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「日本市場はかなり前向き」“破滅博士”ルービニ氏が太鼓判 (ZAKZAK) 
http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/265.html
投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 6 月 04 日 16:52:00: igsppGRN/E9PQ
 

             大幅反落した3日の東証。調整局面はいつまで続くのか


「日本市場はかなり前向き」“破滅博士”ルービニ氏が太鼓判
http://www.zakzak.co.jp/economy/investment/news/20130604/inv1306041528001-n1.htm
2013.06.04 夕刊フジ


 4日の東京株式市場は大幅反発した。日経平均株価の終値は、前日比271円94銭高の1万3533円76銭。

 アベノミクスによる円安と株高が一服したのを機に、投機筋が「円買いと株売り」を仕掛ける厳しい状況だが、米著名経済学者は「日本市場は崩壊しない」と予言する。

 米株式市場のダウ工業株30種平均は138・46ドル高の1万5254・03ドルと大幅反発した。

 続く東京市場は朝方にもみ合った後、日経平均は200円安の1万3060円まで下落、その後プラス圏に切り返すなど先物主導の荒い値動き。銀行や不動産など金融関連株が買われた。

 「海外の投機筋は円高が進むと日本株を売るプログラムを仕込んでおり、円高株安が一気に進みやすい」(ネット証券)と悲観論も強まるなか、日本市場を「かなり前向きだ」と評価するのは、2008年のリーマン・ショックを予測し、「破滅博士」と異名を取る米ニューヨーク大のヌリエル・ルービニ教授だ。

 最近、日本を訪れたというルービニ氏は3日、米CNBCテレビで「アベノミクスは金融と財政の刺激にとどまらず、賃金や消費も拡大させる」と指摘。日本市場について「今後も激しい値動きはあるが、株式市場や円、国債は崩壊すると思わない」と語った。

 日銀が4日発表したマネタリーベース(資金供給残高)は5月末時点で前年同月比37・6%増の159兆1641億円と過去最大を更新するなど金融緩和は着実に進む。

 「日本はここ20年間で初めて、他の市場より良い結果をもたらすかもしれない」というルービニ氏の予言は的中するか。


 

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コメント
 
01. 2013年6月04日 18:12:59 : FfzzRIbxkp
>>。ヨアベノミクスは金融と財政の刺激にとどまらず、賃金や消費も拡大させる」と指摘。

やっと意味がわかりました!
TPPをスケープゴートにした日米MAIで米国企業の賃金が増えて、米国企業の消費が増えるということですね。

軍産複合体の賃金と消費が拡大するのですね。

原発再稼動脅しで、原発関連会社の賃金と消費が拡大するのですね。

新自由主義にも程遠い、破滅主義というやつですかぁ。


02. 2013年6月04日 20:41:41 : e9xeV93vFQ

 
> ルービニ氏は3日、米CNBCテレビで「アベノミクスは金融と財政の刺激にとどまらず、賃金や消費も拡大させる」「日本はここ20年間で初めて、他の市場より良い結果をもたらすかもしれない」

既に、良い結果がでているから、あまり予言としては大したものではないが

彼はQE批判派から転向したのか

それとも黒田日銀への皮肉か

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130307/244652/?ST=print
QEが招く10の問題点 ノリエリ・ルービニ 

短期的に見れば、QEをはじめとする非伝統的な金融政策には重要なメリットもある。だが、そうした政策があまりに長きにわたり維持されれば、深刻な副作用が生じ、長期的なコストは極めて多大なものとなる危険性があることに留意すべきである。

(1)純粋な「オーストリア学派」のアプローチ(つまり緊縮策の採用)によって、資産や信用バブルを崩壊させようとすれば不況を招く恐れがある一方、QE政策に依存し、必要な民間・公共部門の債務削減を先送りしすぎれば、至る所で「ゾンビ」が跋扈する事態となりかねない。

(2)繰り返しQEを導入すれば、いずれ実体経済活動への波及経路が目詰まりを起こし、効果がなくなる可能性が出てくる。

(3)金融緩和により通貨安を実現するというQEの為替経路は、いくつかの主要中央銀行が一斉にQEを実行すれば、効果はなくなる。すべての国の通貨が同時に下落することなど不可能である以上、すべての国の貿易収支が同時に改善することもあり得ない。

