http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/258.html
Tweet |
ジョン・ライス(John G.Rice)
1978年GE入社。家電やエネルギー事業などの責任者を歴任し、2010年にGEグローバル・グロース&オペレーションCEO就任。米国を除く世界市場の成長を担い、3カ月で40カ国を回る多忙なスケジュールをこなす。
GEナンバー2が語る、世界戦略の全貌 ゼネラル・エレクトリック、ジョン・ライス副会長に聞く
http://toyokeizai.net/articles/-/14128
2013年06月04日 前田 佳子 :東洋経済 記者
世界でインフラ事業の受注競争が活発になっている。米ゼネラル・エレクトリック(GE)も、新興国での事業を拡大中だ。同社ナンバー2のジョン・ライス副会長は、2010年から米国を除く世界市場を担当し、香港を拠点に160カ国の事業を統括している。GEの事業は発電から航空機エンジン、医療機器や金融など多岐にわたる。売上高1473億ドル(12年度、約15兆円)の巨大企業は、米国以外での成長戦略をどう描くのか。
──14年に日立製作所が三菱重工業と火力発電事業を統合し、さらには原子力発電の統合も示唆しています。原子力発電でパートナー関係にある日立と、合弁事業を解消する可能性はありますか。
現時点では、日立とのパートナーシップを変更する考えはない。原子力はとても重要な技術で、将来も変わらないと思う。それに対してGEは責任を負い、何年も前から日立と合弁事業を続けてきた。長期的な視点でのパートナーシップが前提だが、その間には状況が変わることもあるし、途中で障害や問題点が発生することももちろんあるだろう。
──1月には東芝と発電事業で提携関係を強化しました。東芝とより密接になるということですか。
東芝や日立、三菱重工のような大企業の場合、事業をグローバルに展開し、分野も多岐にわたる。協力できる部分もあるし、競合する部分には垣根を作る必要がある。東芝は非常にすばらしい企業なので、協力しつつ、競合しつつ、互いの垣根をはっきり分けていけると思っている。
大企業ばかりが話題になるが、GEにはイノベーションをとても大切にする企業文化がある。すぐれたソリューションを作るために、中小企業とのパートナーシップも検討の対象に入れて相手を探している。
■160カ国中25%が戦略的提携の対象国
──パートナーシップを広げている国とは。
韓国や中国、東南アジアになる。160カ国でビジネスを展開しているが、このうち25%の国と戦略的な協力体制や提携を結んでいる。
──成熟市場の日本では成長が難しい?
GEは日本でいいポジションを築いており、エネルギーや航空機エンジンでは大手商社と取引している。多くの日本企業とパートナー関係を築き、日本以外での成長を目指すことを考えている。
すでに東南アジアでインフラプロジェクトを展開する場合は、商社とパートナーシップを組んでいる。医療機器は、設計・生産を東京の日野市でやっており、グローバルで競争力のある製品となっている。
──GEのような大企業ならば、自前でできるのでは。
単独で進出するケースもあるが、インフラの建設プロジェクトの場合、国ごとに抱える問題が違ってくるし多すぎる。私たちが取り組まなければならない課題の大きさやスピード感を考えると、優秀な人たちと一緒になってベストを尽くしたほうがいい。極めてロジカルな戦略だ。
これからは多くの幅広いニーズに応えながら、国を超えて事業を考える必要がある。そこから新しい製品を開発し新規市場も開拓していくことが、21世紀型のビジネスとなる。
──新興国のインフラビジネスは、価格や条件などを考えると厳しい案件も数多い。どうやって選別していますか。
リスクを評価する非常に緻密なプロセスがあり、プロジェクトごとに判断している。グローバルで成功するには、かなりハードルの高いチャレンジングな市場でも進出する必要がある。GEのような企業の場合、アグレッシブにビジネスチャンスを営業チームが探して挑戦する一方で、はっきりノーと決断できる部分も備えておかなければいけない。
そのために、プロジェクトをやるかやらないかを考えられる能力を持つ人、さまざまなマーケットを見渡して正しい選択ができる優秀な人が必要になる。最終的には本社が決定するが、十分な知識を本社が持ち合わせていない場合もある。だから、多くの情報を持ち、あらゆる質問に答えられる人を世界中に配置するのが、私の仕事だ。本社にも専門家のチームがあり、多くの受注をさばくエキスパートがいる。
賃金や為替だけで生産拠点を判断しない
──昨年は白モノ家電の生産拠点を、中国やメキシコから米国ケンタッキー州へ移管しました。
賃金や為替レートは検討要因になるが、それだけで決めるわけではない。たとえば冷蔵庫といった白モノ家電の場合、価格に占める賃金の割合はさほど高くない。だから人材の能力や実力をベースにして、生産拠点を移す判断をした。
たとえ賃金が多少高くても、能力や柔軟性、生産性の高い人材を確保できれば相殺できる可能性がある。生産拠点を選ぶときは、社員の能力を念頭に置いている。だからといって、必ずしも他国から生産拠点を米国に戻すということではない。並行して他国の生産拠点を大きくしていくこともある。
──ドイツのシーメンスは脱原発の方針を打ち出し、再生可能エネルギーへ戦略の舵を切りました。GEの原子力発電事業の位置づけは。
非常に幅広いテクノロジーのポートフォリオを築いていく必要がある。発電技術には、ガス、バイオ燃料、風力や太陽光を含む再生可能エネルギー、環境への配慮が必要な石炭などがある。それから原子力があり、まだ実用化には至っていないが波の力を生かした波力も話題になっている。
たとえばシェールガスの影響は、米国のみならず日本や中国にも広がっている。エネルギー価格や発電技術はどうなるのか、5年前なら話題にもならなかったが、今や誰もがシェールガスと騒ぐようになった。
発電事業は数十年単位で見ていかなければならない。今後の30年間を見たとき、私たちがどうやって電力を作るかを予測するのは非常に難しい。そのときに求められる技術を考えたうえで、幅広い選択肢をポートフォリオに備えておきたい。
(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2013年6月1日)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。