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2013年5月27日 小幡績 ダイヤモンド・オンライン
国債市場は、説明できない高価格が継続する「バブル」が続いてきた。日本の財政状況は悪化の一途をたどり、国債は暴落すると言われ続けたが、暴落しない。この不思議な安定性を維持する状態を、名づけて「ハイブリッド・バブル」。その基本構造は、2種の投資家に支えられている。
■暴落しない不思議なバブル
この20年間、国債は暴落すると言われ続けた。なぜか。
それは、日本政府の財政状況が世界最悪だからだ。2012年9月末時点で、政府債務残高は総額1000兆円と、先進国ではダントツに大きい。世界ではジンバブエに次ぐ水準だ。しかも毎年の借金額は加速度的に増加しており、国債発行残高は948億円にのぼる。
国債はデフォルト(債務不履行)すると思われて当然だ。時期について見解が分かれるものの、いつか破綻するだろうことはコンセンサスになっている。
にもかかわらず日本国債は高い価格を維持し、安定した低利回りを実現してきた。だから、これを人びとは「国債バブル」と呼ぶ。リスクが高く、高リスクに見合った利回りが得られないのに、高い価格で投資家がいまも買い続けている。説明できない高価格の継続、すなわち「バブル」というわけだ。
なぜ暴落しないのか。それは、独特の国債の価格形成、および、暴落しそうでしない状態をうみだす構造を有しているからだ。私はこの構造を「ハイブリッド・バブル」と名づけた。ふたつのタイプの投資家が、テールリスク(発生確率はきわめて低いが、発生すれば甚大な影響を与えるリスク)の捉え方の違いにより、それぞれの合理性を持って、一方の投資家は売り、他方の投資家は買っている。この2極に分かれた投資家の存在と、その相互作用が“ハイブリッド”であり、この構造が、国債市場の安定性をうみだしているのだ。
■3つのカテゴリーの投資家
ここからは、より具体的に、「ハイブリッド・バブル」の構造を説明しよう。
まず、日本国債の投資家は、3種に分けて考えられる。分類は、国内外の投資家にかかわらず、その投資行動の違いによる。
第1は、常に投資からの利益最大化を狙う投資家である。ヘッジファンドや海外投資家の多くが典型だ。彼らは早く、かつ、速く動くので、市場をリードし掻きまわす存在になり得る。ただし、日本国債は彼らの基準に照らせばハイリスク・ローリターンだから、これまでほとんど買わなかった。
第2はファンダメンタルズにしたがう投資家で、ほかの資産より国債が割安なら買い、リスクに応じて保有額や満期を調整する。メガバンクなど大手の金融機関や多くの年金基金がこれにあたる。
第3は、冒頭のべた財政破綻リスクを無視して「限定合理的」に国債を買い続ける投資家だ。主に、信用金庫や信用組合といった中小金融機関や、生命保険、ゆうちょ銀行・かんぽ銀行がこれにあたる。
第1の投資収益の最大化を狙う投資家は、少なくともこれまでは日本の国債市場で出番がなかったので、ここでは考えない。
つまり、国債市場には、第2と第3の投資家それぞれが安定的に存在している。第2の投資家の均衡価格はファンダメンタルズに基づいて決まる。財政破綻リスクを無視する第3の投資家たちの均衡価格はそれより高くなる。そして、双方が融合した場合、新しい均衡価格はその中間に決まる。
新しい均衡価格は、第2の投資家にとっては従来価格より高くなるので保有株を売りやすくなり、第3の投資家にとっては従来価格より安くなるので割安に買い増すことができる。双方にとって望ましいため、この均衡はきわめて安定的となる。両者の中間に価格が決まるということは、ファンダメンタルズ価格より高い水準であり、これが暴騰や暴落もせずに続くのである。これが「暴落しないバブル」が維持されてきた仕組みだ。
■安定性を強化する投資家特性
しかも、ファンダメンタルズに基づいて行動する大手金融機関など第2の投資家、財政破綻リスクを無視して買い続ける「限定合理的」な第3の投資家は、いずれも金融機関が多い。資金調達の多くを、預金に依存している。このため、資金制約上、無限に国債を買えるわけではないし、制度上、ある程度の国債は持たざるを得ない。要は、無茶な売り買いをする投資家は国債市場にいなかったのである。
第2と第3の投資家それぞれが安定していること、そして、双方の安定的メカニズムが「同時に」存在する状態が、国債市場の安定性をいっそう強固にしているのだ。この“ハイブリッド”構造による安定性があるため、外国人投資家など投資収益を追求する第1の投資家が空売りを仕掛けるなどしても、付け入る隙はない。過去に暴落する可能性があった何度かのショック時も、すぐに均衡を回復し、安定を取り戻せたのは、この“ハイブリッド”メカニズムのおかげなのである。
しかし、黒田日銀の“異次元”金融緩和で、このハイブリッド・バブルは変調をきたしつつある。次回はその変化を議論しよう。いよいよ国債は暴落するのか?
※次回公開は5月28日です。
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