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原田氏に久しぶりに連絡してきたシティの「ドイツ人」。彼らは、アベノミクス相場で大きく稼いだのだろうか(写真は黒田日銀総裁、撮影:尾形 文繁)
「6月、日本株大暴騰」の根拠 「5・23ショック」のあとに、待ち受けるもの
http://toyokeizai.net/articles/-/14123
2013年05月29日 インテリジェンスのプロ、原田武夫氏が開く近未来の扉 :東洋経済オンライン
■突然、フェイスブックで語りかけてきたドイツの知人
「タケオ、元気ですか?私のこと、覚えていますか??」
フェイスブック上の個人アカウントで突然、私に“その人”が語りかけてきたのは今年5月はじめのことだった。私たちは、昔ドイツ・ベルリンで知り合った。私が外務省の在外研修をしていた頃の話だ。当時、日本学(ヤパノロギー)の学生で森鴎外研究をしていたドイツ人の“その人”と最後に会ったのは2000年である。今思えば一連の騒動がわが国を、そして世界を襲う直前であり、最後の穏やかな一時だった。
その後、“その人”は文学研究のためにイギリス・オックスフォード大学に留学する。最初は森鴎外研究を続けていたようだが、どういう風の吹き回しか、ある時から世界屈指の金融街「ロンドン・シティ」で働き始めた。その後、私たちは全く連絡を取り合わなかったが、最近、フェイスブック上で交流を再開した。だが、多忙を極めている“その人”はたとえロンドンに私が出張した時であっても全く時間がない。いや、そもそも送ったメッセージへの返事すらないという状況が続いていた。
「ロンドン・シティ」でも屈指のヘッジファンドの一つでボスの右腕として勤めている“その人”は、私にフェイスブック上でメッセージを送りながらこう教えてくれた。「実は…、5月の終わりに東京でニッポンの機関投資家を相手にボスがプレゼンをすることになっていて。そのサポートで私も行くのだけれど、ついでに15年ぶりに訪れる日本で少しだけ観光旅行ができないかと思って。タケオ、忙しいと思うけど、時間ないですか?」断る理由もないのですぐさま返事をしたのだが、しばらくメッセージは戻ってこなかった。どうしたのかと思っていた矢先に、ようやく返信が来た。5月半ばくらいのことだ。
■ヘッジファンドの訪日中止に感じた、ただならぬもの
「ごめん、タケオ。今回は『ボスの急病』でニッポンには行かないことになりました。でも近いうち、必ず行く予定だから。その時はまた時間を調整してください」
私はただならぬものを少しだけ感じていた。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)を分析する時にもっとも大切なこと。それは公開情報分析と非公開情報分析を巧みにミックスすることである。料理に例えれば前者は材料、後者は香辛料にあたる。前者だけでは真実を焙り出すことはできないし、後者だけでは真実の一断面しか見えない。両者が組み合わさってはじめてグローバル・マクロのダイナミズムが見えて来る。
「ロンドン・シティ有数のヘッジファンドのチームによる訪日が突然中止された」―――これは立派な非公開情報だ。無論、表向き語られる理由など信じてはいけない。それよりも大切なのはマーケットの猛者たちがわざわざ現地にまでやって来るということは、それなりに巨大なディールが本来ならば仕組まれていたはずだったということなのだ。
しかし訪日が中止になったということは、その「前提」が崩されたことを意味していた。何やら不気味なものを感じたのは、それが理由だったのである。
先般上梓し、お蔭様で版を重ねている拙著『「日本バブル」の正体〜なぜ世界のマネーは日本に向かうのか』(東洋経済新報社)について、6月2日に東京で行う無料の新刊記念講演会で詳しくお話する予定だが、わが国は「日本バブル」の第1弾の前半から後半へと今、突入したところである。「第1弾?前半・後半??」と読者はいぶかしく思われるはずなので少しだけ説明すると、現在のわが国が置かれている状況は、次ページのとおりだ。
■「2段階」の形を取る日本バブル
●わが国は人口動態上、「団塊の世代」が基礎年金を受け取り始める2012年から2015年までの間、政府債務の対GDP比率が急激に上昇するという未曽有の危機に突入する。これを理由に、米欧のヘッジファンドや投資銀行などがまたぞろ「日本国債の空売り」を仕掛けて来る危険性がある。
