の1つは、政策当局が日銀のバランスシートの大きさと質についてひどく頭を悩ませてきたからだ。新しい総裁もまた、日銀の保有国債の価値がたった5%低下しただけで自己資本が吹き飛ぶとタカ派から警告されるだろう。しかし自己資本が消滅することは民間金融機関が心配することであり、通貨を発行する中央銀行がすることではない。
日銀総裁候補面接での安倍首相の想定問答集
By Andy Mukherjee
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
質問:もし日銀が多額の損失を計上したら、債券市場は動揺しないか。
正しい回答:否だ。投資家にとって大事なのは、政府と日銀の連結バランスシートであり、インフレ率が高まって金利が上昇した場合はこのバランスシートの内容はもっと良くなる。日銀が保有する1兆2700億ドルの政府債務は、発行済公的債務全体の約7兆ドルからすればほんの一部だ。利回りが上昇すれば、この負債の現在価値も下落する。もちろん、保有資産の大部分が国債である公的年金にとっては痛手となるのは確かだ。しかしこの問題には別の対処が必要だ。
質問:円安はユーロ圏の産業の競争力にとって打撃になるというユーロ圏の懸念はどう和らげる?
正しい回答:イタリアとスペインの債券を買う。円安政策への国際的な反発に対抗するには、新しい総裁は安倍政権の外債購入構想を擁護しなくてはならない。外債購入ファンドがたとえば年間5000億ドル規模の大きさであれば、その5分の1をユーロ圏のソブリン債購入に使えば、ユーロ圏各加盟国の年間債務総計の5%を安定的に引き受ける貸し手となれる。しかしどのような事情でも、日本は1986年に大規模な円高を引き起こしたプラザ合意を繰り返す羽目に陥ってはならない。それは日本のデフレを引き延ばすリスクがある。
次期日銀総裁の歴史上の地位は確定している。しかし後の世代が、その総裁を日本の慢性的デフレを終わらせた平時の英雄と見るかはまだ分からない。場合によっては、1998年から日銀総裁を務め、デフレを悪と考えることを長い間拒否したがゆえに経済にひどい損失を与えてしまった速水優氏のような落第者と思われるかもしれない。
安倍首相が面接の最後にもう一問聞くとすれば、こうだ。もし私が財政支出を増やして、格付け会社が日本を再び格下げしたらどうするか?
正しい答え:ただ肩をすくめるだけ。
2013年2月12日
次期日銀総裁はマネタイゼーションを受け入れるべき
By Andy Mukherjee
日銀は財政赤字を直接引き受けることに病的な恐れがある。しかしこの「マネタイゼーション(財政の穴埋め)拒否」という信念は、今まで日銀が現金化してきた公的債務がおよそ1兆ドル、つまり日本の国内総生産(GDP)の約5分の1、ネットでの国債発行残高の14%相当、に上っていることにそぐわない。日銀の白川方明総裁が3月19日に退任した後に続く次期総裁はもっと現実的になる必要がある。
日銀は約1.3兆ドル相当の国債を保有している。これは今まで通貨を発行することで購入してきた。この発行通貨の内、3750億ドルは銀行が自主的に超過準備として保有している。もし銀行が突然もっと刺激的な用途を見つけてしまったら、日銀は銀行から受け入れる当座預金のうち、超過準備に付与している利息を現在の0.1%から引き上げることを余儀なくされる。もしそれでも十分でなかったら、日銀は流動性のある国債を市場で売って、相当する現金を吸い上げる必要がある。
しかし民間セクターは、日銀が保有する残りのおよそ1兆ドルの国債については何の制約も受けない。日銀のバランスシート上では、この資産は3種類の半永久的な負債によって裏付けられている。日銀が発行する通貨、ゼロ金利で銀行が日銀に預けている当座預金、そして、日銀の資本金と準備金だ。
この3種類の負債はすべて何の利息もない。どれも償還不能だ。銀行券は他の銀行券としか交換できないし、銀行は所要準備金を引き揚げることはできないし、民間セクターは日銀の資本金に何の権利も持たない。これが近代の中央銀行が行う財政ファイナンス(穴埋め)のやり方だ。つまり国債を積み増すと同時に、多額の自己資産を形成する。政府が債務を日銀に押し付けるという荒っぽい方法はもう過去のものだ。
米連邦準備理事会(FRB)は日銀よりも非伝統的政策により果敢に取り組んでいるが、マネタイゼーションに関して言えば、米国は日本より規模がかなり小さい。米の預金取扱機関がFRBが準備預金に付している0.25%の利子を拒絶して、1.6兆ドルあるすべての超過準備を引き揚げた場合、FRBは保有している米国債のほとんど全てを売らなくてはならず、米経済からも同等の量のお金が吸い上げられることになる。
このマネタイゼーションを見分ける方法は、FRBのエコノミスト、David Lebow氏によって約10年前に見出された。興味深いことに、日本の財政ファイナンスされている国債が対国内総生産(GDP)比率で1997年の12%から20%に上昇しても、国債市場では今まで何の混乱もなかった。それでも、日銀内の通説は、日銀の国債購入が、政府が低コストで財政出動するのを支援するという動機づけでなされる場合、投資家はより高い金利を要求するというものだ。
BREAKINGVIEWS
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日銀の革命
日銀はこの見方を他の国と共有することに気後れを感じていない。国際通貨基金(IMF)が2012年8月に公表したレポートには、日銀当局者がIMFのスタッフに、「財政改革が欠如している環境では、(日銀による)国債購入の更なる増額は財政赤字のマネタイゼーションと見られ、金利を押し上げる可能性がある」と述べたと書かれている。しかしこのような主張を後押しする証拠はない。政府は1月に対GDP比2%相当の追加的刺激策を公表し、日銀は2014年から無制限に国債を購入すると発表した。しかし10年国債の現在の利回りは0.75%だ。
