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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130529-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 5月29日(水)4時24分配信
2012年12月の安倍晋三政権発足以来、株価上昇とともに黒田東彦・日本銀行総裁による金融緩和策がドル円を7円も押し上げるほどの大幅な円安効果をもたらした。5月28日、日経平均株価終値は1万4311円、為替は一時1ドル102円台まで下落した。
その一方で、日本政府と地方自治体を合わせた正味資産(資産 - 債務)は、債務が資産を約49兆円上回るという債務超過の状態。これは同種統計を取り始めた1969年以来初めてのことで、資産を全部売り払っても借金が返済できないということを意味している。ギリシャは債務がGDP比160%に達した時点で破綻したが、日本の債務はすでに約200%と高い水準にある。
厳しい国内財政状況の中、この「円安」状況はいつまで続くのか。そうした為替動向は社会にどんな影響を与えていくのか。
「2000年ITバブル崩壊」「02年・円急落」「07年円安バブル崩壊」などマーケットの大相場予測をことごとく的中させ、今年4月に上梓された自著『これから来る!「超円安」・「超株高」の本命シナリオ』の中でも、「2016年まで株高・円安は続く」と断言している国際金融アナリスト・吉田恒氏に、「今私たちがハッキリと知っておきたい為替のホンネ」を聞いてみた。
●「円安トレンド」が2016年まで続く理由
--素朴な質問からです。この「円安トレンド」が2016年まで続くと考えていらっしゃる理由を、わかりやすく教えてください。
吉田恒氏(以下、吉田) 過去20年間で4回、ドル高円安という局面がありましたが、最も長く続いた期間は3年4カ月でした。1995年から始まった円安です。95年は1ドル80円までの円高が進み、それが反転した局面でした。80円、つまり100円を超える円高のことは超円高と呼ばれていましたが、その超円高が反転したら、過去最長3年4カ月の円安になったわけです。
今回の円安スタート時は1ドル75円でした。なので今回も100円を超える円高であり、超円高と言えます。前回の超円高の時も、その反転局面では最長の円安を記録しました。今回も同様なので、第一次超円高の反転局面並みに長い円安になると予測することができます。
難しい理屈はいっぱいありますけど、簡単な言い方をすると「超円高が反転したあとの円安の期間は長くなる」のです。第一次超円高後の円安が3年4カ月続いたのだから、第二次超円高後の円安はもっと長くなってもおかしくない。史上最長の円安になる可能性すらあると考えています。
このように僕は考えていますが、円の下落率やドルの上昇率でいうと、今回が過去最高になるとは思っていません。ちなみに過去最高のドル上昇率では、ドルはその上昇期間中に最大で8割も上がっています。今回、75円からもし8割上がったら130〜140円になりますが、僕はそうはならないと思っています。ただ過去のドル高円安局面において、平均的にはドルは4割上がっているので、今回もその平均以上にはなると考えています。具体的には、75円からの4割を超える5〜6割程度のドル高と考えると、120円くらいにはなると考えてます。
--「円安トレンドは短命に終わる」と評する専門家の方もいらっしゃいますが。
吉田 5月上旬の日本経済新聞にも「円安はあと1年で終わる」という見方が載っていましたね。こうした発想のベースにあるものは、アメリカの金利動向に関する見方です。
例えば07年に1ドル124円までいった前回の円安ですが、その時には日米の金利差が大幅に開き、アメリカの金利が円の金利よりもすごく高かったことで、124円までのドル高円安になりました。
ところが今のところ、アメリカの金利も日本の金利も低く、金利差がほとんどない。この金利差が開かないとドル高円安にも限界があるので、彼らは「07年のように120円まで行くなんて到底無理で、せいぜいあと1年で終わるでしょう」という見方をしています。
とりわけドルをはじめとする外貨の金利があまり上がらず、日米の金利差が広がらない。これが、円安が短命に地味に終わるという見方の基本的な論拠となっています。
僕がそうならないと考えているのは、アメリカの金利がすごく上がると思っているからです。金利差が大幅に開いて、超円安になると思ってるんですね。
余談ですが、アメリカの債券ファンド「パシフィック・インベスト・マネージメント(PIMCO)」の運用責任者、ビル・グロースが「リーマンショック以降、“新しい普通の基準=ニューノーマル”というものができた。昔のいい時代のようには、戻らない。景気が回復しても、金利は昔のようには上がらない」と言いました。4日5月初め、“投資の神様”ウォーレン・バフェットが世界最大の投資会社「バークシャー・ハサウェイ」の年次株主総会でこの“ニューノーマル”という言葉に言及し、こう言ってます。「“ニューノーマル”という言葉があるけれども、私はそうならないと思う。景気が回復すれば、やはり昔のように金利が上がる」と言ってます。僕もそう思います。
日本も多少の金利上昇はあるでしょうが、アメリカのほうが大幅に金利上昇することによって、その金利差が開くと思います。
●日本の財政と円安
--今回の円安為替動向は、現在の財政悪化状況の中で、日本の財政にどんな影響を与えていくと思われますか?