●そのため、わが国の金融・財政当局は自ら「デフォルト(債務不履行)宣言」を行う用意を進めていることを誇示し、対抗しようとしている。具体的には財政調整(「事業仕分け」「政府保有資産(株・国有地)売却」)と債務交換(「増税」「社会保障制度の改廃」)だ。
これらが済んで、はじめて「デフォルト宣言」することができる。企業と同じで自ら破産宣言をすると借金取りはもう追いかけて来ない。その素振りを見せるだけでも有効なのだ。
●実は、安倍晋三首相が金融についてユニークなアイデアを持っており、これが「アベノミクス」になったわけではない。まずは起爆剤として日本銀行が大量のマネーを市場に対して供給し始めることは、2010年秋に決定された「包括的金融緩和策」による既定路線であったからだ。正確に言えば、国民世論にわかりやすいように安倍政権が金融・財政当局によって「道化師」として使われたに過ぎない。
●当初、大量のマネー供給によって始まった「日本バブル」は円安を基調としている。だがこうした状況は持続しない。なぜならば円安誘導は政府・日銀がどんなに巧みに説明したところで「通貨操作」なのであって、各国からの批判を浴びるからだ。したがってある段階から巻き返しが図られ、円高基調へと転換する。
●しかし、実はこれで「日本バブル」が終わるわけではない。この円高転換と共にある条件が満たされた場合、むしろ「日本バブル」はより激しく続くことになるのである。その条件とは「わが国を除いて、他に投資先がなくなること」だ。つまり何らかの理由で、世界のどこを見ても投資先がなくなるような状況が訪れれば、マネーは我が国へと殺到し、強烈な円高、そして株高、債券高となる。「平成バブル」と同じ「トリプル高」だ。
● したがって「日本バブル」は全部で2段階の形をとる。円安基調の第1弾と、円高基調の第2弾だ。そしてこの第1弾についても、米欧の越境する投資主体がリードしてきたのが前半であるとするならば、後半においては、その役割が国内機関投資家へとバトンタッチされ、最後は「夏のボーナス」を手にした個人投資家へと日本株が転売されていくことになる。
■日本株の「新しい現実」に対応した機関投資家
話を元に戻す。―――わが国における証券マーケットで活躍する機関投資家たちは、基本的にシステム・トレーディングによる取引を行ってきている。個人投資家は「手動」でパソコンをクリックし、取引をするのに対して、機関投資家はコンピューター上、あらかじめプログラミングされたソフトウェアに沿って「自動」で売買を繰り返す。その際、最も重要になって来るのが複雑な数理分析に基づいてはじき出された統計データだ。このデータを見ると、今後、日本株マーケットがどうなるのかがたちどころにわかるのだが、これをシェアしているのは機関投資家だけである。それを持たない個人投資家は、いわば素手で戦いに挑んでいることになる。
実は、5月9日の段階で、国内機関投資家たちが大慌てで「ある作業」を済ませていた。彼らが用いていたプログラムは、基本的に今年2月半ばの段階での日本株マーケットにおける上昇率を前提としたものであった。ところがその後、日本株は余りにも上昇し続けてしまい、この時のプログラムでは対応不可能というレヴェルにまで達してしまっていたのである。そのため国内機関投資家たちは「新しい現実」に対応したプログラムと統計データに慌てて入れ替えたのである。その結果、「日本株ロング(買い)+米国債ロング(買い)」というポジションが形成され、一気に日本株は上昇し、1ドル=100円台へと突入したというわけなのである。
そして新聞・メディアが語らない「マーケットの真実」をもう一つだけ記しておくと、この時すでに信じられない“未来”が統計分析では弾き出されていたのである。
■統計分析で弾き出された、日経平均3万6000円説
「このまま行くと2015年3月までに平均株価は36000円台に突入する」。
国内機関投資家たちはこの驚愕の分析結果を手元に置きながら、その後、盛んに買い進んでいたというわけである。しかもこのデータ分析はあくまでも、私の言葉で言うならば「日本バブル」第1弾についてだけの話である。「他に投資先がない状況」となったらば、事態は一気に加速し始めるはず。そう、「日経平均=3万6000円」などというレヴェルでは済まなくなる可能性すらあるのだ。「平成バブル(1989年、3万8915円)」を越える驚愕の株高・・・。