マネタイゼーションの真の危険は、政府が国債市場の規律を回避することを許されたとたんに、無鉄砲に借金することだ。しかしこの議論は現代の日本には当たらない。政府の多額の赤字は、民間セクターの20年にも及ぶ高リスク投資引き揚げの動きを穴埋めしてきた。もし国が借金なしの運営を続けていたら、名目GDPは現状のように1997年比で若干10%低下しているだけでは済まず、崩壊していただろう。
現在のところ、マネタイゼーションは日本にとってほとんど脅威になっていない。そして経済がデフレから脱却しない限り、大した脅威にはならないだろう。デフレを脱出して初めて、民間セクターは政府の資金需要によって金融市場から締め出されることに文句を言う理由ができるかもしれない。
日銀がさらに大胆になるならば、石田浩二審議委員が提案した超過準備に付される利息の撤廃を実行すればいい。もしそれでも銀行が余剰金を日銀の下に保有し続ければ、それはつまりゼロ金利の現金を他の何かと交換する意志が全くないということだ。そうすれば、政府と日銀に対して、日本人が空から飛んでくる「ヘリコプターマネー」をもっと必要としているという強いシグナルになる。
日銀にとって、未来の問題を予期して金融拡大を手控えることは賢明ではない。これは次期総裁が打ち勝たなければならない根拠なき恐怖だ。
2013年2月14日
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日銀総裁人事、何故黒田氏が好ましい選択肢なのか
By Andy Mukherjee
日銀総裁任命前2013年2月11日、記者団に語る黒田東彦現日銀総裁(ロイター/Toru Hanai/Files)
日銀の次期総裁は通貨の発行に大胆であると同時に、安倍晋三首相の経済政策を策略をめぐらせて擁護できる人物でなければならない。黒田東彦現アジア開発銀行(ADB)総裁はこの必要条件を満たしている。
2月25日のロイターの報道によると、黒田氏は、白川方明現日銀総裁の後任として安倍首相から指名される見通しだ。この報道まで投資家は、黒田氏が候補選で武藤敏郎元日銀副総裁に負けると信じかけていた。しかし報道を受けて日本の株価は4年半ぶりの高値となり、円は2年半ぶりの安値となり、黒田氏は投資家の承認を得た形となった。
黒田氏は過去8年をADBで過ごし、世界中の財務大臣や中銀総裁と親しく接してきた。そのような外交上の経験は、日銀の政策が「競争力を強化するための通貨安政策だ」という批判をかわす際に大いに役に立つだろう。
黒田氏のもう1つの利点は、非伝統的政策手段を試す意欲があることだ。今から10年前、日銀の独立性の擁護がまだ宗教的な熱心さを帯びていた頃、コロンビア大学のエコノミスト、ジョセフ・スティグリッツ氏は日銀が政府の債務を直接引き受けることを提唱したがほとんど支持を得られなかった。当時内閣官房参与だった黒田氏はその考え方は「とても興味深い」と語った。
武藤氏もまた、デフレ根絶を誓っている。しかし投資家はその約束を信じるのに苦労している。武藤氏は日銀の副総裁だった2003年から2008年までの間、政策委員会が2006年3月に量的緩和政策を解除した時も、2006年7月と
2007年2月の2度利上げを行った時も、反対票を投じなかった。
日本経済が再び縮小に転じるわずか3か月前の2008年1月の時点でも、武藤氏は講演で、世界経済が引き続き力強く拡大すると考えるのが妥当であり、日本の0.5%の金利は極めて緩和的だと語っている。
武藤氏はこのような過去の誤りから教訓を得ているかもしれないが、黒田氏は新たな誤りを犯すことは許されない。新総裁と2名の新副総裁の下での最初の決定会合(4月3─4日)から期待感は高まるだろう。新体制が良い印象を与えずに終わったら、2度目のチャンスはないかもしれない。
2013年2月25日
BREAKINGVIEWS
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日銀の革命
デフレ脱却目指し黒田氏は野心的な新計画を策定
By Andy Mukherjee
日銀の新総裁は前任者の気弱な戦略を放り捨ててしまった。黒田東彦氏は日本の慢性的なデフレを終わらせるため野心的な新しい計画を策定した。
日銀は既に長期間に渡って金利をゼロにしているので、利下げはできない。しかし通貨の発行はできる。そこで、4月3─4日に行われた黒田新総裁下での初の金融政策決定会合で、日銀は大規模に通貨を供給することを決めた。流通現金と日銀当座預金の合計であるマネタリーベースは2014年末までのたったの2年で、昨年末時点の138兆円から2倍の270兆円になる。
新たに発行されるお金は積極的に使われることになる。白川前総裁はよりリスクが小さく、より短期の証券を購入することを神経質に偏重していた。黒田氏は償還期限が40年の国債でさえ買うつもりだ。日銀はまた、12年前に自主的に導入し、保有国債を紙幣の発行量内に収めるとしてきた「銀行券ルール」を「一時的に停止」する。このルールによって日銀の長期国債購入は今まで制限されていた。
攻撃的な日銀に新興国の当局者は落ち着かない思いだろう。流動性のある安い円が、新興国の底が浅い資産市場に流入するからだ。先進国と中国は日本を通貨戦争を引き起こしたと責めるだろう。しかし円を安くして、輸出優位の産業に新しい投資を呼びこむことは、日本がデフレの災難を根絶するには必要不可欠だ。
黒田氏は安倍晋三首相のデフレ脱却という責務を引き受けたことで、さらなる行動を用意しなくてはならない。彼の新しい戦略は日本の基準から言えば過度に積極的だ。しかし米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートはリーマン・ブラザーズが破綻した2008年から3倍になっている。黒田氏は日銀が2002年と2009年に試みた株式買入れを復活させることも可能だ。