(4)先進国がQEを実施すれば過剰な資本が新興国に流入するため、新興国は困難な政策誘導を迫られる。

(5)持続的なQEは、QE実施国のみならず、QEの影響が波及する国でも資産バブルを招く恐れがある。そうしたバブルは株式市場から住宅市場、国際商品市場、国債市場、信用市場まで、様々な市場で起こり得る。

(6)QEは必要な経済改革を断行する政府の意欲をそぐという問題を引き起こしかねない。巨額の財政赤字が通貨の増発により賄われ(マネタイゼーション)、しかも金利が過度に低水準に維持されれば、市場が政府に財政規律を課すことが妨げられ、必要な財政の緊縮が先送りされてしまう。

(7)QEからの出口戦略は難しい。QEからの脱却が遅れて時機を逸すれば、インフレが加速し、資産と信用のバブルが膨らむことになる。

(8)長期にわたり実質金利をマイナスにとどめることは、所得と富を債権者と貯蓄者から債務者と借り手に再配分することを意味する。

(9)QEを含む非伝統的な金融政策は、深刻な意図せざる結果をもたらしかねない。銀行が貸出金利と預金金利の差である純資金利ざやの極端な低さに直面し、リスクに比べてリターンがあまりに不十分だと判断するに至った場合、最終的には行きすぎたインフレが発生するか、信用成長の加速ではなく減速をもたらすことになるだろう。

(10)伝統的な金融政策に戻るための道筋を完全に見失うリスクもある。事実、一部の国はインフレターゲットを廃止することを検討し始めるなど、物価期待に対する抑止力を持たない未踏の領域に踏み出そうとしている。


03. 2013年6月05日 06:36:10 : e9xeV93vFQ
【第99回】 2013年6月5日 熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
マネー変調と株価暴落は「炭鉱のカナリア」か
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト
 日経平均株価の大激震が5月23日に始まって、まだその行方を見定められない。23日の下落幅は▲1134円、30日の下落幅は▲737円、6月3日▲512円と続き、わずか11日間で累計▲2300円もの大幅な下げを記録した。
 当初の段階では、株価は、@行き過ぎた株価上昇の反動、A海外株価は崩れておらず、日本株特有の調整、B日本のファンダメンタルズは堅調、という3点の理由から、「それほど悲観的に見る必要はない」という理解が主流だった。
 しかし、ここにきて日経平均株価の下落以外にも、株価下落の動きはアジア、欧州へと広がっている(図表1参照)。時間が経過するほどに、少しずつ事態はもっと深刻なのではないかという認識に変わってきているのが実情だ。

 以下では、今回の相場変動が、日本株特有のものではなく、もっと広範囲で起こっている現象であることを確認してみていきたい。
1ヵ月前の金価格暴落
 日経平均株価の大暴落の手前で、マネーの変調を知らせる変化が起こっている。NY金相場が4月15・16日の2日間で▲13%も急落したショックである(図表2参照)。このときは、金価格の下落は「炭鉱のカナリア」と言われた。

 この例えは、炭鉱のガス爆発の予兆を調べるためにカナリアを連れて入ることになぞらえている。金市場は規模が小さく、投機マネーが流入するとバブルが起こりやすい一方、新興国に変調が起こった場合は、投機マネーの流出によって相場の乱高下を起こしやすい。
 この金価格の暴落が第一幕ならば、日本株の暴落に始まる変化は、第二幕という位置づけになるかもしれない。
 なお、NY金価格は、相場急落から一旦は半値戻ししたものの、この頃は急落後の安値近辺で価格が低迷している。
為替で起こっている新興国通貨安
 新興国経済に対する見方の微妙な変化を反映しているのが、資源国通貨の動きである。しばしば話題になるのが豪ドルの下落である。豪ドルの対ドル・レートは、4月11日をピークに▲10%程度下落している。オーストラリアは利下げの影響と、中国経済に対する懸念を敏感に察知して下落したと言われている。
 しかし、こうした通貨安は、豪ドルに限ったことではない。南ア・ランド、ブラジル・レアルといった資源国通貨にも共通した動きになっている(図表3参照)。資源国以外でも、韓国ウォンが一時的に上昇したこともあったが、ここにきて下落している。
 各国通貨の動きは、最も下落している日本円に追随したものに見える。日本円の後を追うように、新興国通貨の通貨安が連鎖している。この姿は、まるで芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のように、極楽から垂れ下がる蜘蛛の糸にみんなが次々にぶら下がって登ってきている光景に見える。