ロンドン・シティから冒頭で紹介したメッセージが届けられたのは、ちょうどその頃のことだった。日本株マーケットでは高騰に次ぐ高騰が続く一方、データ分析は「一体誰が買っているのか」という一点に絞られて引き続き行われていた。やがて「割安だから買う」のではなく、あくまでも「中長期的な視点からの買い」を目指しているという意味で安定的なトレーディングを好む国内機関投資家たちの影が、うっすらと見え始めることになるのだが、他方で一部の銘柄では明らかに不可思議な値動きも始まっていた。
グローバル・マクロ系のヘッジファンドと言われる投資主体が、どうやら参入したらしいとの分析を耳にした。そんな矢先に、ロンドン・シティからメッセージが届いたのだ。「いよいよ激しくなるヴォラティリティの中で、日本株マーケットの高騰が始まる」。そう私は確信しかけた。
だが、今度はそれが突然の「訪日中止」というのだ。無論、たった一つの非公開情報だけで全体を判断することは危険だ。しかし同時に物事の予兆(Early Warning Signal =EWS)はえてして偶然転がり込んでくる。これに気付くか気付かないかが、グローバル・マクロ(国際的な資金循環)のダイナミズムを的確につかみ続けることの成否に直結してくる。
同じく非公開情報として転がり込んで来る統計分析データを見ると、ちょうどその頃から「5月24日、あるいは29日が危険日」という黄色信号が点滅し始めていた。何が起きるのかはわからない。しかし、「何か」が起きる危険性が高まっていることを、一見すると数字の羅列のように見えるデータが密かに物語り始めていたのである。一体何が起きるというのか。
先ほど述べたような理由で、わが国は自ら「日本バブル」を起こさざるを得ない立場に置かれている。そして米欧のヘッジファンドや投資銀行たちもまたそこで莫大な利益を獲得しようとしていることは、ここに来て矢継ぎ早にプレス・リリースされている彼らの日本ファンドの数々からも明らかだ。
■大きくなかった、国外のリスク要因
一方、彼らはわが国の国外にあるリスク、すなわち「外生的リスク」と連動して動いている。時に米欧各国の政府と密接に連携しながら世界中で富を集めて廻っているこれらヘッジファンドや投資銀行たちは、戦争やテロといった地政学リスクすら、どういうわけか事前に知っていることが多い。そのため、リスク炸裂にはまって身動きが取れなくなっているわが国の機関投資家や個人投資家を尻目に、彼らは常に売り抜けていくのだ。そうである以上、彼らと同じレヴェルで動くためには、そうした外生的リスクの現状を公開情報で分析し続けるしかない。
その意味での外生的リスクをこの時ウォッチする限りにおいては、状況は何も危険が無い状態(いわゆる「リスク・フリー」)といっても良いものだった。とりわけ中東における地政学リスクについては、シリアのアサド政権による「化学兵器」使用疑惑が持ち上がっていたものの、本格的な戦闘開始には米国のオバマ政権が及び腰であった。むしろ米国はロシアと共に「シリア問題に関する国際会議」の開催すら呼び掛けており、イスラエルがシリアに対して事実上の空爆を繰り返しても、大規模な戦乱にはならない状況が続いていた。
これは当時見ることが出来た外生的リスクの一例だが、他のリスクについても全く同じであった。そうである以上、「外側から」日本バブルが崩される危険性は低い。その一方でこの夏に参議院選挙を控えているわが国の安倍晋三政権が株高を崩すことはあり得ない。余程の偶発的な事態が生じない限り、「日本バブル」第1弾は続き、まずは最初のクライマックスを迎える―――。
統計分析が語る「黄色信号の点滅」と、公開情報分析(Open Source Intelligence, OSINT)が教えてくれる「リスク・フリーな状況」。余りにも矛盾した両者の中で私がどうしても気になっていた一つの現実。それが、ロンドン・シティから訪れるはずの“あの人”からの「訪日中止」を伝えるメッセージだった。
そして5月23日。「その時」は余りにも突然、やって来た。長期金利の急騰を受け、日本銀行が2兆円規模での資金供給をマーケットに対して即時実行。これを受けて、「日本株を持たざるリスク」にばかり目がいっていた機関投資家たちは一気に日本国債へと視線の向きを変えた。その結果、国債価格は上昇し、長期金利は無事に下がり始める。だが、その「代償」として日本株マーケットでは平均株価ベースで1143円もの“暴落”となった。結果的に言えば、まずは精緻な統計分析が正しかったというわけなのである。
■日本人全体が「はめられた」