黒田氏にはさらにできることがあるだろうが、デフレ脱却は彼だけではできない。来年の今頃には2014年4月の消費税引き上げの前の高額商品購入も終わりを迎えているだろう。デフレの坂を再び転げ落ちないためには、安倍政権が2014年に、公的支出に支えられた成長を目指すことが必要だ。黒田氏主導の国債購入で借入コストが抑えられるならば、そのような戦略は先進国中最大の債務国である日本にとってもほとんど危険を伴わない。
2013年4月4日
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日銀の参戦で強まる世界的金融のうねり
By Edward Hadas
アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日銀は失われた時間を取り戻そうとしている。日本の金融当局は長い間、大規模資産購入への外部からの要請に抵抗してきた。しかし黒田東彦日銀新総裁は、米国、イギリス、そして程度の差はあれユーロ圏の金融当局が行ってきた、金融システムへのマネー供給量を争う世界的な競争に熱意をもって加わった。
日銀が予定する月額7兆5000億円の国債購入は年間では対国内総生産(GDP)比で19%に相当し、日本の財政赤字の190%にも及ぶ。米連邦準備理事会(FRB)は開始は早かったものの、現在の資産購入の規模はGDPの6.5%・財政赤字の105%で、日銀と比較すると控えめに見える。
黒田総裁には世界の通貨発行競争に加わるもっともらしい国内事情がある。マネーの供給によって日本のインフレ率とGDP成長率が回復する可能性があり、将来的には、現在対GDP比で235%もある政府の債務負担が減ることになる。
しかし中央銀行が国内の視点で考えても、その行動には国際的な反響がある。資本移動が自由で変動相場制の世界では、全ての金融上の行動は世界中に波及する。レバレッジをかければ、比較的小規模の金額でも効果は大きくなる。
このような政策の経済的効果は明らかではない。米・英経済は金融刺激策に対して緩慢に反応してきたように見える。しかし刺激策無しであったら、事態はさらに悪かったかもしれない。
金融上の効果はより明確だが、予測不可能だ。米国の量的緩和第1弾ではドルは下落したが、第3弾では上昇した。豊富な通貨の供給は国際商品価格を当初下支えたが、現在では株式市場の方が押し上げ効果が強くなっている。金価格は通貨大量発行の当初の受益者だが、今では下落している。債券の利回りは総じて低下しているが、ユーロ圏のいくつかの加盟国が悟ったように、例外もある。
金融緩和競争は最終的には成長を回復させることですべての人の利益となり、それに続く引き締めも問題なく実行されるはずである。しかし緩和が長く続き、より多くの国が加わり、巻き込まれる額が大きくなればなるほど、この金融の波はより破壊的になるだろう。日銀の新政策はこの確率を強めた。
2013年4月15日
BREAKINGVIEWS
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債券、株式、そして円
ライトに照らされる1万円札、2013年2月28日(ロイター/Shohei Miyano)
円相場が4年ぶりに1ドル=100円台に突入したが、今後、一方的な円安は見込めないだろう。
円は、昨年12月の衆院選で自民党が大勝して以降、16%下落したことになる。当時、Breakingviewsは、安倍政権の誕生で1ドル=100円まで円安が進む可能性があると指摘していた。ただ、今後の円安進行を阻む要因は複数ある。
まず、警戒すべきはアグレッシブな金融緩和だ。半年前までは、米連邦準備理事会(FRB)が世界で最も大胆な金融緩和政策を実施していたが、衆院選で状況は変わった。安倍氏は選挙戦で日銀を批判、2%のインフレ目標導入を公約に掲げた。日銀の黒田新総裁は4月4日、マネタリーベースを2年間で2倍にすると表明した。
円の供給拡大は円の下落を意味するが、どの程度円安が進むかは、FRBの次の動きにかかっている。FRBが、雇用低迷とディスインフレを理由に量的緩和を拡大すれば、ドルは下落する可能性がある。また、ユーロ圏の債務危機が悪化した場合、安全資産としての円の魅力が再び高まる可能性もある。
福島原発事故をきっかけに、エネルギーの輸入依存度が高まっている点も見逃せない。円安で輸出が回復しても、エネルギー価格の急騰で個人消費が低迷する事態は政府として避けたいだろう。
通貨外交の問題もある。米国はこれまでのところアベノミクスを静観している。20カ国・地域(G20)も、日銀の積極緩和への批判を控えている。しかし、例えば円があと20%下落すれば、日本が通貨戦争を仕掛けたとの批判に反論するのは難しくなる。安倍政権は日米の通商関係強化を望んでおり、そうした事態は避けたいはずだ。
最後に、周辺諸国への影響もある。1990年代半ばの急激な円安は、投機的な円キャリー取引を招き、東南アジアに信用バブルの発生と崩壊をもたらした。アベノミクスの狙いは日本経済の回復であり、安倍首相は、次のアジア金融危機の原因をつくった男と思われたくないはずだ。
2013年5月10日
ドル100円突破、今後は一方的な円安見込めず
By Andy Mukherjee
債券、株式、そして円
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日本の遅すぎる参加で混迷増す通貨安競争
By Agnes T. Crane
円安をめぐる発言で、円は対米ドルで昨年9月以来約12%下落した。日本は遅ればせながら、経済的苦境を通貨安で克服できると期待する多くの国々に加わった。この段階で戦線に加わることは、通貨安競争をより危険なものにしている。
日本は、世界がこれまで円に厳しすぎたと証明することが可能だ。外為の買い手は過去5年間の金融危機を巧妙に回避したとして、日本を罰している。トレーダーは2007年半ばから円買いを続け、その後の5年で対ドル相場を60%近く上昇させた。