 これらの現象は、裏返してみればドル独歩高として捉えられる。名目実効ドルは5月上旬から急激に上昇している(図表4参照)。米国発のマネー拡散の動きは、このところは自国への資金還流の動きが活発になっていて、日本株を含めて、新興国通貨を売ってドル資金に戻っていく流れに変わっている。
 こうしたドル資金の自国還流の動きは、2010年から毎年5月になると起こっている季節的な変動という特徴もある。しかし、今回のドル回帰が5月に限定された一時的なものなのか、それとも趨勢的な変化なのかは現時点では見極めがつかない。

米長期金利の微妙な変化
 これらの世界的なマネーの変化について、QE3の縮小観測によるものだという見方は根強い。この点に関しては、様々に説明されているので詳しくは書かないが、これまでQE3によって供給されてきたFRBの資金が、予想以上に早く出口方向に舵を切るのではないかという思惑によって揺さぶられている。
 一言だけ述べると、FRBが実際に引き締めをするかどうかが問題なのではなく、これまで当分続くと見られていた安心の前提が変わってしまったところに悪影響の火種はある。
 先の名目実効ドルに関連した変化について言えば、最近は、米国の期待インフレ率(BEI)が低下してきている(図表5参照)。興味深いのは、この期待インフレ率が低下するときに、実効ドルが上昇へと向かう動きになる経験則もあることだ。金融緩和の効果が見込まれるときには期待インフレ率は上昇し、米国内から海外への資金流出も活発化するということだろう。
 QE3の規模縮小についての観測は、米国のインフレ予想を変化させると同時に、内外資金フローにも何らかの影響を与えていることが窺われる。

 もうひとつ、米金融緩和に敏感なのは長期金利の動向である。長期金利が5月初から上昇した影響は、負債の重みに反応しやすいREIT市場の変化に表れた。米REIT価格は、5月中旬をピークに大きく調整してきている(図表6参照)。
 同じようなREIT価格の調整は日本でも起こっているが、米国の方がより大きな変動になっている。

株価の波乱はアベノミクスを試す
 以上の説明は、日本株の暴落が、単純に日本株だけの調整ではなく、世界的なマネーの変化とも微妙に連鎖していることを暗示している。
 筆者の推測では、FRBのQE3はその効果が効き過ぎたために、その反動でちょっとした変化に反応して、マネーの巻き戻しを引き起こそうとしている。今後の米経済の拡大の中で、金融緩和の影響力が変化していくだろう。
 筆者が注意しているのは、景気拡大が流動性拡張だけに依存した形から、より実体経済の成長に基づいたものにスイッチできるかどうかである。この図式は日米に共通したものである。
 今のところ、日本のファンダメンタルズは、当面、企業収益の拡大とともに好循環を続けると見ている。日本経済は、消費税率が引き上げられる2014年4月までは基調的な拡大を続けていく確度が高い。
 一方、悪いシナリオは、株安・円高の進行が予想外に進むことである。さすがのアベノミクスも、株高・円安の追い風がなければ、「三本目の矢」である成長戦略も大きな成果を上げられなくなる。相場が悪化すれば、アベノミクスの求心力は自己実現的に落ちてくる。
 今回の株価暴落が「炭鉱のカナリア」になるという見方は、実体経済悪化の予兆という意味合いのほかに、安倍政権の経済政策がよりマーケットを意識したものであり続けるかどうかを確かめる試金石という意味合いもある。
http://diamond.jp/articles/print/36929


 

 


