http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/218.html
Tweet |
10年間で3兆円増!農業所得倍増の大風呂敷 TPP交渉、参院選を間近に控え、大きく動き出す農政
http://toyokeizai.net/articles/-/14139
2013年06月02日 山田 徹也 :東洋経済 記者
所得倍増計画を打ち出し、日本の高度経済成長に大きな役割を果たした池田勇人元首相にあやかってか、随分派手な目標を設定したとの印象だ。
農林水産物の輸出を2020年までに倍増、農業・農村の所得も今後10年間で3兆円から6兆円に倍増させる──。
安倍晋三首相は5月17日、東京都内のホテルで講演し、成長戦略第2弾を発表。中でも注目を集めたのが、首相による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加表明で関係者の不満が高まっていた農林水産業の活性化だ。21日には首相自らが本部長となる「農林水産業・地域の活力創造本部」を立ち上げ、今年末を目指して、戦略の具体的な肉付けを行っていく方針だ。
輸出戦略では、12年に4500億円程度だった農産物や食品の輸出額を20年までに1兆円に倍増させることを計画している(図)。ただ1兆円の内訳を見ると、ブリやサバ、みそなどの水産物や加工品が大半を占める。一方、TPPで聖域視されているコメは、日本酒や米菓などを含めても現在130億円にとどまり、1兆円時代になったとしても600億円にすぎない。
http://img.asyura2.com/us/bigdata/up1/source/14128.jpg
これに対し、今年3月に公表されたTPPの影響試算では、コメの国内生産額は約1兆円落ち込むと推計されている。輸出倍増戦略はTPPを直接意識したものではないとはいえ、TPPによる落ち込み分を挽回するには、輸出拡大だけではいかにも力不足だ。
■6次産業化で成長促す
農業従事者の年齢構成を主要国で比較すると、65歳以上の割合は英仏独米とも2割前後であるのに対し、日本は6割超。世界的に見ても、担い手の高齢化ぶりは突出している。TPP交渉への初参加は7月に迫っているが、高齢化が止まらない日本の農業の再生と活性化は、TPPへの参加の有無にかかわらず、焦眉の急といえる。
補助金頼みの農業から民間企業の資金を活用した農業経営へ。安倍政権の農業成長戦略において、農業生産法人の設立要件の緩和、いわゆる「株式会社の農業参入」や、農地税制の改正などは見送られる方向だが、マーケット原理を一部持ち込もうとしているかに見える。
その典型が、「儲かる農業開拓ファンド」の創設だ。国とカゴメや野村ホールディングスなどの民間企業が出資して今年2月に発足した「農林漁業成長産業化支援機構」(堀紘一会長)が軸になり、5月22日現在で18のサブファンド、総額460億円が立ち上がった。
同ファンドでは、農林漁業者と民間企業、それに機構が農業関連企業に折半出資し、最長15年かけて回収していく。投資のキーワードは農業(1次)、工業(2次)、商業(3次)の融合を意味する6次産業化。具体的には食品製造業や流通、健康食品や病院・介護関連などへの出資をイメージしているようだ。
18のサブファンドに参加しているのは、飲食店情報をインターネットで提供するぐるなびなど。佐藤康博社長が産業競争力会議のメンバーでもあるみずほフィナンシャルグループは地方銀行と共同で50億円を出資する。同グループの担当者は「ファンド側に農業の経験不足や案件をどう発掘するかの課題はあるが、農業分野へのリスクマネー供給の大きな手段になる」と話す。
地銀主導のファンドは14を占め、最大の担い手だ。同機構の大内秀彦企画管理本部長は「ここ数年の円高でも地方に残ったのは食品製造業だった。そうした企業に成長してもらえば、地域の雇用も生み出せる」と地銀の参加に期待を寄せる。
うまくいけば、ファンドは最大2000億円規模に拡大するが、問題は、6次産業化で農業そのものがどこまで成長できるか。農林中金総合研究所の室屋有宏研究員は、「これまでの6次産業化は野菜や果樹が中心で、その形態も農協による農産加工場や農産物直売所が多かった」という。成長につなげていくには、従来と違う工夫が欠かせない。
農業経営を効率化していくうえで避けて通れない農地の集約についても、安倍政権は大胆な税金の投入に踏み切ろうとしている。
税金投入し農地を集約
現在検討されているのは、耕作放棄地や小規模農地について、税金を投入して集約・大規模化する「農地集約バンク構想」だ。耕作面積が数十ヘクタールの大規模農家も最近登場しているが、農地があちこちに分散している例も多く、大規模化による経営効率化には限界があった。そこで、各都道府県に「農地中間管理機構」(仮称)を設置し、同機構が地主から農地を集めて借り上げ、大規模農業の担い手に貸し出す戦略だ。
ただ、機構に農地を借り上げる強制力はなく、農地の貸し手のインセンティブの仕組みも弱い。何より、対象となる農地は百数十万ヘクタール、想定している予算規模は3000億円とかなり巨額だ。財政の厳しい中、数千億円オーダーの予算を農地集約だけで確保できるのか。
いずれにせよ、GDP(国内総生産)構成比で1%を占めるにすぎない農林水産業が成長戦略の柱としてフォーカスされるのは珍しい。農業関係者は千載一遇のこの好機を生かすことができるのか。7月のTPP交渉参加と参議院選挙を前にした農業票取り込みの思惑も絡み、農政の暑い夏が始まる。
(週刊東洋経済2013年6月1日)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。