この状況は日本の輸出をほとんど支援せず、輸出は2008年初めのピークから31%減尐、貿易収支は5カ月連続で赤字となった。物価が徐々に下落するなか、日本のすべての債務合計は国内総生産(GDP)の500%を超え、尐子化と急速な高齢化が進む日本にとって膨大な負担のように見える。安倍晋三新首相がインフレと円安を望むのも当然だ。
日本の景気支援のため円安に向けた金融・財政措置を採用する安倍首相の政策は、米国や英国、スイス、中国の政策と細部こそ異なるものの、基本的には変わらない。通貨安競争への参加者が増えるほど、競争は空回りに陥る。日本は、こうした手ごわい相手との通貨安競争で苦しむ可能性がある。
消費者物価が過去20年間ほとんど横ばいだった日本国内では、インフレ率上昇と円安に対する評判は良いかもしれない。ただ、安倍首相の政策が行き過ぎ、日本の輸出業者が過度にその恩恵を受ける場合、新たな政策は韓国や中国、あるいは米国からさえも一段の反発を招く可能性がある。
それでも、円が過小評価されていると判断されるまでには、まだ十分な下落余地がある。経済協力開発機構(OECD)の購買力平価指標によると、円は適正価値を16%上回っている。ただ、日本が通貨安競争に加わることで、戦いは投資家が現在予想している以上に混迷する可能性がある。
2013年1月7日
BREAKINGVIEWS
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債券、株式、そして円
日本のインフレ期待、世界のリスク資産にとって朗報
By Andy Mukherjee
2009年1月22日、東京のトレーディングルームで電話しながらモニターに見入る外為ディーラー(ロイター/Kim Kyung-Hoon)
安倍晋三首相のデフレ脱却に向けた戦いは成果をもたらしつつある。インフレ期待の芽が投資家に日本国債の保有を縮小させ、より高いリターンを得るため海外に目を向けさせた。安倍首相がこの取り組みを強化するのに伴って、イタリア国債からロシア通貨ルーブルまで世界のあらゆるリスク資産に新たな買いが入るだろう。
円は対ドルで昨年9月半ば以降すでに21%下落している。安倍首相が3月に日銀総裁人事でより柔軟な人物を選任すれば、円はさらに下落し、インフレ期待が一段と高まる可能性がある。普通国債と物価連動債の利回り格差で示される期待インフレ率はすでに1%に上昇している。1年前はマイナス0.02%だった。
しかし、日銀が年2%のインフレ目標達成に向けて積極的に国債を購入し、市場に新たな資金を供給することを踏まえると、国債利回りの上値は引き続き抑制されるとみられる。10年債の名目利回りが0.8%となっている日本国債は利益の出ない取引になる可能性がある。このため、日本の投資家は方針を見直している。1兆2000億ドル規模のポートフォリオのうち国債運用が3分の2を占める年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は4月ごろに投資戦略を見直す。他の投資家も見直しに動く可能性がある。
日本株は国債投資に代わる選択肢の一つだが、日経平均は過去3カ月間にすでに28%上昇しており、海外資産に目を向ける方が賢明かもしれない。日本の投資家が海外資産への投資を2006年の水準まで25%拡大した場合、年間約2500億ドルが日本から海外に流出することになる。日本の投資家にとって2013年の投資先は、2005年終盤から2006年序盤にかけての前回の量的金融緩和のピーク期とは異なるだろう。豪ドルなどの資源国通貨はこれまでほど魅力的な投資先にはならない。すでに低水準となっているオーストラリアの金利は資源投資ブームの後退でさらに低下する可能性があるためだ。
モルガン・スタンレーのアナリスト、ガブリエル・デ・コック氏とジェームズ・ロード氏によると、ユーロ圏周辺国の国債が日本マネーにとって魅力的な投資先になるという。ロシアのルーブルやメキシコペソといった高利回り通貨もモルガンのトップピックだ。
日本の投資家は2008年の危機以前の好況期よりも選別的になる可能性がある。ただ、そうだとしても彼らのポートフォリオ変更は世界中で気付かれるものになるだろう。
2013年2月6日
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日本の日本株の上昇、今回こそは過去の局面と異なるか
By Andy Mukherjee
2011年8月8日、東京証券取引所にて社員が取引開始を待って株価ボードを注視する様子(ロイター/Kim Kyung-Hoon)
1度目は手ひどく打撃を受け、2度目は懲りて臆病に──。実際、日本の投資家はこれまで、日本が低迷から抜け出しつつあるとの見方に何度も裏切られてきた。今回尻込みしたとしても当然だろう。とはいえ、誘惑には抗えない。MSCI日本指数は昨年11月中旬以降、対ドルでの急速な円安に支えられ、3分の1上昇している。安倍政権のリフレ政策に投資家は自信を持っている。スターマインのデータによると、日本企業の利益は向こう1年間で22%増える見通し。これは世界平均の約2倍の水準だ。
バリュエーション指標も日本株が好まれる理由を示している。MSCI日本指数の予想PER(株価収益率)は14をわずかに下回る水準で、欧州の同様の指標より若干高く、米国とほぼ同等だ。だが、過去25年間の世界の平均PERだけでなく、過去25年間の日本の平均PERである30もはるかに下回っている。
配当利回りも同様だ。トムソン・ロイター・データストリームのデータによると、日本株の配当利回りは現在、平均
2.2%。1988年以降の期間のうち、約3分の2は1%に届かなかったことを考えれば、驚くべき数字だ。
今回の状況とこれまでの期待の違いは何なのだろうか。2003年5月には曙光が射したかに見え、MSCI日本指数はその後4年間で倍増したものの、その後の下落で結局はすべて失った。しかし、当時はスタートの時点で日本株のPERが