日本で目立つのは、「貧困の連鎖」より「富裕の連鎖」
「自己責任」で説明できることは驚くほど少ない
2013年6月5日(水)  慎 泰俊


 格差の話をすると、「日本では本人の努力次第でなんとでもなるのだから、その人の生活が厳しいのは自己責任だ」という意見がよく聞かれる。実際のところはどうなのだろうか。ここでは、今回の記事で伝えたいことは次の3つだ。
• 日本で起こっていることは、貧困の連鎖よりも富裕の連鎖である
• 日本の格差の固定化は、先進国で中程度の水準である
• 親の所得だけでは分からない機会の不平等として親の愛情がある
親の所得はある程度子の所得に影響する
 まずは、簡単に事実の確認をしてみよう。機会の平等について考える時に、世代間の階層移動がどうなっているかがよく分析される。豊かさをお金だけで測れるわけではないが、他に代替案がないので、親の所得と子の所得がどのように相関しているのかを見ることになる。次の図を見てみよう。
父の所得別の子どもの所得水準

出所:佐藤嘉倫・吉田崇、「貧困の世代間連鎖の実証研究(2007)」をもとに筆者作成
 この図を見ると分かるように、親の所得(ここでは父の所得となっている)はある程度までは子の所得に影響を与える。要は「豊かな家に生まれた人は豊かになりやすく、貧しい家に生まれた人は貧しくなりやすい」ということだ。この研究が示してくれているもっと重要なことは、「貧困の連鎖よりも富裕の連鎖の方が日本では進んでいる」ということだ。父の所得が下位25%の家庭に生まれた子のうち、所得が平均以上になる人が40%であるのに対し、上位25%の家庭に生まれた子の所得が平均以下になるのは32%だ。
 富裕の連鎖が生じているというのは、実感ベースでもしっくりくる。例えば、外資系金融・コンサルなど、給与所得が特に高い仕事に就いている人々を見ていると、かなり多くの人がいわゆる「恵まれた家庭」に生まれている。少なくとも、学費を払うのにも親が苦労するような家庭に生まれた人にはなかなか出会わない。東大でも同じようなことが起こっていたと、私の友人は話していた。
それでも日本の格差の固定化は世界的には中程度
 国際比較をするとどう見えるのだろう。米国の経済諮問委員会(CEA)の委員長であるアラン・クルーガー教授は、2012年の演説で格差の固定化を国際比較するチャートを紹介した。スコット・フィッツジェラルドの書いた20世紀屈指の名作にちなみ、「グレート・ギャツビー・カーブ」と名付けられたこのチャートは、現時点の不平等の程度と、格差の固定化の関係性を示している。
グレート・ギャツビー・カーブ

