02. 2013年6月07日 08:34:09
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| 小笠原誠治の経済ニュースに異議あり! トップ | 安倍総理が本当に話したこと(3本目の矢) 2013/06/06 (木) 13:30 昨日、安倍総理が、アベノミクスの3本目の矢、つまり成長戦略の、そもまた第3弾を発表しました。ご存知ですよね。 そして、それに対する市場の反応もご存じだと思います。 市場は、この成長戦略の第3弾に失望の意を示しました。それは、株価の低下を見れば明らかだと言われています。 でも、本当に成長戦略の第3弾は中身が乏しかったのでしょうか? マスメディアが報じるところによれば、法人税減税が含まれていないとか、公的資金運用の見直しが含まれていないとか、雇用流動化策が含まれていないとか、国民総所得が10年間で150万円増加する根拠が示されていないとか‥いろいろなことが言われています。 貴方もそう思いますか? 私の感想は、いつもの安倍総理のスピーチと同じように、美辞麗句をちりばめてはいるが、聴いている人に対する訴える力が不足していると思うのです。 聞いていて、なるほどそのとおりだと共感できるところが少ない。或いは、言っていることはそのとおりかもしれないが、だからどうなるのと思ってしまうところが多い。つまり、説得力が足りないのです。 ただ、私がそのようなことを言っても、それだけでは私の話にも説得力がないので、安倍総理の昨日の講演を簡単に振り返ってみたいと思います。 ・昨今の株価の動きに対して、「株価が下がったら、アベノミクスは終わりだ」という方がいる。かくのごとく日本は、20年間にわたるデフレによって深い自信喪失という「谷」に落ち込んでしまっていた。 ・私の最初の二本の矢は、すみずみまでこびりついてしまった「デフレ」という怪物を退治し、日本の自信を取り戻すための取組みであった。 ・私の経済政策の本丸は、三本目の矢である成長戦略である。その要諦は、民間のあらゆる創造的な活動を鼓舞し、国籍を超えたあらゆるイノベーションを日本中で起こすことである。 ・今こそ日本が、世界経済復活のエンジンとなる時である。 ここまでのことは、安倍総理が何時も言っていることなので割と理解しやすいのですが、問題は、どうしたら民間企業の活動を活性化させることができるかなのです。
しかし、真に民間企業の活動を復活、或いは活性化させるためには、それまで何故活動が鎮静化してきたか、その真の原因を探る必要があります。 では、この後、安倍総理はその原因を明らかにして、それに対する対策を我々に示すことができたのでしょうか? この後、安倍総理は次のような話をするのです。 ・春に種をまき、秋に収穫をする。短期的な「投機」に走るのではなく、四季のサイクルにあわせながら、長期的な「投資」を重んじる経済。資本主義の「原点」に立ち戻るべき。 はっきり言って、ここで安倍総理は何を言いたいのでしょうか? このような話をするからには、今の日本企業は、長期的な視点に立った投資を重んじていないと言いたいのでしょうか?
経営者の方々は、政治家から資本主義の原点に立ち戻るべきと言われて、余りいい印象を抱かなかったのではないでしょうか。 安倍総理は、この後、次のようなことを言うのです。 ・目先の利益だけで動くマネーゲームではなく、しっかりと実体経済を成長させて、その果実を広く頑張った人たちに行き渡らせる。これが、アベノミクスの狙い。 安倍総理の真意がどこにあるかは分かりません。しかし、5月22日まで、アベノミクスを支持する声が大きくなっていたのは、目先の利益だけで動くマネーによって引き上げられてきた株価のお陰ではなかったのでしょうか?
そんなことを言うものだから、マーケットの参加者からは嫌われる、と。 安倍総理は、次に、改革には終わりはないという話を始めます。 改革には終わりはない? というか、改革の名に値するものをまだ始めていないではないか、と私は言いたい。 安倍総理が挙げる改革案の例は次のとおりです。 ・インターネットによる一般医薬品の販売を解禁。 ・健康食品の機能性表示を解禁。 一番最初に挙げる話が、そんなしょぼいものなの?と言いたい。しかし、これだけのことでも、役人は相当に抵抗を示したようなのです。他にも、「先進医療」の保険外併用の範囲を拡大すると言っているのですが‥
農業分野では、次のようなことを挙げています。 ・細切れの農地を集約して競争力を高める「農地集積バンク」への取組みをさらに強化。 ・必要な手続の透明化・簡素化を進め、利用可能な農地がどこにあるのか誰でも見ることができるよう「農地利用電子マップ」を早急に整備。 農地の集約化の話は前からあるものですし‥「農地利用電子マップ」だなんて、本当に役人的発想としか言いようがありません。
一見、派手に見える「国際戦略特区」の話が、また頂けない。 ・新しく「国家戦略特区」を創設する。 ・ロンドンやニューヨークといった都市に匹敵する、国際的なビジネス環境をつくる。 ・世界中から、技術、人材、資金を集める都市をつくりたい。 ・国際的なまちづくりには、外国人でも安心して病院に通える環境が必要。 ・子ども達が通えるインターナショナルスクールも充実しなければならない。 ・職住近接の実現もまた、大都市に住む人には課題。 ・これが、私の考える「国家戦略特区」だ。 それで、世界中からお金や人、技術が集まるというのでしょうか? 「国際戦略特区」について話をするなら、肝心の海外の人々が魅力を感じるような話をしないと意味がない訳で、その程度の話ならむしろしない方がよかったのではないでしょうか? そもそも日本の企業が海外に脱出するようになって久しい訳です。日本の企業がそのように海外を目指すのに、どうして海外の企業に日本に来ることを期待できると考えるのでしょうか? 次は、官業の解放の話です。先ず電力システム改革についてです。 ・戦後60年にわたって、地域に1社の巨大電力会社が、発電から送電、小売までを独占。 ・他方で、供給源が多様化すればするほど、安定した電力の供給は難しくなる。電力の安定供給を確保する仕事は、並大抵なことではない。 ・経験豊かな電力会社の皆さんに、真の「プロ」として活躍いただき、さらなるイノベーションの創造者となっていただきたい。 「戦後60年にわたって、地域に1社の巨大電力会社が、発電から送電、小売までを独占」と指摘しておきながら‥つまり、改革の必要性を匂わせておきながら、「電力の安定供給を確保する仕事は、並大抵なことではない」だと。そしてまた、「経験豊かな電力会社の皆さんに、真の「プロ」として活躍いただき、さらなるイノベーションの創造者となっていただきたい」だと。
これ、ブラックユーモアの類なのでしょうか? 結局、既得権益に切り込むことを諦めたと言っているみたいなものではないですか。もう何も言う気がしなくなりました。 他にも細かい話は続くのですが‥安倍総理は、今こそ日本人も、日本企業も、あらん限りの力で「爆発」すべき時です、と言うのです。 芸術は爆発かもしれませんが、人や企業は爆発してはいけないのです。 そして、最後に細かい数字を挙げます。 ・3年間で、民間投資70兆円を回復します。 ・2020年に、インフラ輸出を、30兆円に拡大します。 ・2020年に、外国企業の対日直接投資残高を、2倍の35兆円に拡大します。 ・2020年に、農林水産物・食品の輸出額を1兆円にします。 ・10年間で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクインします。 数字を挙げるのはいいのですが、どうやったらその目標が達成されるか、その根拠を国民は知りたいのです。
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