16、配当利回りが1.2%だった。これは現在の状況よりも割高だったことを意味している。
明確なデータやテクニカル分析だけを頼りに投資判断が下されることはめったにない。安倍政権のリフレ政策も色あせる可能性がある。企業も円安の恩恵を受け損ねるかもしれない。
とはいえ、バリュエーション指標は今が日本株買いのチャンスだということを強く示している。今回こそは今までと状況が異なるかもしれない。
2013年2月8日
BREAKINGVIEWS
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債券、株式、そして円
日本からのマネー大流出は現実ではなく期待
By Andy Mukherjee
必要なだけお札を刷るとの日銀の方針表明でも、日本人の円への思いは変わらないようだ。日銀がマネタリーベースを2倍にすると発表してからの1週間で、日本に住む投資家は正味5480億円(56億ドル)の外債・外国株を売却した。これは、彼らがインフレの脅威を信じず、むしろ海外の資産に不安を感じていることを物語る。
日銀の異次元緩和に対する当初の反応は予想外のものだった。2年以内に2%のインフレ率を実現すると中銀が約束したならば、日本の投資家はより良い実質リターンを求めて海外に目を向けてしかるべきだ。HSBCのアナリストは3月、日本の機関投資家がポートフォリオで比較的小規模な調整をするのに1兆ドルの外債を購入する必要があると試算。先進国の政府債利回りはここ数週間、日本からの資金流入観測で低下している。
予想外の反応の理由として考えられるのは、日本の投資家が日銀が成功すると予想していないことだ。デフレが続けば、日本の政府債はたとえ名目リターンがゼロに近くても魅力がある。ただ、反対のシグナルもある。期間5年の政府債とインフレ連動債の利回り差が示す予想される将来のインフレ率は1.56%と、昨年8月の3倍に跳ね上がっている。
さらにありそうな理由は、リスクを調整したベースの世界市場が、日本人の国内志向を変えるほどの魅力がないということだ。景気回復期待でTOPIX(東証株価指数)は過去1年で41%上昇。日本の長期国債は今年、円建てで米国債より高いリターンを提供している。
最新のデータは結論を出すには不十分だ。銀行や運用会社など大口投資家は、ネットの対外投資の80%を占めるが、個人などの小口投資家と大口投資家が同じように行動するとは限らない。資金流出の詳しい状況は、8月に発表される今年前半の国際収支統計で明らかになるだろう。現在のところ、日本からのマネー大流出は現実のものではなく期待の域にとどまっている。
2013年4月18日
戦う価値のない通貨安戦争
By Edward Hadas
金融・財政政策を通じた景気刺激は、ライバル国を傷つける凶器なのだろうか。答えは質問する相手によって変わってくるだろう。
通貨安戦争に至る流れはこうだ。「我々は景気を支援している」「いや、それは競争的な切り下げだ」「あの国は通貨安戦争を仕掛けた」――。
これは残念な認識の相違といえる。というのも、通貨安は往々にして景気の拡大につながらないからだ。
先の例が示唆するように、現在、先進国ではどの政府・中銀も通貨切り下げ政策を掲げていない。一番近いのは
スイスだろう。スイス中銀は、為替レートを政策手段として利用している。ただ、目的は通貨の切り下げではなく、急激な通貨高の回避だ。日米英では、国内経済の刺激を目的とした金融緩和の副作用として通貨安が進んでいる。
ただ、この副作用は往々にして歓迎され、劇的な効果をもたらし得る。ドルと円は昨年8月以降、対ユーロでそれぞれ9%、19%下落した。景気の低迷が続き、中銀が量的緩和を継続すれば、さらに通貨安が進行する恐れがある。
こうした副作用への反発は至極もっともだ。一方的に国内政策を進めるのは、国際経済に参加する国に似つかわしくない行為といえる。たとえ、通貨安が意図的でないにしても、隣国で有害なスモッグが発生するようなものだ。
景気を刺激する国──有害物質を排出する国──には一定の責任がある。さらに各国当局は、インフレのリスクを冒して、金融緩和や大規模な財政出動を進めているのかもしれないが、海外債権者は、これが得る物より失う物のほうが多い実験であることを正しく見抜いている。
経済学的には、通貨安競争を正当化する根拠ははるかに尐ない。通貨価値が経済に及ぼす影響は軽微で、影響もまちまちだ。
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
2013年3月28日、ソウルの独立門前で安倍晋三首相の顔がプリントされた日本国旗を引き裂く韓国の反日デモ参加者たち(ロイター/Kim Kyung-Hoon)
ある程度の通貨安が途上国経済にプラスになることについては、優れた実証研究がある。ダニ・ロドリック氏、スルジット・バッラ氏など、途上国の一流経済学者は、通貨安で価格競争力をつければ、輸出の拡大や海外投資の誘致が格段に容易になることを証明した。極端かつ急激な通貨高で経済に歪みが生じることや、そうした通貨高を是正すれば景気が加速することについても、かなりの実証データがある。2008年、円の対ユーロ相場は3カ月間で40%急騰し、日本の輸出業者は深刻な打撃を受けた。その後円安が進んだとはいえ、現在も2003年以降の平均レートを8%上回っている。
ただ、変動相場制を採用する先進国では、為替変動が景気に影響を及ぼさないケースがほとんどだ。ポンドは2007─
08年に対ユーロと対ドルで20─25%下落したが、英経済に目立った影響はみられなかった。輸出と輸入がともに増加し、貿易赤字の縮小は実現しなかった。もちろん、ポンド高が進んでいれば、貿易赤字は拡大していたかもしれない。ただ、通貨安だけでは、1998年前後から始まった貿易収支悪化の流れを変えることはできなかったとみられる。
通貨安が万能薬でないことは様々な研究で確認されている。トルコの経済学者4人が2008年にインターナショナル・
