http://www.asyura2.com/13/hasan80/msg/176.html
Tweet |
浜矩子(はま・のりこ) 同志社大学大学院ビジネス研究科教授。 1952年生まれ。一橋大学経済学部卒業。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長、同研究所主任研究員を経て、2002年より現職。専門はマクロ経済分析、国際経済。専門はマクロ経済分析、国際経済。 『「通貨」を知れば世界が読める』(PHPビジネス新書)、『新・国富論』(文春新書)、『超入門・グローバル経済』(NHK生活新書)など著書多数。
株価急落で露呈した妖怪アベノミクスの本性 浜矩子がアベノミクスに反対する理由(その2)
http://toyokeizai.net/articles/-/14155
2013年05月31日 東洋経済オンライン編集部
株価が乱高下し、識者のあいだでもアベノミクスに対する議論が白熱してきた。同志社大学大学院教授の浜矩子氏は、この政策を「アホノミクス」と一刀両断。反対の態度を明確にしている。
前回のインタビュー、「『アホノミクス』が5つの悲劇を引き起こす!」には、「いいね!」が4000件近くつくなど大変多くのアクセスがあった。反響にお答えしインタビューの第2弾をお送りする。
■株価急落は当然の成り行き
――前回のインタビュー「『アホノミクス』が5つの悲劇を引き起こす!」には大きな反響がありました。また、5月29日に当サイトでマネック証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏が「浜矩子教授はアベノミクスの本質を知らない」と反論。アベノミクスに対する議論が白熱してきました。
はい、議論が白熱するのはいいことですね。
世界恐慌の頃、1930年時代に活躍した女性経済学者にジョーン・ロビンソンという人がいます。この人は大変な毒舌家で有名だったのですが、彼女の数々の名言の中の一つに、「人々が経済学を学ぶのは出来合いの答えを手に入れるためではない。それはエコノミストたちにだまされないためである」というのがあります。すばらしい言葉ですね。
このページをご覧くださっている皆さんも、立場や論点が様々な論者たちの発言を良く吟味して頂き、私を含めて誰のいうことも鵜呑みにはすることなく、しかしながら誰のいうこともじっくり吟味してご自分の判断形成をお進めください。
そうしていただければ、かならずや「妖怪アベノミクス」の正体を見破っていただくことができると思います。
――このところの株価の動きをどうご覧になりますか?
来るべきものが、私でさえ予想外に早く来たという感じですね。当然の成り行きだったと思います。ここまで株価を押し上げて来た買い手筋の行動は、要するに「売るため」の買いだった。要は、買った瞬間から売るタイミングと売る材料を探していたわけです。
そして、ここに来て黒田日銀総裁発言やアジア景気の変調可能性報道などがあり、「そろそろお膳立てが整ったかな」と感じたところで、一気に動いたという感じでしょう。
■「浦島太郎の経済学」を押し付けるな
――株価の乱高下もあり、いよいよ、アベノミクスのいわゆる3本目の矢だという位置づけの「成長戦略」に期待がかかるという感じになっていますが、この成長戦略に関する考えは?
端的にいえば、この「3本目の矢」なるものこそ、最もいかがわしいというか、問題性が大きいテーマだと思います。「浦島太郎型成長至上主義」への執着によって何が得られるというのか。
浦島太郎は、長い間竜宮城にいたために、地上に戻ってきて昔を忘れられません。彼らは、自民党が政権を握っていた高度経済成長時代の考え方からいつまでも脱却できず、「昔に戻りたい」と常に考えているのだと思います。
――今の日本に必要とされているのは、どんな戦略なのでしょう?
そもそもこの間、日本に欠けていたのは成長ではありません。問題は「分配」です。過去の成長の果実として、日本はいまやとてつもない冨の蓄えを形成している。ところが、その富をうまく分かちあえていない。
だから、貧困問題が発生したり、非正規雇用者の痛みがあったり、ワーキングプワと呼ばれる状態に追い込まれる人々がいる。この豊かさの中の貧困問題こそ、今、政治と政策が考えるべきテーマです。
■市場ができることは市場に任せておけ
――成長すべき分野を支援するのは、政府の役割ではないのでしょうか?
アベノミクスの人々には、その意味で政策の役割に関する誤解もありますね。政策の仕事は、強き者の味方をすることではない。成長産業を特別扱いすることではない。
彼ら(成長産業)は、放っておいても「市場」の中で自己展開のチャンスをつかんで行くわけです。政治と政策は、市場ができないことをするために存在する。
市場ができないこととは何か。それは弱者救済です。
弱者にも、当たり前のことですが生きる権利がある。弱者にも、世の中における役割がある。強きも弱きも、老いも若きも、大きい者も小さい者も、みんなそれぞれのやり方で社会をつくり、社会を支える。
そのような土台のしっかりした経済社会が形成されるように目配り・気配りする。それが政治・政策・行政の仕事でしょう。
――とはいえ、インフラ輸出などは積極的に進めていくべきでは?
何のため、誰のためのインフラ輸出なのかが問題ですね。インフラ輸出先のお役に立てるため? それとも日本が一番になるため??
(写真:木村文平、ジョーン・ロビンソンの写真は、「経済思想の歴史」、THE HISTORY OF ECONOMIC THOUGHTより)
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。