出所:The Council of Economic Advisors, “Economic Report of the President”(2012)
 このチャートが示唆する一番大きなメッセージは、「不平等の程度が大きな社会においては格差も固定化しやすい傾向にある」ということだ。他の言い方をすると、現時点での不平等と格差の固定化には何らかの類似したメカニズムが働いているということもできる。経済諮問委員会は、この図を参照しながら、公教育への支出拡大を通じた格差是正が重要であると問題提起をしている(格差是正における公教育への支出拡大の重要性については、前回の記事で書いた通りだ)。
 また、この図では、日本における格差の固定化が国際的にどの程度なのかも見ることができる。日本における格差の固定化の程度はドイツと同じくらいで、フランスやイギリス、米国などに比べると相対的に状況は良いことが見てとれる。
 国際比較ではデータの定義に問題があり注意する必要があるが、一発試験で「良い大学」に入ることが可能である日本の大学と(そのための勉強にはお金がかかることもあるが)、親の出身大学や通える高校、学生時の活動(その幅広さは親の所得にある程度依存する)が大学入学時に考慮される米国やイギリスの大学を見比べれば、ある程度納得のいく水準であるようには見える。
愛情ある親と暮らせるか否かは、お金で測れない機会の不平等
 数値化できるデータは議論に客観性を与えてくれるが、数値にはなかなか反映されないファクターも考慮する必要があるだろう。最後にそれを述べておきたい。
 ここまで読み進めても、次のように言う人は少なくないだろう。
「ほら、日本はまだマシだ。一発勝負の大学入試で合格すればいくらでも何とかなる。奨学金も申請すれば取れるし、アルバイトしながら苦学すれば大学だって通える。それなのにしないのは甘えだし、努力しなかったための結果の不平等は存在するべきだ」
 私自身も昔まで同じような考えを持っていた。しかし、それは大きな間違いであるということを、児童養護施設とかかわっているうちに気付いた。
 児童養護施設は、親の虐待などで親と暮らすことのできない子どもたちが暮らす施設だ。昔は孤児院と呼ばれた全国の施設数は約600、子どもの数は3万人以上。児童養護施設では5人に1人の子どもが高校を中退する。中退理由として一番多いのはコミュニケーション能力に関連するものだ。周りの人々とうまく関係を作っていくことが苦手で、先生とも仲良くできないのでクラスの中で孤立しがちになり、学校を中退してしまうことになる。仕事に就いても職場での人間関係に苦労して、長続きせずに職を転々とすることが多い。児童養護施設についてより詳しく知りたい人は、拙著『働きながら、社会を変える』をご一読頂きたい。
 ここでの活動を通じて、私は子どもにとって一番大切な能力(そしてそれは恐らく将来の生活にも強く関係している)は、「努力する能力」と「人から愛される能力」だと痛感するようになった。そして、その2つの能力のかなりの部分は、大人からの愛情によって育まれるものだ。
 なぜ親との関係が人からこうした能力につながるかについて説明しよう。
 子どもは、親を含めた大人や友人から愛情を受けたり認められたりすることによって、「自分はこの世界に存在していいのだ」と思うようになる。こうやって得られた自己肯定感が、他人から愛される能力や努力する能力の根幹になる。特に子どもの頃は、この愛情の提供者は主に親となる。
 だからこそ、親からの虐待は子どもの心に深刻な影響を及ぼす。仮に私たちが、自分を誰よりも守ってくれるはずの親に虐待され、親が生きているのに親と暮らすことができなかったとしたら、「自分は人から大切にされる価値のある人間だ」と思うことができるだろうか。近所の人や友人に恵まれたできるかもしれないが、簡単ではないだろう。
 「自分は世界に存在していいのだ」と考えられてこそ、私たちは様々な困難を乗り越えて努力を続けることができる。自力で努力して今の地位を勝ち取ったと考えている人は、そこを理解できていないことが多いかもしれない。私たち一人ひとりが努力できるのは、親をはじめとする様々な人々のお陰であって、純粋な個人の意志が果たす役割はかなり小さい。拙著『正しい判断は、最初の3秒で決まる』でも触れたが、私たちの気質の多くがこれまでしてきた体験によって形作られることは、近年における脳研究で明らかにされつつある。
 また、大人から愛される能力は、子どもにとって一番大切な資本の1つだ。お金も働けるだけの力も持っていない子どもは、大人からの助けを受けてこそ生きていくことができるし、育つことができる。私自身も、親以外の多くの大人に助けられて、ここまで生きてくることができた。
 この能力も親をはじめとする大人たちの愛情ある養育によって育つ。愛されたことがない人が人を愛することは難しいし、それゆえに他人から愛されることも困難になる。同年代の人から「友だちになりたくない」と思われ、大人から「可愛げがない」と思われるのは、本人の責任なのだろうか。おそらくそうではないのに、周りの人々の多くはそれに気づかないで「あなたの責任でしょ」と自己責任を振りかざす。そういった子どもたちこそ本当に苦しんでいるのだし、助けを必要としているはずだと私は思う。
親の愛情も環境の影響を受ける
 こういったことを踏まえ、私は日本における最も深刻な機会の不平等は、親から受けられる愛情の格差にあると考えている。
 では、何が親からの愛情に影響を与えているのだろう。経済協力開発機構(OECD)のデータを用いて、虐待死の率と貧困率の関係を見てみると、両者にはある程度の相関があるようにみえる。
虐待死数と貧困率