リサーチ・ジャーナル・オブ・ファイナンス・アンド・エコノミクス誌に発表した論文によると、通貨安は6カ国で長期的に小幅なマイナスの影響、3カ国で小幅なプラスの影響をもたらした。
現在、米政府のセンター・フォー・エコノミクスに勤務するマイケル・ホフマン氏は2005年、やや異なる方法論を用い、次のような結論に達した。ドルの価値と米経常収支のトレンドには「たとえあったとしても、ごくわずかな関係しか認められない」。
これは意外なことではないだろう。経済が力強い国は通貨も力強い。通貨面で有利な条件を求める国は、往々にして経済が構造問題を抱えており、通貨安の恩恵が目減りする。たとえば、国内賃金が上がり、輸入価格上昇の影響が相殺されるが、
同時に輸出競争力も落ちるといった例が多々みられる。さらに、先進国間の貿易では「国内でつくって他国に売る」という形態は非常に尐ない。
ハイテク製品の価格の最大半分は、輸出先の販管費・サービス費を反映している。さらに部品の輸入価格も製品価格を大きく左右する。通貨安で価格上の優位性を高めても、品質上不利な点を補うことは難しい場合が多い。
通貨安で手っ取り早く輸出を回復させようとする国は、目的を明確にする必要がある。短期的に効果が出ても、長期的に有益な改革を怠る口実にはならない。また、その国の最終的な支払い能力への信認が低下すれば、高い代償を支払って、通貨安のメリットを得たことになる。
2013年1月29日
BREAKINGVIEWS
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企業の難題
日本企業の海外M&A、円安進行でも衰えない理由
By Peter Thal Larsen
企業の難題
2012年10月31日、ソフトバンク孫正義社長がカントリーリスクに関して登壇
2012年は円高、低金利、国内市場の停滞といった要因を背景に、日本企業による海外でのM&A(合併・買収)が急増したが、円安が進行してもこの流れは反転しないだろう。
安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」による円安で、日本企業は一時的に海外M&Aに対する財布のひもを締めている。しかし、アベノミクスで日本の尐子高齢化と人口縮小を解決することはできず、結局は海外に活路を見い出すしかない。
M&Aアドバイザーにとって、昨年の日本は最高の1年だったと言える。200億ドル(約1.9兆円)に上るソフトバンクの米スプリント買収(現在、ディッシュ・ネットワークが対抗買収を提案中)といった大型案件で、海外M&Aは総額
846億ドルに達した。デフレや円高による国内製造業の空洞化で身動きが取れなくなった企業が海外に打って出るケースは増えている。
こうした海外脱出の流れは、安倍政権の誕生で一時的には落ち着いている。「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」という3本の矢で、事業計画を見直している企業もあるだろう。
安倍首相誕生以降、円は対ドルで約15%も下落しており、日本企業の海外購買力を弱めている。2013年1─3月期の海外M&A額は62億ドルで、昨年同期の153億ドルから大幅に減尐した。しかし、海外M&Aの流れが今後も続くと信じる正当な理由は存在する。まず、為替はそこまで円安ではない。6年前の円相場は今より20%も安かった。また、昨年
12月半ばから日経平均株価が約4割上昇するなど、日本の株式市場は力強さを見せており、企業が買収資金を借り入れだけでなく、株式でまかなえるようにもなってきた。そして、インフレ政策で日本の人口減尐を巻き戻すことはできない。売り上げを伸ばしたい企業はいずれにしても海外市場を目指さなくてはならない。
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日本企業に対する海外からの関心が再び高まることを期待するのも時期尚早だ。一部の不振産業では、非中核事業の維持はますます難しくなるだろう。例えば、業績不振に苦しむパナソニックはヘルスケア部門の売却を検討している。
欧米のプライベートエクイティーも、日本での活動を活発化させている。ただ、日本企業買収を検討する海外企業は今なお、文化面や規制面で厄介なハードルに直面する。アベノミクスの成否にかかわらず、日本企業のM&Aは今後も圧倒的に「外向き」であり続けるだろう。
2013年4月16日
BREAKINGVIEWS
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企業の難題
日本、原発にもう一度チャンスを
By Christopher Swann
日本は原子力エネルギーに再びチャンスを与える必要がある。日本は2011年の福島原発事故の前ですらエネルギーの
80%超を輸入していた。安倍晋三首相の円安政策で、電気料金は一段と上昇するだろう。
野田前政権は2012年9月、原子力エネルギーに対する反対機運に押され、2040年までに国内のすべての原子炉を閉鎖する目標を打ち出した。12月に政権の座についた安倍首相は、再び世論を転換したいと望んでいる。実際、首相の拡張的経済計画はそれを必要としている。
日本では福島原発事故後、新たな安全対策が適用される間、原子炉が稼働停止となった。そのため、米エネルギー情報局(EIA)によると、日本の発電に占める原子力産業のシェアは、1987年─2011年の平均30%から、2012年にはわずか2%にまで低下した。日本のエネルギー輸入額は急増し、世界原子力協会によると、液化天然ガスの輸入額は
2012年、25%上昇し660億ドルに達した。これを受け、関西電力など大手電力会社は20%近い値上げを行った。
安倍首相の政策は円安を志向、インフレが発生する可能性がある。こうしたなか、電気などのエネルギー価格が高騰すれば、企業や消費者に悪影響が及び、首相が望む経済成長はたやすく押しつぶされてしまう。