吉田 例えば、日本の国債を買っている海外投資家にとっては、円安になると為替で損をします。そうすると、売る可能性が出てきます。円安が加速し海外投資家がいよいよ日本国債を売るようになったら、そうではなくとも財政破綻リスクを抱えている日本国債ということもあり、「ついには暴落の引き金になってしまうのではないのか」と懸念している方もいると思います。
財政破綻が起こる一番の要因は、やはり景気です。直近の財政危機の代表例としては、10〜11年頃から本格化した「ユーロ危機」がありました。あれなどわかりやすいのですが、あの頃、ちょうどリーマンショックなどで“100年に1度の危機”の後の世界景気低迷期にあったわけです。世界景気が低迷期にあると、やはりグローバリゼーションの世の中でもありヨーロッパの景気も低迷し、景気が低迷するとやはり税収も減るわけです。財政というのは、すなわち税収ですから。
日本の財政の脆弱性が表面化するかどうかも、すなわち景気がいいか悪いか、それにより税収が増えるか減るかということが一番の鍵です。
当面のドル高円安局面においては、アメリカの金利が上がると僕は思っているくらいなので、景気が回復していくと思っているわけです。そうすると、日本も税収が増えるでしょうから、税収が増える中で財政危機が拡大するというのは普通はありえないと思っています。そんなことから、今後2〜3年のドル高円安局面で、日本の財政危機が表面化するかたちにはならないと思ってます。
ただし、2020年とか2030年とかいうスパンの話になってくると、それはわからないです。
これまで僕が話したのは今後2〜3年くらい、15年あたりにかけては「120円まで円安になると思いますよ、超円安になると思いますよ」ということと、その局面で「円安なので日本の財政危機も表面化するかといえば、それはないと思いますよ」ということです。その後、また円高になったり円安になったりを繰り返していくうちに、これから10〜20年先となってくると“景気後退局面での円安”というのも出てくる可能性があります。これは確かに危険です。
景気後退したら、当然税収が減ります。もともと残高ベースでは返せないといわれているぐらいの借金を抱えているわけですから、これで税収まで減ってしまうといよいよ「もう借金棒引きしかない」というような岐路を迎えてしまいます。
そんな時に円安になっていると、全体の1割ぐらいしか日本の国債持っていない海外投資家もいよいよ売るでしょうし、日本人も国債買うのが馬鹿らしくてドル買いに走ったりすると、そこは危ないですよね。
そうなってくると、日本の財政危機でいわゆる「悪い円安」が起こるというシナリオは十分あり得ると思います。ただしここ3〜5年の間には起こらないとは思います。
●「いい円安」「悪い円安」
--「いい円安」と「悪い円安」の、簡単な見分け方を教えていただけますか?
吉田 物事にはもちろん両面があります。円安になって金融価格が上がったり、食品会社でも値上げをせざるを得なくなったりしています。なので一概には言い切れませんが、全体的な文脈での「いい円安」「悪い円安」というものはあります。
一番簡単な見分け方としては、その円安が金利と連動するのか逆行しているのかを見分けるということです。円の金利が下がっている中、または安定している中、円相場が下がるのは普通のことです。
しかし、円が下がっているのに円の金利が上がるというのは、日本からのキャピタルフライト(資本逃避)が起こっているということです。円の金利とはすなわち国債の利回りのことです。円が下がっているのに円の金利が上がるということは、すなわち国債価格が下がっている、売られているということを意味します。円が下がっているのに円の金利が上がっているという状態、つまり金利と逆行して円安が進むという状態は「悪い円安」です。
円の金利が安定したり、ましてや円の金利が下がっているんだったら、円が下がっていても、それは当たり前のこと。自然な円安です。普通の円安。それによって恩恵を被る人が多い「いい円安」ということになります。
--先ほど、将来的には「いい円安」「悪い円安」になるかはわからないともおっしゃいました。今後、日本人はどのように為替という世界と付き合っていくことになると思いますか?
吉田 1971年の「ニクソンショック」で360円から始まり、40年間続いた円高が終わり、今は長期円安時代に入っていると考えています。小規模な循環を繰り返しながらも、長期的には円安が加速していく局面です。将来、10年後には1ドル150円とか200円など、さらに円安になっているだろうと思います。
1970年代以降、日本は「貿易黒字大国」だという認識があったから、長期円高というのが成り立っていたわけです。ところが高度成長はもう終わり、「失われた20年」の間についに黒字もなくなりました。
長期円高を支えてきた要因が、もうなくなってしまったのです。だから現在、長期円安が始まろうとしているわけですが、途中でそれが加速し「悪い円安」になったりするのも、長期的に考えると十分あり得ると思います。
その「悪い円安」は先ほど話したように“金利と逆行する円安”のことで、これが出てくると怖いですよね。そうなると、国内資産しか持っていないということのほうが不自然になってくるわけです。だから為替に不慣れな人や円のことをわからない人でも、海外投資をしなくてはならないような気分も広がるでしょうし、為替外貨資産を持たないことがリスクとなるような時代へと、長期的にはなっていくんでしょうね。
編集部
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