出所:OECD(子どもの貧困率は2003年、虐待死人数は2000年)。対象は、スペイン、ギリシャ、イタリア、アイルランド、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、オーストラリア、ドイツ、デンマーク、フィンランド、ポーランド、イギリス、カナダ、日本、ベルギー、チェコ、ハンガリー、フランス、米国、メキシコ。
 劣悪な労働環境や貧困が親から心の余裕を奪い、こうした愛情の格差につながっている側面があるのであれば、労働環境の改善や国内の貧困削減のために何らかの施策を取る意義はさらに大きいだろう。



越境人が見た半歩先の世界とニッポン
 この連載では、我々のすぐそこにやってきている新しい潮流について、投資ファンド―NPO、先進国―途上国、日本―世界、と様々なボーダーを跨いでいる筆者の視点から紹介していきます。
 連載で取り扱うトピックは100人中で3番目〜10番目くらいに情報取得の早い人が知っているようなものを目指しています。連載を通じて、日本だけにいては分からない世界の変化の躍動感を、垣間見ていただければ幸いです。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130531/248957/?ST=print


 

 

格差社会やグローバリズムでほんとうに世界は不幸になっているのか?
[橘玲の日々刻々]

 格差社会やグローバリズム、テロや環境破壊、犯罪の増加や社会の右傾化で、私たちの暮らしはどんどん悪いほうに向かっていると多くのひとが思っています。しかし、それはほんとうでしょうか?

 明治時代の日本人の平均寿命は男性も女性も40歳代で、1950年代にようやく60歳を超えました。乳幼児の死亡率が高く、結核やコレラ、ペストなどの感染症への対策が不十分だったためです。跡継ぎを得るために、戦前の日本女性は5人以上の子どもを産むのが当たり前でした。

 人類はその長い歴史において、ずっと食糧不足と栄養失調に悩まされていましたが、いまやアメリカでは肥満、すなわち食糧の過剰摂取が大きな社会問題になっています。富める国と貧しい国の格差だと批判されますが、しかしこれではなぜアフリカで人口爆発が起きているかが説明できません。当たり前の話ですが、人口が増えるのは食糧が豊富だからで、食糧がなければ餓死してしまいますから人口は増えません。

 1940年代から60年代にかけての「緑の革命」で、品種改良や化学肥料の投入が進んだ結果、人類は歴史上はじめて食糧不足から解放されました。民間シンクタンク「ローマクラブ」は、1972年の報告書「成長の限界」で、エネルギーの枯渇と食糧危機を警告しましたが、石油や天然ガスの確認埋蔵量は増えつづけ、先進国の農業はつくり過ぎに苦しんでどこも減反政策を導入しています。

 アフリカの飢饉が頻繁に報じられますが、これは戦争や内乱などの社会的混乱で農作業ができなかったり、物流が滞ったりするためです。政治が安定すれば安価な食糧を入手できるようになり、ふたたび人口が増えはじめます。

 20世紀前半は戦争の時代で、第二次世界大戦で日本は広島と長崎に原子爆弾を投下され、民間人を含む300万人が犠牲になりました。世界全体では、ソ連の2000万人、中国の1000万人をはじめ、餓死者を含む戦争の犠牲者の総数は6000万人にのぼります。

 戦争が終わっても、米ソの冷戦の激化で、核戦争による人類滅亡がリアルな恐怖としてひとびとを襲いました。日本では1973年に『日本沈没』と『ノストラダムスの大予言』がベストセラーになりますが、高度経済成長真っ只中の、未来への悲観的な雰囲気をよく示しています。

 グローバリズムが諸悪の根源のようにいわれますが、経済のグローバル化によって、中国では過去15年で3億人が貧困から抜け出し、2030年までには新興国を中心に新たに20億人が中流階級に加わるといわれています。このようなデータを客観的に眺めれば、世界がよりよくなっていることは間違いありません。

 しかし私たちは、無意識のうちに、過去は安定していて未来は不確実だと思ってしまいます。過去がどれほど悲惨でも、終わってしまったことは現在の脅威にならないからです。

 私たちは、人類の歴史上、もっとも幸福な時代に生きています。問題は、この単純な事実を認めるのが不都合なひとが多すぎることにあるのです。

『週刊プレイボーイ』2013年5月27日発売号に掲載

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