日本は、福島原発事故の前には、原子力発電の比率を半分程度にまで引き上げることを望んでいた。過去最悪の原発事故から回復しつつある日本にとって、こうした目標を復活させるのは、政治的に難しいように思われるかもしれない。しかし、日本の政治家は2011年より前の数十年間には、広島や長崎への原爆投下というトラウマにもかかわらず、原子力産業への支持獲得に成功していた。日本は2010年までには、米国とフランスを除くと、原子力発電量が世界一となっていた。
福島事故は当然、信頼感に対する大きな打撃だった。それはまた、巨大企業の東京電力を国有化されたに等しいゾンビ企業に変えるなど、原子力の金融上のリスクも浮き彫りにした。こうした危険は冒す価値があるということを国民に納得させるのは大変かもしれない。しかし、広範囲な経済復活という安倍首相の計画は、大々的かつ安全性にも配慮した原子力プログラムなしには、頓挫する可能性がある。
2013年4月5日
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
円安で恩恵の日本家電メーカー、真の復活へ売り上げ回復を
By Peter Thal Larsen
2012年11月1日、記者会見に応じるシャープ奥田隆司社長(ロイター/Issei Kato)
日本当局の円高是正の取り組みは、明確な勝者を生んだ。不振にあえぐ家電業界への投資家だ。パナソニックの
10─12月期は営業黒字に転換。同社株は2月4日に急伸した。期待されているのは、輸出拡大や経費削減の効果。しかし、売上高は依然減尐しており、株価を押し上げたのはあくまで期待だ。
パナソニックの経費削減策は明らかに効果が出始めている。10─12月売上高は前年比8%減尐したが、営業利益は
346億円の黒字に転換。パナソニックよりも状況が深刻なシャープも小幅ながら営業黒字を確保した。
投資家は、円安で海外からの需要が増加するとともに、国内では国産品が輸入品より割安になると期待している。
売り上げ回復は即、純損益に反映される。ドイツ銀行によると、売上高の変動がどの程度営業利益に影響するかを示す営業レバレッジが世界で最も高いのが日本企業。トムソン・ロイターの日本エレクトロニクス指数は昨年11月中旬から約70%上昇している。
とはいっても、日本の家電メーカー復活には不透明感が漂う。パナソニックの場合、4─12月の事業部門別売上高はほぼすべて前年割れ。円安による輸出価格下落で、韓国などライバルとの価格競争力は高まるはずだが、失ったシェアを取り戻すためには技術革新も必要だ。しかし、それを日本企業はここ数年置き去りにしてきた。パナソニックもシャープも2013年3月期の赤字予想を変えていないのはそのためだ。シャープは財務も依然脆弱で、フィッチ・レーティングスによると、今年償還期限を迎える債務は9000億円だがキャッシュは1640億円しかない。
バリュエーションは低いままだ。パナソニックの時価総額は、直近の株価上昇後でも通期売上高予想(7兆
3000億円)の4分の1足らず。5年前は2倍だった。売上高が回復しなければ、5年前のレベルに回復することを正当化するのは難しい。
2013年2月4日
BREAKINGVIEWS
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企業の難題
ソニーは再生できるのか
By Robert Cyran
日本全体がそうであるように、ソニーには再生が必要だ。かつては独占してきた市場のシェアを、アップルやサムスン電子のような新興勢力に奪われる状態が続いた。ソニーは技術革新の強みを失い、そのブランドの輝きは消えた。それなのに、
平井一夫新社長の下での再編計画でさえ、悲しくなるほどにこれまでと同じような内容だ。
ソニーは過去10年で時価総額の約半分を失い、現時点では約170億ドル相当となっている。サムスン電子やアップルはそれぞれその約12倍、25倍だ。円安と日銀の大胆な緩和策が株価を押し上げてもなおその水準だ。ソニーの株価は1月以降、50%近く上昇した。
ソニーがかつての強みを取り戻すためにはそれ以上が必要だ。主要都市の大半を眺めても、ソニー製の携帯電話やタブレット型端末を多くの人が持ち歩いている状況に出くわす確率は低い。ソニーがこの10年にわたってみてきたものは、将来に向けた端末開発ではなく、過去と自分達のこと。アップルとサムスン電子は主に技術革新と品質という点でリードを確保してきた。「ウォークマン」というヒット商品を生み出し、かつて家電業界をリードして小型化技術の先駆けでもあったソニーにとって、悲しい結末だ。
日本企業としては珍しくないが、ソニーの根気強さが特に裏目に出た。一旦市場に参入すると撤退に消極的で、10年近くの間でテレビ関連の事業で損失を計上してきた。
多様化しすぎたのも一因だ。半導体から金融、音楽、映画などの分野への進出で、資本と経営の時間が食われ、手に負えない状況になった。世界標準を受け入れるよりも、自社のスタンダードを押し通す道へと突き進むことにもなった。例えば、デジタル化したウォークマンは長年にわたり、一般的な音声圧縮方式「MP3」での音源を再生できなかった。著作権保護という点では功を奏したかもしれないが、消費者にとってデバイスは魅力を欠いたものとなった。
また、市場の比重がソフトウエアに移る中、ソニーは基本的にハードウエアを製造する企業だということもある。デバイスの魅力にもかかわらず、アップル最大の強みは新たなコードを開拓することにあるかもしれない。ソニーも時折、その才覚を表してきた。これまでのビデオゲームとして、家庭用ゲーム機「プレイステーション2(PS2)」は最も良く売れた。
だが「プレイステーション3(PS3)」の販売台数はその約半分にとどまった。次世代機の見通しも余り良好ではない。
日本全体ではアベノミクスがあるように、ソニーは再生に向け、企業レベルでのある程度の「ヒライズム」が必要。デジタル映像やゲーム、携帯端末に注力する計画は実を結びそうだ。スウェーデンの通信機器大手エリクソンと展開していた携帯電話の合弁事業を完全子会社化したことは、特に期待できる。スマートフォン(多機能携帯電話、スマホ)「Xperia