だがここで「まず」と言ったのには理由がある。―――「5・23ショック」を受けて新聞・メディアは盛んに「潮目が変わった」と書きたてた。しかし公開情報分析でグローバル・マクロ(国際的な資金循環)に対するウォッチを続ける私の目から見ると、事態は何も変わっていなかったのである。つまり引き続き外生的リスクという観点から言うと「リスク・フリーな状況」が続いていたというわけなのである。つまり何も変わってはいないのである。
事ここに及んで、私はようやく全てを理解した。他ならぬホーム・グラウンド(=日本マーケット)でわが国の機関投資家たちは、またぞろ海外勢によって「はめられた」のである。いや、機関投資家だけではない。政府・日銀も含め、私たち日本人全体が「はめられた」のだ。
「異次元緩和」の実施は、デフレ対策に対する責任を負うのが、日銀から政府へと完全に移ったことを意味していた。なぜならば事実上、無制限となる日本国債買い入れを通じてマネーのばら撒きに応じた日銀としては、後はそのカネがどのようにして使われるのかを決める立場にはないからだ。そのため、「インフレ率2パーセント」という目標が達成されるようコントロールしていく以外に日銀サイドでなすべきことはなく、「成長戦略」や「公共事業」といったデフレ脱却のための措置を講じるべきは、もっぱら安倍政権ということになってくる。マーケットでは煽られる期待で株高が先行し、「株価についてコメントはしない」と述べつつも、「世紀の名宰相」と海外メディアが囃したて始めたせいだろうか、テレビ・カメラの前に立つ安倍首相は笑みをこぼすことが多くなった。
■かくて、再び株価は上昇する
だが、そこに巨大な罠があったのだ。本来、日銀による巨大な買いオペによって日本国債の価格は堅調となり、長期金利は上昇しないはずだ。しかし、米欧の越境する投資主体は先ほど書いたようにデータ分析では考えられないほどのレヴェルで日本株をあえて買い進め、「日本株を持たざるリスク」を急拡大。これに驚いた国内機関投資家たちはまたぞろ「国債から日本株へ」と動き出した可能性が高いのだ(無論、表向きはそうは語らないが)。
その結果、日本国債離れが進むのではないかとの懸念などから、長期金利が急騰。同じく「世紀の名総裁」になるはずであった黒田東彦・日銀総裁は慌てて目を覚まし、大規模な資金供給を実施したのである。その結果、日本株は暴落し、後は茫然と立ち尽くす個人投資家たちだけとなったというわけなのだ。
だがこれで諦めてはいけない。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)は動き続けている。「暴落」しても「値がついた」ということは、“誰”かが5・23ショックの当日、大量に日本株を買い集めた可能性が高いのである。とりわけ「国債リスク」との連動が懸念されている地銀株は一斉に売られた。それを“誰”かが一斉に買ったのである。
そしてその“誰か”が明らかになるのはそう遠くない将来である可能性も高い。なぜならば逃げ足の速いグローバル・マクロ系のヘッジファンドたちであった場合、今後再び上げへと転じさせ、物事を忘れやすい私たち日本人が「高騰」に酔いしれている間に一斉に売り抜けるはずだからだ。その結果、「6月は大暴騰の季節」ということになってくる。
最後に余談を一つ――。4月11日にアップしたコラムの中で、私は「安倍晋三首相が電撃訪朝する可能性がある」と示唆した。果たして現実はというと、まずは飯島勲・内閣官房参与による突然の北朝鮮訪問という形で明らかにそれに向けた道が創られ始めている。
私の目から見ると、安倍晋三首相が禁断の「北朝鮮カード」を参院選に向けて切り始めた理由はただ一つである。いわゆる「アベノミクス」による日本株高が場合によっては突き崩される危険性があり、それにだけ選挙戦略を依存するのは危ない、と誰かから囁かれた可能性があるということだ。それではその「誰か」とは一体、誰なのか。
そう想う時、私はロンドン・シティから未だ訪れぬ“あの人”のことを想い出すのである。明らかに世界史の「見えない力」に翻弄され始めた日本。その呪縛は我が国の首相にまで及びつつあるように見えるのは、私だけだろうか。そして今日もまた、フェイスブックで届かぬメッセージを待っている私がいる。*6月2日(東京)に、原田氏の新刊記念講演会を行う予定です。くわしくはぜひ、こちらをご覧下さい。
http://haradatakeo.com/special/event/201305/
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