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良い景気指標が出れば「景気回復が期待できる」と好感され、悪い指標が出ても「米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の出口戦略が先送りされる」と買われる――。米ダウ工業株30種平均株価はこうした市場の反応を追い風に過去最高値を更新し続けてきました。株価が力強く上昇しているときには悪材料はほとんど無視され、好材料ばかりが評価されて株高が加速します。このため悪材料までが好材料ととらえられることもあるのです。
特に金融緩和政策を背景にした株高(金融相場)では、こうした傾向が顕著に表れがちです。金融相場では「石が浮かび、木の葉が沈む」と表現されるほど常識外れのことが起こることもしばしばです。日本の金融相場ではかつて優良株が見向きもされず、鉄鋼や造船などの大型株がディーリング感覚で売買されたことがあります。ふだんは数円単位でしか動かない大型株が、1日で20円高や30円高、50円高といった異常な高値をつけたのです。
しかし米国株の値動きが重くなるにつれ、「FRBが量的緩和を縮小・解除することが最大の悪材料」とみる市場関係者が次第に増えています。緩和の縮小・解除は景気回復の兆しが鮮明になっていることを意味しています。
いまの米株高を支えているのはFRBによる量的緩和第3弾(QE3)がもたらした過剰流動性(カネ余り現象)です。それがヘッジファンドなどの投機資金を大きく膨らませて株式市場に大量に流入しているという構図になっています。
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投機資金はこれまで原油や金、穀物などの先物市場に大量に流入し、価格を高騰させてきました。しかし米国でシェール革命が進めば安いシェールオイルやシェールガスの大量生産が可能になり、原油や液化天然ガスなどの需給バランスが崩れて価格が下落すると予想されるため、投機の対象になりにくくなっています。原油価格に連動する傾向のある金価格が下落しているのもそのためです。そこでヘッジファンドなど投機資金の多くが、投機の対象を商品先物から日米欧の株式にシフトしているのです。
しかし株式も短期間のうちに高騰。過去最高値を更新し続ける米国株はバブル、5年5カ月ぶりの高値をつけた日本株はミニバブルの様相をそれぞれ強めてきました。
FRBは、雇用が改善されるまでは量的緩和を続ける(雇用が改善されれば緩和を縮小・解除する)と明言しています。このため、米国株にとって量的緩和に終止符を打つことになる景気回復は、むしろ悪材料となっているのです。一時は「米国株は景気回復に伴って金融相場から、(企業業績を支えにした)業績相場に移行する」という声も出ていましたが、いまではあまり聞かれなくなっているようです。
金融相場は景気や企業業績が低迷しているからこそ起きる相場です。景気や企業業績が回復したら量的緩和は役目を終え金利は上昇。企業の設備投資も活発になるため、カネ余り現象は消えてなくなり、金融相場は終わります。そこから業績相場に移行したとしても、金融相場でかなり上昇し終えた後だけに、株価が一段と高値を追う余地はほとんどありません。
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日本でもかつて金融相場から業績相場に移行したことがありましたが、金融相場が長ければ長いほど、また株価の上昇幅が大きければ大きいほど業績相場は短命で、小さな相場で終わったと記憶しています。米国株が仮に量的緩和の縮小・解除で金融相場を終え、景気回復期待を背景にした業績相場に移行したとしても、上昇相場は長続きせず短命で終わることでしょう。
2012年秋から今年5月までに8割も急上昇した日本株も、もちろん金融相場です。それも外国人投資家だけが大幅に買い越し続ける一方で、日本の機関投資家は大幅に売り越し続けているという非常にいびつな金融相場です。主役はあくまでも欧米を中心とする外国人なので、欧米(特に米国)の金融緩和に終止符が打たれれば日本の金融相場も終わるはずです。5月23日から6月に入った今週にかけて日本株急落が続いているのは、その前兆とみることができます。
http://www.nikkei.com/money/investment/stock.aspx?g=DGXNMSFK0303D_03062013000000&n_cid=DSTPCS008
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