(エクスペリア)Z」は予想外にヒットし、日本では品切れとなった。また、映像や音楽部門は利益を上げている。
ただ残念なことに、これまでの経験から分かるようにソニーの投資家は期待を寄せるべきではない。2005年からソニーを率いていたハワード・ストリンガー氏は、事業の縮小と各部門の連携強化を示唆していたが、2008年の金融危機や
2011年の東日本大震災と福島第1原子力発電所の事故といった一連の流れが逆風になった。平井氏は状況に恵まれるかもしれないし、日本人でもある。ただし、エンタテインメント事業の売却というような急激な再編は、行き過ぎと捉えられるかもしれない。
また電機業界は挽回が困難な業界でもある。競争が厳しく、営業利益率が1桁台から抜け出すことがほとんどないため、
サムスン電子のような競合は市場シェアを拡大する、もしくは取り戻すために大幅な損失を喜んで受け入れる姿勢だ。こうした状況は、5%というソニーの利益率目標の達成が困難、ということを示しているかもしれない。
ソニーにとって最大の希望は、新たなデバイス開発だろう。かつてはウォークマンが成功の原動力となったように。
オリンパスと医療機器の開発や販売を行う新たな合弁事業は、活路となり得る1つだ。またソニーは、消費者が何よりも欲しくなるような新たな携帯端末を作り出す実力をまだ見せていない。
それはカナダのブラックベリーや米グーグルのモトローラ、ノキアといった、他の再生を目指す多くの企業にも言えることでもある。アベノミクスや円安がソニーの追い風となるかもしれないが、他の日本の大企業と同様に、失われた10年を抜け出すための製品や素地があるかどうかは未だ不明瞭だ。
2013年4月17日
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アベノミクス : 安倍首相の「実験」
日本車メーカー「黄金期復活」には馬力不足
By Antony Currie
日本の自動車メーカーにとって円安はグッドニュースだ。昨年10月初め以降、円は対米ドルで20%以上も下落した。
円安は日本車メーカーの利益を押し上げ、市場シェアも拡大させるだろう。ただ、2006年の「絶頂期」に戻れるかと言えば、それは怪しいと言えそうだ。
2006年当時、トヨタの株式時価総額は、欧米の大手8社、米フォード、米ゼネラル・モーターズ(GM)、伊フィアット、仏ルノー、仏プジョー、独BMW、独ダイムラー、独フォルクスワーゲン(VW)の株式時価総額を足し合わせたより大きかった。
為替は当時の水準である1ドル115円に向かいつつあるのかもしれないが、それ以外のほとんど全ての状況が今では変わっている。
7年前、クライスラーとGM、フォードのいわゆる「米ビッグ3」は混乱を極めていた。クライスラーとGMには米政府による救済策もあり、現在は3社とも経営が安定軌道に戻った。コスト削減に取り組み、自動車の品質も改善した結果、かなりの利益を稼ぎ出すようになった。
過去数年の円高はまた、日本の大手3社の海外生産シフトを加速させた。今では日産とトヨタが北米で販売する車の約3分の2が現地生産車であり、ホンダに至っては現地生産比率は90%に達する。これにより、円安による採算改善効果は、以前に比べれば薄くなっている。
とはいえ、円安が業績に寄与することは間違いない。モルガン・スタンレーによれば、為替がドル100円なら、日本メーカーの米国での売上高は1台当たり2000ドル押し上げられる。重要なのは、こうした円安メリットを各社がどう使うかだ。単純に利益に上乗せすることもできるが、それは経営陣のコスト削減意欲を鈍らせるかもしれない。
米国で値引きに動けば価格競争の引き金になるリスクがあり、米国メーカーの利益を圧迫することになろうが、市場シェアの変動につながるとは限らない。
円安による恩恵の一部を車の機能追加などに振り向けられれば、より効果的かもしれない。ただ、その効果が市場シェアや利益となって現れるのは数年先だろう。
最後の選択肢は、増配もしくは投資の拡大だ。増配の期待はすでに、日本車メーカーの株価が昨年10月以降で約70%上昇する一因になっている。トヨタの株価が2006年当時の水準に戻るためにはさらに約30%の上昇が必要だが、円相場の一段の大幅な下落がなければ、そこに到達するための十分な馬力があるようには見えない。
2013年4月23日
2012年12月25日、トヨタ自動車が新型クラウンを発表(ロイター/Yuriko Nakao)
BREAKINGVIEWS
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「Reuters Breakingviews」は金融分野の出来事について、深い洞察に基づいた分析やコラムを提供する世界でも有数のオピニオンプロバイダーです。2009年12月にトムソン・ロイターの傘下に入り、現在ではロイターブランドの金融コラムと
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表紙写真
2012年12月18日、衆院選挙での自民党勝利翌日、国会内で記者団に語る安倍総裁
(ロイター/Toru Hanai)
製作・編集
英語版
Research by Robyn MakDesign by Nita Webb, Carole Styles, Nicola O’Hara, Gavin White, Katrina Hamlin日本語版
Kyoko Kato, Fumika Inoue

http://static.reuters.com/resources/media/editorial/20130605/pdfnews.asp.pdf


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